昭和59年

年次経済報告

新たな国際化に対応する日本経済 

昭和59年8月7日

経済企画庁


[目次] [年次リスト]

第3章 転換する産業構造

第2章でマクロ的に分析した我が国経済の経常収支黒字基調定着化の過程は,ミクロ的に見ると,内外の条件変化により比較優位部門が変化する中で,我が国の産業・貿易構造が技術革新の努力の積み重ねにより,効果的な転換を行っていく過程であった。

1970年代の石油危機と発展途上国の追い上げにより,各国の産業は大きな構造変化を迫られた。我が国の産業も,基礎素材産業や労働集約型産業を中心に困難な調整を続けた。こうした中で各産業で推し進められた高付加価値化,省エネルギー・省資源の技術開発の蓄積は,マイクロ・エレクトロニクスの広範な導入へと展開し,我が国産業の主力は高度技術型の加工組立産業へと転換しつつある。

そこで本章では,このような産業構造の転換の原動力となっている先端技術革新の状況と,比較優位を失ないつつある部門における困難だが積極的な調整の態様を明らかにする。また,あわせて日本が資本供給国に転ずる中で,円滑な国際分業を推進する上で重要性を増してきた海外直接投資の役割と課題を分析する。

そして,これらを踏まえて,我が国が世界経済に積極的に貢献していくための実物経済面での課題を考える。


[目次] [年次リスト]