月例経済報告(平成11年5月)

平成11年5月14日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済:需要面をみると、個人消費は、収入が低迷しているため、低調に推移している。住宅建設は、持ち直してきている。設備投資は、大幅な減少が続いている。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。公共投資は、補正予算などの効果が本格化し、堅調な動きとなっている。

産業面をみると、鉱工業生産は、最終需要が低調なため低い水準にあるものの、下げ止まりつつある。一方、在庫の調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、厳しい状態にあるが改善の動きがみられる。企業倒産件数は、信用保証制度の拡充の効果などから前年の水準を大幅に下回ってきた。

雇用情勢は、厳しさを増している。雇用者数が減少し、勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率はこれまでにない高さに上昇した。

輸出は、おおむね横ばい状態となっている。輸入は、足踏み状態を続けてきたが、緩やかな増加の動きがみられる。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、4月はおおむね118円台から121円台で推移した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、4月はおおむね横ばいで推移した。長期金利は、4月は低下した。株式相場は、4月は上昇した。マネーサプライ(M+CD)は、3月は前年同月比3.7%増となった。また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っている。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、98年10~12月期前期比年率6.0%増の後、1~3月期は同4.5%増(暫定値)となった。個人消費、住宅投資、設備投資は増加している。鉱工業生産(総合)の伸びは鈍化している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。物価は安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、このところ拡大している。4月の長期金利(30年物国債)は、上旬にやや低下する場面があったものの、全体としてはほぼ横ばいの推移となった。株価(ダウ平均)は、ほぼ一本調子で上昇した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気拡大のテンポは鈍化しており、フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。イギリスでは、景気は減速している。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは伸びが鈍化しており、イギリスでは製造業を中心に減少している。失業率は、ドイツでは、これまで低下してきたが、4月にはやや上昇した。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは横ばいで推移している。物価は、安定している。

東アジアをみると、中国では、景気は拡大しているが、輸出は減少傾向にある。物価は下落している。韓国では、景気は底入れしたとみられる。失業率は高水準ながらやや低下している。輸入は増加に転じている。

国際金融市場の4月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、総じてほぼ横ばいで推移した。

国際商品市況の4月の動きをみると、月初にやや弱含む場面がみられたが、その後は、一定のレンジ内で上下する展開となった。原油スポット価格(北海ブレント)は、上昇基調で推移し、月末にかけては騰勢を一段と強め、97年12月以来となる16ドル/バレル台半ばの水準まで上昇した。


我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、収入が低迷しているため、低調に推移している。住宅建設は、持ち直してきている。設備投資は、大幅な減少が続いている。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。公共投資は、補正予算などの効果が本格化し、堅調な動きとなっている。輸出は、おおむね横ばい状態となっている。

生産は、最終需要が低調なため低い水準にあるものの、下げ止まりつつある。一方、在庫の調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。

雇用情勢は、厳しさを増している。雇用者数が減少し、勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率はこれまでにない高さに上昇した。

民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っているが、信用保証制度の拡充の効果などから、企業倒産は前年の水準を大幅に下回ってきた。一方、金融システム安定化策や金融緩和政策の効果が浸透し、一頃に比べて株価が持ち直すなど金融・資本市場も安定感を取り戻してきた。

以上のように、景気は、民間需要が低調なため依然として極めて厳しい状況にあるが、各種の政策効果に下支えされて、下げ止まりつつある。

このような厳しい経済状況の下、政府は、緊急経済対策の実施状況と今後の予定を取りまとめたところであり、今後とも、緊急経済対策を始めとする諸施策を強力に推進する。

1.国内需要:個人消費は、収入が低迷しているため、低調に推移

個人消費は、収入が低迷しているため、低調に推移している。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で2月3.8%減の後、3月は 1.9%減(前月比4.4%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比 3.6%減、勤労者以外の世帯では同1.9%増となった。形態別にみると、財・サービス共に減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比1.3%減、勤労者世帯では同3.5%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で1月1.6%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で2月3.7%減の後、3月は4.3%減(前月比1.3%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で2月2.6%減の後、3月7.6%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で2月2.9%減の後、3月8.0%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で4月は4.1%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で3月は8.3%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、3月は前年同月比で国内旅行が1.7%減、海外旅行は3.2%増となった。

当庁「消費動向調査」(3月調査)によると、消費者態度指数は、12月に前期差2.0ポイント上昇の後、3月には同3.3ポイントの上昇となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で2月0.6%減の後、3月(速報)は0.8%減(事業所規模30人以上では同0.1%減)となり、うち所定外給与は、3月(速報)は同2.1%減(事業所規模30人以上では同2.0%減)となった。実質賃金は、前年同月比で2月0.6%減の後、3月(速報)は0.4%減(事業所規模30人以上では同0.4%増)となった。

住宅建設は、持ち直してきている。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で2月3.2%増(前年同月比9.4%減)となった後、3月は8.8%増(前年同月比0.0%増)の10万8千戸(年率130万戸)となった。3月の着工床面積(季節調整値)は、前月比12.3%増(前年同月比6.1%増)となった。3月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比14.8%増(前年同月比19.1%増)、貸家は同9.7%増(同10.2%減)、分譲住宅は同5.2%増(同8.4%減)となっている。

設備投資は、大幅な減少が続いている。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。

当庁「法人企業動向調査」(3月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、前期比で10年10~12月期(実績)0.7%減(うち製造業1.0%減、非製造業0.3%減)の後、11年1~3月期(実績見込み)は 9.0%減(同8.9%減、同9.9%減)となっている。年度計画では、前年度比で10年度(実績見込み)6.2%減(うち製造業7.0%減、非製造業5.8%減)の後、11年度(計画)は12.8%減(同14.8%減、同11.8%減)となっている。

なお、10年10~12月の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で18.7%減(うち製造業15.9%減、非製造業20.0%減)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で1月は1.7%減(前年同期比22.9%減)の後、2月は5.0%増 (同8.9%減)となり、基調は減少傾向となっている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、弱い動きが続いていたが、3月は前月比9.6%増(前年同月比1.2%増)となった。内訳をみると、製造業は前月比26.0%増(前年同月比26.4%減)、非製造業は同6.0%増(同8.2%増)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、補正予算などの効果が本格化し、堅調な動きとなっている。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で1月13.9%増の後、2月は33.5%増となった。公共工事請負金額は、前年同月比で2月38.8%増の後、3月は89.0%増となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で2月26.0%増の後、3月は27.7%増となった。

2.生産雇用:厳しさを増している雇用情勢

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、最終需要が低調なため低い水準にあるものの、下げ止まりつつある。一方、在庫の調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。

鉱工業生産は、前月比で2月1.3%増の後、3月(速報)は、鉄鋼、パルプ・紙・紙加工品が減少したものの、電気機械、輸送機械等が増加したことから、2.2%増となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で4月は輸送機械、電気機械等により3.2%減の後、5月は電気機械、輸送機械等により1.0%増となっている。鉱工業出荷は、前月比で2月2.1%減の後、3月(速報)は、資本財、生産財等が増加したことから、2.9%増となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で2月0.3%増の後、3月(速報)は、窯業・土石製品、電気機械等が増加したものの、一般機械、石油・石炭製品等が減少したことから、0.8%減となった。また、3月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は105.2と前月を4.9ポイント下回った。

主な業種について最近の動きをみると、電気機械では、生産は3か月連続で増加し、在庫は3月は増加した。輸送機械では、生産は2か月連続で増加し、在庫は3月は横ばいとなった。鉄鋼では、生産は2か月連続で減少し、在庫は3月は減少した。

雇用情勢は、厳しさを増している。雇用者数が減少し、勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率はこれまでにない高さに上昇した。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、2月0.49倍の後、3月0.49倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、2月0.88倍の後、3月0.88倍となった。雇用者数は、減少している。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、3月は前年同月比1.2%減(前年同月差62万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、2月前年同月比0.3%減(季節調整済前月比0.0%)の後、3月(速報)は同0.1%減(同0.1%増)となり(事業所規模30人以上では前年同月比0.4%減)、産業別には製造業では同2.0%減となった。3月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差10万人増の325万人、完全失業率(同)は、2月4.6%の後、3月4.8%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では2月前年同月比8.4%減(季節調整済前月比2.7%減)の後、3月(速報)は同5.4%減(同0.4%増) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比6.2%減)。

企業の動向をみると、企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、厳しい状態にあるが改善の動きがみられる。

大企業の動向を前記「法人企業動向調査」(3月調査、季節調整値)でみると、11年1~3月期の売上高、経常利益の判断(ともに「増加」-「減少」)は、それぞれ▲18、▲21と、いずれも「減少」が「増加」を上回った。また、11年1~3月期の企業経営者の景気判断(業界景気の判断、「上昇」-「下降」)は▲27と「下降」が「上昇」を上回った。

また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(3月調査、季節調整 値)でみると、売上げD.I.(「増加」-「減少」)は、11年1~3月期は「減少」超幅が縮小し、純益率D.I.(「上昇」-「低下」)は、「低下」超幅が縮小した。業況判断D.I.(「好転」-「悪化」)は、11年1~3月期は「悪化」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、件数は、信用保証制度の拡充の効果などから前年の水準を大幅に下回ってきた。

銀行取引停止処分者件数は、3月は782件で前年同月比39.2%減となった。業種別に件数の前年同月比をみると、製造業で45.3%、建設業で44.0%の減少となった。

3.国際収支:輸出は、おおむね横ばい状態

輸出は、おおむね横ばい状態となっている。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で2月8.6%減の後、3月は5.4%増(前年同月比1.0%減)となった。この動きを品目別(金額ベース)にみると、電気機器、一般機械等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。

輸入は、足踏み状態を続けてきたが、緩やかな増加の動きがみられる。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で1月4.3%増、航空機輸入等の特殊要因もあって2月8.2%増の後、3月4.7%減(前年同月比4.1%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、製品類(機械機器等)が増加した。同じく地域別にみると、アメリカ、アジア等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、2月に8,580億円の黒字の後、3月は1兆1,032億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。

2月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、サービス収支の赤字幅が縮小したものの、貿易収支の黒字幅が縮小したため、その黒字幅は縮小し、6,130億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、所得収支の黒字幅が拡大し、経常移転収支の赤字幅が縮小したものの、貿易・サービス収支の黒字幅が縮小したため、その黒字幅は縮小し、1兆1,198億円となった。投資収支(原数値)は、8,189億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、9,192億円の赤字となった。

4月末の外貨準備高は、前月比5億ドル増加して2,231億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、4月はおおむね118円台から121円台で推移した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、4月は月初の127円台から130円台に下落したが,その後上昇し、月央から下旬にかけて125円台から127円台で推移した。

4.物価:国内卸売物価は、弱含みで推移

国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。

4月の国内卸売物価は、石油・石炭製品(燃料油)等が上昇したものの、電力・都市ガス・水道(大口電力)等が下落したことから、前月比 0.3%の下落(前年同月比1.9%の下落)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで上昇したことから、円ベースでは前月比0.1%の上昇(前年同月比8.3%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したことから、円ベースでは前月比0.9%の上昇(前年同月比9.9%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.1%の下落(前年同月比3.5%の下落)となった。

企業向けサービス価格は、3月は前年同月比1.1%の下落(前月比0.2%の上昇)となった。

商品市況(月末対比)は化学等は下落したものの、非鉄等の上昇により4月は上昇した。4月の動きを品目別にみると、純ベンゼン等は下落したものの、銅地金等が上昇した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で2月0.1%の下落の後、3月は外食の上昇幅の拡大等の一方、一般生鮮商品の上昇幅の縮小等により0.1%の下落(前月比0.3%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で2月0.1%の下落の後、3月は0.4%の下落(前月比0.1%の上昇)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で3月0.2%の下落の後、4月(中旬速報値)は、持家の帰属家賃が下落から上昇に転じたこと等の一方、個人サービスが上昇から下落に転じたこと等により0.2%の下落(前月比0.3%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で3月0.4%の下落の後、4月(中旬速報値)は0.2%の下落(前月比0.4%の上昇)となった。

5.金融財政:長期金利は低下

最近の金融情勢をみると、短期金利は、4月はおおむね横ばいで推移した。長期金利は、4月は低下した。株式相場は、4月は上昇した。マネーサプライ(M+CD)は、3月は前年同月比3.7%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレート、2、3か月物ともに、4月はおおむね横ばいで推移した。

公社債市場をみると、国債流通利回りは、4月は低下した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、2月は短期は0.049%ポイント低下し、長期は 0.154%ポイント低下したことから、総合では前月比で 0.067%ポイント低下し1.810%となった。

マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、3月(速報)は前年同月比 3.7%増となった。また、広義流動性は、3月(速報)は同 3.7%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、3月(速報)は前年同月比3.8%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後 1.0%減)となった。4月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債がゼロとなった。また、国内公募事業債の起債実績は8,045億円となった。

また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っている。

株式市場をみると、日経平均株価は、4月は上昇した。

6.海外経済:原油価格、急上昇続く

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、98年10~12月期前期比年率6.0%増の後、1~3月期は同4.5%増(暫定値)となった。個人消費、住宅投資、設備投資は増加している。鉱工業生産(総合)の伸びは鈍化している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。雇用者数(非農業事業所)は3月前月差0.7万人増の後、4月は同23.4万人増となった。失業率は4月4.3%となった。物価は安定している。3月の消費者物価は前年同月比1.7%の上昇、生産者物価(完成財総合)は同0.8%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、このところ拡大している。4月の長期金利(30年物国債)は、上旬にやや低下する場面があったものの、全体としてはほぼ横ばいの推移となった。株価(ダウ平均)は、ほぼ一本調子で上昇した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気拡大のテンポは鈍化しており、フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。イギリスでは、景気は減速している。実質GDPは、ドイツ98年10~12月期前期比年率0.6%減、フランス同2.9%増(速報値)、イギリス1~3月期同0.4%増(速報値)となった。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは伸びが鈍化しており、イギリスでは製造業を中心に減少している(鉱工業生産は、ドイツ2月前月比3.3%減、フランス同0.6%減、イギリス3月同0.2%増)。失業率は、ドイツでは、これまで低下してきたが、4月にはやや上昇した。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは横ばいで推移している(失業率は、ドイツ4月10.6%、フランス3月11.5%、イギリス4.6%)。物価は、安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ4月前年同月比0.7%、フランス3月同0.4%、イギリス同2.1%)。

東アジアをみると、中国では、景気は拡大しているが、輸出は減少傾向にある。物価は下落している。韓国では、景気は底入れしたとみられる。失業率は高水準ながらやや低下している。輸入は増加に転じている。

国際金融市場の4月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、総じてほぼ横ばいで推移した (モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)4月30日現在109.2、3月末比0.4%の増価)。内訳をみると、4月30日現在、対円では3月末比0.4%増価、対ユーロでは同1.8%増価した。

国際商品市況の4月の動きをみると、月初にやや弱含む場面がみられたが、その後は、一定のレンジ内で上下する展開となった。原油スポット価格(北海ブレント)は、上昇基調で推移し、月末にかけては騰勢を一段と強め、97年12月以来となる16ドル/バレル台半ばの水準まで上昇した。