昭和60年

年次経済報告

新しい成長とその課題

昭和60年8月15日

経済企画庁


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はじめに

昭和59年度は,我が国経済が着実な拡大を続け,成長率も5.7%と第1次石油危機以来最も高くなった年である。

年度後半に至り,アメリカの景気鈍化の影響もあって,輸出の増勢が一服し,生産の増勢はやや鈍化した。しかし内需の拡大は続いており,60年度に入ってから輸出も増加するなど,景気は拡大を続けている。

本年はまた,我が国が第2次世界大戦に敗れてから40年を経過した年である。この間の経済成長と国際化の進展により,我が国は自由世界第二位の国民総生産と世界最大規模の海外純資産を保有するに至っている。

しかし,アメリカの「双子の赤字」を始めとして,各国の抱える経済問題は依然大きく,かつ複雑である。各国間の経済摩擦も深刻化している。幸いなことに1983,84年と世界経済は明るさを増しており,これらの問題にも積極的に取り組み9不均衡を解消しようとする努力が続けられている。

こうした努力が続けられ,成功すれば,昭和60年代は世界的なスタグフレーションに悩んだ50年代とは変わって,民間の活力,活発な技術革新に支えられた新しい成長の時代となる可能性が大きい。

本年度の年次経済報告では,59年度の我が国経済を分析するとともに,今日までの成長,景気循環の変貌を踏まえ,新しい成長の時代を展望し,それへの移行に際し問題となる点,その解決の方向などを指摘したい。

そのため,本年度の年次経済報告は,次の3章で構成されている。

第1章「昭和59年度の日本経済」では9今回の景気拡大,ドル高・経常収支黒字拡大と企業部門の高収益を分析するとともに,家計部門が立ち遅れたもののそれが修正されてきたことを示す。

第2章「新しい成長の時代」では,高度情報化・技術革新の進展,消費の新しい展開,太平洋地域の隆盛などのため,日本経済は新しい成長の時代に入りつつあることを示し,その実現のための方向を探る。

第3章「高齢化と経済活力」では,より長期の問題として高齢化の急速な進展が予想されており,その結果年金,医療保険などの公的負担の増大,経済活力の低下が懸念されている。そこで最近,制度の大改正が行われた年金,医療問題等を分析し,当面の解決策,今後の対応を考えるよすがとしたい。


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