月例経済報告(平成11年11月)

平成11年11月16日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、収入が低迷していることなどから、このところ足踏み状態にある。住宅建設は、マンションの着工が増加しており、前年を上回る水準で推移している。設備投資は、なお大幅な減少基調が続いている。公共投資は、事業の実施が進んでいるが、着工は低調な動きとなっている。輸出は、アジア向けを中心に、増加している。

在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準になっている。こうした中、生産は、持ち直しの動きがみられる。

雇用情勢は、残業時間などの増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。

企業収益は、持ち直してきた。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。

以上のように、景気は、民間需要の回復力が弱く、厳しい状況をなお脱していないが、各種の政策効果の浸透に加え、アジア経済の回復などの影響もあって、緩やかな改善が続いている。

政府は、将来の公需の鈍化等が景気減速をもたらしかねないとの懸念を払拭しつつ、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、景気を本格的な回復軌道に乗せていくとともに、21世紀の新たな発展基盤を築くため、11月11日に経済新生対策を決定したところであり、その強力な推進を図ることとする。


我が国経済:需要面をみると、個人消費は、収入が低迷していることなどから、このところ足踏み状態にある。住宅建設は、マンションの着工が増加しており、前年を上回る水準で推移している。設備投資は、なお大幅な減少基調が続いている。公共投資は、事業の実施が進んでいるが、着工は低調な動きとなっている。

産業面をみると、在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準になっている。こうした中、鉱工業生産は、持ち直しの動きがみられる。企業収益は、持ち直してきた。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。企業倒産件数は、春先からやや増加しているものの、信用保証制度の拡充の効果などで前年の水準を下回っている。

雇用情勢は、残業時間などの増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。

輸出は、アジア向けを中心に、増加している。輸入は、アジアからの輸入が増加基調にあり、緩やかに増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、10月は月初の105円台から一時107円台まで下落したが、その後やや上昇し、11月上旬にかけて104円台から106円台で推移した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、下げ止まっている。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、10月から11月上旬にかけて上昇した。長期金利は、10月は上昇した後、11月上旬はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、10月は上旬に上昇した後、中旬以降下落し、月末から11月上旬にかけて大幅に上昇した。マネーサプライ(M+CD)は、10月は前年同月比3.5%増となった。また、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、99年4~6月期前期比年率1.9%増の後、7~9月期は同4.8%増となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資は減少した。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準である。10月の長期金利(30年物国債)は、月末に低下したことを除けば、総じて上昇基調で推移した。株価(ダウ平均)は、上旬に上昇、その後半ばにかけて下落したが、さらにその後上昇し、月初と月末を比較すると上昇した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに改善してきている。フランスでは、景気は緩やかな拡大を続けている。イギリスでは、景気は改善してきている。鉱工業生産は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランス、イギリスでは増加している。失業率は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している。物価は、安定している。欧州中央銀行は、11月4日、M3増加率の加速などにみられる将来のインフレ圧力を抑制するため、政策金利(主要オペレート)を0.5%ポイント引き上げ、3.0%とした。また、同日、イングランド銀行も、政策金利(レポ金利)を0.25%ポイント引き上げ、5.5%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は下落している。輸出は大幅に拡大している。韓国では、景気は急速に回復している。失業率は低下している。

国際金融市場の10月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、ほぼ横ばいで推移した。

国際商品市況の10月の動きをみると、CRB商品先物指数は、月初から下落し、中旬にかけ急上昇したものの、その後は再び下落基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、概ね21~23ドルのレンジ内で上下した。

1.国内需要:個人消費は、このところ足踏み状態

個人消費は、収入が低迷していることなどから、このところ足踏み状態にある。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で8月0.1%増の後、9月(速報値)は2.9%減(季節調整済前月比1.9%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比3.7%減、勤労者以外の世帯では同1.6%減となった。形態別にみると、 サービス等は減少、耐久財は増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比3.0%減、勤労者世帯では同4.1%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で8月1.2%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で8月1.6%減の後、9月(速報値)は2.0%減(季節調整済前月比0.5%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で8月2.7%減の後、9月(速報値)5.3%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で8月4.9%減の後、9月1.4%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で10月(速報値)は6.8%減となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で9月は5.9%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、9月は前年同月比で国内旅行が2.9%減、海外旅行は1.6%減となった。

当庁「消費動向調査」(9月調査)によると、消費者態度指数(季節調整値)は、6月に前期差0.7ポイント低下の後、9月には同0.3ポイントの上昇となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で8月0.4%減の後、9月(速報)は0.6%増(事業所規模30人以上では同1.1%増)となり、うち所定外給与は、9月(速報)は同3.7%増(事業所規模30人以上では同2.4%増)となった。実質賃金は、前年同月比で8月0.8%減の後、9月(速報)は0.9%増(事業所規模30人以上では同1.3%増)となった。なお、平成11年夏季賞与は、事業所規模5人以上では前年比3.7%減(前年は同2.1%減)となった。また、民間主要企業の夏季一時金妥結額(労働省調べ)は前年比5.65%減(前年は同1.11%増)となった。

住宅建設は、マンションの着工が増加しており、前年を上回る水準で推移している。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で8月10.7%増(前年同月比8.4%増)となった後、9月は1.3%減(前年同月比10.5%増)の10万5千戸(年率126万戸)となった。9月の着工床面積(季節調整値)は、前月比0.1%減(前年同月比14.8%増)となった。9月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比2.2%減(前年同月比12.3%増)、貸家は同1.9%減(同0.9%増)、分譲住宅は同2.6%減(同25.0%増)となっている。

設備投資は、なお大幅な減少基調が続いている。

当庁「法人企業動向調査」(11年9月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、季節調整済前期比で11年4~6月期(実績)7.5%増(うち製造業5.3%増、非製造業7.3%増)の後、11年7~9月期(実績見込み)は6.0%減(同10.0%減、同3.3%減)となっている。年度計画では、前年比で10年度(実績)5.3%減(うち製造業6.3%減、非製造業4.8%減)の後、11年度(計画)は9.4%減(同11.3%減、同8.3%減)となっている。

なお、11年4~6月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で13.4%減(うち製造業24.6%減、非製造業6.6%減)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で8月は2.7%増(前年同期比4.1%減)の後、9月は4.6%増(同6.7%減)となり、基調には、製造業を中心とした底固めへの動きがみられ、今後の受注動向を注視していく必要がある。

なお、10~12月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で2.8%減(前年同期比4.7%減)と見込まれている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、9月は季節調整済前月比7.1%増(前年同月比1.8%減)とやや増加したものの、前年を下回る水準が続いている。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比23.7%増(前年同月比12.1%減)、非製造業は同3.7%増(同0.6%増)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、事業の実施が進んでいるが、着工は低調な動きとなっている。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で8月7.4%減の後、9月は10.8%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で9月15.3%減の後、10月は18.4%減となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で8月7.1%減の後、9月は15.3%減となった。

2.生産雇用:持ち直しの動きがみられる生産

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準になっている。こうした中、生産・出荷は、持ち直しの動きがみられる。

鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で8月4.4%増の後、9月(速報)は、輸送機械、精密機械等が増加したものの、一般機械、電気機械等が減少したことから、0.8%減となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で10月は輸送機械、鉄鋼等により0.9%減の後、11月は輸送機械、電気機械等により3.8%増となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で8月3.8%増の後、9月(速報)は、耐久消費財、建設財等が減少したことから、0.3%減となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で8月0.3%増の後、9月(速報)は、輸送機械、金属製品等が増加したものの、電気機械、石油・石炭製品等が減少したことから、0.2%減となった。また、9月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は100.7と前月を0.2ポイント上回った。

主な業種について最近の動きをみると、一般機械では、生産は9月は減少し、在庫は9月は減少した。電気機械では、生産は9月は減少し、在庫は2か月連続で減少した。化学では、生産は9月は減少し、在庫は9月は減少した。

第3次産業の動向を通商産業省「第3次産業活動指数」(8月調査、季節調整値)でみると、7月0.3%減の後、8月(速報)は、金融・保険業が減少したものの、運輸・通信業、不動産業等が増加した結果、前月比1.4%増となった。

農業生産の動向をみると、平成11年産水稲の全国作況指数(10月15日現在)は、101の「平年並み」となっている。

雇用情勢は、残業時間などの増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、8月0.46倍の後、9月0.47倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、8月0.81倍の後、9月0.88倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、8月は前年同月比0.3%減(前年同月差14万人減)の後、9月は0.1%増(同8万人増)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、8月前年同月比0.2%減(季節調整済前月比0.2%増)の後、9月(速報)は同0.1%減(同0.0%)となり(事業所規模30人以上では前年同月比1.2%減)、産業別には製造業では同2.1%減となった。9月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差2万人減の315万人、完全失業率(同)は、8月4.7%の後、9月4.6%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では8月前年同月比4.5%増(季節調整済前月比2.4%増)の後、9月(速報)は同6.8%増(同1.2%増) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比6.7%増)。

企業の動向をみると、企業収益は、持ち直してきた。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。

大企業の動向を前記「法人企業動向調査」(9月調査、季節調整値)でみると、11年7~9月期の売上高、経常利益の判断(ともに「増加」-「減少」)は、「減少」超幅が縮小した。また、11年7~9月期の企業経営者の景気判断(業界景気の判断、「上昇」-「下降」)は「下降」超幅が縮小した。

また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(9月調査、季節調整値)でみると、売上げD.I.(「増加」-「減少」)は、11年7~9月期は「減少」超幅が縮小し、純益率D.I.(「上昇」-「低下」)は、「低下」超幅が縮小した。業況判断D.I.(「好転」-「悪化」)は、11年7~9月期は「悪化」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、件数は、春先からやや増加しているものの、信用保証制度の拡充の効果などで前年の水準を下回っている。

銀行取引停止処分者件数は、9月は933件で前年同月比14.5%減となった。業種別に件数の前年同月比をみると、製造業で14.2%、建設業で11.6%の減少となった。

3.国際収支:輸出は、アジア向けを中心に、増加

輸出は、アジア向けを中心に、増加している。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で8月1.7%増の後、9月は3.5%増(前年同月比6.2%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、電気機器、輸送用機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。

輸入は、アジアからの輸入が増加基調にあり、緩やかに増加している。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で8月9.2%増の後、9月2.1%減(前年同月比10.6%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、鉱物性燃料、製品類(機械機器)等が増加した。同じく地域別にみると、中東、アジア等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、8月に9,555億円の黒字の後、9月は1兆1,560億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。

9月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大し、サービス収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、6,366億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、貿易・サービス収支の黒字幅が拡大したものの、所得収支の黒字幅が縮小し、経常移転収支の赤字幅が拡大したため、その黒字幅は縮小し、8,117億円となった。投資収支(原数値)は、6,671億円の黒字となり、資本収支(原数値)は、1,966億円の黒字となった。

10月末の外貨準備高は、前月比4億ドル増加して2,728億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、10月は月初の105円台から一時107円台まで下落したが、その後やや上昇し、11月上旬にかけて104円台から106円台で推移した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、10月は月初の113円台から115円台に下落した後、11月上旬にかけて109円台まで上昇した。

4.物価:国内卸売物価は、下げ止まり

国内卸売物価は、下げ止まっている。

10月の国内卸売物価は、化学製品(塩化ビニル樹脂)等が上昇したものの、電力・都市ガス・水道(業務用電力)等が下落したことから、前月比0.1%の下落(前年同月比0.8%の下落)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで上昇したことから、円ベースでは前月比0.4%の上昇(前年同月比8.5%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したことから、円ベースでは前月比0.9%の上昇(前年同月比4.1%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.1%の上昇(前年同月比2.1%の下落)となった。

企業向けサービス価格は、9月は前年同月比1.0%の下落(前月比0.1%の下落)となった。

商品市況(月末対比)は繊維等は下落したものの、化学等の上昇により10月は上昇した。10月の動きを品目別にみると、毛糸等は下落したものの、塩化ビニール樹脂等が上昇した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で8月保合いの後、9月は一般食料工業製品の上昇幅の縮小等の一方、その他工業製品の下落幅の縮小等により保合い(前月比0.4%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で8月0.3%の上昇の後、9月は0.2%の下落(前月比0.3%の上昇)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で9月保合いの後、10月(中旬速報値)は、一般食料工業製品の上昇幅の縮小等により0.2%の下落(前月比0.1%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で9月0.1%の下落の後、10月(中旬速報値)は0.9%の下落(前月比保合い)となった。

5.金融財政:短期金利は、上昇

最近の金融情勢をみると、短期金利は、10月から11月上旬にかけて上昇した。長期金利は、10月は上昇した後、11月上旬はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、10月は上旬に上昇した後、中旬以降下落し、月末から11月上旬にかけて大幅に上昇した。M+CDは、10月は前年同月比3.5%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、10月から11月上旬にかけて横ばいで推移した。2、3か月物は、10月から11月上旬にかけて上昇した。

公社債市場をみると、国債利回りは、10月は上昇した後、11月上旬はおおむね横ばいで推移した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、8月は短期は0.009%ポイント上昇し、長期は0.101%ポイント低下したことから、総合では前月比で0.024%ポイント低下し1.795%となった。

マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、10月(速報)は前年同月比 3.5%増となった。また、広義流動性は、10月(速報)は同 3.3%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、10月(速報)は前年同月比5.5%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後 1.6%減)となった。10月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が200億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は6,540億円となった。

企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

株式市場をみると、日経平均株価は、10月は上旬に上昇した後、中旬以降下落し、月末から11月上旬にかけて大幅に上昇した。

6.海外経済:欧州、利上げ

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、99年4~6月期前期比年率1.9%増の後、7~9月期は同4.8%増となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資は減少した。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は9月前月差4.1万人増の後、10月は同31.0万人増となった。失業率は10月4.1%と70年1月以来の低水準を記録した。物価は総じて安定している。9月の消費者物価は前年同月比2.6%の上昇、10月の生産者物価(完成財総合)は同2.7%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準である。10月の長期金利(30年物国債)は、月末に低下したことを除けば、総じて上昇基調で推移した。株価(ダウ平均)は、上旬に上昇、その後半ばにかけて下落したが、さらにその後上昇し、月初と月末を比較すると上昇した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに改善してきている。フランスでは、景気は緩やかな拡大を続けている。イギリスでは、景気は改善してきている。実質GDPは、ドイツ4~6月期前期比年率0.2%増、フランス4~6月期同2.5%増、イギリス7~9月期同3.7%増(速報値)となった。鉱工業生産は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランス、イギリスでは増加している(鉱工業生産は、ドイツ9月前月比2.5%減、フランス7・8月同1.5%増、イギリス9月同0.2%減)。失業率は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ10月10.5%、フランス9月11.1%、イギリス9月4.2%)。物価は、安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ10月前年同月比0.8%、フランス10月同0.8%、イギリス9月同1.1%)。欧州中央銀行は、11月4日、M3増加率の加速などにみられる将来のインフレ圧力を抑制するため、政策金利(主要オペレート)を0.5%ポイント引き上げ、3.0%とした。また、同日、イングランド銀行も、政策金利(レポ金利)を0.25%ポイント引き上げ、5.5%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は下落している。輸出は大幅に増加している。韓国では、景気は急速に回復している。失業率は低下している。

国際金融市場の10月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、ほぼ横ばいで推移した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)をみると、10月29日現在105.4、9月末比0.3%の減価となっている。内訳をみると、10月29日現在、対円では9月末比2.1%減価、対ユーロでは同1.4%増価した。

国際商品市況の10月の動きをみると、CRB商品先物指数は、月初から下落し、中旬にかけ急上昇したものの、その後は再び下落基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、概ね21~23ドルのレンジ内で上下した。


今月のトピック:持ち直しの動きがみられる鉱工業生産

1.99年7-9月期の鉱工業生産は、工業製品の原材料や部品となる生産財等の伸びにより、前期比3.9%増と大幅な伸びを示した。76年1-3月期以来の高い伸びである。

2.生産財の生産の伸びを支える要因としては、アジア向けを中心とした生産財輸出の増加があると考えられる。