昭和32年
年次経済報告
速すぎた拡大とその反省
経済企画庁
各論
建設
新規建設活動の概況
昭和31年度における新規建設支出の推計額は、 第46表 にみる通り、約1兆60億円で、前年度に比べて17%の増加を示した。その内訳をみると、前年度と同様に、公共支出の工事が停滞し、民間の建築工事が増加したという傾向に変わりはなかったが、本年度の特色として挙げられるのは、建築工事の伸びがさらに著しかったことと前年度はあまり増加しなかった電源開発工事が相当の伸長を示したことであろう。
すなわち、前年度に引き続く経済健全化の基調によって財政投融資による諸事業の領域においては公共事業費をはじめとして大半の事業が前年度並みに抑えられたのである。しかしながらそのなかにあっても施策の重点化並びに財政と金融の総合化の方針により、新設された道路公団及び森林開発公団の事業費、発足後2年目の住宅公団の事業費、業務収入の良好な電々公社の事業費、電源開発会社の事業費などが増加をみせ、前年度並みの公共事業においては道路、港湾等に重点がおかれた。
これに対して、民間建築投資は、産業設備投資の活況とともに特に工場建築を軸として著しく伸長し、民間住宅投資も所得上昇とともに促進されたので、建築部門は前年度より大幅に29%の増加を示した。また電源開発工事は3年ほどほとんど停滞していたが、電力供給が経済拡大に追いつかないことが明らかになるとともに31年度下半期には再び投資を拡大したので、その建設費(建設工事費を除く)は35%の著増をみせた。