昭和60年

年次経済報告

新しい成長とその課題

昭和60年8月15日

経済企画庁


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6. 交通・通信

(1) 国内輸送

(増加した貨物輸送)

59年度の国内貨物輸送は,上半期までは増勢を強めたものの,後半は輸出の落ち込み,民間設備投資の不振の影響もあって減少に転じ,年度全体としては総輸送トン数では56億73百万トン(前年度比0.2%減),輸送距離を加味した総輸送トンキロでは4,346億トンキロ(同2.9%増)となった( 第6-1表① )。

第6-1表 国内輸送の動向

輸送機関別にみると,国鉄は輸送トン数で前年度比13.0%減,輸送トンキロで同16.1%減,と55年度以来5年続けて減少している。

自動車は輸送トン数で前年度比0.2%減,輸送トンキロで同3.8%増となっている。このうち,営業用自動車ではそれぞれ2.4%増,6.3%増となり,自家用自動車では1.6%減,0.1%減となった。

内航海運(営業用)は,輸送トン数で前年比3.5%増,輸送トンキロで同4.9%増となった。

航空は,輸送トン数で前年比12.3%増,輸送トンキロで同11.5%増となった。

以上の結果,輸送機関別国内貨物輸送トンキロ分担率をみると,前年度に比べ鉄道は1.2%ポイント減の5.3%,内航海運は0.8%ポイント増の48.3%,自動車は0,4%ポイント増の46.2%,航空は前年度横ばいの0.1%となった。

(増加した旅客輸送)

59年度の国内旅客輸送をみると,総輸送人員は529億82百万人(前年比0.8%増),総輸送人キロは8,323億人キロで同1.3%増)となった( 第6-1表② )。

これを輸送機関別にみると,国鉄は輸送人員が前年度比1.3%増,輸送人キロが同0.7%増となった。このうち新幹線は輸送人員が1億6,379万人(前年度比1.5%増),輸送人キロが508億2,610万人キロ(同0.8%増)であり,路線別では東海道・山陽新幹線がそれぞれ0.6%増,0.0%増,東北・上越新幹線がそれぞれ5.0%増,4.6%増となった。地方,民鉄は輸送入員で前年度比1.1%増,輸送入キロで同1.3%増となった。これらの結果,国鉄,民鉄を合わせた鉄道合計では,輸送入員は前年度比1.2%増,輸送人キロでは同0.9%増となった。

自動車は,輸送人員では前年度比0.7%増,輸送人キロでは同1.0%増となった。このうち,バスについてはそれぞれ2.8%減,0.3%減となった一方,自家用乗用車はそれぞれ2.4%増,1.4%増,営業用乗用車はそれぞれ0.9%減,0.6%減となった。

航空は,輸送人員では前年度比9.5%増,輸送人キロでは同9.4%増となった。路線別では幹線は輸送人員では,9.8%増,輸送人キロでは8.2%増,ローカル線は輸送人員では9.3%増,輸送人キロでは10.5%増となった。また,座席利用率をみると全体で前年度比1.2ポイント増の62.1%となっている。

旅客船は,輸送人員で前年度比0.9%増,輸送人キロで同1.0%増となった。

以上の結果,59年度の輸送機関別国内旅客輸送人キロ分担率は,前年度に比べて航空が0.3ポイント増の4.0%となったのに対し,自動車が0.2ポイント減の56.3%,鉄道が0.1ポイント減の39.0%,旅客船が0.0ポイント減の0.7%となった。

(国鉄再建へ向けて)

国鉄の財政状況は,39年度に単年度収支が赤字となって以来悪化を続け,55年度以降は純損失が1兆円を超えるに至っている。

59年度の国鉄事業収支をみると,収入面においては,貨物収入及び助成金受入が大幅に減少したものの,積極的な営業活動,運賃改定等の結果,旅客収入が大幅に増加したこと及び関連事業収入も増加したことにより,前年度に対し784億円の増加となった。

他方,支出面においては,大幅な要員縮減と徹底した経費節減努力により人件費,物件費とも前年度に対し減少したが,長期債務の利子が著しく増加したため,前年度に対し全体で683億円の増加となった。

この結果,国鉄収支は1兆6,504億円の純損失となった。

国鉄経営の危機的状況に対処すべく55年11月に「日本国有鉄道経営再建促進特別措置法」が成立し,これに基づき経営改善の措置が図られてきている。

その後,57年7月の臨時行政調査会の基本答申,9月のいわゆる行革大綱を経て,58年6月に設置された国鉄再建監理委員会が60年7月に「国鉄改革に関する意見」を提出した。同意見は,国鉄の経営が悪化した最大の原因は,公社という自主性の欠如した制度の下で全国一元の巨大組織として運営されている現行経営形態そのものに内在するという認識の下に,国鉄改革の内容として,現行経営形態を改め分割・民営化することを基本とし,あわせて,巨額の債務等について適切な処理を行い,過剰な要員体制を改め,健全な事業主体としての経営基盤を確立した上で,国鉄事業を再出発させることを骨子としている。これを受けて政府は,同意見を最大限に尊重し,国鉄改革のための措置について速やかに成案を得て,所要の施策を実施に移すものとすることとした。

(2) 国際輸送

(我が国商船隊輸送量は輸出入とも増加)

59年の輸出入の動向をトンベースでみると輪出は8,397万トン(前年度比1.0%増)となり,輸入は5億9,911万トン(同9.5%増)となった( 第6-2表① )。

第6-2表 国際輸送の動向

このうち,我が国商船隊(外国用船を含む)の輸送量は,輪出が機械類,鉄鋼,肥料等の伸びによる不定期船輸送量の増加等から,1前年比4.8%増,輸入が油送船輸送量が減少したものの,定期船9不定期船輸送量が増加したため,同4.7%増となった。我が国商船隊の積取比率は輸出においては53.2%で前年比2.0ポイント増加,輸入においてば66.7%で同3.1ポイント減少となった。

これを日本船と外国船に分けてみると,日本船の輸送量は前年比で輸出が5.2%減,輪入が同3.4%増となったため,日本船の積取比率は輸出においては19.5%と前年に比べて1.3ポイントの減少,輪入においては41.3%と245ポイントの減少となった。

(大きく増加した国際航空旅客輸送)

我が国をめぐる国際航空輸送は,59年度は世界景気の回復を背景に輸出は増加を続け,輸入も前年度に引き続いての増加となった。59年度の国際航空貨物輸送は,輸出はトン数ベースで43.6万トン(前年度比6.4%増),ドルベースで188億ドル(同20.5%増)となり,輪入はトン数ベースで,35.8万トン(同9.9%増),ドルベースで171億ドル(同14.1%増)となった。このうち,我が国航空企業(2社)の輸送活動をみると,トン数ベースで輪出は15.2万トン(同3.6%増),輸入は13.8万トン(同7.2%増)となり,積取比率は前年度に比べ,輸出が0.9ポイント減の34.8%,輸入が0.9ポイント減の38.6%となった。

他方,国際航空旅客輸送量を我が国航空企業についてみると,輸送人員が前年度比10.3%増となり,人キロベースでは11.6%増となった。

(3) 内・外通信の動向

(郵便物数)

59年度の内国郵便物引受総数は前年度比で2.2%増加した。また,内国,外国合わせた総引受郵便物数は166億通(個)で同2.2%増加した( 第6-3表 )。種類別にみると,第一種郵便物(封書など)は5.7%増加しているが,第二種郵便物(はがき)は0.2%減少している。また小包郵便物は6.0%増加し,年賀郵便物は2.5%増加となった。

第6-3表 郵便の動向

郵便事業財政は,55年度の料金改定を契機に改善に向かい,56年度の1,174億円,57年度の781億円,58年度の338億円の黒字に続いて,59年度においても114億円の黒字となり,同年度末の累積欠損金は87億円まで減少した。

(国内公衆電気通信)

59年度における国内の電信電話サービスの状況をみると,加入電話等加入数は108万増加し4,396万加入となった( 第6-4表① )。この結果,人口100人当たりの加入電話等普及状況は36.9加人となった。また公衆電話機数も3,491個増加して93万5千個となり,公衆電話普及率は人口1,000人当たり788個となった。一方,電報通数は285万通減少し,4,168万通となっている。

第6-4表 電信,電話等の動向

(国際電気通信)

59年度の我が国の国際通信の状況をみると,国際電報発着数は,29万通減少して186万通となっている( 第6-4表② )。国際電話,国際テレツクスの発着数は,それぞれ1,847万度,227万度増加し,6,821万度,5,189万度となっている。

(新しい情報通信メディアの時代へ向けて)

60年4月1日の電気通信事業法の施行によって,電気通信事業分野への新規参入が可能となり,60年6月には自ら通信回線を所有して電気通信事業を行う第一種電気通信事業者として5社に許可がなされた。これらの企業は,マイクロ無線,鉄道,道路空間を利用した光ファイバー通信や衛星通信により事業を行うものであり,これにより,国内を対象とする第一種電気通信事業分野は日本電信電話株式会社(NTT)による独占状態から6社による競争という新しい時代に入り,民間活力の一層の発揮による高度情報社会の実現へ向けて大きな一歩を踏み出すこととなった。


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