月例経済報告(平成15年10月)

―景気は、持ち直しに向けた動きがみられる。―

先行きについては、企業部門が持ち直している中で、アメリカ経済等の回復に伴って、景気は持ち直すことが見込まれる。一方、今後の株価・為替レートや海外経済などの動向には留意する必要がある。

平成15年10月15日

内閣府

総論

(我が国経済の基調判断)

景気は、持ち直しに向けた動きがみられる。

  • 設備投資は増加している。企業収益は改善が続いている。
  • 輸出は持ち直し基調にあり、生産は横ばいとなっている。
  • 個人消費は、おおむね横ばいで推移している。
  • 雇用情勢は、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。

先行きについては、企業部門が持ち直している中で、アメリカ経済等の回復に伴って、景気は持ち直すことが見込まれる。一方、今後の株価・為替レートや海外経済などの動向には留意する必要がある。

(政策の基本的態度)

政府は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」の早期具体化により、構造改革の一層の強化を図る。
日本銀行においては、金融機関保有株式の買入れ措置を平成16年9月末まで延長した。また、10月10日、日本銀行当座預金残高の目標値の上限を引き上げ、27~32兆円程度とすること等を決定した。政府は、日本銀行と一体となって、金融・資本市場の安定及びデフレ克服を目指し、引き続き強力かつ総合的な取組を行う。

各論

1.消費・投資などの需要動向

個人消費は、おおむね横ばいで推移している。

個人消費は、おおむね横ばいで推移している。この背景としては、所得がおおむね横ばいとなっていることに加え、消費者マインドがこのところ持ち直していることが挙げられる。需要側統計(家計調査)と供給側統計(鉱工業出荷指数等)を合成した消費総合指数は、7月に大きく減少した反動もあり、8月は前月に比べて増加している。
個別の指標をみると、家計調査では、実質消費支出が前月に比べて大幅に増加した。一方、販売側の統計をみると、小売業販売額は、前月に比べて増加した。チェーンストア販売額は、引き続き前年を下回った。百貨店販売額は、天候不順の影響から減少が続いている。新車販売台数は、引き続き前年を下回った。家電販売金額は、DVDやデジタルカメラなどの売れ行きが好調であることに加え、主力商品であるパソコンに動きがみられたことから、前年を上回った。旅行は、国内旅行は引き続き前年を上回った。海外旅行は引き続き大幅に減少しているが、減少幅は縮小している。
先行きについては、当面、現状のような推移が続くと見込まれるが、家計の所得環境が改善していけば、個人消費にも徐々に持ち直しの動きが出てくるものと期待される。

設備投資は、増加している。

設備投資は、企業収益の回復や資本ストック調整の進展等を受けて、増加している。これを需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、季節調整済前期比で平成14年10-12月期に持ち直しに転じ、増加基調にある。また、ソフトウェア投資は、持ち直しの動きがみられる。
日銀短観によれば15年度設備投資計画は3年ぶりに全規模全産業で増加に転じ、設備投資の動きに先行性がみられる設備過剰感も改善の動きが続いている。また、先行指標をみると機械受注は基調としては持ち直しており、建築着工床面積はおおむね横ばいとなっている。先行きについては、企業収益の改善が続くものと見込まれること等から、当面増加傾向で推移するものと見込まれる。

住宅建設は、おおむね横ばいとなっている。

平成14年度の住宅建設は、雇用・所得環境が厳しいこと、不動産価格の長期的下落傾向により買い換えが困難となっていることなどから、消費者の住宅取得マインドが低下しており、2年連続で120万戸を下回る低い水準となった。
総戸数は、平成15年度に入って、おおむね横ばいで推移してきたが、6月は一時的に増加して年率126.8万戸となった後、貸家を中心に2ヶ月連続で反落し、8月は年率106.1万戸となった。総床面積も、おおむね総戸数と同様の動きをしている。先行きについては、雇用・所得環境が持ち直すなど、消費者の住宅取得マインドが改善に向えば、住宅着工は底堅く推移していくことも期待される。

公共投資は、総じて低調に推移している。

公共投資は、国、地方の予算状況を反映して、総じて低調に推移している。
平成15年度の公共投資の関連予算をみると、国の公共投資関係費においては、前年度比3.7%減と規模を縮減しつつ、「個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方」など重点4分野を中心に、雇用・民間需要の拡大に資する分野へ重点化している。また、平成15年度における地方財政計画においては、投資的経費のうち地方単独事業費について、前年度比5.5%減としつつ、計画的な抑制と重点的な配分を行うとしている。
このような状況を反映して、公共工事受注額、公共工事請負金額及び大手50社受注額は、平成15年4-6月期も、前期に引き続き、前年を下回った。
7-9月期の公共投資については、7月、8月の公共工事請負金額なども前年を下回っており、国、地方の予算状況を踏まえると、引き続き前年を下回るものと考えられる。

輸出は、持ち直し基調にある。輸入は、増加基調にある。貿易・サービス収支の黒字は、横ばいとなっている。

輸出は、このところ船舶等輸送用機器が減少しているものの、基調として持ち直している。地域別にみると、アジア向け輸出は、SARSの影響が終息し、中国、NIES向け輸出が機械機器を中心として持ち直していることから、全体としては緩やかに増加している。アメリカ向け輸出は、自動車の現地生産の高まりから輸送用機器が足元で減少しているものの、全体としては横ばいとなっている。EU向け輸出は、輸送用機器が増加しており、下げ止まりつつある。先行きについては、世界の景気回復に明るさが増していることに伴って、緩やかに増加していくものと考えられるものの、最近の為替レートの動向には留意する必要がある。
輸入は、機械機器や食料等が足元で大きく減少したものの、設備投資が増加していること等から、基調としては増加している。地域別にみると、アジアからの輸入は、足元で鉱物性燃料や繊維製品を中心に減少したものの、基調としては増加している。アメリカからの輸入は、航空機等の機械機器を中心に、このところ減少している。EUからの輸入は、月々の振れが大きくなっているが、基調としてはおおむね横ばいとなっている。
国際収支をみると、輸入数量が増加基調にある一方、輸出数量が持ち直し基調にあること、海外旅行客の減少等に伴いサービス収支の赤字幅が縮小していることから、貿易・サービス収支の黒字は、横ばいとなっている。

2.企業活動と雇用情勢

生産は、横ばいとなっている。

鉱工業生産は、情報化関連生産財が堅調に推移しているものの、全体として横ばいとなっている。在庫は低水準となっており、企業は在庫積み増しに慎重になっている。
先行きについては、在庫面からの生産下押し圧力は少ないと考えられるほか、アメリカの景気回復の勢いが増していることから、輸出を通じて生産は持ち直しへ向かうものと見込まれる。なお、製造工業生産予測調査においては、9月、10月ともに増加が見込まれている。
また、第3次産業活動は、横ばいとなっている。
また、農業生産の動向をみると、低温、日照不足等の影響により水稲の作況指数(9月15日現在)は「92」と平年を下回っている。

企業収益は、改善が続いている。また、企業の業況判断は、改善がみられる。倒産件数は、緩やかに減少している。

企業収益の動向を「法人企業統計季報」でみると、人件費削減を中心とする企業のリストラ努力や売上高の増加等を背景に、平 成15年4-6月期においても前年比で増益が続いており、季節 調整済前期比でみても増益に転じた。「日銀短観」によると、15年度は引き続き増益が見込まれている。業種別にみると、製造業では電気機械や鉄鋼を中心に収益が改善し、15年度上期・下期とも前年比二桁の増益見込みである。一方、非製造業は15年度上期に減益に落ち込むものの、下期には前年比二桁の増益に転じる見込みである。規模別でみると、大企業・中小企業とも増益が見込まれている。
企業の業況判断について、「日銀短観」をみると、製造業では引き続き改善がみられるほか、非製造業でも改善がみられる。先行きについては、全産業で改善が見込まれている。
また、企業倒産は、セーフティーネット保証の適用件数が増えていること等を背景に、緩やかに減少している。

雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。

企業の人件費抑制姿勢などの労働力需要面の要因や、雇用のミスマッチなどの構造的要因から、完全失業率が高水準で推移するなど、厳しい雇用情勢が続いている。
完全失業率は、8月は、前月比0.2%ポイント低下し5.1%となった。失業者数は減少したが、就業者数も減少した。
新規求人数は、増加傾向となっており、有効求人倍率も緩やかに上昇している。また、雇用者数も増加傾向となっている。製造業の残業時間についても、増加傾向となっている。企業の雇用過剰感は低下傾向にある。
賃金の動きをみると、8月の定期給与は前年同月比では微減となったものの、前月比では微増となった。また、夏季賞与を6-8月の特別給与でみると、前年比ほぼ横ばいとなっており、賃金の基調としては、横ばいとなっている。

3.物価と金融情勢

国内企業物価、消費者物価は、ともに横ばいとなっている。

国内企業物価は、横ばいとなっている。最近の動きを類別にみると、電気機器などが引き続き下落しているが、下落していた石油・石炭製品が7月より上昇に転じているほか、非鉄金属、鉄鋼などが上昇している。また、輸入物価(円ベース)は、堅調な原油価格の影響等により、緩やかに上昇している。
企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
消費者物価は、平成12年秋以降弱含んでいたが、このところ一部に物価を下支えする動きもあり、前月比で横ばいとなっている。最近の動きを類別にみると、一般商品は、下落していた石油製品が横ばいとなり、全体として前年比下落幅はおおむね横ばいで推移している。他方、一般サービスは、おおむね横ばいで推移しているが、このところ企業の低価格戦略には一部変化の兆しもあり、8月には外食が前年比上昇に転じている。また、公共料金は、前年比で上昇している。
なお、国内企業物価・消費者物価は現在横ばいとなっているが、物価を下支えする要因が一時的なものにとどまる可能性があることから、物価の動向を総合してみると、緩やかなデフレ状況にある。

為替レートは、対米ドルで円高となった。株価は、おおむね1万円台(日経平均株価)で推移している。

対米ドル円レートは、8月以降の円高傾向の中で、9月下旬以降一段と円高が進み、109円台となった。株価は、4月下旬以降上昇し9月中旬に年初来最高値を記録した後、1万円台(日経平均株価)で推移している。
短期金利は落ち着いている。長期金利は9月上旬にかけて1.6%台まで上昇したが、その後低下し、1.3%台となった。企業の資金繰り状況におおむね変化はみられず、民間債と国債との流通利回りスプレッドはやや拡大している。
マネタリーベースは、日本銀行の潤沢な資金供給などを背景に高い伸び(日本郵政公社当座預金を除く伸び率は17.9%)が続いている。M2+CDは、昨年末以降伸び率が鈍化しているものの、このところやや持ち直している。

4.海外経済

アメリカ、中国を中心に、世界の景気回復に明るさが増している。

アメリカでは、景気は着実に回復している。

減税パッケージの効果により、消費は増加している。また、生産は緩やかに増加し、設備投資が持ち直すなど、企業部門の回復が続いている。生産性上昇率は高く、企業収益を支えている。これらにより、年後半に4%台の高成長を達成するとの見方が一般的となっている。
一方で、雇用は、このところ持ち直しの動きもみられるものの、失業率は高水準にあり、先行きは不透明となっている。これらを背景に消費者マインドは低下しており、消費の先行き懸念材料となっている。

アジアでは、中国、タイ等で景気は拡大が続いているが、韓国の景気は後退している。

中国では、消費の堅調な増加や生産、投資の高い伸びから景気は拡大が続いている。タイでは、消費、投資を中心に景気は拡大している。マレーシアでは、消費や輸出の弱い動きから景気の拡大はさらに緩やかになっている。台湾では、消費、輸出が増加するなど、景気に持ち直しの動きがみられる。韓国では、消費や設備投資が減少し景気は後退している。シンガポールでは、投資の大幅な減少が続くなど、景気は低迷している。

ユーロ圏の景気は弱い状態となっており、イギリスでは、景気に持ち直しの動きがみられる。

ユーロ圏では、昨年秋以降のユーロ高を原因とする輸出の減少などから、生産は減少傾向にあり、景気は弱い状態となっている。一方で、アメリカの成長率の高まりなどを背景にアメリカ向け輸出が今後増加するとの見通しなどから、企業マインドは改善している。ドイツでは、個人消費が減少しており、景気は後退している。フランスでは、消費が弱含んでおり、生産が減少傾向にあるなど、景気は弱い状態となっている。
イギリスでは、消費と住宅投資が増加しており、景気に持ち直しの動きがみられる。

国際金融情勢等

金融情勢をみると、アメリカの株価は、9月下旬にこれまでの急速な株価上昇に対する慎重な見方等から一時弱含んだものの、その後上昇している。アジア、ヨーロッパでも、主要株価は、9月下旬に弱含んだものの、その後上昇している。海外の長期金利は、9月は低下基調で推移したが、10月に入って上昇している。ドルは、9月中旬以降減価基調で推移し、下旬のG7声明で為替レートのさらなる柔軟性が望ましい旨が盛り込まれた。
原油価格は、9月下旬にかけて下落基調で推移したが、OPEC総会の減産決定を受け上昇した。

(注)

<個人消費>

消費総合指数(内閣府試算値)は、7月(速報値)季節調整済前月比1.6%減の後、8月(速報値)は同0.7%増となった。消費総合指数の作成方法については、ディスカッションペーパーを参照(https://www5.cao.go.jp/keizai3/discussion-paper/menu.html)。
家計調査の全世帯実質消費支出は、7月季節調整済前月比5.7%減の後、8月(速報値)は同4.3%増(前年同月比1.0%増)となった。
家計調査の全世帯実質消費支出(除く自動車、住居、仕送り金等)は、8月(速報値)は季節調整済前月比2.7%増(前年同月比0.2%減)となった。
経済産業省「商業販売統計」の小売業販売額は、7月季調済前月比2.6%減の後、8月(速報値)は同2.8%増(前年同月比2.0%減)となった。また、百貨店販売額は、8月(速報値)は、前年同月比1.8%減(店舗調整後)(季節調整済前月比3.5%増(店舗調整前))となった。
チェーンストア販売額(日本チェーンストア協会調べ)は、7月前年同月比5.0%減(店舗調整後)の後、8月は同3.9%減(店舗調整後)(季節調整済前月比5.1%増(店舗調整前))となった。
乗用車(含軽)新車新規登録・届出台数は、8月前年同月比5.8%減の後、9月(速報値)は同1.0%減となった。
家電販売額(日本電気大型店協会調べ)は、7月前年同月比11.3%減の後、8月は同3.3%増となった。
大手旅行業者13社取扱金額は、7月国内旅行が前年同月比2.6%増、海外旅行が同44.2%減の後、8月国内旅行が同1.4%増、海外旅行が同33.4%減となった。
内閣府「消費動向調査」の消費者態度指数(季節調整済)は、3月前期差2.0ポイント悪化の後、6月同1.2ポイント改善となった。内閣府「月次消費動向調査」の消費者態度指数(東京都、原数値)は、8月前月差1.8ポイント改善の後、9月同0.5ポイント悪化した。

<設備投資>

平成15年4-6月期の設備投資を財務省「法人企業統計季報」(全規模全産業、ソフトウェアを除く)でみると、季節調整済前期比5.3%増(前年同期比6.4%増)となっており、うち製造業では同4.5%増(同3.8%増)、非製造業では同5.6%増(同7.7%増)となっている。
平成15年4-6月期の大中堅企業の設備投資を内閣府「法人企業動向調査」(実績見込)でみると、季節調整済前期比で7.1%減(前年同期比5.2%増)となっており、うち製造業では同2.3%減(同4.4%減)、非製造業では同7.4%減(同9.8%増)となっている。
経済産業省「鉱工業指数」により資本財出荷(除く輸送機械)をみると、7月(確報値)は季節調整済前月比4.6%減(前年同月比0.3%減)の後、8月(速報値)は同1.9%増(同3.4%減)となっている。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)により設備投資の動向(ソフトウェアを除く)をみると、大企業の平成15年度設備投資計画は、製造業で前年度比11.1%増、非製造業で同0.4%増となっており、全産業では同4.4%増となっている。また、中小企業では製造業で同8.2%減、非製造業で同4.5%減となっており、全産業では同5.3%減となっている。
経済産業省「特定サービス産業動態統計」でみると、受注ソフトウェア売上高は、7月(確報値)は前年同月比6.8%増の後、8月(速報値)は同6.9%減となっている。
機械受注(船舶・電力除く民需)は、7月は季節調整済前月比3.1%減(前年同月比6.1%増)の後、8月は同4.3%減(同12.2%増)となっている。なお、平成15年7-9月期(見通し、6月調査時点)の機械受注(船舶・電力除く民需)は、季節調整済前期比2.2%増(前年同期比11.9%増)と見込まれている。
国土交通省「建築着工統計」により非居住用建築物の着工床面積をみると、7月は季節調整済前月比5.2%減(前年同月比6.5%増)の後、8月は同2.4%減(同8.0%増)となっている。

<住宅建設>

国土交通省「建築着工統計」によると、新設住宅着工総戸数(季節調整済前期比)は、平成14年7-9月期は3.3%減、10-12月期は1.0%減、平成15年1-3月期は1.8%増、4-6月期は4.8%増、6月は8.7%増、7月は8.6%減、8月は8.5%減となっており、うち共同建分譲住宅の着工(同)は、平成14年7-9月期は10.2%減、10-12月期は0.0%増、平成15年1-3月期は2.3%増、4-6月期は0.4%増、6月は7.9%増、7月は1.0%増、8月は13.6%減となった。また、新設住宅着工床面積(同)は、平成14年7-9月期は3.2%減、10-12月期は1.1%減、平成15年1-3月期は1.1%減、4-6月期は5.9%増、6月は12.6%増、7月は10.1%減、8月は7.0%減となった。
消費者の住宅取得マインドを示す指標のひとつである(社)日本リサーチ総合研究所「不動産購買態度指数」をみると、平成12年は、2月128、4月128、6月124、8月118、10月122、12月117、平成13年は、2月118、4月119、6月117、8月110、10月109、12月104、平成14年は、2月104、4月114、6月117、8月114、10月115、12月111、平成15年は、2月110、4月108、6月120、8月は113となった。

<公共投資>

平成15年度の国の一般会計予算(当初予算)をみると、公共投資関係費は、前年度比3.7%減と規模を縮減し、都市の再生や地方の活性化など、「平成15年度予算編成の基本方針」の重点4分野を中心に、雇用・民間需要の拡大に資する分野へ重点化している。
地方の予算をみると、平成15年度地方財政計画では、投資的経費のうち地方単独事業費について、前年度比5.5%減とし、計画的な抑制と重点的な配分を行うとしている。また、時事通信社調査によれば、普通建設事業費は、都道府県で前年度比6.1%減、政令指定都市で同5.8%減、中核市で同8.9%減、その他の県庁所在市で同12.8%減となっており、これらを単純合計すると、前年度比6.4%減となっている(骨格予算、暫定予算を編成した地方公共団体を除く)。
公共機関からの1件500万円以上の建設工事受注額(建設工事受注動態統計調査)は、前年同月比で7月20.4%減の後、8月は10.2%減となった。同じく大手50社の建設工事受注額は、前年同月比で7月26.0%減の後、8月は12.4%減となった。公共工事請負金額(公共工事前払金保証統計)は、前年同月比で7月5.1%減の後、8月は10.6%減となった。公共工事出来高(建設総合統計)は、前年同月比で6月11.6%減の後、7月は14.3%減となり、内閣府にて季節調整を実施した結果によると、前月比で6月7.9%増の後、7月は2.5%減となった。

<輸出・輸入・国際収支>

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で7月は4.4%増の後、8月3.5%減(前年同月比0.2%増)となった。また、前期比で1-3月期は0.1%増の後、4-6月期は0.9%増(前年同期比2.8%増)となっている。
通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で7月は5.2%増の後、8月10.2%減(前年同月比0.3%減)となった。また、前期比で1-3月期は0.2%減の後、4-6月期は4.5%増(前年同期比8.4%増)となっている。
貿易・サービス収支(季節調整値)の黒字は、平成15年7月は7,142億円の後、8月は7,287億円、通関収支差(季節調整値)は、平成15年7月は7,500億円の後、8月は9,051億円となった。

<生産・出荷・在庫>

8月の鉱工業生産指数(季節調整値、速報)は、一般機械、その他等が減少したことから、前月比0.5%減となった。
製造工業生産予測調査によると、前月比で、9月は電子部品・デバイスや輸送機械等の増加により2.7%増の後、10月も電子部品・デバイスや情報通信機械等の増加により1.4%増になると見込まれている。
8月の鉱工業生産者製品在庫指数(季節調整値、速報)は、前月比1.0%減となった。また、8月の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値、速報)は99.9となっている。
第3次産業活動指数(季節調整値)は、7月(速報)前月比2.5%減となった。また、5-7月の平均(3カ月移動平均値)による対3ヶ月前比(同2-4月平均対比)をみると0.4%増となっている。
平成15年産水稲の全国作況指数(9月15日現在)は、92となっている。

<企業>

財務省「法人企業統計季報」によると、4-6月期の経常利益は全産業で前年同期比13.6%増、製造業は36.3%増、非製造業は1.6%増となった。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、平成15年度の経常利益は、全規模・全産業で、上期は前年同期比6.1%の増益、下期は同13.7%の増益、通期では前年比10.4%の増益を見込んでいる。
一方、業況判断について日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査、業況水準について「良い」-「悪い」)をみると、大企業は3%ポイント改善して△6%ポイント、中小企業は4%ポイント改善して△28%ポイント、全規模合計では5%ポイント改善して△21%ポイントとなった。

<倒産>

企業の倒産については、東京商工リサーチ「倒産月報」によると、8月の企業倒産件数(負債額1,000万円以上)は1,266件(前年同月比19.7%減)、負債総額は1兆1,165億円(同1.9%増)となっており、帝国データバンク「全国企業倒産集計」によると、企業倒産件数は1,321件(同15.4%減)、負債総額は1兆1,733億円(同10.8%増)となっている。また、大型倒産(負債額10億円以上)は、106件(同19.1%増)となっており、主な大型倒産としては、東京湾観光(ゴルフ場経営、負債1,300億円)など(東京商工リサーチ調べ)。

<雇用情勢>

総務省「労働力調査」によると、8月の完全失業率(季節調整値)は、男女計で前月比0.2%ポイント低下し5.1%となった。完全失業者数(季節調整値)は、男女計で前月差13万人減の339万人となった。
労働力調査により内閣府にて季節調整を実施した結果によると、求職理由別完全失業者数(季節調整値)は、非自発的な離職による者は、前月差17万人減の140万人、自発的な離職による者は、同1万人減の106万人となった。
厚生労働省「職業安定業務統計」の新規求人数は、7月季節調整済前月比0.3%減の後、8月は同1.3%減(前年同月比9.0%増)となった。有効求人数は、7月同1.7%増の後、8月は同1.3%減(同10.5%増)となった。新規求職件数は、7月同8.6%減の後、8月は同4.4%減(同5.2%減)となった。有効求職者数は、7月同1.0%減の後、8月は同2.2%減(同6.5%減)となった。新規求人倍率(季節調整値)は7月1.04倍の後、8月1.08倍となった。有効求人倍率(季節調整値)は、7月0.62倍の後、8月0.63倍となった。
労働力調査によると、雇用者数(季節調整値)は、男女計で7月前月比0.2%増の後、8月は同0.6%減の5,338万人となった。
毎月勤労統計調査によると、所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では7月季節調整済前月比1.1%増(前年同月比6.5%増)の後、8月は同3.2%増(同9.1%増)(速報値)となった。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」によると、企業の雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では、6月調査の15%ポイントから、9月調査では12%ポイントとなった。製造業では、6月調査の18%ポイントから、9月調査では14%ポイントとなった。非製造業では、6月調査の12%ポイントから、9月調査では9%ポイントとなった。
毎月勤労統計調査によると、きまって支給する給与は、事業所規模5人以上では7月季節調整済前月比同水準(前年同月比同水準)の後、8月は同0.1%増(同0.1%減)(速報値)となった。特別に支払われた給与は、事業所規模5人以上では8月前年同月比26.2%減(速報値)となり、6-8月平均を内閣府にて試算すると同0.7%減(速報値)となっている。

<物価>

日本銀行「企業物価指数」の輸出物価(円ベース)は、平成15年8月(速報値)は前月比0.2%の下落(前年同月比0.6%の上昇)、3ヶ月前比は0.1%の下落となった。輸入物価(円ベース)は、8月(速報値)は前月比0.6%の上昇(前年同月比3.4%の上昇)、3ヶ月前比は1.9%の上昇となった。また、国内企業物価は、8月(速報値)は前月比保合い(前年同月比0.6%下落)、3ヶ月前比は0.2%の上昇となった。
日本銀行「企業向けサービス価格指数」の8月の企業向けサービス価格は前年同月比0.6%の下落(前月比0.4%の下落)となった。
総務省「消費者物価指数(全国)」の生鮮食品を除く総合は、8月は前年同月比0.1%の下落(季節調整済前月比保合い)、6-8月平均の前年同期比は0.3%の下落となった。一般サービスは、8月は前年同月比0.2%の上昇、6-8月平均の前年同期比は0.1%の上昇となった。一般商品は、8月は前年同月比1.2%の下落、6-8月平均の前年同期比は1.1%の下落となった。公共料金は、8月は前年同月比1.3%の上昇、6-8月平均の前年同期比は1.2%の上昇となった。また、「消費者物価指数(東京都区部、中旬速報値)」の生鮮食品を除く総合は、9月は前年同月比0.3%の下落(季節調整済前月比0.2%の下落)、7-9月平均の前年同期比は0.3%の下落となった。

<金融>

無担保コールオーバーナイトレートは、9月月中は、0.001~0.002%で推移し、9月末には0.013%となった。3ヶ月物ユーロ円TIBORは、9月は、0.08~0.09%台で推移した。10年物国債流通利回りは、9月は、1.2%台~1.6%台で推移した。
東証株価指数(TOPIX)は、9月末は1,018ポイントとなった。日経平均株価は、9月末は10,219円となった。
対米ドル円レート(インターバンク直物中心レート)は、9月末は111.20円となった。対ユーロ円レート(インターバンク17時時点)は、9月末は128.87円となった。
マネタリーベース(月中平均残高)は、9月(速報)は前年同月比20.9%増となった。9月の日銀当座預金平均残高は29.7兆円となった。M2+CD(月中平均残高)は、前年同月比1.8%増となった(9月速報)。広義流動性は、9月(速報)は前年同月比1.1%増(簡易保険福祉事業団保有金融資産の日本郵政公社への承継による影響を除くと3.3%増)となった。金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、9月(速報)は前年同月比5.0%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後1.9%減)となった。9月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債型新株予約権付社債の発行は60億円だった。また、国内公募事業債の起債実績は、4,454億円(銀行起債の普通社債は727億円)となった。国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、8月は前月比で短期は0.366%ポイント低下し、長期は0.253%ポイント低下したことから、総合では0.323%ポイント低下し1.381%となった。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、資金繰り判断は横ばい、金融機関の貸出態度は若干改善している。

<景気ウォッチャー調査>

内閣府「景気ウォッチャー調査」の9月の現状判断DIは、前月を2.2ポイント上回り、48.6となった。先行き判断DIは、前月を1.0ポイント上回り、49.9となった。