月例経済報告(平成11年4月)

平成11年4月13日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済:需要面をみると、個人消費は、下げ止まりつつあるものの、水準はまだ低い。これは収入が低迷しているからである。住宅建設は、低水準で推移しているものの、一部に持ち直しの動きがみられる。設備投資は、大幅な減少が続いている。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。公共投資は、補正予算などの効果により、堅調な動きとなっている。

産業面をみると、鉱工業生産は、最終需要が低調なため低い水準にあるものの、下げ止まりつつある。一方、在庫の調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、改善の動きがみられるものの厳しい状態が続いている。企業倒産件数は、信用保証制度の拡充の効果などから大幅に減少してきた。

雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数が減少し、完全失業率はこれまでにない高さに上昇した。

輸出は、やや減少している。輸入は、おおむね横ばい状態となっている。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、3月月初の119円台から123円台に下落した後、117円台まで上昇し、月末にかけて120円台に下落した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、3月は大幅に低下した。長期金利は、3月は月初に低下した後、おおむね横ばいで推移した。株式相場は、3月は大幅に上昇した後、一進一退で推移した。マネーサプライ(M2+CD)は、2月は前年同月比3.5%増となった。また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っている。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、98年7~9月期前期比年率3.7%増の後、10~12月期は同6.0%増となった。個人消費、住宅投資、設備投資は増加している。鉱工業生産(総合)の伸びは鈍化している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。物価は安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準にある。3月の長期金利(30年物国債)は、月半ばに低下する場面があったが、月を通じては横ばいで推移した。株価(ダウ平均)は、総じて上昇し、下旬に一時下落したもののその後再び上昇し、月末には1万ドルを突破した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気拡大のテンポは鈍化しており、フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。イギリスでは、景気は減速している。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大テンポが緩やかになっており、イギリスでは製造業を中心に減少している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは横ばいで推移している。物価は、安定している。なお、4月8日に、イングランド銀行はレポ金利を0.25%引下げ5.25%とするとともに、欧州中央銀行はレポ金利を0.50%引下げ2.50%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっているが、輸出は減少傾向にある。物価は下落している。韓国では、景気は底入れしたとみられるものの、失業率は高水準で推移している。貿易収支黒字はここ数か月減少している。

国際金融市場の3月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、上旬から下旬にかけて総じて減価基調で推移したが、月末には増価する場面があった。

国際商品市況の3月の動きをみると、月半ばにやや弱含んだが、総じて上昇基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から終始強含みで推移し、月末には14ドル/バレル台まで回復した。


我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、下げ止まりつつあるものの、水準はまだ低い。これは収入が低迷しているからである。住宅建設は、低水準で推移しているものの、一部に持ち直しの動きがみられる。設備投資は、大幅な減少が続いている。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。公共投資は、補正予算などの効果により、堅調な動きとなっている。輸出は、やや減少している。

生産は、最終需要が低調なため低い水準にあるものの、下げ止まりつつある。一方、在庫の調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。

雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数が減少し、完全失業率はこれまでにない高さに上昇した。

民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っているが、信用保証制度の拡充の効果などから、企業倒産は大幅に減少した。一方、金融システム安定化策の進展や金融緩和政策の維持を背景に、金融市場では流動性に対する安心感が広まり、長短金利は低下した。

以上のように、景気は、民間需要が低調なため依然として極めて厳しい状況にあるが、各種の政策効果に下支えされて、下げ止まりつつある。

このような厳しい経済状況の下、政府は、緊急経済対策を始めとする諸施策を強力に推進する。特に、平成11年度予算の成立に当たって、上半期において公共事業等の積極的な施行を図ること等を3月23日に閣議決定した。また、住宅金融公庫金利の引き上げ幅の思い切った圧縮や、中小企業に対する特別保証制度について、今後、必要かつ十分な額の保証枠の追加を行うこととした。

1.国内需要:住宅建設は、一部に持ち直しの動き

個人消費は、下げ止まりつつあるものの、水準はまだ低い。これは収入が低迷しているからである。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で1月1.4%増の後、2月は3.8%減(前月比5.3%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比 4.1%減、勤労者以外の世帯では同2.9%減となった。形態別にみると、財・サービスともに減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比3.1%減、勤労者世帯では同3.9%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で1月1.6%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で1月5.3%減の後、2月は3.5%減(前月比0.5%増)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で1月1.9%減の後、2月2.6%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で1月4.2%減の後、2月2.9%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で3月は1.7%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で2月は15.0%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、2月は前年同月比で国内旅行が3.1%減、海外旅行は7.2%減となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で1月3.4%減の後、2月(速報)は0.6%減(事業所規模30人以上では同0.0%)となり、うち所定外給与は、2月(速報)は同2.5%減(事業所規模30人以上では同3.2%減)となった。実質賃金は、前年同月比で1月3.7%減の後、2月(速報)は0.6%減(事業所規模30人以上では同0.0%)となった。なお、平成10年年末賞与は、前年比2.9%減(前年は同0.1%減)となった。

住宅建設は、低水準で推移しているものの、一部に持ち直しの動きがみられる。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で1月0.7%増(前年同月比11.2%減)となった後、2月は3.2%増(同9.4%減)の9万9千戸(年率119万戸)となった。2月の着工床面積(季節調整値)は、前月比6.2%増(前年同月比5.0%減)となった。2月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比17.9%増(前年同月比9.0%増)、貸家は同8.5%減(同18.4%減)、分譲住宅は同3.9%減(同16.8%減)となっている。

設備投資は、大幅な減少が続いている。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。

日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)により設備投資の動向をみると、大企業の10年度設備投資計画は、製造業で前年度比12.2%減(12月調査比4.4%下方修正)非製造業で同1.0%減(同2.1%下方修正)となっており、全産業では同5.4%減(同3.0%下方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比8.7%減(12月調査比0.9%下方修正)、非製造業で同2.3%減(同0.6%下方修正)となり、中小企業では製造業で同12.1%減(同6.7%上方修正)、非製造業で同6.1%減(同1.7%上方修正)となっている。

なお、10年10~12月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で18.7%減(うち製造業15.9%減、非製造業20.0%減)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で1月は1.7%減(前年同期比22.9%減)の後、2月は5.0%増 (同8.9%減)となり、基調は減少傾向となっている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、2月は前月比22.1%増(前年同月比6.8%減)となったが、弱い動きが続いている。内訳をみると、製造業は前月比2.0%増(前年同月比44.2%減)、非製造業は同27.0%増(同4.8%増)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、補正予算などの効果により、堅調な動きとなっている。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で1月13.9%増の後、2月は33.5%増となった。公共工事請負金額は、前年同月比で1月0.0%増の後、2月は38.8%増となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で1月20.0%増の後、2月は26.0%増となった。

2.生産雇用:生産は、下げ止まりつつある

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、最終需要が低調なため低い水準にあるものの、下げ止まりつつある。一方、在庫の調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。

鉱工業生産は、前月比で1月0.4%増の後、2月(速報)は、電気機械、パルプ・紙・紙加工品等が増加したものの、化学、一般機械等が減少したことから、0.6%減となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で3月は機械、化学等により0.8%増の後、4月は機械、鉄鋼等により3.3%減となっている。鉱工業出荷は、前月比で1月1.4%増の後、2月(速報)は、資本財が増加したものの、耐久消費財、生産財等が減少したことから、2.3%減となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で1月1.8%減の後、2月(速報)は、電気機械、一般機械等が減少したものの、輸送機械、化学等が増加したことから、0.5%増となった。また、2月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は109.8と前月を5.0ポイント上回った。

主な業種について最近の動きをみると、電気機械では、生産は2か月連続で増加し、在庫は7か月連続で減少した。一般機械では、生産は2月は減少し、在庫は8か月連続で減少した。化学では、生産は2月は減少し、在庫は増加した。

雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数が減少し、完全失業率はこれまでにない高さに上昇した。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、1月0.49倍の後、2月0.49倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、1月0.91倍の後、2月0.88倍となった。雇用者数は、減少している。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、2月は前年同月比1.3%減(前年同月差72万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、1月前年同月比0.2%減(季節調整済前月比0.2%増)の後、2月(速報)は同0.3%減(同0.0%)となり(事業所規模30人以上では前年同月比0.6%減)、産業別には製造業では同2.1%減となった。2月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差14万人増の315万人、完全失業率(同)は、1月4.4%の後、2月4.6%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では1月前年同月比10.9%減(季節調整済前月比3.7%増)の後、2月(速報)は同 8.4%減(同2.7%減) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比8.8%減)。

前記「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)をみると、企業の雇用人員判断は、過剰感にやや高まりがみられる。

企業の動向をみると、企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、改善の動きがみられるものの厳しい状態が続いている。

前記「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)で大企業の動向をみると、10年度下期の経常利益は、全産業では前年同期比24.5%の減益、製造業では同41.3%の減益、非製造業では同6.9%の減益が見込まれている。10年度下期の売上高経常利益率は、製造業では2.42%、非製造業では1.91%と見込まれている。なお、11年度上期の経常利益見通しは、製造業では減益、非製造業では増益となっている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。

また、同調査で中小企業の動向をみると、10年度下期の経常利益は、全産業では前年同期比23.9%の減益、製造業では同33.3%の減益、非製造業では同19.5%の減益が見込まれている。なお、11年度上期の経常利益見通しは、製造業、非製造業ともに増益となっている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、件数は、信用保証制度の拡充の効果などから大幅に減少してきた。

銀行取引停止処分者件数は、2月は568件で前年同月比47.7%減となった。業種別に件数の前年同月比をみると、卸売業で58.5%、小売業で55.6%の減少となった。

3.国際収支:輸出は、やや減少

輸出は、やや減少している。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、一部仕向先の特殊要因もあって、前月比で1月6.0%増の後、2月は8.6%減(前年同月比7.3%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、輸送用機器、一般機械等が減少した。同じく地域別にみると、アメリカ、EU等が減少した。

輸入は、おおむね横ばい状態となっている。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で1月4.3%増の後、航空機輸入等の特殊要因もあって2月8.2%増(前年同月比11.4%増)となった。この動きを品目別(金額ベース)にみると、製品類(機械機器等)が増加した。同じく地域別にみると、アメリカ、アジア等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、1月に1兆3,239億円の黒字の後、2月は8,580億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。

1月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、サービス収支の赤字幅が拡大したものの、貿易収支の黒字幅が拡大したため、その黒字幅は拡大し、1兆191億円となった。また、経常収支(季節調整値) は、所得収支の黒字幅が縮小したものの、貿易・サービス収支の黒字幅が拡大し、経常移転収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、1兆3,859億円となった。投資収支(原数値)は、5,185億円の黒字となり、資本収支(原数値)は、4,607億円の黒字となった。

3月末の外貨準備高は、前月比11億ドル増加して2,225億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、3月月初の119円台から123円台に下落した後、117円台まで上昇し、月末にかけて120円台に下落した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点) は、3月は月央にかけて130円台から133円台で推移したが、その後上昇し、下旬は128円台から129円台で推移した。

4.物価:国内卸売物価は、弱含みで推移

国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。

3月の国内卸売物価は、食料用農畜水産物(豚肉)等が上昇したものの、化学製品(エチレングリコール)等が下落したことから、前月比 0.2%の下落(前年同月比1.9%の下落)となった。また、前記「全国企業短期経済観測調査」(大企業、3月調査)によると、製品需給バランスは、小幅な改善がみられるものの、依然緩んだ状態にある。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比1.0%の上昇(前年同月比7.3%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比0.8%の上昇(前年同月比10.3%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.1%の上昇(前年同月比3.4%の下落)となった。

企業向けサービス価格は、2月は前年同月比1.0%の下落(前月比保合い)となった。

商品市況(月末対比)は木材等は上昇したものの、鋼材等の下落により3月は下落した。3月の動きを品目別にみると、米つが正角等は上昇したものの、山形鋼等が下落した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で1月0.1%の下落の後、2月は繊維製品の上昇幅の縮小等の一方、公共料金(広義)の下落幅の縮小等により0.1%の下落(前月比0.3%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で1月0.2%の上昇の後、2月は0.1%の下落(前月比0.4%の下落)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で2月0.1%の下落の後、3月(中旬速報値)はその他工業製品の下落幅の拡大等により0.2%の下落(前月比0.1%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で2月0.2%の下落の後、3月(中旬速報値)は0.5%の下落(前月比保合い)となった。

5.金融財政:長短金利は低下

最近の金融情勢をみると、短期金利は、3月は大幅に低下した。長期金利は、3月は月初に低下した後、おおむね横ばいで推移した。株式相場は、3月は大幅に上昇した後、一進一退で推移した。マネーサプライ(M2+CD)は、2月は前年同月比3.5%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレート、2、3か月物ともに、3月は大幅に低下した。

公社債市場をみると、国債流通利回りは、3月は月初に低下した後、おおむね横ばいで推移した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、2月は短期は0.049%ポイント低下し、長期は 0.154%ポイント低下したことから、総合では前月比で 0.067%ポイント低下し1.810%となった。

マネーサプライ(M2+CD)の月中平均残高を前年同月比でみると、2月(速報)は  3.5%増となった。また、広義流動性でみると、2月(速報)は3.3%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関の貸出平残(全国銀行)は、2月(速報)は前年同月比4.3%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後 1.3%減)となった。3月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が 660億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は6,300億円となった。

前記「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)によると、資金繰り判断は「苦しい」超が続いており、金融機関の貸出態度も「厳しい」超が続いている。

また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っている。

株式市場をみると、日経平均株価は、3月は大幅に上昇した後、一進一退で推移した。

6.海外経済:アメリカ、ダウ最高値更新

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、98年7~9月期前期比年率3.7%増の後、10~12月期は同6.0%増となった。個人消費、住宅投資、設備投資は増加している。鉱工業生産(総合)の伸びは鈍化している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。雇用者数(非農業事業所)は2月前月差29.7万人増の後、3月は同4.6万人増となった。失業率は3月4.2%となった。物価は安定している。2月の消費者物価は前年同月比1.6%の上昇、生産者物価(完成財総合)は同0.5%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準にある。3月の長期金利(30年物国債)は、月半ばに低下する場面があったが、月を通じては横ばいで推移した。株価(ダウ平均)は、総じて上昇し、下旬に一時下落したもののその後再び上昇し、月末には1万ドルを突破した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気拡大のテンポは鈍化しており、フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。イギリスでは、景気は減速している。98年10~12月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率1.5%減、フランス同2.9%増(速報値)、イギリス同0.3%増(確定値)となった。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大テンポが緩やかになっており、イギリスでは製造業を中心に減少している(鉱工業生産は、ドイツ12月前月比0.6%増、フランス1月同0.6%増、イギリス2月同0.1%増)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは横ばいで推移している(2月の失業率は、ドイツ10.5%、フランス11.5%、イギリス4.6%)。物価は、安定している(2月の消費者物価上昇率は、ドイツ前年同月比0.2%、フランス同0.2%、イギリス同2.1%)。なお、4月8日に、イングランド銀行はレポ金利を0.25%引下げ5.25%とするとともに、欧州中央銀行はレポ金利を0.50%引下げ2.50%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっているが、輸出は減少傾向にある。物価は下落している。韓国では、景気は底入れしたとみられるものの、失業率は高水準で推移している。貿易収支黒字はここ数か月減少している。

国際金融市場の3月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、上旬から下旬にかけて総じて減価基調で推移したが、月末には増価する場面があった(モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)3月31日現在109.3、2月末比0.6%の増価)。内訳をみると、3月31日現在、対円では2月末比0.2%減価、対ユーロでは同2.4%増価した。

国際商品市況の3月の動きをみると、月半ばにやや弱含んだが、総じて上昇基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から終始強含みで推移し、月末には14ドル/バレル台まで回復した。