月例経済報告(平成14年8月)

―景気は、依然厳しい状況にあるが、一部に持ち直しの動き。―

先行きについては、景気は持ち直しに向かうことが期待されるが、世界的な株安やドル安が進展したことにより、世界経済の先行き不透明感が一層高まっており、我が国の最終需要が下押しされる懸念

平成14年8月8日

内閣府

総論

(我が国経済の基調判断)

景気は、依然厳しい状況にあるが、一部に持ち直しの動きがみられる。

  • 失業率が高水準で推移するなど、雇用情勢は依然として厳しい。
  • 個人消費は、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。
  • 輸出は大幅に増加しており、生産は持ち直しの動きがみられる。業況判断は全体として改善がみられ、設備投資は減少しているものの、先行きについて下げ止まる兆しもみられる。

先行きについては、輸出の大幅な増加や生産の持ち直しの影響が、今後経済全体に波及していくなかで、景気は持ち直しに向かうことが期待される。一方、世界的な株安やドル安が進展したことにより、世界経済の先行き不透明感が一層高まっており、我が国の最終需要が下押しされる懸念がある。

(政策の基本的態度)

政府は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」を早期に具体化する。15年度予算編成については、歳出改革を加速すると同時に、経済活性化を目指した本格的かつ一体的な税制改革について具体化を進める。

また、デフレ克服に向け、政府・日本銀行は引き続き一体となって強力かつ総合的な取組を行う。

各論

1.消費・投資などの需要動向

個人消費は、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。

個人消費は、需要側と販売側の動向を総合してみると、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。所得面で弱い動きが続いていることなどから全体的な基調の改善には至らないものの、消費者マインドに持ち直しの動きがみられることなどから一部の業種や支出項目においては増加の動きがみられる。
需要側の動向をみると、昨秋以降底固さがみられる。消費総合指数は3ヶ月前と比べ増加している。支出項目ごとの動向について家計調査をみると、実質消費支出は、一時的な要因により大きく増加した項目がみられるほか、食料が引き続き前年を上回るなど主に基礎的な支出項目に底固さがみられる。
販売側の動向をみると、全体的に弱い動きとなっている。小売業販売額は弱い動きが続いている。このところ減少幅を縮小してきていたチェ-ンストア販売額は、平成14年6月はほぼ前年並みとなった。百貨店販売額は、昨夏以降一進一退の動きを続けており、均してみれば横ばいとなっている。新車販売台数は、軽乗用車と小型乗用車が引き続き好調に推移しているものの、普通乗用車が大幅に前年を下回ったことから、前年をやや下回った。家電販売金額は、テレビ等が大幅に増加したものの、パソコンやエアコンが前年を大きく下回っていることから、全体では前年を下回った。旅行は、国内旅行は前年を大きく下回り、このところ縮小していた海外旅行の前年比減少幅は大きく拡大した。
消費者マインドは、依然として水準は低いものの、持ち直しの動きがみられる。

設備投資は、減少しているものの、先行きについて下げ止まる兆しもみられる。

設備投資は、生産及び企業収益の減少等を背景に平成13年に入って以降減少が続いてきた。需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、平成13年1-3月期以降減少が続いている。また、機械設備投資の供給側統計である資本財出荷は、平成13年に入って以降減少が続いていたが、このところ下げ止まりつつある。なお、ソフトウェア投資は、比較的堅調に推移している。
設備投資の今後の動向については、機械設備投資の先行指標である機械受注が平成13年1-3月期以降減少基調で推移してきたが、このところ下げ止まりつつあることからみて、次第に下げ止まりに向かうものとみられる。ただし、日銀短観の平成14年度設備投資計画において減少が見込まれていることなどを考慮すれば、下げ止まった後も低調に推移することが見込まれる。

住宅建設は、弱含みとなっている。

住宅建設は、平成13年に入り、貸家は増加したものの、これまで堅調であったマンションの着工が落ち着いてきたことに加え、公庫持家の着工が大きく水準を下げて推移したこと等から、平成13年度は、前年度比3.3%減の117.3万戸と平成10年度以来3年ぶりに120万戸を下回る低い水準となった。
6月は、前月大幅に増加したこともあり、持家、貸家、分譲住宅の全てが減少し、年率110.3万戸となった。先行きについては、雇用・所得環境が厳しいこと、不動産価格の長期的下落傾向により買い換えが困難となっていることなどから、消費者の住宅取得マインドが低下しており、こうしたことが引き続き住宅着工を減少させる要因になるものと見込まれる。

公共投資は、このところ平成13年度第2次補正予算の効果がみられるものの、総じて低調に推移している。

公共投資は、総じて低調に推移している。平成14年度当初における公共事業関連予算をみると、国、地方とも歳出の徹底した見直しと重点的な配分を行っていることから、国の施設費を含む公共投資関係費は、前年度比10.7%減、地方の投資的経費のうち単独事業費は、地方財政計画では、前年度比10.0%減となっている。
このような状況の中で、5月の公共工事請負金額、大手50社受注額は前年を上回るなど、今年度に繰り越された平成13年度第2次補正予算の下支え効果がみられた。4-6月期でみると、公共工事請負金額が前年に近い水準となったが、大手50社受注額とともに引き続き前年を下回った。

輸出は、アジア向けを中心に大幅に増加している。輸入は、緩やかに増加している。貿易・サービス収支の黒字は、増加している。

輸出は、世界的な景気回復を背景に、半導体等電子部品などの電気機器や一般機械が大幅に増加、輸送用機器も堅調に推移しており、全体でも大幅に増加している。地域別にみると、アジア向け輸出は、電気機器、一般機械、輸送用機器を中心に大幅に増加している。アメリカ向け輸出は、電気機器と一般機械を中心に緩やかに増加している。EU向け輸出は、電気機器、輸送用機器を中心に増加している。今後については、世界的な景気回復が、引き続き我が国輸出にとっての増加要因になるとみられるが、世界的な株安やドル安が進展したことによって、世界経済の先行きについて不透明感が一層高まっていることに留意する必要がある。
輸入は、電気機械などにおける生産の持ち直しの動きを背景に、IT関連など機械機器の輸入が増加しており、全体として緩やかに増加している。地域別にみると、アジアからの輸入は、機械機器の輸入が堅調に推移しており、増加している。EUからの輸入は横ばいとなっている。アメリカからの輸入は、航空機など機械機器の輸入が増加していることを背景に、増加している。
国際収支をみると、貿易・サ-ビス収支の黒字は、増加している。輸入数量が緩やかに増加する一方で、輸出数量が大幅に増加していることが、黒字幅の拡大に寄与している。

2.企業活動と雇用情勢

生産は、持ち直しの動きがみられる。

鉱工業生産は、昨年初めから大幅に減少していたが、2四半期連続で増加した。輸出が大幅に増加していることや在庫調整が終了していること等を背景に、生産は、持ち直しの動きがみられる。
ただし、世界経済の先行き不透明感の高まり等、懸念すべき点もあることには留意する必要がある。なお、製造工業生産予測調査によると7月は増加、8月も増加が見込まれている。
一方、第3次産業活動の動向をみると、おおむね横ばいで推移している。

企業収益は、下げ止まりの兆しがみられる。また、企業の業況判断は、中小企業を中心に依然厳しさがみられるものの、全体として改善がみられる。倒産件数は、高い水準となっている。

企業収益は、「法人企業統計季報」によると、平成13年7-9月期以降、電機機械などの製造業を中心に大幅な減益となっていた。平成14年1-3月期は製造業で減益が続いているものの、非製造業で増益に転じ、全体として減益幅が縮小した。また、日銀短観によると、平成14年度については、上期はおおむね横ばい、下期は大幅な増益を見込んでいる。
企業の業況判断について、日銀短観をみると、中小企業を中心に低い水準にあり、依然厳しさがみられるものの、製造業、非製造業とも全ての規模で改善している。先行きについても、中小企業非製造業で若干悪化が見込まれている以外は、改善を見込んでいる。
また、倒産件数は、東京商工リサ-チ調べで6月は1,439件、4-6月期では4,780件となるなど、高い水準となっている。

雇用情勢は、依然として厳しい。残業時間が増加しているものの、完全失業率が高水準で推移し、賃金も弱い動きが続いている。

6月の完全失業率は、前月比同水準の5.4%となった。完全失業者について求職理由別にみると、最も多い非自発的な離職による者の増加幅は拡大している。雇用者数については下げ止まっており、6月は前月比で増加した。
新規求人数は、前月比で減少したものの、基調としては持ち直しつつある。新規求職件数が同時に大幅に減少したため、新規求人倍率は前月比上昇、有効求人倍率は同横ばいとなっている。製造業の残業時間については、生産の動きを反映し6月は横ばいとなったが、引き続き増加傾向にある。
賃金の動きをみると、定期給与は前月比で若干増加したものの、前年同月比では減少が続いている。また、ボ-ナスを含む特別給与が前年同月比で減少となり、弱い動きが続いている。

3.物価と金融情勢

国内卸売物価は、横ばいとなっている。消費者物価は、弱含んでいる。

輸入物価は、このところ、契約通貨ベ-ス、円ベ-スともに上昇している。国内卸売物価は、横ばいとなっている。最近の動きをみると、電気機器、電力・都市ガス・水道は下落しているものの、原油高を背景として、石油・石炭製品は上昇している。また、企業向けサ-ビス価格は、前年同月比で下落が続いている。
消費者物価は、平成12年秋以降弱含んでいる。最近の動きをみると、一般サ-ビスはほぼ横ばいとなっているものの、耐久消費財の下落などにより一般商品は下落していることから、全体としては下落している。
こうした動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレにある。

金融情勢をみると、株式相場は、下落した。対米ドル円相場は、上昇した後、下落した。

短期金利についてみると、オ-バ-ナイトレ-トは、7月は、日本銀行による金融緩和措置を反映して、0.001~0.002%で推移した。2、3ヶ月物は、7月は、おおむね横ばいで推移した。長期金利は、株価や為替の動向を懸念する市場の見方などから、6月下旬から7月中旬にかけて低下した。その後、金融機関による利益確定売りを見込む市場の見方などを背景に、7月下旬に、上昇した。
株式相場は、米国株式相場の下落等を背景に、下落した。
対米ドル円相場(インタ-バンク直物中心相場)は、3月下旬に133円台まで下落した後、日米の景気の先行きに対する見方などを背景に7月中旬に115円台まで上昇した後、月末は、下落した。対ユ-ロ円相場(インタ-バンク17時時点)は、6月中下旬にかけて、117円台前半から119円台前半で推移した後、7月上旬にやや上昇し、その後、115円台から117円台で推移した。
マネタリ-ベ-ス(月中平均残高)は、日本銀行の潤沢な資金供給など(7月日銀当座預金平均残高14.9兆円)を背景に、高い伸び率となっている(7月:前年同月比25.1%)。M2+CD(月中平均残高)は、このところ、3%台半ばで推移している(6月速報:前年同月比3.4%増)。民間金融機関の貸出(総貸出平残前年比)は、96年秋以来マイナスが続いており、企業の資金需要の低迷等を背景に、依然低調に推移している。貸出金利は、金融緩和等を背景に、昨年初来低下傾向で推移して来たが、このところ横ばい圏で推移している。企業の資金繰り状況を見るとやや改善の動きが見られ、民間債と国債との流通利回りスプレッドがこのところやや縮小している。

4.海外経済

世界の景気は、緩やかに回復しているものの、先行き不透明感が一層高まっている。

世界の景気は、緩やかに回復しているものの、先行き不透明感が一層高まっている。
アメリカでは、景気の回復は緩やかになっている。個人消費の伸びは鈍化している。住宅建設は高い水準にある。設備投資は機械設備等を中心に下げ止まっている。生産は増加している。雇用は持ち直している。物価は安定している。
アジアをみると、景気は回復している。中国では、景気の拡大テンポは高まっている。韓国、タイでは、景気は拡大している。台湾、シンガポール、マレイシアでは、景気は回復している。対米輸出については、韓国、タイ、台湾、シンガポール、マレイシアでこのところ鈍化がみられる。
ヨーロッパをみると、(1)ユーロ圏では、景気は持ち直し傾向にある。ドイツでは、景気は持ち直しの動きが弱まっている。フランスでは、景気は持ち直し傾向にある。(2)イギリスでは、景気に回復の動きがみられる。
金融情勢をみると、アメリカの株価は、企業会計不信の高まりや大手通信会社の経営破綻などから、7月は下落基調で推移したが、下旬に企業改革関連法案が議会両院で合意されたことなどから大幅に上昇した。また、その他の主要な株式市場でも株価は同様に推移し、7月下旬には上昇した。ドルは7月中旬まで減価したが、その後米株価の上昇に伴い増価した。アメリカの長期金利は、証券市場における米国債への資金シフト等から低下基調で推移し、7月末には上昇した。カナダでは7月中旬に今年三度目となる利上げを実施した。
国際商品市況をみると、原油価格は、7月はおおむね横ばいで推移した。
世界経済の先行きについては、このところの世界的な株安・ドル安や、それに伴うマインドの悪化によって、不透明感が一層高まっている。

(注)

<個人消費>

消費総合指数(需要側、内閣府試算値、後方3ヶ月移動平均)は、平成14年5月(速報値)季節調整済3ヶ月前比0.4%増の後、6月(速報値)は同0.4%増となった。
消費総合指数の作成方法:総務省「家計調査」から、GDPの個人消費には含まれない「仕送り金」、「修繕費」や、振れが大きい高額消費である「自動車等購入」などを除外した後、世帯数を乗ずるなどしてマクロの消費ベ-スにする。これに、自動車、家賃、医療費について別途供給側の統計を用いて計算したものを加える。詳細は、ディスカッションペ-パ- (https://www5.cao.go.jp/keizai3/discussion-paper/menu.html)を参照。
家計調査の全世帯実質消費支出は、5月季節調整済前月比3.3%減の後、6月(速報値)は同3.0%増(前年同月比2.8%増)となった。
家計調査の全世帯実質消費支出(除く自動車、住居、仕送り金等)は、6月(速報値)は季節調整済前月比1.3%増(前年同月比1.4%増)となった。
経済産業省「商業販売統計」の小売業販売額は、6月(速報値)は季節調整済前月比0.4%減(前年同月比3.7%減)となった。また、百貨店販売額は、6月(速報値)は、前年同月比0.7%減(店舗調整後)(季節調整済前月比1.4%増(店舗調整前))となった。
チェ-ンストア販売額(日本チェ-ンストア協会調べ)は、6月は、前年同月比0.1%増(店舗調整後)(季節調整済前月比0.9%増(店舗調整前))となった。
乗用車(含軽)新車新規登録・届出台数は、6月前年同月比0.5%減の後、7月(速報値)は同0.5%減となった。
家電販売額(日本電気大型店協会調べ)は、5月前年同月比1.6%減の後、6月は同6.9%減となった。
大手旅行業者13社取扱金額の6月は、前年同月比で国内旅行が6.9%減、海外旅行が同16.1%減となった。
内閣府「消費動向調査」の消費者態度指数(季節調整済)は、3月前期差1.5ポイント改善の後、6月同0.9ポイント改善となった。

<設備投資>

平成14年1-3月期の設備投資を財務省「法人企業統計季報」(全規模全産業、ソフトウェアを除く)でみると、季節調整済前期比で5.2%減(前年同期比16.8%減)となっており、うち製造業では同9.3%減(同27.8%減)、非製造業では同3.1%減(同11.0%減)となっている。
経済産業省「鉱工業指数」により資本財出荷(除く輸送機械)をみると、季節調整済前月比で5月は12.3%増(前年同期比10.0%減)の後、6月は同6.9%減(同14.7%減)となっている。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(6月調査)により設備投資の動向(ソフトウェアを除く)をみると、大企業の平成14年度設備投資計画は、製造業で前年度比8.9%減、非製造業で同5.2%減となっており、全産業では同6.7%減となっている。また、中小企業では製造業で同17.4%減、非製造業で同6.7%減となっており、全産業では同9.3%減となっている。
経済産業省「特定サ-ビス産業動態統計」でみると、受注ソフトウェア売上高は、4月は前年同月比0.3%増の後、5月は16.0%増となっている。
機械受注(船舶・電力除く民需)は、季節調整済前月比で4月は8.4%増(前年同月比17.9%減)の後、5月は同0.2%増(同16.6%減)となり、下げ止まりつつある。なお、平成14年4-6月期(見通し、3月調査時点)の機械受注(船舶・電力除く民需)は、季節調整済前期比で0.3%減(前年同期比19.9%減)と見込まれている。
民間からの建設工事受注(50社、非住宅)は、季節調整済前月比で5月は0.5%増(前年同月比16.5%減)の後、6月は同3.7%減(同19.0%減)となっている。

<住宅建設>

国土交通省「建築着工統計」によると、新設住宅着工総戸数(季節調整済前期比)は、平成13年4-6月期は0.9%減、7-9月期は4.0%増、10-12月は3.4%減、平成14年1-3月期は0.0%減、4月は2.5%増、5月は11.3%増、6月は13.1%減となった。内訳をみると、公庫持家の着工(同)は、平成13年4-6月期は20.9%減、7-9月期は4.6%減、10-12月は16.4%減、平成14年1-3月期は25.4%減、4月は2.3%増、5月は8.5%減、6月は16.5%減となり、共同建分譲住宅の着工(同)は、平成13年4-6月期は4.5%増、7-9月期は12.0%増、10-12月は12.3%減、平成14年1-3月期は12.1%増、4月は6.4%減、5月は22.5%増、6月は5.2%減となった。また、新設住宅着工床面積(同)は、平成13年4-6月期は3.3%減、7-9月期は5.8%増、10-12月は3.0%減、平成14年1-3月期は3.6%減、4月は2.8%増、5月は7.2%増、6月は10.8%減となった。
消費者の住宅取得マインドを示す指標のひとつである(社)日本リサ-チ総合研究所「不動産購買態度指数」をみると、平成12年は、2月128、4月128、6月124、8月118、10月122、12月117、平成13年は、2月118、4月119、6月117、8月110、10月109、12月104、平成14年は、2月104、4月114、6月117となった。

<公共投資>

平成14年度の国の一般会計予算(当初)をみると、施設費を含む公共投資関係費は、前年度比10.7%減と規模を縮減しつつ、「予算編成の基本方針」の重点7分野に重点化している。
地方の予算をみると、平成14年度地方財政計画では、投資的経費のうち地方単独事業費について、前年度比10.0%減としつつ、国の歳出予算と歩を一にして歳出の徹底した見直しと重点的な配分を行うこととしている。総務省がまとめた都道府県、政令指定都市の当初予算額(普通会計)では、普通建設事業費は、都道府県で前年度比9.8%減、政令指定都市で同13.4%減、両者を合わせると同10.3%減となっている。また、時事通信社調査によれば、普通建設事業費は、都道府県で前年度比9.8%減、政令指定都市で同12.9%減、中核市で同7.8%減、その他の県庁所在市で同12.6%減となっており、これらを単純合計すると、前年度比10.1%減となっている(骨格予算を編成した地方公共団体などを除く)。
公共機関からの1件500万円以上の建設工事受注額(建設工事受注動態統計調査)は、前年同月比で4月6.7%減の後、5月は2.0%増となった。同じく大手50社の建設工事受注額は、前年同月比で5月15.6%増の後、6月は39.2%減となった。また、公共工事請負金額(公共工事前払金保証統計)は、前年同月比で5月3.4%増の後、6月は4.8%減となった。

<輸出・輸入・国際収支>

通関輸出(数量ベ-ス、季節調整値)は、前月比で5月8.3%増の後、6月は6.1%減(前年同月比10.4%増)となった。また、前期比で1-3月期6.4%増の後、4-6月期は7.3%増(前年同期比10.0%増)となっている。
通関輸入(数量ベ-ス、季節調整値)は、前月比で5月1.5%増の後、6月7.5%減(前年同月比2.2%減)となった。また、前期比で1-3月期1.1%減の後、4-6月期は2.1%増(前年同期比0.8%減)となっている。
貿易・サ-ビス収支(季節調整値)の黒字は、4月6,257億円の後、5月は6,724億円となり、通関収支差(季節調整値)は、5月9,071億円の後、6月は10,394億円となった。

<生産・出荷・在庫>

6月の鉱工業生産指数(季節調整値、速報)は、電気機械や輸送機械等が減少したことから、前月比0.7%減となった。
製造工業生産予測調査によると、前月比で7月は一般機械やその他工業等により1.6%増の後、8月は輸送機械や一般機械等により1.8%増になると見込まれている。
6月の鉱工業生産者製品在庫指数(季節調整値、速報)は、前月比1.7%減となった。また、6月の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値、速報)は100.9となっている。
5月の第3次産業活動指数(季節調整値、速報)は、サ-ビス業、卸売・小売業、飲食店等が増加した結果、前月比1.0%増となった。

<企業>

財務省「法人企業統計季報」によると、1-3月期の経常利益は全産業で前年同期比14.6%減、製造業は42.2%減、非製造業は6.9%増となった。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(6月調査)によると、平成14年度の経常利益は、全規模・全産業で、上期は前年同期比0.2%、下期は同30.2%、通期では前年比16.1%の増益を見込んでいる。
一方、業況判断について日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(6月調査、業況水準について「良い」-「悪い」)をみると、大企業は14%ポイント改善して△17%ポイント、中小企業は7%ポイント改善して△39%ポイント、全規模合計では9%ポイント改善して△32%ポイントとなった。

<倒産>

企業の倒産については、東京商工リサ-チ「倒産月報」によると、6月の企業倒産件数(負債額1,000万円以上)は1,439件(前年同月比4.7%減)、負債総額は6,736億円(同4.8%増)となっており、帝国デ-タバンク「全国企業倒産集計」によると、企業倒産件数は1,415件(同9.5%減)、負債総額は7,031億円(同1.8%増)となっている。また、大型倒産(負債額10億円以上)は、上場企業3件を含む76件(同19.1%減)となっており、主な大型倒産としては、東証2部上場の金属加工機械メ-カ-の住倉工業(負債18億円)、大証2部上場の中堅ゼネコン藤木工務店(同631億円)、店頭上場の亜鉛製品、窯業原料製造のハクスイテック(負債324億円)など(東京商工リサ-チ調べ)。

<雇用情勢>

総務省「労働力調査」によると、6月の完全失業率(季節調整値)は、男女計で前月比同水準の5.4%となった。完全失業者数(季節調整値)は、男女計で前月差3万人増の361万人となった。求職理由別完全失業者数(原数値)は、非自発的な離職による者は、5月152万人(前年同月差50万人増)の後、6月は153万人(同61万人増)となった。自発的離職による者は、5月121万人(同1万人減)の後、6月は117万人(同14万人減)となった。
労働力調査によると、6月の雇用者数(季節調整値)は、男女計で前月比0.6%増の5,333万人となった。
厚生労働省「職業安定業務統計」の新規求人数は、5月季節調整済前月比1.4%増の後、6月は同4.9%減(前年同月比3.0%減)となった。有効求人数は、5月同1.2%増の後、6月は同0.1%減(同5.3%減)となった。新規求職件数は、5月同3.9%減の後、6月は同6.5%減(同6.1%増)となった。有効求職者数は、5月同0.5%増の後、6月は同1.0%減(同8.3%増)となった。新規求人倍率(季節調整値)は5月0.95倍の後、6月0.96倍となった。有効求人倍率(季節調整値)は、5月0.53倍の後、6月0.53倍となった。
毎月勤労統計調査によると、所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では5月季節調整済前月比3.1%増(前年同月比1.2%増)の後、6月は同同水準(同3.5%増)(速報値)となった。
毎月勤労統計調査によると、きまって支給する給与は、事業所規模5人以上では5月季節調整済前月比0.5%減(前年同月比1.8%減)の後、6月は同0.1%増(同1.7%減)(速報値)となった。特別に支払われた給与は、事業所規模5人以上では6月前年同月比6.6%減(速報値)となった。

<物価>

日本銀行「卸売物価指数」の輸出物価(円ベ-ス)は、6月は前月比1.7%の下落(前年同月比0.4%下落)、4-6月平均の3ヶ月前比(1-3月平均対比、以下同じ)は2.0%の下落となった。輸入物価(円ベ-ス)は、6月は前月比1.4%の下落(前年同月比2.3%下落)、4-6月平均の3ヶ月前比は0.5%の上昇となった。また、国内卸売物価は、6月は、前月比保合い(前年同月比1.0%下落)、3ヶ月前比は保合いとなった。
日本銀行「企業向けサ-ビス価格指数」の6月の企業向けサ-ビス価格は前年同月比0.9%の下落(前月比0.2%上昇)となった。
総務省「消費者物価指数(全国)」の生鮮食品を除く総合は、6月は前年同月比0.8%の下落(季節調整済前月比保合い)、4-6月平均の前年同期比は0.9%の下落となった。一般サ-ビスは、6月は前年同月比保合い、4-6月平均の前年同期比は0.1%の下落となった。一般商品は、6月は前年同月比1.8%の下落、4-6月平均の前年同期比は1.9%の下落となった。また、「消費者物価指数(東京都区部、中旬速報値)」の生鮮食品を除く総合は、7月は前年同月比1.0%の下落(季節調整済前月比0.1%上昇)、5-7月平均の前年同期比は1.0%の下落となった。

<金融>

無担保コ-ルオ-バ-ナイトレ-トは、7月は、0.001~0.002%で推移した。3ヶ月物ユ-ロ円TIBORは、7月は、0.08~0.09%台で推移した。10年物国債流通利回りは、7月は、1.2%台後半から1.3%台前半で推移した。
東証株価指数(TOPIX)は、7月末には965ポイントとなった。日経平均株価は、7月末には9,877円となった。
広義流動性は、6月(速報)は前年同月比1.7%増となった。金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、6月(速報)は前年同月比4.5%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後2.5%減)となった。6月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債の発行は無かった。また、国内公募事業債の起債実績は、4,850億円(銀行起債は900億円)となった。国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、6月は前月比で短期は0.078%ポイント低下し、長期は0.173%ポイント上昇したことから、総合では0.008%ポイント上昇し1.606%となった。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(6月調査)によると、資金繰り判断、金融機関の貸出態度ともに、やや改善の動きが見られる。

<景気ウォッチャー調査>

内閣府「景気ウォッチャ-調査」の6月の現状判断DIは、前月を3.3ポイント下回り、42.9となった。先行き判断DIは、前月を2.4ポイント下回り、47.3となった。