月例経済報告(平成11年10月)

平成11年10月15日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、緩やかに回復してきたが、収入が低迷していることなどから、このところ足踏み状態にある。住宅建設は、マンションの着工が増加しており、前年を上回る水準で推移している。設備投資は、なお大幅な減少基調が続いている。公共投資は、着工の動きはこのところ低調だが、事業の実施が進んでいる。輸出は、アジア向けが回復傾向にあるため、緩やかに増加している。

在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準になっている。こうした中、生産は、持ち直しの動きがみられる。

雇用情勢は、依然として厳しい。勤め先や事業の都合による失業者が依然多く、完全失業率は高水準で推移している。

企業収益は、持ち直してきた。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。

以上のように、景気は、民間需要の回復力が弱く、厳しい状況をなお脱していないが、各種の政策効果の浸透などにより、緩やかな改善が続いている。

政府は、将来の公需の鈍化等が景気減速をもたらしかねないとの懸念を払拭しつつ、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、景気を本格的な回復軌道に乗せていくとともに、新たな発展基盤の確立を目指すため、今後の我が国の経済運営の指針ともなる総合的な経済対策を早急に策定し、平成11年度第2次補正予算を編成する。


我が国経済:需要面をみると、個人消費は、緩やかに回復してきたが、収入が低迷していることなどから、このところ足踏み状態にある。住宅建設は、マンションの着工が増加しており、前年を上回る水準で推移している。設備投資は、なお大幅な減少基調が続いている。公共投資は、着工の動きはこのところ低調だが、事業の実施が進んでいる。

産業面をみると、在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準になっている。こうした中、鉱工業生産は、持ち直しの動きがみられる。企業収益は、持ち直してきた。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。企業倒産件数は、春先からやや増加しているものの、信用保証制度の拡充の効果などで前年の水準を下回っている。

雇用情勢は、依然として厳しい。勤め先や事業の都合による失業者が依然多く、完全失業率は高水準で推移している。

輸出入は、対アジア輸出入の動向を反映して、緩やかに増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、9月は109円台から110円台で推移した後、104円台まで上昇したが、月末には106円台に下落した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、下げ止まっている。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、9月は横ばいで推移した。長期金利は、9月は低下した。株式相場は、9月は一進一退で推移した。マネーサプライ(M+CD)は、8月は前年同月比3.5%増となった。また、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、99年1~3月期前期比年率4.3%増の後、4~6月期は同1.6%増となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資は1~3月期の大幅増の反動もあり、伸びが鈍化している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は一時的要因により減少した。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。連邦準備制度は、10月5日の連邦公開市場理事会(FOMC)において、金融政策姿勢をそれまでの「中立」から「引締め」方向へ転換したことを発表した。9月の長期金利(30年物国債)は、ほぼ横ばいで推移した。株価(ダウ平均)は、上旬にやや上昇したもののその後は下落し、月初と月末を比べると下落した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに改善してきている。フランスでは、景気は緩やかな拡大を続けている。イギリスでは、景気は改善してきている。鉱工業生産は、ドイツでは増加に転じた。フランスではほぼ横ばいで推移しており、イギリスでは増加している。失業率は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している。物価は、安定している。なお、イングランド銀行は、9月8日に政策金利を0.25%引き上げ、年5.25%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は下落している。韓国では、景気は急速に回復している。失業率は高水準ながらも低下している。

国際金融市場の9月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、月を通じてはやや減価した。

国際商品市況の9月の動きをみると、CRB商品先物指数は、月初から上昇基調で推移し、中旬にやや弱含む場面がみられたものの、月末にかけては208ポイント台まで上昇した。原油スポット価格(北海ブレント)は、上旬から上昇基調で推移し、中旬にはやや弱含んだが、下旬には23ドル台まで上昇した。

1.国内需要:個人消費は、緩やかに回復してきたが、このところ足踏み状態

個人消費は、緩やかに回復してきたが、収入が低迷していることなどから、このところ足踏み状態にある。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で7月1.4%増の後、8月は0.1%増(季節調整済前月比1.1%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比1.1%減、勤労者以外の世帯では同2.3%増となった。形態別にみると、財は減少、 サービスは増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比0.1%増、勤労者世帯では同1.5%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で7月2.1%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で7月2.4%減の後、8月は1.4%減(季節調整済前月比0.3%増)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で7月2.1%減の後、8月2.9%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で7月5.1%減の後、8月4.9%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で9月は3.3%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で8月は2.5%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、8月は前年同月比で国内旅行が0.7%増、海外旅行は0.6%減となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で7月2.1%減の後、8月(速報)は1.1%減(事業所規模30人以上では同0.8%減)となり、うち所定外給与は、8月(速報)は同2.3%増(事業所規模30人以上では同1.5%増)となった。実質賃金は、前年同月比で7月2.0%減の後、8月(速報)は1.5%減(事業所規模30人以上では同1.1%減)となった。なお、6~8月合算の特別給与(速報)は、前年同期比7.1%減(前年は同3.9%減)となった。

住宅建設は、マンションの着工が増加しており、前年を上回る水準で推移している。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で7月11.7%減(前年同月比1.9%増)となった後、8月は10.7%増(前年同月比8.4%増)の10万6千戸(年率128万戸)となった。8月の着工床面積(季節調整値)は、前月比12.9%増(前年同月比11.5%増)となった。8月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比11.1%増(前年同月比12.9%増)、貸家は同2.7%増(同0.3%増)、分譲住宅は同31.4%増(同16.7%増)となっている。

設備投資は、なお大幅な減少基調が続いている。

日本銀行「企業短期経済観測調査」(9月調査)により設備投資の動向をみると、大企業の11年度設備投資計画は、製造業で前年度比9.8%減(6月調査比1.3%上方修正)、非製造業で同9.1%減(同3.2%下方修正)となっており、全産業では同9.4%減(同1.6%下方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比16.3%減(6月調査比3.5%上方修正)、非製造業で同5.1%減(同2.2%上方修正)となり、中小企業では製造業で同29.1%減(同5.5%上方修正)、非製造業で20.4%減(同3.4%上方修正)となっている。

なお、11年4~6月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で13.4%減(うち製造業24.6%減、非製造業6.6%減)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で7月は5.4%減(前年同期比7.5%減)の後、8月は2.7%増(同4.1%減)となり、基調は減少傾向となっている。ただし、このところ製造業の動きには底堅さがみられる。なお、7~9月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前期比で4.0%増(前年同期比5.9%減)と見込まれている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、8月は季節調整済前月比15.4%増(前年同月比1.7%減)となったが、低水準での推移となっている。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比9.7%増(前年同月比18.7%減)、非製造業は同16.5%増(同1.8%増)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、着工の動きはこのところ低調だが、事業の実施が進んでいる。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で7月7.9%減の後、8月は7.4%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で8月6.6%減の後、9月は15.3%減となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で7月17.4%減の後、8月は7.1%減となった。

2.生産雇用:持ち直しの動きがみられる生産

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準になっている。こうした中、生産・出荷は、持ち直しの動きがみられる。

鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で7月0.6%減の後、8月(速報)は、電気機械、輸送機械等が増加したことから、4.6%増となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で9月は電気機械、鉄鋼等により1.3%減の後、10月は輸送機械、一般機械等により0.7%減となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で7月1.1%減の後、8月(速報)は、生産財、耐久消費財等が増加したことから、4.0%増となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で7月1.3%減の後、8月(速報)は、電気機械、石油・石炭製品等が減少したものの、輸送機械、金属製品等が増加したことから、0.2%増となった。また、8月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は99.4と前月を2.3ポイント下回った。

主な業種について最近の動きをみると、電気機械では、生産は4か月連続で増加し、在庫は8月は減少した。輸送機械では、生産は4か月連続で増加し、在庫は3か月連続で増加した。化学では、生産は8月は増加し、在庫は6か月連続で減少した。

第3次産業の動向を通商産業省「第3次産業活動指数」(7月調査、季節調整値)でみると、6月0.1%増の後、7月(速報)は、運輸・通信業、金融・保険業が増加したものの、不動産業、電気・ガス・熱供給・水道業等が減少した結果、前月比0.3%減となった。

農業生産の動向をみると、平成11年産水稲の全国作況指数(9月15日現在)は、102の「やや良」となっている。

雇用情勢は、依然として厳しい。勤め先や事業の都合による失業者が依然多く、完全失業率は高水準で推移している。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、7月0.46倍の後、8月0.46倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、7月0.87倍の後、8月0.81倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、7月前年同月比1.2%減(前年同月差63万人減)の後、8月は同0.3%減(同14万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、7月前年同月比0.4%減(季節調整済前月比0.0%)の後、8月(速報)は同0.2%減(同0.2%増)となり(事業所規模30人以上では前年同月比1.2%減)、産業別には製造業では同2.2%減となった。8月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差13万人減の317万人、完全失業率(同)は、7月4.9%の後、8月4.7%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では7月前年同月比2.6%増(季節調整済前月比2.8%増)の後、8月(速報)は同4.5%増(同2.4%増) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比4.0%増)。

前記「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、企業の雇用人員判断は、過剰感が若干低下したものの、依然として高い水準にある。

企業の動向をみると、企業収益は、持ち直してきた。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。

前記「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、大企業(全産業)では、経常利益は11年度上期には前年同期比5.3%の減益の後、11年度下期には同28.8%の増益が見込まれている。産業別にみると、製造業では11年度上期に前年同期比14.3%の減益の後、11年度下期には、同65.9%の増益が見込まれている。また、非製造業では11年度上期に前年同期比3.6%の増益の後、11年度下期には同4.4%の増益が見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では11年度上期に3.04%となった後、11年度下期は4.34%と見込まれている。また、非製造業では11年度上期に2.08%となった後、11年度下期は2.33%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。

また、中小企業の動向を同調査でみると、製造業では、経常利益は11年度上期には前年同期比93.6%の増益の後、11年度下期には同44.4%の増益が見込まれている。また、非製造業では、11年度上期に前年同期比5.0%の増益の後、11年度下期には同18.1%の増 益が見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、件数は、春先からやや増加しているものの、信用保証制度の拡充の効果などで前年の水準を下回っている。

銀行取引停止処分者件数は、8月は882件で前年同月比14.3%減となった。業種別に件数の前年同月比をみると、製造業で17.1%、建設業で4.4%の減少となった。

3.国際収支:輸出は、アジア向けが回復傾向にあるため、緩やかに増加

輸出は、アジア向けが回復傾向にあるため、緩やかに増加している。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で7月0.7%減の後、8月は1.7%増(前年同月比5.0%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、電気機器、輸送用機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。

輸入は、アジアからの輸入が増加基調にあり、緩やかに増加している。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で7月3.7%減の後、8月9.2%増(前年同月比13.6%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、鉱物性燃料、製品類(機械機器)等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、中東等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、7月に1兆2,329億円の黒字の後、8月は9,555億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。

8月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が縮小し、サービス収支の赤字幅が拡大したため、その黒字幅は縮小し、5,298億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、所得収支の黒字幅が拡大し、経常移転収支の赤字幅が縮小したものの、貿易・サービス収支の黒字幅が縮小したため、その黒字幅は縮小し、1兆1,240億円となった。投資収支(原数値)は、1兆5,317億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、1兆5,904億円の赤字となった。

9月末の外貨準備高は、前月比110億ドル増加して2,724億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、9月は109円台から110円台で推移した後、104円台まで上昇したが、月末には106円台に下落した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、9月は月初の116円台から118円台に下落した後、108円台まで上昇したが、月末には112円台に下落した。

4.物価:国内卸売物価は、下げ止まり

国内卸売物価は、下げ止まっている。

9月の国内卸売物価は、スクラップ類(鉄くず)等が下落したものの、石油・石炭製品(燃料油)等が上昇したことから、前月比保合い(前年同月比1.3%の下落)となった。また、前記「全国企業短期経済観測調査」(大企業、9月調査)によると、製商品需給バランスは、依然緩んだ状態にあるものの、引き続き改善がみられる。輸出物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比2.9%の下落(前年同月比14.3%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比1.8%の下落(前年同月比10.4%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.5%の下落(前年同月比3.9%の下落)となった。

企業向けサービス価格は、8月は前年同月比1.1%の下落(前月比0.2%の下落)となった。

商品市況(月末対比)は木材等は下落したものの、石油等の上昇により9月は上昇した。9月の動きを品目別にみると、合板等は下落したものの、C重油等が上昇した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で7月保合いの後、8月は一般生鮮商品が上昇から下落に転じたこと等の一方、その他工業製品の下落幅の縮小等により保合い(前月比0.1%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で7月0.1%の下落の後、8月は0.3%の上昇(前月比0.3%の上昇)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で8月0.1%の下落の後、9月(中旬速報値)は、一般生鮮商品の下落幅の縮小等により保合い(前月比0.5%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で8月0.3%の上昇の後、9月(中旬速報値)は0.1%の下落(前月比0.4%の上昇)となった。

5.金融財政:株式相場は、一進一退で推移

最近の金融情勢をみると、短期金利は、9月は横ばいで推移した。長期金利は、9月は低下した。株式相場は、9月は一進一退で推移した。M+CDは、8月は前年同月比3.5%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、9月はおおむね横ばいで推移した。2、3か月物は、9月は横ばいで推移した。

公社債市場をみると、国債利回りは、9月は低下した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、8月は短期は0.009%ポイント上昇し、長期は0.101%ポイント低下したことから、総合では前月比で0.024%ポイント低下し1.795%となった。

マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、8月(速報)は前年同月比 3.5%増となった。また、広義流動性は、8月(速報)は同 3.5%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、9月(速報)は前年同月比6.3%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後 1.6%減)となった。9月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が1,760億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は6,997億円となった。

前記「全国企業短期経済観測調査」(全国企業、9月調査)によると、資金繰り判断は「苦しい」超が続いており、金融機関の貸出態度も「厳しい」超が続いているが、改善の動きがみられる。

以上のように、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

株式市場をみると、日経平均株価は、9月は一進一退で推移した。

6.海外経済:原油価格、上昇基調で推移

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、99年1~3月期前期比年率4.3%増の後、4~6月期は同1.6%増となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資は1~3月期の大幅増の反動もあり、伸びが鈍化している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は一時的要因により減少した。雇用者数(非農業事業所)は8月前月差10.3万人増の後、9月は同0.8万人減となった。失業率は9月4.2%となった。物価は総じて安定している。8月の消費者物価は前年同月比2.3%の上昇、8月の生産者物価(完成財総合)は同2.3%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。連邦準備制度は、10月5日の連邦公開市場理事会(FOMC)において、金融政策姿勢をそれまでの「中立」から「引締め」方向へ転換したことを発表した。9月の長期金利(30年物国債)は、ほぼ横ばいで推移した。株価(ダウ平均)は、上旬にやや上昇したもののその後は下落し、月初と月末を比べると下落した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに改善してきている。フランスでは、景気は緩やかな拡大を続けている。イギリスでは、景気は改善してきている。実質GDPは、ドイツ4~6月期前期比年率0.2%増(速報値)、フランス4~6月期同2.5%増、イギリス4~6月期同2.6%増となった。鉱工業生産は、ドイツでは増加に転じた。フランスではほぼ横ばいで推移しており、イギリスでは増加している (鉱工業生産は、ドイツ8月前月比1.1%増、フランス6月同0.8%増、イギリス8月同0.3%増)。失業率は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ9月10.6%、フランス8月11.3%、イギリス8月4.2%)。物価は、安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ9月前年同月比0.7%、フランス8月同0.5%、イギリス8月同1.1%)。なお、イングランド銀行は、9月8日に政策金利を0.25%引き上げ、年5.25%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は下落している。韓国では、景気は急速に回復している。失業率は高水準ながらも低下している。

国際金融市場の9月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、月を通じてはやや減価した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)をみると、9月30日現在105.7、8月末比1.5%の減価となっている。内訳をみると、9月30日現在、対円では8月末比3.0%減価、対ユーロでは同1.1%減価した。

国際商品市況の9月の動きをみると、CRB商品先物指数は、月初から上昇基調で推移し、中旬にやや弱含む場面がみられたものの、月末にかけては208ポイント台まで上昇した。原油スポット価格(北海ブレント)は、上旬から上昇基調で推移し、中旬にはやや弱含んだが、下旬には23ドル台まで上昇した。