月例経済報告(平成12年9月)

平成12年9月14日

経済企画庁

概観

景気は、厳しい状況をなお脱していないが、緩やかな改善が続いている。各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響に加え、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きが続いている。

需要面をみると、個人消費は、収入が下げ止まってきたが、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、マンションなどは堅調であるが、全体ではおおむね横ばいとなっている。設備投資は、持ち直しの動きが続いている。公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。輸出は、欧米向けに減速がみられるものの、基調としてはアジア向けを中心に緩やかに増加している。

生産は、堅調に増加している。

雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きもみられる。

企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、業種や規模によってはなお厳しいが、全体としては改善が進んでいる。一方、倒産件数は、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。

政府は、引き続き、景気回復に軸足を置いた経済・財政運営を行い、景気を自律的回復軌道に乗せていくよう全力を挙げつつ我が国経済の動向等を注意深く見ながら適切に対応する。また、経済構造改革に迅速かつ大胆に取り組む。今後、日本新生プランの具体化のための新たな経済政策を取りまとめることとしている。


我が国経済:需要面をみると、個人消費は、収入が下げ止まってきたが、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、マンションなどは堅調であるが、全体ではおおむね横ばいとなっている。設備投資は、持ち直しの動きが続いている。公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。

12年4~6月期(速報)の実質国内総生産は、前期比1.0%増(年率4.2%増)となり、うち内需寄与度は1.0%となった。

産業面をみると、生産は、堅調に増加している。企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、業種や規模によってはなお厳しいが、全体としては改善が進んでいる。一方、企業倒産件数は、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。

雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きもみられる。

輸出は、欧米向けに減速がみられるものの、基調としてはアジア向けを中心に緩やかに増加している。輸入は、アジアからの輸入を中心に、増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、基調としてはおおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、8月は月央にかけて107円台から109円台で推移した後、月末には106円台に上昇した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、8月は8月11日に日本銀行がゼロ金利政策を解除したことを受けて上昇した後、月末にかけてもやや上昇した。長期金利は、8月は上昇した。株式相場は、8月は上旬に一進一退で推移した後、下旬にかけて上昇した。マネーサプライ(M2+CD)は、8月は前年同月比1.7%増となった。また、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、個人消費などに減速がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、2000年1~3月期前期比年率4.8%増の後、2000年4~6月期は同5.3%増(速報値)となった。個人消費は伸びが鈍化している。設備投資は大幅に増加している。住宅投資は伸びが鈍化している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は特殊要因もあり減少している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然高水準である。連邦準備制度は、8月22日に、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準と公定歩合の据置を決定した(それぞれ6.50%、6.00%)。なお、今後の物価及び景気動向に対するリスクの見通しはインフレ方向とした。8月の長期金利(10年物国債)は、低下基調で推移した。株価(ダウ平均)は、上昇基調で推移した。

西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランス、イギリスでは、景気は拡大している。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ横ばいで推移している。イギリスでは伸びが緩やかになっている。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している。物価は、ドイツでは輸入物価の上昇がみられるものの総じて安定している。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している。なお、欧州中央銀行は、8月31日、物価の中期的な上昇圧力を抑制するため、政策金利(短期オペの最低応札金利)を0.25%ポイント引き上げ、4.50%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっている。物価は安定している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。韓国では、危機後の急回復に比べれば減速しているものの、景気は拡大を続けている。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。

国際金融市場の8月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、ほぼ横ばいで推移した。

国際商品市況の8月の動きをみると、CRB商品先物指数は、上旬はほぼ横ばいで推移し、中旬から上昇した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から上昇基調で推移し、下旬にかけては30ドルを上回って推移した。

1.国内需要:設備投資は、持ち直しの動きが続いている

実質国内総生産(平成2年基準、速報)の動向をみると、12年1~3月期前期比2.5%増(年率10.3%増)の後、12年4~6月期は同1.0%増(同4.2%増)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は1.0%となり、財貨・サービスの純輸出の寄与度はマイナス0.0%となった。需要項目別にみると、民間最終消費支出は前期比1.1%増、民間企業設備投資は同3.3%減、民間住宅は同0.8%減となった。公的固定資本形成は前期比13.6%増、政府最終消費支出は同1.3%減となった。また、財貨・サービスの輸出は前期比3.9%増、財貨・サービスの輸入は同4.9%増となった。

個人消費は、収入が下げ止まってきたが、おおむね横ばいの状態が続いている。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で6月1.8%減の後、7月(速報値)は2.6%減(季節調整済前月比0.6%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比3.6%減、勤労者以外の世帯では同0.2%増となった。形態別にみると、財、サービスともに減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比1.6%減、勤労者世帯では同2.5%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で6月2.0%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で6月1.0%減の後、7月(速報値)は0.5%減(季節調整済前月比0.3%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で6月3.4%減の後、7月(速報値)4.9%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で6月5.0%減の後、7月4.3%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で8月(速報値)は5.0%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で7月は16.2%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、7月は前年同月比で国内旅行が6.1%減、海外旅行は5.7%増となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で6月1.8%増の後、7月(速報)は0.1%減(事業所規模30人以上では同0.5%減)となり、うち所定外給与は、7月(速報)は同3.9%増(事業所規模30人以上では同5.1%増)となった。実質賃金は、前年同月比で6月2.6%増の後、7月(速報)は0.6%増(事業所規模30人以上では同0.2%増)となった。また、民間主要企業の夏季一時金妥結額(労働省調べ)は前年比0.54%減(前年は同5.65%減)となった。

住宅建設は、マンションなどは堅調であるが、全体ではおおむね横ばいとなっている。新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で6月は4.9%増(前年同月比1.2%減)となった後、7月は8.0%減(前年同月比0.8%減)の9万7千戸(年率116.4万戸)となった。7月の着工床面積(季節調整値)は、前月比8.6%減(前年同月比0.2%減)となった。7月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比2.7%減(前年同月比8.7%減)、貸家は同17.1%減(同10.8%減)、分譲住宅は同0.8%増(同31.4%増)となっている。

設備投資は、持ち直しの動きが続いている。

当庁「法人企業動向調査」(12年6月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、季節調整済前期比で12年1~3月期(実績)1.9%増(うち製造業1.8%減、非製造業4.5%増)の後、12年4~6月期(実績見込み)は2.3%増(同9.5%増、同2.1%減)となっている。暦年計画では、前年比で11年(実績)6.0%減(うち製造業10.6%減、非製造業3.5%減)の後、12年(計画)は0.3%増(同3.1%減、同2.0%増)となっている。

なお、12年4~6月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で2.2%増(うち製造業3.4%増、非製造業1.6%増)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で6月は14.4%増(前年同月比28.2%増)の後、7月は11.7%減(同17.9%増)となり、基調は回復への動きがみられる。

なお、7~9月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で10.7%増(前年同期比30.0%増)と見込まれている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、このところおおむね横ばいで推移していたが、7月は季節調整済前月比16.1%減(前年同月比7.0%減)となった。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比9.3%減(前年同月比46.3%増)、非製造業は同22.3%減(同16.2%減)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。

公共機関からの建設工事受注額(建設工事受注動態統計調査・大手50社)は、前年同月比で6月は2.5%増の後、7月は10.3%減となった。また、公共工事請負金額(公共工事前払金保証統計)は、前年同月比で6月は7.3%減の後、7月は16.7%減となった。

2.生産雇用:企業収益は、大幅な改善が続いている

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、堅調に増加している。在庫は、7月は減少した。

鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で6月1.9%増の後、7月(速報)は、化学、電気機械等が増加したものの、一般機械、輸送機械等が減少したことから、0.7%減となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で8月は電気機械、一般機械等により3.9%増の後、9月は電気機械、輸送機械等により、3.4%減となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で6月2.7%増の後、7月(速報)は、資本財、耐久消費財等が減少したことから、1.7%減となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で6月横ばいの後、7月(速報)は、輸送機械、化学等が増加したものの、電気機械、一般機械等が減少したことから、0.1%減となった。また、7月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は101.2と前月を2.7ポイント上回った。

主な業種について最近の動きをみると、一般機械では、生産は7月は減少し、在庫は3か月連続で減少した。輸送機械では、生産は7月は減少し、在庫は2か月連続で増加した。化学では、生産は7月は増加し、在庫も7月は増加した。

第3次産業の動向を通商産業省「第3次産業活動指数」(6月調査、季節調整値)でみると、前月比で5月0.9%増の後、6月(速報)は、金融・保険業が減少したものの、サービス業、卸売・小売業,飲食店等が増加した結果、1.3%増となった。

雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きもみられる。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、6月0.59倍の後、7月0.60倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、6月1.10倍の後、7月1.08倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、6月は前年同月比1.1%増(前年同月差58万人増)の後、7月は同1.0%増(同53万人増)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、6月前年同月比0.2%減(季節調整済前月比0.0%)の後、7月(速報)は同0.1%減(同0.2%増)となり(事業所規模30人以上では前年同月比1.1%減)、産業別には製造業では同1.5%減となった。7月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差2万人減の314万人、完全失業率(同)は、6月4.7%の後、7月4.7%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では6月前年同月比15.5%増(季節調整済前月比1.1%増)の後、7月(速報)は同12.4%増(同0.2%減)となっている(事業所規模30人以上では前年同月比13.4%増)。

また、労働省「労働経済動向調査」(8月調査)によると、「残業規制」等の雇用調整を実施した事務所割合は、全体としては低下傾向にある。

企業の動向をみると、企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、業種や規模によってはなお厳しいが、全体としては改善が進んでいる。

大企業の動向を前記「法人企業動向調査」(6月調査)でみると12年4~6月期の売上高、経常利益の判断(ともに「増加」-「減少」)は、売上高は「増加」超幅が拡大し、経常利益は「増加」超に転じた。また、12年4~6月期の企業経営者の景気判断(業界景気の判断、「上昇」-「下降」)は「上昇」超に転じた。

また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(6月調査、季節調整値)でみると、売上げD.I.(「増加」-「減少」)は、12年4~6月期は「減少」超幅が縮小し、純益率D.I.(「上昇」-「低下」)は、「低下」超幅が縮小した。業況判断D.I.(「好転」-「悪化」)は、12年4~6月期は「悪化」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、件数はやや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。

銀行取引停止処分者件数は、7月は1,056件で前年同月比16.0%増となった。件数の業種別構成比を見ると、建設業(33.7%)が最大のウエイトを占め、次いで製造業(19.8%)、小売業(16.9%)の順となった。

3.国際収支:輸出は、欧米向けに減速がみられるものの、基調としてはアジア向けを中心に緩やかに増加

輸出は、欧米向けに減速がみられるものの、基調としてはアジア向けを中心に緩やかに増加している。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で6月8.2%増の後、7月は8.1%減(前年同月比6.3%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、電気機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア等が増加した。

輸入は、アジアからの輸入を中心に、増加している。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で6月3.2%減の後、7月は5.8%減(前年同月比11.4%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、機械機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、6月に1兆1,076億円の黒字の後、7月は9,273億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、基調としてはおおむね横ばいとなっている。

6月の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大し、サービス収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、7,170億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、経常移転収支の赤字幅が縮小し、貿易・サービス収支の黒字幅が拡大したものの、所得収支の黒字幅が縮小したことから、その黒字幅は縮小し、1兆839億円となった。投資収支(原数値)は、7,773億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、8,245億円の赤字となった。

8月末の外貨準備高は、前月と同じ3,449億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、8月は月央にかけて107円台から109円台で推移した後、月末には106円台に上昇した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、8月は上旬に101円台から97円台に上昇した後、中旬は98円台から99円台で推移し、下旬には94円台まで上昇した。

4.物価:国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移

国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。

8月の国内卸売物価は、パルプ・紙・同製品(段ボールシート)等が上昇したものの、電気機器(電子計算機本体)等が下落したことから、前月比保合い(前年同月比0.2%の上昇)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで上昇したことから円ベースでは前月比0.1%の上昇(前年同月比3.6%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したことに加え、円安から円ベースでは前月比0.5%の上昇(前年同月比4.6%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.1%の上昇(前年同月比0.2%の上昇)となった。

企業向けサービス価格は、7月は前年同月比0.7%の下落(前月比0.1%の下落)となった。

商品市況(月末対比)は「その他」等は下落したものの、石油等の上昇により8月は上昇した。8月の動きを品目別にみると、天然ゴム等は下落したものの、灯油等が上昇した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で6月0.3%の下落の後、7月はその他工業製品の上昇幅が縮小した一方、公共料金(広義)が下落から上昇に転じたこと等により0.3%の下落(前月比0.3%の下落、季節調整済前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で6月0.7%の下落の後、7月は0.5%の下落(前月比0.2%の下落、季節調整済前月比0.3%の上昇)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で7月0.7%の下落の後、8月(中旬速報値)は、繊維製品が上昇から下落に転じたこと等により0.8%の下落(前月比0.1%の下落、季節調整済前月比0.1%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で7月0.9%の下落の後、8月(中旬速報値)は1.3%の下落(前月比0.1%の下落、季節調整済前月比0.2%の下落)となった。

5.金融財政:短期金利はゼロ金利政策の解除を受けて上昇し、長期金利も上昇

最近の金融情勢をみると、短期金利は、8月は8月11日に日本銀行がゼロ金利政策を解除したことを受けて上昇した後、月末にかけてもやや上昇した。長期金利は、8月は上昇した。株式相場は、8月は上旬に一進一退で推移した後、下旬にかけて上昇した。M+CDは、8月は前年同月比1.7%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、8月は8月11日に日本銀行がゼロ金利政策を解除したことを受けて上昇した後、下旬はほぼ横ばいで推移した。2、3ヶ月物は、8月は8月11日に日本銀行がゼロ金利政策を解除したことを受けて上昇した後、月末にかけてもやや上昇した。

公社債市場をみると、国債利回りは、8月は上昇した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、7月は前月比で短期は0.008%ポイント低下し、長期は0.100%ポイント上昇したことから、総合では0.018%ポイント上昇し1.757%となった。

マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、8月(速報)は前年同月比1.7%増となった。また、広義流動性は、8月(速報)は同3.4%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、8月(速報)は前年同月比4.3%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後2.0%減)となった。8月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が1,250億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は8,266億円(うち銀行起債分1,800億円)となった。

「全国企業短期経済観測調査」(全国企業、6月調査)によると、資金繰り判断は「苦しい」超が続いているものの、引き続き改善の動きがみられる。金融機関の貸出態度は、引き続き改善の動きがみられ、「緩い」超に転じている。

以上のように、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

株式市場をみると、東証株価指数(TOPIX)は、8月は上旬に一進一退で推移した後、下旬にかけて上昇した。日経平均株価もほぼ同様の動きとなった。

6.海外経済:原油価格、再び上昇

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、個人消費などに減速がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、2000年1~3月期前期比年率4.8%増の後、2000年4~6月期は同5.3%増(速報値)となった。個人消費は伸びが鈍化している。設備投資は大幅に増加している。住宅投資は伸びが鈍化している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は特殊要因もあり減少している。雇用者数(非農業事業所)は7月前月差5.1万人減の後、8月は同10.5万人減と減少しているものの、政府部門を除く民間非農業雇用者数は増加した(1.7万人増)。失業率は8月4.1%となった。物価は総じて安定している。7月の消費者物価は前年同月比3.5%の上昇、7月の生産者物価(完成財総合)は同4.1%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然高水準である。連邦準備制度は、8月22日に、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準と公定歩合の据置を決定した(それぞれ6.50%、6.00%)。なお、今後の物価及び景気動向に対するリスクの見通しはインフレ方向とした。8月の長期金利(10年物国債)は、低下基調で推移した。株価(ダウ平均)は、上昇基調で推移した。

西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランス、イギリスでは、景気は拡大している。4~6月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率4.7%増、フランス同2.7%増(速報値)、イギリス同3.6%増(改訂値)となった。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ横ばいで推移している。イギリスでは伸びが緩やかになっている(鉱工業生産は、ドイツ7月前月比3.5%増、フランス6月同0.6%減、イギリス7月同0.0%減)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ8月9.5%、フランス7月9.7%、イギリス7月3.7%)。物価は、ドイツでは輸入物価の上昇がみられるものの総じて安定している。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ8月前年同月比1.8%、フランス7月同1.7%、イギリス7月同3.3%)。なお、欧州中央銀行は、8月31日、物価の中期的な上昇圧力を抑制するため、政策金利(短期オペの最低応札金利)を0.25%ポイント引き上げ、4.50%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっている。物価は安定している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。韓国では、危機後の急回復に比べれば減速しているものの、景気は拡大を続けている。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。

国際金融市場の8月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、ほぼ横ばいで推移した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)をみると、8月31日現在113.5、7月末比0.6%の増価となっている。内訳をみると、8月31日現在、対円では7月末比2.5%減価、対ユーロでは同4.5%増価した。

国際商品市況の8月の動きをみると、CRB商品先物指数は、上旬はほぼ横ばいで推移し、中旬から上昇した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から上昇基調で推移し、下旬にかけては30ドルを上回って推移した。