月例経済報告(平成12年11月)

平成12年11月10日

経済企画庁

概観

景気は、家計部門の改善が遅れるなど、厳しい状況をなお脱していないが、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きが継続し、全体としては、緩やかな改善が続いている。

需要面をみると、個人消費は、収入に回復への動きがみられるものの、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、マンションなどの着工は減少しているが、持家が増加したため、全体ではおおむね横ばいとなっている。設備投資は、電気機械など特定の業種を中心に増加している。公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。輸出は、アジア向けは堅調だが、欧米向けが横ばい状態となっているため、全体としては伸びが鈍化している。

生産は、堅調に増加している。

雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている。

企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、業種や規模によってはなお厳しいが、全体としては改善が進んでいる。一方、倒産件数は、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。

政府は、経済を自律的な回復軌道に乗せるため引き続き景気回復に軸足を置きつつ、我が国経済を21世紀にふさわしい構造に改革する。このため、10月19日に、日本新生プランの具体化策等を中心とした「日本新生のための新発展政策」を決定したところであり、その強力な推進を図ることとする。


我が国経済:需要面をみると、個人消費は、収入に回復への動きがみられるものの、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、マンションなどの着工は減少しているが、持家が増加したため、全体ではおおむね横ばいとなっている。設備投資は、電気機械など特定の業種を中心に増加している。公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。

産業面をみると、生産は、堅調に増加している。企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、業種や規模によってはなお厳しいが、全体としては改善が進んでいる。一方、企業倒産件数は、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。

雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている。

輸出は、アジア向けは堅調だが、欧米向けが横ばい状態となっているため、全体としては伸びが鈍化している。輸入は、緩やかに増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、10月は107円台から109円台で推移した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。また、消費者物価は、やや弱含んでいる。

最近の金融情勢をみると、長短期金利は、10月はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、10月は月末にかけて大幅に下落した。マネーサプライ(M2+CD)は、9月は前年同月比1.9%増となった。また、企業金融のひっ迫感は緩和傾向にあるが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は、拡大テンポが低下し、落ち着いてきている。実質GDPは、2000年4~6月期前期比年率5.6%増の後、2000年7~9月期は同2.7%増(暫定値)となった。個人消費は増加している。設備投資は増加している。住宅投資は減少している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然高水準である。10月の長期金利(10年物国債)は、低下基調で推移した後、月末に上昇した。月初と月末を比較すると、低下した。株価(ダウ平均)は、大きく下落した後、下旬に上昇した。月初と月末を比較すると、上昇した。

西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランス、イギリスでは、景気は拡大している。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ横ばいで推移している。イギリスでは増加している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している。物価は、ドイツ、フランスでは、エネルギー価格の上昇から消費者物価上昇率がやや高まっている。イギリスでは安定している。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっている。物価は安定している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。韓国では、危機後の急回復に比べれば減速しているものの、景気は拡大を続けている。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。

国際金融市場の10月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、増価基調で推移した。

国際商品市況の10月の動きをみると、CRB商品先物指数は上旬に上昇し、その後は下落基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、中旬にかけ33ドル台まで上昇し、その後は31ドル前後で推移した。

1.国内需要:設備投資は、電気機械など特定の業種を中心に増加

個人消費は、収入に回復への動きがみられるものの、おおむね横ばいの状態が続いている。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で8月4.1%減の後、9月(速報値)は0.4%増(季節調整済前月比2.9%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比1.0%増、勤労者以外の世帯では同0.3%増となった。形態別にみると、財は増加、サービスは減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比1.1%増、勤労者世帯では同1.5%増となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で8月2.3%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で8月1.3%減の後、9月(速報値)は1.5%減(季節調整済前月比1.2%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で8月4.3%減の後、9月(速報値)0.1%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で8月5.7%減の後、9月7.6%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で10月(速報値)は3.9%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で9月は5.5%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、9月は前年同月比で国内旅行が0.6%増、海外旅行は2.9%増となった。

当庁「消費動向調査」(9月調査)によると、消費者態度指数(季節調整値)は、6月に前期差0.9ポイント上昇の後、9月には同0.2ポイントの上昇となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で8月1.0%増の後、9月(速報)は1.0%増(事業所規模30人以上では同0.9%増)となり、うち所定外給与は、9月(速報)は同5.4%増(事業所規模30人以上では同5.6%増)となった。実質賃金は、前年同月比で8月2.0%増の後、9月(速報)は2.0%増(事業所規模30人以上では同1.9%増)となった。なお、平成12年夏季賞与は、事業所規模5人以上では前年比0.5%増(前年は3.7%減)となった。

住宅建設は、マンションなどの着工は減少しているが、持家が増加したため、全体ではおおむね横ばいとなっている。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で8月は4.7%増(前年同月比3.8%減)となった後、9月は0.1%増(前年同月比3.1%減)の10万2千戸(年率122.0万戸)となった。9月の着工床面積(季節調整値)は、前月比1.6%増(前年同月比1.2%減)となった。9月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比5.7%増(前年同月比1.6%増)、貸家は同3.7%減(同9.7%減)、分譲住宅は同0.5%減(同0.4%増)となっている。

設備投資は、電気機械など特定の業種を中心に増加している。

当庁「法人企業動向調査」(12年9月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、季節調整済前期比で12年4~6月期(実績)3.1%減(うち製造業3.9%増、非製造業8.8%減)の後、12年7~9月期(実績見込み)は9.2%増(同6.1%増、同11.5%増)となっている。年度計画では、前年比で11年度(実績)1.6%減(うち製造業8.3%減、非製造業2.0%増)の後、12年度(計画)は3.0%増(同5.8%増、同1.7%増)となっている。

なお、12年4~6月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で2.2%増(うち製造業3.4%増、非製造業1.6%増)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で7月は11.7%減(前年同月比17.9%増)の後、8月は26.6%増(同45.8%増)となり、基調には回復への動きがみられる。

なお、7~9月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で10.7%増(前年同期比30.0%増)と見込まれている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、一進一退で推移しており、8月は季節調整済前月比24.7%増の後、9月は季節調整済前月比11.4%減(前年同月比11.5%減)となった。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比19.7%減(前年同月比15.9%増)、非製造業は同10.7%減(同17.3%減)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。

公共機関からの建設工事受注額(建設工事受注動態統計調査)は、前年の公共工事着工統計調査と比較して、7月は7.8%減(参考値)の後、8月は12.4%減(同)となった。同じく大手50社の受注額は、前年同月比で8月は19.3%減の後、9月は25.5%減となった。また、公共工事請負金額(公共工事前払金保証統計)は、前年同月比で8月は7.1%減の後、9月は10.8%減となった。

2.生産雇用:雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、堅調に増加している。在庫は、9月は減少した。

鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で8月3.4%増の後、9月(速報)は、石油・石炭製品が増加したものの、電気機械、一般機械等が減少したことから、3.4%減となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で10月は電気機械、一般機械等により3.4%増の後、11月は輸送機械、鉄鋼等により、0.5%増となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で8月3.9%増の後、9月(速報)は、生産財、耐久消費財等が減少したことから、3.6%減となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で8月0.3%増の後、9月(速報)は、プラスチック製品、化学等が増加したものの、輸送機械、石油・石炭製品等が減少したことから、1.1%減となった。また、9月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は98.8と前月を2.8ポイント上回った。

主な業種について最近の動きをみると、電気機械及び一般機械では、生産は9月は減少し、在庫も9月は減少した。化学では、生産は9月は減少し、在庫は9月は増加した。

第3次産業の動向を通商産業省「第3次産業活動指数」(8月調査、季節調整値)でみると、前月比で7月1.3%減の後、8月(速報)は、電気・ガス・熱供給・水道業が減少したものの、卸売・小売業,飲食店、運輸・通信業等が増加した結果、1.1%増となった。

農業生産の動向をみると、平成12年産水稲の全国作況指数(10月15日現在)は、104の「やや良」となっている。

雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、8月0.62倍の後、9月0.62倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、8月1.08倍の後、9月1.11倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、8月は前年同月比0.2%増(前年同月差11万人増)の後、9月は同0.8%増(同42万人増)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、8月前年同月比0.2%減(季節調整済前月比0.0%)の後、9月(速報)は同0.2%減(同0.0%)となり(事業所規模30人以上では前年同月比1.3%減)、産業別には製造業では同1.5%減となった。9月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差11万人増の318万人、完全失業率(同)は、8月4.6%の後、9月4.7%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では8月前年同月比12.8%増(季節調整済前月比1.4%増)の後、9月(速報)は同9.3%増(同0.9%減) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比9.9%増)。

企業の動向をみると、企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、業種や規模によってはなお厳しいが、全体としては改善が進んでいる。

大企業の動向を前記「法人企業動向調査」(9月調査)でみると、12年7~9月期の売上高、経常利益の判断(ともに「増加」-「減少」)は、売上高、経常利益ともに「増加」超幅が拡大した。また、12年7~9月期の企業経営者の景気判断(業界景気の判断、「上昇」-「下降」)は、「上昇」超幅が拡大した。

また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(9月調査、季節調整値)でみると、売上げD.I.(「増加」-「減少」)は、12年7~9月期は「減少」超幅が縮小し、純益率D.I.(「上昇」-「低下」)は、「低下」超幅が拡大した。業況判断D.I.(「好転」-「悪化」)は、12年7~9月期は「悪化」超幅が拡大した。

企業倒産の状況をみると、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。

銀行取引停止処分者件数は、9月は1,020件で前年同月比9.3%増となった。件数の業種別構成比を見ると、建設業(34.5%)が最大のウエイトを占め、次いで製造業(20.6%)、小売業(17.0%)の順となった。

3.国際収支:輸出は、アジア向けは堅調だが、欧米向けが横ばい状態となっているため、全体としては伸びが鈍化

輸出は、アジア向けは堅調だが、欧米向けが横ばい状態となっているため、全体としては伸びが鈍化している。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で8月7.5%増の後、9月は2.9%減(前年同月比6.3%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、電気機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア等が増加した。

輸入は、緩やかに増加している。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で8月10.3%増の後、9月は5.9%減(前年同月比8.2%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、機械機器、鉱物性燃料等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、中東等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、8月に8,967億円の黒字の後、9月は9,911億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。

8月の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、サービス収支の赤字幅が縮小したものの、貿易収支の黒字幅が縮小したことから、その黒字幅は縮小し、5,601億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、貿易・サービス収支の黒字幅が縮小し、経常移転収支の赤字幅が拡大したものの、所得収支の黒字幅が拡大したことから、その黒字幅は拡大し、1兆1,081億円となった。投資収支(原数値)は、6,416億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、6,709億円の赤字となった。

10月末の外貨準備高は、前月比1億ドル増加して3,491億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、10月は107円台から109円台で推移した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、10月は月初の95円台から月末にかけて89円台に上昇した後91円台に下落した。

4.物価:消費者物価は、やや弱含み

国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。

9月の国内卸売物価は、非鉄金属(銅地金)等が上昇したものの、電気機器(電子計算機本体)等が下落したことから、前月比0.1%の下落(前年同月比0.1%の上昇)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したことに加え、円高から円ベースでは前月比1.5%の下落(前年同月比2.2%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比1.1%の下落(前年同月比5.3%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.4%の下落(前年同月比0.3%の上昇)となった。

企業向けサービス価格は、9月は前年同月比0.6%の下落(前月比0.1%の下落)となった。

商品市況(月末対比)は鋼材等は上昇したものの、非鉄等の下落により10月は下落した。10月の動きを品目別にみると、H形鋼等は上昇したものの、亜鉛地金等が下落した。

消費者物価は、やや弱含んでいる。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で8月0.3%の下落の後、9月は繊維製品の下落幅が拡大したこと等により0.5%の下落(前月比0.2%の上昇、季節調整済前月比0.3%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で8月0.8%の下落の後、9月は0.8%の下落(前月比0.3%の上昇、季節調整済前月比0.1%の下落)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で9月1.0%の下落の後、10月(中旬速報値)は、公共料金(広義)の下落幅が拡大した一方、繊維製品の下落幅が縮小したこと等により1.0%の下落(前月比0.1%の下落、季節調整済前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で9月1.4%の下落の後、10月(中旬速報値)は1.2%の下落(前月比0.2%の上昇、季節調整済前月比0.1%の下落)となった。

5.金融財政:株式相場は、10月は月末にかけて大幅に下落

最近の金融情勢をみると、長短期金利は、10月はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、10月は月末にかけて大幅に下落した。M+CDは、9月は前年同月比1.9%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレート、2、3ヶ月物ともに、10月はおおむね横ばいで推移した。

公社債市場をみると、国債利回りは、10月はおおむね横ばいで推移した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、8月は前月比で短期は0.082%ポイント上昇し、長期は0.111%ポイント低下したことから、総合では0.031%ポイント上昇し1.788%となった。

マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、9月(速報)は前年同月比1.9%増となった。また、広義流動性は、9月(速報)は同3.1%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、9月(速報)は前年同月比4.0%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後1.8%減)となった。10月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が300億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は6,910億円(うち銀行起債分3,300億円)となった。

前記「企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、資金繰り判断は、おおむね横ばいとなっているものの、金融機関の貸出態度は、引き続き改善傾向にあり、「緩い」超が続いている。

以上のように、企業金融のひっ迫感は緩和傾向にあるが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

株式市場をみると、東証株価指数(TOPIX)は、10月は月末にかけて大幅に下落した。日経平均株価もほぼ同様の動きとなった。

6.海外経済:アメリカ、落ち着く景気拡大

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は、拡大テンポが低下し、落ち着いてきている。実質GDPは、2000年4~6月期前期比年率5.6%増の後、2000年7~9月期は同2.7%増(暫定値)となった。個人消費は増加している。設備投資は増加している。住宅投資は減少している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は9月前月差19.5万人増の後、10月は同13.7万人増と拡大している。失業率は10月3.9%となった。物価は総じて安定している。9月の消費者物価は前年同月比3.5%の上昇、9月の生産者物価(完成財総合)は同3.3%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然高水準である。10月の長期金利(10年物国債)は、低下基調で推移した後、月末に上昇した。月初と月末を比較すると、低下した。株価(ダウ平均)は、大きく下落した後、下旬に上昇した。月初と月末を比較すると、上昇した。

西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランス、イギリスでは、景気は拡大している。実質GDPは、ドイツ4~6月期前期比年率4.7%増、フランス同2.9%増、イギリスは7~9月期同2.8%増(速報値)となった。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ横ばいで推移している。イギリスでは増加している(鉱工業生産は、ドイツ8月前月比1.0%増、フランス7・8月同1.6%増、イギリス9月同1.1%減)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ9月9.4%、フランス9月9.5%、イギリス9月3.6%)。物価は、ドイツ、フランスでは、エネルギー価格の上昇から消費者物価上昇率がやや高まっている。イギリスでは安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ10月前年同月比2.3%、フランス9月同2.2%、イギリス9月同2.2%)。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっている。物価は安定している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。韓国では、危機後の急回復に比べれば減速しているものの、景気は拡大を続けている。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。

国際金融市場の10月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、増価基調で推移した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)をみると、10月31日現在117.3、9月末比2.3%の増価となっている。内訳をみると、10月31日現在、対円では9月末比0.9%増価、対ユーロでは同4.0%増価した。

国際商品市況の10月の動きをみると、CRB商品先物指数は上旬に上昇し、その後は下落基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、中旬にかけ33ドル台まで上昇し、その後は31ドル前後で推移した。