月例経済報告(平成12年12月)

平成12年12月15日

経済企画庁

概観

景気は、家計部門の改善が遅れるなど、厳しい状況をなお脱していないが、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きが継続し、全体としては、緩やかな改善が続いている。

需要面をみると、個人消費は、収入がやや回復してきたものの、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、このところ増加してきた持家の着工が減少し、直近ではやや水準を下げている。設備投資は、製造業を中心に増加している。公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。輸出は、おおむね横ばいとなっている。

生産は、堅調に増加している。

雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている。

企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、全体としては改善のテンポが緩やかになってきており、先行きに慎重な見方もみられる。一方、倒産件数は、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。

政府は、経済を自律的な回復軌道に乗せるため引き続き景気回復に軸足を置きつつ、我が国経済を21世紀にふさわしい構造に改革する。このため、先般決定した「日本新生のための新発展政策」を強力に推進する。


我が国経済:需要面をみると、個人消費は、収入がやや回復してきたものの、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、このところ増加してきた持家の着工が減少し、直近ではやや水準を下げている。設備投資は、製造業を中心に増加している。公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。

12年7~9月期(速報)の実質国内総生産は、前期比0.2%増(年率1.0%増)となり、うち内需寄与度は0.3%となった。

産業面をみると、生産は、堅調に増加している。企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、全体としては改善のテンポが緩やかになってきており、先行きに慎重な見方もみられる。一方、企業倒産件数は、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。

雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている。

輸出は、おおむね横ばいとなっている。輸入は、緩やかに増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、原油価格の上昇などから、緩やかに減少している。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、11月は107円台から108円台で推移した後、月末には111円台に下落した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。また、消費者物価は、やや弱含んでいる。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、11月はやや上昇した。長期金利は、11月は低下した。株式相場は、11月は月初に上昇した後、下旬にかけて下落した。マネーサプライ(M2+CD)は、11月は前年同月比2.1%増となった。民間金融機関の貸出は依然低調である。また、企業金融のひっ迫感緩和は一服している。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は、拡大テンポが低下し、落ち着いてきている。実質GDPは、2000年4~6月期前期比年率5.6%増の後、7~9月期は同2.4%増(速報値)となった。個人消費は増加している。設備投資は増加している。住宅投資は減少している。鉱工業生産(総合)は伸びが鈍化している。雇用は拡大している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然高水準である。連邦準備制度は、11月15日に、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準と公定歩合の据え置きを決定した(それぞれ6.50%、6.00%)。なお、今後の物価及び景気動向に対するリスクの見通しはインフレ方向とした。11月の長期金利(10年物国債)は、月初に上昇した後、低下した。月初と月末を比較すると、低下した。株価(ダウ平均)は、上昇で始まったが、その後下落基調で推移した。月初と月末を比較すると、下落した。

西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランス、イギリスでは、景気は安定した拡大が続いている。鉱工業生産は、ドイツではこのところ横ばいで推移している。フランスでは増加している。イギリスではこのところ横ばいで推移している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している。物価は、ドイツ、フランスでは、エネルギー価格の上昇から消費者物価上昇率がやや高まっている。イギリスでは安定している。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっている。物価は安定している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。韓国では、景気は拡大を続けてきたが、このところ生産の伸びが鈍化するなど、先行きに不透明感が広がっている。貿易は、輸出入ともに増加が続いている。

国際金融市場の11月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、増価基調で推移したが月末に減価した。

国際商品市況の11月の動きをみると、CRB商品先物指数は月初から上昇基調で推移し、月末にかけほぼ1か月半ぶりに230ポイント台を記録した。原油スポット価格(北海ブレント)は、中旬まで上昇基調で推移し、その後は反落した。

1.国内需要:設備投資は、製造業を中心に増加

個人消費は、収入がやや回復してきたものの、おおむね横ばいの状態が続いている。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で9月0.4%増の後、10月(速報値)は0.2%減(季節調整済前月比0.5%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比0.1%減、勤労者以外の世帯では同0.2%増となった。形態別にみると、 財は減少、サービスは増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比0.3%増、勤労者世帯では同0.7%増となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で9月1.0%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で9月1.3%減の後、10月(速報値)は2.4%減(季節調整済前月比0.0%)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で9月0.3%減の後、10月(速報値)3.6%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で9月7.6%減の後、10月4.9%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で11月(速報値)は2.9%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で10月は4.2%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、10月は前年同月比で国内旅行が0.6%減、海外旅行は5.8%増となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で9月0.9%増の後、10月(速報)は1.1%増(事業所規模30人以上では同1.3%増)となり、うち所定外給与は、10月(速報)は同4.4%増(事業所規模30人以上では同5.2%増)となった。実質賃金は、前年同月比で9月1.9%増の後、10月(速報)は2.3%増(事業所規模30人以上では同2.4%増)となった。

住宅建設は、このところ増加してきた持家の着工が減少し、直近ではやや水準を下げている。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で9月は0.1%増(前年同月比3.1%減)となった後、10月は4.6%減(前年同月比1.5%増)の9万7千戸(年率116.4万戸)となった。10月の着工床面積(季節調整値)は、前月比5.4%減(前年同月比5.0%増)となった。10月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比10.0%減(前年同月比7.8%増)、貸家は同0.4%減(同2.7%減)、分譲住宅は同0.7%減(同0.2%増)となっている。

設備投資は、製造業を中心に増加している。

日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)により設備投資の動向をみると、大企業の12年度設備投資計画は、製造業で前年度比16.4%増(9月調査比2.3%上方修正)、非製造業で同2.5%増(同1.0%上方修正)となっており、全産業では同7.6%増(同1.5%上方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比14.6%増(9月調査比4.1%上方修正)、非製造業で同0.1%増(同1.6%上方修正)となり、中小企業では製造業で同11.3%増(同5.8%上方修正)、非製造業で7.2%減(同3.4%上方修正)となっている。

なお、12年7~9月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で0.2%増(うち製造業13.0%増、非製造業5.9%減)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で9月は16.5%減(前年同月比18.0%増)の後、10月は8.3%増(同25.4%増)となり、基調は、全体として増勢が続いている。

なお、10~12月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で7.6%増(前年同期比26.4%増)と見込まれている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、おおむね横ばいで推移しており、10月は季節調整済前月比5.2%減(前年同月比5.8%減)となった。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比31.0%増(前年同月比92.5%増)、非製造業は同16.3%減(同24.8%減)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。

公共機関からの建設工事受注額(建設工事受注動態統計調査)は、前年の公共工事着工統計調査と比較して、9月は25.9%減(参考値)の後、10月は2.3%減(同)となった。同じく大手50社の受注額は、前年同月比で9月は25.5%減の後、10月は27.5%増となった。また、公共工事請負金額(公共工事前払金保証統計)は、前年同月比で9月は10.8%減の後、10月は18.6%減となった。

2.生産雇用:生産は、堅調に増加

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、堅調に増加している。在庫は、10月は増加した。

鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で9月3.4%減の後、10月(速報)は、一般機械、化学等が低下したものの、電気機械、輸送機械等が増加したことから、1.5%増となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で11月は輸送機械、鉄鋼等により0.1%増の後、12月は輸送機械、一般機械等により、1.0%増となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で9月3.6%減の後、10月(速報)は、耐久消費財、非耐久消費財が増加したことから、0.8%増となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で9月1.0%減の後、10月(速報)は、精密機械等が減少したものの、石油・石炭製品、輸送機械等が増加したことから、1.3%増となった。また、10月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は101.0と前月を2.0ポイント上回った。

主な業種について最近の動きをみると、電気機械及び輸送機械では、生産は10月は増加し、在庫も10月は増加した。化学では、生産は2か月連続で減少し、在庫は2か月連続で増加した。

第3次産業の動向を通商産業省「第3次産業活動指数」(9月調査、季節調整値)でみると、前月比で8月1.2%増の後、9月(速報)は、サービス業、運輸・通信業が増加したものの、卸売・小売業,飲食店、不動産業等が減少した結果、1.1%減となった。

雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、9月0.62倍の後、10月0.64倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、9月1.11倍の後、10月1.11倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、9月は前年同月比0.8%増(前年同月差42万人増)の後、10月は同1.0%増(同52万人増)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、9月前年同月比0.2%減(季節調整済前月比0.0%)の後、10月(速報)は同0.1%減(同0.0%)となり(事業所規模30人以上では前年同月比1.1%減)、産業別には製造業では同1.2%減となった。10月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差1万人減の317万人、完全失業率(同)は、9月4.7%の後、10月4.7%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では9月前年同月比10.9%増(季節調整済前月比0.5%増)の後、10月(速報)は同10.0%増(同1.2%減) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比11.8%増)。

前記「全国企業短期経済観測調査」(12月調査)によると、企業の雇用人員判断は、過剰感が低下傾向にある。また、労働省「労働経済動向調査」(11月調査)によると、「残業規制」等の雇用調整を実施した事業所割合は、低下傾向にある。

企業の動向をみると、企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、全体としては改善のテンポが緩やかになってきており、先行きに慎重な見方もみられる。

前記「企業短期経済観測調査」(12月調査)によると、大企業(全産業)では、経常利益は12年度上期には前年同期比33.3%の増益の後、12年度下期には同3.1%の増益が見込まれている。産業別にみると、製造業では12年度上期に前年同期比41.4%の増益の後、12年度下期には同20.5%の増益が見込まれている。また、非製造業では12年度上期に前年同期比26.6%の増益の後、12年度下期には同11.9%の減益が見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では12年度上期に4.45%になった後、12年度下期は4.58%と見込まれている。また、非製造業では12年度上期に2.98%となった後、12年度下期は2.34%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業は横ばいとなり、非製造業は「悪い」超幅が拡大した。

また、中小企業の動向を同調査でみると、製造業では、経常利益は12年度上期には前年同期比46.1%の増益の後、12年度下期には同10.3%の増益が見込まれている。また、非製造業では、12年度上期に前年同期比13.9%の増益の後、12年度下期には同1.5%の減益が見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。

銀行取引停止処分者件数は、10月は1,002件で前年同月比5.0%増となった。件数の業種別構成比を見ると、建設業(32.7%)が最大のウエイトを占め、次いで製造業(17.6%)、小売業(17.6%)の順となった。

3.国際収支:輸出は、おおむね横ばい

輸出は、おおむね横ばいとなっている。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で9月2.9%減の後、10月は4.3%減(前年同月比3.0%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、輸送用機器、電気機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。

輸入は、緩やかに増加している。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で9月5.9%減の後、10月は3.8%増(前年同月比16.9%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、機械機器、鉱物性燃料等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、9月に9,911億円の黒字の後、10月は6,097億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、原油価格の上昇などから、緩やかに減少している。

10月の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大したもののサービス収支の赤字幅が拡大したことから、その黒字幅は縮小し、5,055億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、経常移転収支の赤字幅が縮小したが、貿易・サービス収支及び所得収支の黒字幅が縮小したことから、その黒字幅は縮小し、9,508億円となった。投資収支(原数値)は、8,741億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、8,936億円の赤字となった。

11月末の外貨準備高は、前月比55億ドル増加して3,546億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、11月は107円台から108円台で推移した後、月末には111円台に下落した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、11月は91円台から93円台で推移した後、月末には95円台に下落した。

4.物価:消費者物価は、やや弱含み

国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。

11月の国内卸売物価は、化学製品(感冒薬)等が上昇したものの、電気機器(集積回路)等が下落したことから、前月比0.1%の下落(前年同月比0.2%の下落)となった。また、前記「企業短期経済観測調査」(12月調査)によると製商品需給バランスは、改善傾向に一服がみられる。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したことから円ベースでは前月比0.3%の下落(前年同月比1.8%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したことに加え、円安から円ベースでは前月比1.0%の上昇(前年同月比8.0%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比保合い(前年同月比0.3%の上昇)となった。

企業向けサービス価格は、10月は前年同月比0.4%の下落(前月比0.3%の上昇)となった。

商品市況(月末対比)は繊維等は下落したものの、石油等の上昇により11月は上昇した。11月の動きを品目別にみると、生糸等は下落したものの、灯油等が上昇した。

消費者物価は、やや弱含んでいる。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で9月0.5%の下落の後、10月は公共料金(広義)が上昇から下落に転じたこと等により0.6%の下落(前月比保合い、季節調整済前月比0.1%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で9月0.8%の下落の後、10月は0.9%の下落(前月比0.1%の上昇、季節調整済前月比0.3%の下落)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で10月1.0%の下落の後、11月(中旬速報値)は、繊維製品が下落から上昇に転じたこと等により0.9%の下落(前月比保合い、季節調整済前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で10月1.2%の下落の後、11月(中旬速報値)は1.1%の下落(前月比0.4%の下落、季節調整済前月比0.1%の上昇)となった。

5.金融財政:株式相場は、11月は月初に上昇した後、下旬にかけて下落

最近の金融情勢をみると、短期金利は、11月はやや上昇した。長期金利は、11月は低下した。株式相場は、11月は月初に上昇した後、下旬にかけて下落した。M+CDは、11月は前年同月比2.1%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、11月はおおむね横ばいで推移した。2、3ヶ月物は、11月はやや上昇した。

公社債市場をみると、国債利回りは、11月は低下した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、10月は前月比で短期は0.223%ポイント上昇し、長期は0.131%ポイント上昇したことから、総合では0.180%ポイント上昇し1.930%となった。

マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、11月(速報)は前年同月比2.1%増となった。また、広義流動性は、11月(速報)は同3.0%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、11月(速報)は前年同月比4.0%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後1.8%減)となった。11月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債がゼロとなった。また、国内公募事業債の起債実績は5,162億円(うち銀行起債分100億円)となった。

前記「企業短期経済観測調査」(12月調査)によると、資金繰り判断は、横ばいとなっている。金融機関の貸出態度判断は、横ばいとなっており、「緩い」超が続いている。

以上のように、民間金融機関の貸出は依然低調である。また、企業金融のひっ迫感緩和は一服している。

株式市場をみると、東証株価指数(TOPIX)は、11月は月初に上昇した後、下旬にかけて下落した。日経平均株価もほぼ同様の動きとなった。

6.海外経済:西ヨーロッパ、安定した景気拡大が続く

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は、拡大テンポが低下し、落ち着いてきている。実質GDPは、2000年4~6月期前期比年率5.6%増の後、7~9月期は同2.4%増(速報値)となった。個人消費は増加している。設備投資は増加している。住宅投資は減少している。鉱工業生産(総合)は伸びが鈍化している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は10月前月差7.7万人増の後、11月は同9.4万人増と拡大している。失業率は11月4.0%となった。物価は総じて安定している。10月の消費者物価は前年同月比3.4%の上昇、10月の生産者物価(完成財総合)は同3.6%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然高水準である。連邦準備制度は、11月15日に、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準と公定歩合の据え置きを決定した(それぞれ6.50%、6.00%)。なお、今後の物価及び景気動向に対するリスクの見通しはインフレ方向とした。11月の長期金利(10年物国債)は、月初に上昇した後、低下した。月初と月末を比較すると、低下した。株価(ダウ平均)は、上昇で始まったが、その後下落基調で推移した。月初と月末を比較すると、下落した。

西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランス、イギリスでは、景気は安定した拡大が続いている。7~9月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率2.3%増、フランス同2.7%増(速報値)、イギリスは同2.9%増(改訂値)となった。鉱工業生産は、ドイツではこのところ横ばいで推移している。フランスでは増加している。イギリスではこのところ横ばいで推移している(鉱工業生産は、ドイツ10月前月比0.3%減、フランス9月同0.1%増、イギリス10月同0.2%減)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ11月9.3%、フランス10月9.4%、イギリス10月3.6%)。物価は、ドイツ、フランスでは、エネルギー価格の上昇から消費者物価上昇率がやや高まっている。イギリスでは安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ11月前年同月比2.4%、フランス10月同1.9%、イギリス10月同2.0%)。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっている。物価は安定している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。韓国では、景気は拡大を続けてきたが、このところ生産の伸びが鈍化するなど、先行きに不透明感が広がっている。貿易は、輸出入ともに増加が続いている。

国際金融市場の11月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、増価基調で推移したが月末に減価した。月初と月末を比較すると増価した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)をみると、11月30日現在117.4、10月末比0.1%の増価となっている。内訳をみると、11月30日現在、対円では10月末比1.2%増価、対ユーロでは同2.6%減価した。

国際商品市況の11月の動きをみると、CRB商品先物指数は月初から上昇基調で推移し、月末にかけほぼ1か月半ぶりに230ポイント台を記録した。原油スポット価格(北海ブレント)は、中旬まで上昇基調で推移し、その後は反落した。


先月からの主要変更点

  11月月例 12月月例
個人消費 個人消費は、収入に回復への動きがみられるものの、おおむね横ばいの状態が続いている。 個人消費は、収入がやや回復してきたものの、おおむね横ばいの状態が続いている。
住宅建設 住宅建設は、マンションなどの着工は減少しているが、持家が増加したため、全体ではおおむね横ばいとなっている。 住宅建設は、このところ増加してきた持家の着工が減少し、直近ではやや水準を下げている。
設備投資 設備投資は、電気機械など特定の業種を中心に増加している。 設備投資は、製造業を中心に増加している。
業況判断 企業の業況判断は、業種や規模によってはなお厳しいが、全体としては改善が進んでいる。 企業の業況判断は、全体としては改善のテンポが緩やかになってきており、先行きに慎重な見方もみられる。
輸出 輸出は、アジア向けは堅調だが、欧米向けが横ばい状態となっているため、全体としては伸びが鈍化している。 輸出は、おおむね横ばいとなっている。
国際収支 貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。 貿易・サービス収支の黒字は、原油価格の上昇などから、緩やかに減少している。
総括判断 景気は、家計部門の改善が遅れるなど、厳しい状況をなお脱していないが、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きが継続し、全体としては、緩やかな改善が続いている。 景気は、家計部門の改善が遅れるなど、厳しい状況をなお脱していないが、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きが継続し、全体としては、緩やかな改善が続いている。
政策態度 政府は、経済を自律的な回復軌道に乗せるため引き続き景気回復に軸足を置きつつ、我が国経済を21世紀にふさわしい構造に改革する。このため、10月19日に、日本新生プランの具体化策等を中心とした「日本新生のための新発展政策」を決定したところであり、その強力な推進を図ることとする。 政府は、経済を自律的な回復軌道に乗せるため引き続き景気回復に軸足を置きつつ、我が国経済を21世紀にふさわしい構造に改革する。このため、先般決定した「日本新生のための新発展政策」を強力に推進する。