月例経済報告(平成11年8月)

平成11年8月10日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済:需要面をみると、個人消費は、収入が低迷しているため力強さはみられないものの、緩やかに回復してきている。住宅建設は、持ち直している。設備投資は、基調として大幅な減少傾向が続いている。公共投資は、総じて堅調に推移している。

産業面をみると、在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準で推移している。こうした中、鉱工業生産は、最終需要の動きを反映して低水準でおおむね横ばいで推移しているが、持ち直しの兆しもみられる。企業収益は、持ち直しの兆しがみられる。また、企業の業況判断は、厳しい状態にあるが改善傾向にある。企業倒産件数は、春先からやや増加しているものの、信用保証制度の拡充の効果などから前年の水準を大幅に下回っている。

雇用情勢は、厳しさを増している。雇用者数が減少し、勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率はこれまでにない高さに上昇した。

輸出は、アジア向けが回復傾向にあるが、全体としては横ばい状態にある。輸入は、緩やかな増加の動きがみられる。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、7月は月初の120円台から122円台に下落した後、下旬にかけて115円台まで上昇した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、このところ下げ止まりの動きがみられる。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、7月は横ばいで推移した。長期金利は、7月はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、7月は上旬から中旬にかけて上昇した後、下落した。マネーサプライ(M+CD)は、6月は前年同月比4.3%増となった。また、民間金融機関の貸出は依然低調であるが、企業金融のひっ迫感はやや緩和している。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、99年1~3月期前期比年率4.3%増の後、4~6月期は同2.3%増(暫定値)となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資は1~3月期の大幅増の反動もあり、伸びが鈍化している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。7月の長期金利(30年物国債)は、中旬に低下したものの、下旬に上昇した。株価(ダウ平均)は、月初に上昇し高水準で推移したが、中旬以降下落した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに減速しているものの、回復の動きもみられる。フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになっている。イギリスでは、景気は減速しているものの、回復の動きもみられる。鉱工業生産は、ドイツ、イギリスでは減少傾向にあるがそのテンポは緩やかになってきており、フランスではほぼ横ばいで推移している。失業率は、ドイツ、フランスでは、高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している。物価は、安定している。

東アジアをみると、中国では、景気拡大のテンポはこのところ鈍化している。韓国では、景気回復の動きが続いている。

国際金融市場の7月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、月前半は増価したものの、後半は大きく減価した。

国際商品市況の7月の動きをみると、CRB商品先物指数は、月央まで下落基調で推移し、5か月振りに185ポイント割れを記録したが、その後は回復し月初の水準まで戻した。原油スポット価格(北海ブレント)は、中旬までほぼ一本調子で上昇し、下旬には一時弱含む場面がみられたが、19ドル台で推移した。


我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、収入が低迷しているため力強さはみられないものの、緩やかに回復してきている。住宅建設は、持ち直している。設備投資は、基調として大幅な減少傾向が続いている。公共投資は、総じて堅調に推移している。輸出は、アジア向けが回復傾向にあるが、全体としては横ばい状態にある。

在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準で推移している。こうした中、生産は、最終需要の動きを反映して低水準でおおむね横ばいで推移しているが、持ち直しの兆しもみられる。

雇用情勢は、厳しさを増している。雇用者数が減少し、勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率はこれまでにない高さに上昇した。

民間金融機関の貸出は依然低調であるが、企業金融のひっ迫感はやや緩和している。

また、企業の景況感は、厳しい状態にあるが改善傾向にある。

以上のように、景気は、民間需要の回復力が弱く厳しい状況にあるが、各種の政策効果の浸透などで、このところやや改善している。

このような厳しい経済状況の下、政府は、緊急経済対策、緊急雇用対策及び産業競争力強化対策等の諸施策を強力に推進する。また、当面の財政運営に当たっては、今後の我が国経済の動向等を十分踏まえ、必要があれば、公共事業等予備費の活用、15か月予算という考え方に立った平成11年度第2次補正予算の編成も含め、機動的・弾力的な対応を行う。

1.国内需要:個人消費は、力強さはみられないものの、緩やかに回復してきている

個人消費は、収入が低迷しているため力強さはみられないものの、緩やかに回復してきている。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で5月2.4%増の後、6月は0.1%減(季節調整済前月比2.3%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比 1.8%減、勤労者以外の世帯では同3.4%増となった。形態別にみると、耐久財等は減少、サービスは増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比0.1%減、勤労者世帯では同2.3%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で5月0.9%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で5月3.4%減の後、6月は2.2%減(季節調整済前月比0.1%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は、前年同月比で5月2.5%減の後、6月2.0%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で5月5.0%減の後、6月3.6%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で7月は4.2%減となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で6月は11.2%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、6月は前年同月比で国内旅行が4.0%減、海外旅行は8.5%減となった。

当庁「消費動向調査」(6月調査)によると、消費者態度指数は、3月に前期差3.3ポイント上昇の後、6月には同0.7ポイントの低下となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で5月0.1%減の後、6月(速報)は4.4%減(事業所規模30人以上では同5.1%減)となり、うち所定外給与は、6月(速報)は同0.6%減(事業所規模30人以上では同0.9%減)となった。実質賃金は、前年同月比で5月0.4%増の後、6月(速報)は4.0%減(事業所規模30人以上では同4.7%減)となった。なお、民間主要企業の春季賃上げ率(労働省調べ)は、2.21%となり、昨年(2.66%)を下回った。

住宅建設は、持ち直している。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で5月2.2%減(前年同月比0.9%減)となった後、6月は6.5%増(前年同月比7.3%増)の10万9千戸(年率131万戸)となった。6月の着工床面積(季節調整値)は、前月比7.6%増(前年同月比15.8%増)となった。6月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比7.3%増(前年同月比29.2%増)、貸家は同2.3%増(同8.2%減)、分譲住宅は同12.8%増(同1.5%減)となっている。

設備投資は、基調として大幅な減少傾向が続いている。

日本銀行「企業短期経済観測調査」(6月調査)により設備投資の動向をみると、大企業の11年度設備投資計画は、製造業で前年度比11.0%減(3月調査比1.5%上方修正)、非製造業で同6.1%減(同1.0%上方修正)となっており、全産業では同7.9%減(同1.2%上方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比19.2%減(3月調査比3.1%上方修正)、非製造業で同7.2%減(同5.6%上方修正)となり、中小企業では製造業で同32.9%減(同4.8%上方修正)、非製造業で23.1%減(同6.0%上方修正)となっている。

なお、11年1~3月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で10.5%減(うち製造業19.1%減、非製造業5.8%減)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で4月は13.8%減(前年同期比14.5%減)の後、5月は3.8%増(同7.5%減)となり、基調は減少傾向となっている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、6月は季節調整済前月比4.6%増(前年同月比23.8%減)となったが、低水準での推移となっている。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比30.5%増(前年同月比29.2%減)、非製造業は同1.6%増(同22.7%減)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、総じて堅調に推移している。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で4月31.9%増の後、5月は2.6%増となった。公共工事請負金額は、前年同月比で5月6.7%減の後、6月は2.7%減となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で5月は4.1%増の後、6月は15.7%減となった。

2.生産雇用:生産は、おおむね横ばいで推移しているが、持ち直しの兆しもみられる

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準で推移している。こうした中、生産・出荷は、最終需要の動きを反映して低水準でおおむね横ばいで推移しているが、持ち直しの兆しもみられる。

鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で5月1.0%減の後、6月(速報)は、プラスチック製品が減少したものの、一般機械、輸送機械等が増加したことから、3.0%増となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で7月は電気機械、鉄鋼等により0.5%増の後、8月は電気機械、輸送機械等により3.7%増となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で5月0.6%増の後、6月(速報)は、生産財、非耐久消費財等が増加したことから、3.1%増となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で5月0.5%減の後、6月(速報)は、輸送機械、石油・石炭製品等が増加したものの、電気機械、鉄鋼等が減少したことから、0.3%減となった。また、6月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は103.2と前月を3.9ポイント下回った。

主な業種について最近の動きをみると、一般機械では、生産は6月は増加し、在庫は6月は減少した。輸送機械では、生産は2か月連続で増加し、在庫は6月は増加した。化学では、生産は6月は増加し、在庫は4か月連続で減少した。

第3次産業の動向を通商産業省「第3次産業活動指数」(5月調査、季節調整値)でみると、4月0.9%減の後、5月は、金融・保険業が減少したものの、サービス業、運輸・通信業等が増加した結果、前月比1.4%増となった。

雇用情勢は、厳しさを増している。雇用者数が減少し、勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率はこれまでにない高さに上昇した。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、5月0.46倍の後、6月0.46倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、5月0.79倍の後、6月0.82倍となった。雇用者数は、減少している。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、6月は前年同月比1.3%減(前年同月差70万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、5月前年同月比0.4%減(季節調整済前月比0.1%減)の後、6月(速報)は同0.5%減(同0.1%減)となり(事業所規模30人以上では前年同月比1.4%減)、産業別には製造業では同2.4%減となった。6月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差14万人増の328万人、完全失業率(同)は、5月4.6%の後、6月4.9%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では5月前年同月比0.1%増(季節調整済前月比2.9%増)の後、6月(速報)は同0.0%(同1.0%減) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比1.5%減)。

企業の動向をみると、企業収益は、持ち直しの兆しがみられる。また、企業の業況判断は、厳しい状態にあるが改善傾向にある。

前記「全国企業短期経済観測調査」(6月調査)によると、大企業(全産業)では、経常利益は10年度下期には前年同期比13.4%の減益の後、11年度上期には同7.2%の減益が見込まれている。産業別にみると、製造業では10年度下期に前年同期比33.0%の減益の後、11年度上期には、同19.4%の減益が見込まれている。また、非製造業では10年度下期に前年同期比7.2%の増益の後、11年度上期には同4.9%の増益が見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では10年度下期に2.71%となった後、11年度上期は2.85%と見込まれている。また、非製造業では10年度下期に2.27%となった後、11年度上期は2.10%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。

また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(6月調査、季節調節値)でみると、売上D.I.(「増加」-「減少」)は、11年4~6月期は「減少」超幅が縮小し、純益率D.I.(「上昇」-「低下」)は、「低下」超幅が縮小した。業況判断D.I.(「好転」-「悪化」)は、11年3月期は「悪化」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、件数は、春先からやや増加しているものの、信用保証制度の拡充の効果などから前年の水準を大幅に下回っている。

銀行取引停止処分者件数は、6月は877件で前年同月比24.1%減となった。業種別に件数の前年同月比をみると、建設業で30.8%、製造業で24.5%の減少となった。

3.国際収支:輸出は、アジア向けが回復傾向にあるが、全体としては横ばい状態

輸出は、アジア向けが回復傾向にあるが、全体としては横ばい状態にある。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で5月4.0%減の後、6月は7.4%増(前年同月比2.7%増)となった。この動きを品目別(金額ベース)にみると、電気機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア等が増加した。

輸入は、緩やかな増加の動きがみられる。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で5月7.1%減の後、6月5.7%増(前年同月比6.6%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、鉱物性燃料、製品類(繊維製品)等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、中東等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、5月に1兆549億円の黒字の後、6月は1兆547億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。

5月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大するとともに、サービス収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、7,509億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、貿易・サービス収支及び所得収支の黒字幅が拡大するとともに、経常移転収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、1兆2,966億円となった。投資収支(原数値)は、9,057億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、1兆2,792億円の赤字となった。

7月末の外貨準備高は、前月比143億ドル増加して2,607億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、7月は月初の120円台から122円台に下落した後、下旬にかけて115円台まで上昇した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、7月は月初の125円台から122円台まで上昇した後、月末には123円台に下落した。

4.物価:国内卸売物価は、このところ下げ止まりの動き

国内卸売物価は、このところ下げ止まりの動きがみられる。

7月の国内卸売物価は、電気機器(カーオーディオ)等が下落したものの、電力・都市ガス・水道(業務用電力)等が上昇したことから、前月比0.2%の上昇(前年同月比1.5%の下落)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したことに加え、円高から円ベースでは前月比0.6%の下落(前年同月比11.6%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したことから、円ベースでは前月比0.6%の上昇(前年同月比10.0%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.2%の上昇(前年同月比3.8%の下落)となった。

企業向けサービス価格は、6月は前年同月比1.2%の下落(前月比保合い)となった。

商品市況(月末対比)は石油等は上昇したものの、「その他」等の下落により7月は下落した。7月の動きを品目別にみると、C重油等は上昇したものの、天然ゴム等が下落した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で5月保合いの後、6月は一般食料工業製品の上昇幅の縮小等の一方、その他工業製品の下落幅の縮小等により保合い(前月比0.1%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で5月0.4%の下落の後、6月は0.3%の下落(前月比0.3%の下落)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で6月0.1%の下落の後、7月(中旬速報値)は、外食が保合いから上昇となったこと等により保合い(前月比0.3%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で6月0.4%の下落の後、7月(中旬速報値)は保合い(前月比0.4%の下落)となった。

5.金融財政:株式相場は、上旬から中旬にかけて上昇した後、下落

最近の金融情勢をみると、短期金利は、7月は横ばいで推移した。長期金利は、7月はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、7月は上旬から中旬にかけて上昇した後、下落した。M+CDは、6月は前年同月比4.3%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレート、2、3か月物ともに、7月は横ばいで推移した。

公社債市場をみると、国債利回りは、7月はおおむね横ばいで推移した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、前月比でみると6月は短期は0.003%ポイント上昇し、長期は0.009%ポイント低下したことから、総合では0.005%ポイント上昇し1.723%となった。

マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、6月(速報)は前年同月比 4.3%増となった。また、広義流動性は、6月(速報)は同 4.0%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、6月(速報)は前年同月比 5.7%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後 1.2%減)となった。7月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が550億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は5,908億円となった。

民間金融機関の貸出は依然低調であるが、企業金融のひっ迫感はやや緩和している。

株式市場をみると、日経平均株価は、7月は上旬から中旬にかけて上昇した後、下落した。

6.海外経済:米ドル、減価

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、99年1~3月期前期比年率4.3%増の後、4~6月期は同2.3%増(暫定値)となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資は1~3月期の大幅増の反動もあり、伸びが鈍化している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。雇用者数(非農業事業所)は5月前月差0.5万人減の後、6月は同26.8万人増となった。失業率は6月4.3%となった。物価は総じて安定している。6月の消費者物価は前年同月比2.0%の上昇、生産者物価(完成財総合)は同1.5%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。7月の長期金利(30年物国債)は、中旬に低下したものの、下旬に上昇した。株価(ダウ平均)は、月初に上昇し高水準で推移したが、中旬以降下落した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに減速しているものの、回復の動きもみられる。フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになっている。イギリスでは、景気は減速しているものの、回復の動きもみられる。実質GDPは、ドイツ99年1~3月期前期比年率1.8%増、フランス同1.8%増、イギリス4~6月期同1.8%増(速報値)となった。鉱工業生産は、ドイツ、イギリスでは減少傾向にあるがそのテンポが緩やかになってきており、フランスではほぼ横ばいで推移している(5月の鉱工業生産は、ドイツ前月比0.1%増、フランス同0.6%増、イギリス同0.1%増)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ6月10.5%、フランス6月11.3%、イギリス6月4.4%)。物価は、安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ7月前年同月比0.6%(速報値)、フランス6月同0.3%、イギリス6月同1.3%)。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはこのところ鈍化している。物価の下落幅は拡大傾向にある。韓国では、景気回復の動きが続いている。失業率は高水準ながらも低下している。

国際金融市場の7月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、月前半は増価したものの、後半は大きく減価した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)をみると、7月30日現在108.5、6月末比2.3%の減価となっている。内訳をみると、7月30日現在、対円では6月末比5.6%減価、対ユーロでは同3.4%減価となった。

国際商品市況の7月の動きをみると、CRB商品先物指数は、月央まで下落基調で推移し、5か月振りに185ポイント割れを記録したが、その後は回復し月初の水準まで戻した。原油スポット価格(北海ブレント)は、中旬までほぼ一本調子で上昇し、下旬には一時弱含む場面がみられたが、19ドル台で推移した。