月例経済報告(平成10年12月)

平成10年12月8日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済:需要面をみると、個人消費は、全体としては低調である。これは、収入が減少していることに加え、消費者の財布のひもが依然として固いからである。住宅建設は、マンションの不振もあって低水準が続いている。設備投資は、大幅に減少している。中小企業の減少が著しいが、製造業を中心に大企業の減少傾向もより明らかになってきた。公共投資は、過去最高のペースで前倒し執行が進み、10年度第1次補正予算の効果も現れてきている。

10年7~9月期(速報)の実質国内総生産は、前期比0.7%減(年率2.6%減)となり、うち内需寄与度はマイナス0.9%となった。

産業面をみると、鉱工業生産は、減少傾向が緩やかになってきたが、最終需要が低調なために、低い水準にある。在庫は前年を下回る水準にまで減少してきた。しかし、在庫率が依然高水準であり過剰感は強い。企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、中小企業を中心に厳しさが増している。

雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数の減少テンポは緩やかになってきたが、勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率はこれまでの最高水準で推移している。

輸出は、アジア向けに下げ止まりの兆しがみられるものの、欧米向けの伸びが鈍化しているため、全体としては横ばい状態となっている。輸入は、減少テンポが弱まり、おおむね横ばい状態となっている。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、緩やかに増加している。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、11月は、月初の115円台から下落し、123円台となった。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。また、消費者物価は、基調として安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、11月はおおむね横ばいで推移した。長期金利は、11月はやや上昇した。株式相場は、11月は上昇した。マネーサプライ(M2+CD)は、10月は前年同月比3.9%増となった。また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っており、手元流動性確保に向けての動きを続けている。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大しているものの、先行きにやや不透明感がみられる。実質GDPは、4~6月期前期比年率1.8%増の後、7~9月期は同3.9%増(速報値)となった。個人消費、住宅投資は増加している。設備投資の伸びはマイナスとなった。鉱工業生産(総合)の伸びは鈍化している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。連邦準備制度は、11月17日に公定歩合を0.25%引き下げ4.50%に、またフェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を0.25%引き下げ4.75%にする金融政策の変更を発表した。11月の長期金利(30年物国債)は、月上旬に上昇し、その後は総じて低下した。株価(ダウ平均)は、総じて上昇し、月下旬には最高値を更新した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は拡大しているものの、そのテンポに鈍化懸念がみられる。フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきており、イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになっている。鉱工業生産は、ドイツでは拡大しているが、そのテンポに鈍化懸念がみられる。フランスでは拡大テンポが緩やかになってきており、イギリスでは伸びは鈍化している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下している。イギリスでは低水準で推移している。物価は、安定している。なお、イングランド銀行は、前月に続き11月5日に政策金利(レポ金利)を0.5%引き下げ、6.75%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は、下落している。貿易収支は、輸出の減少から黒字幅が縮小した。韓国では、景気は後退している。失業率は上昇している。物価の騰勢は鈍化している。貿易収支は、輸入減少により大幅な黒字が続いている。

国際金融市場の11月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、総じて増価した。

国際商品市況の11月の動きをみると、上旬はやや強含んだものの、その後は下落基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、緊迫していたイラク情勢が緩和したことなどから、月を通じて概ね弱含みで推移した。


我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、全体としては低調である。これは、収入が減少していることに加え、消費者の財布のひもが依然として固いからである。住宅建設は、マンションの不振もあって低水準が続いている。設備投資は、大幅に減少している。中小企業の減少が著しいが、製造業を中心に大企業の減少傾向もより明らかになってきた。公共投資は、過去最高のペースで前倒し執行が進み、10年度第1次補正予算の効果も現れてきている。

輸出は、アジア向けに下げ止まりの兆しがみられるものの、欧米向けの伸びが鈍化しているため、全体としては横ばい状態となっている。

生産は、減少傾向が緩やかになってきたが、最終需要が低調なために、低い水準にある。在庫は前年を下回る水準にまで減少してきた。しかし、在庫率が依然高水準であり過剰感は強い。

雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数の減少テンポは緩やかになってきたが、勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率はこれまでの最高水準で推移している。

また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っており、手元流動性確保に向けての動きを続けている。

こうした中、経済の先行きに対する金融市場などでの不透明感はやや薄らぎつつあるものの、依然として強い。

以上のように、景気は低迷状態が長引き、極めて厳しい状況にあるものの、一層の悪化を示す動きと幾分かの改善を示す動きとが入り混じり、変化の胎動も感じられる。

このような厳しい経済状況の下、政府は、11月16日に、総事業規模にして17兆円を超え、恒久的な減税まで含めれば20兆円を大きく上回る規模の緊急経済対策を取りまとめたところであり、これを始めとする諸施策を強力に推進する。

1.国内需要:個人消費は、全体としては低調

実質国内総生産(平成2年基準、速報)の動向をみると、10年4~6月期前期比0.7%減(年率2.9%減)の後、10年7~9月期は同0.7%減(同2.6%減)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度はマイナス0.9%となり、財貨・サービスの純輸出の寄与度はプラス0.3%となった。需要項目別にみると、民間最終消費支出は前期比0.3%減、民間企業設備投資は同4.6%減、民間住宅は同6.2%減となった。また、財貨・サービスの輸出は前期比1.6%増、財貨・サービスの輸入は同0.4%減となった。

個人消費は、全体としては低調である。これは、収入が減少していることに加え、消費者の財布のひもが依然として固いからである。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で9月1.5%減の後、10月は 1.0%減(前月比0.9%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比 0.2%減、勤労者以外の世帯では同2.0%減となった。形態別にみると、耐久財等は増加、サービス等は減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比0.6%減、勤労者世帯では同0.0%となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で9月7.0%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で9月3.8%減の後、10月は5.5%減(前月比0.7%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で9月5.4%減の後、10月4.7%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で9月2.3%減の後、10月2.3%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で11月は2.7%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で10月は13.6%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、10月は前年同月比で国内旅行が9.3%減、海外旅行は14.2%減となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で9月0.7%減の後、10月(速報)は0.1%減(事業所規模30人以上では同0.5%増)となり、うち所定外給与は、10月(速報)は同8.1%減(事業所規模30人以上では同8.2%減)となった。実質賃金は、前年同月比で9月0.5%減の後、10月(速報)は0.3%減(事業所規模30人以上では同0.3%増)となった。

住宅建設は、マンションの不振もあって低水準が続いている。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で9月3.2%減(前年同月比14.0%減)となった後、10月は1.7%増(前年同月比12.9%減)の9万7千戸(年率116万戸)となった。10月の着工床面積(季節調整値)は、前月比0.7%減(前年同月比11.1%減)となった。10月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比2.0%減(前年同月比2.0%減)、貸家は同7.8%増(同10.1%減)、分譲住宅は同 5.4%減(同30.2%減)となっている。

設備投資は、大幅に減少している。中小企業の減少が著しいが、製造業を中心に大企業の減少傾向もより明らかになってきた。

当庁「法人企業動向調査」(10年9月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、前期比で10年4~6月期(実績)0.5%増(うち製造業6.4%減、非製造業3.9%増)の後、10年7~9月期(実績見込み)は 5.1%減(同2.8%減、同5.9%減)となっている。また、10年10~11年3月期(計画)は、前年同期比で 8.7%減(うち製造業14.2%減、非製造業5.6%減)と見込まれている。

なお、年度計画では、前年度比で9年度(実績)0.6%増(うち製造業7.6%増、非製造業2.8%減)の後、10年度(計画)は6.0%減(同7.8%減、同5.0%減)となっている。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で8月は3.5%減(前年同月比25.0%減)の後、9月は9.2%増(同14.5%減)となり、基調は減少傾向となっている。

なお、10~12月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前期比で6.3%減(前年同期比20.0%減)と見込まれている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、弱い動きとなっており、10月は前月比12.4%減(前年同月比18.8%減)となった。内訳をみると、製造業は前月比24.1%減(前年同月比50.1%減)、非製造業は同 9.0%減(同 6.6%減)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、過去最高のペースで前倒し執行が進み、10年度第1次補正予算の効果も現れてきている。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で8月1.2%減の後、9月は37.0%増となった。公共工事請負金額は、前年同月比で9月23.8%増の後、10月は22.6%増となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で9月19.5%増の後、10月は 2.9%増となった。実質公的固定資本形成は、10年4~6月期に前期比3.0%減の後、10年7~9月期は同3.6%増となった。また、実質政府最終消費支出は、10年4~6月期に前期比0.2%増の後、10年7~9月期は0.9%増となった。

2.生産雇用:依然として厳しい雇用情勢

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、減少傾向が緩やかになってきたが、最終需要が低調なために、低い水準にある。在庫は前年を下回る水準にまで減少してきた。しかし、在庫率が依然高水準であり過剰感は強い。

鉱工業生産は、前月比で9月3.3%増の後、10月(速報)は、化学等が増加したものの、電気機械、一般機械等が減少したことから、1.2%減となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で11月は機械、鉄鋼により1.5%減の後、12月は化学、軽工業等により0.6%増となっている。鉱工業出荷は、前月比で9月4.1%増の後、10月(速報)は、資本財、生産財等が減少したことから、1.4%減となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で9月1.5%減の後、10月(速報)は、輸送機械、金属製品等が増加したものの、電気機械、一般機械等が減少したことから、1.0%減となった。また、10月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は110.2と前月を1.1ポイント上回った。

主な業種について最近の動きをみると、電気機械では、生産は10月は減少し、在庫は3か月連続で減少した。一般機械では、生産は10月は減少し、在庫は4か月連続で減少した。鉄鋼では、生産は10月は減少し、在庫は増加した。

第3次産業活動の動向をみると、7~9月期は前期比0.3%減と4四半期連続で減少し、低調に推移している。

雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数の減少テンポは緩やかになってきたが、勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率はこれまでの最高水準で推移している。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、9月0.49倍の後、10月0.48倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、9月0.85倍の後、10月0.86倍となった。雇用者数は、減少テンポが緩やかになってきた。 総務庁「労働力調査」による雇用者数は、10月は前年同月比0.2%減(前年同月差10万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、9月前年同月比0.3%減(季節調整済前月比0.0%)の後、10月(速報)は同0.4%減(同0.1%減)となり(事業所規模30人以上では前年同月比0.7%減)、産業別には製造業では同2.1%減となった。10月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差3万人減の289万人、完全失業率(同)は、9月4.3%の後、10月4.3%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では9月前年同月比16.3%減(季節調整済前月比1.1%減)の後、10月(速報)は同 14.8%減(同0.1%増) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比15.0%減)。

また、労働省「労働経済動向調査」(11月調査)によると、「残業規制」等の雇用調整を実施する事業所割合は、7~9月期は引き続き上昇した。

企業の動向をみると、企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、中小企業を中心に厳しさが増している。

大企業の動向を前記「法人企業動向調査」(9月調査、季節調整値)でみると、10年7~9月期の売上高、経常利益の判断(ともに「増加」-「減少」)は、それぞれ▲31、▲34と、いずれも「減少」が「増加」を上回った。また、10年7~9月期の企業経営者の景気判断(業界景気の判断、「上昇」-「下降」)は▲50と「下降」が「上昇」を大きく上回った。

また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(9月調査、季節調整 値)でみると、売上げD.I.(「増加」-「減少」)は、10年7~9月期は「減少」超幅が拡大し、純益率D.I.(「上昇」-「低下」)は、「低下」超幅が縮小した。業況判断D.I.(「好転」-「悪化」)は、10年7~9月期は前期と同水準で推移した。

企業倒産の状況をみると、件数は、高い水準で推移している。

銀行取引停止処分者件数は、10月は1,170件で前年同月比5.3%減となった。業種別に件数の前年同月比をみると、小売業で10.5%、建設業で17.9%の減少となる一方、製造業で16.3%の増加となった。

3.国際収支:輸出は、アジア向けに下げ止まりの兆しがみられるものの、欧米向けの伸びが鈍化しているため、全体としては横ばい状態

輸出は、アジア向けに下げ止まりの兆しがみられるものの、欧米向けの伸びが鈍化しているため、全体としては横ばい状態となっている。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で9月3.3%増の後、10月は2.4%増(前年同月比6.4%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、電気機器等が減少したが、輸送用機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア等が減少したが、中東等が増加した。

輸入は、減少テンポが弱まり、おおむね横ばい状態となっている。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で9月3.5%増の後、10月3.7%減(前年同月比8.4%減)となった。この動きを品目別(金額ベース)にみると、製品類(機械機器)、食料品等が減少した。同じく地域別にみると、アジア、EU等が減少した。

通関収支差(季節調整値)は、9月に1兆2,632億円の黒字の後、10月は1兆4,545億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、緩やかに増加している。

9月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が縮小するとともに、サービス収支の赤字幅が拡大したため、その黒字幅は縮小し、8,863億円となった。また、経常収支(季節調整値) は、貿易・サービス収支の黒字幅が縮小し、経常移転収支の赤字幅が拡大したものの、所得収支の黒字幅が拡大したため、その黒字幅は拡大し、1兆6,786億円となった。投資収支(原数値)は、7,148億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、1兆 6,165億円の赤字となった。

11月末の外貨準備高は、前月比7億ドル増加して2,147億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、11月は、月初の115円台から下落し、123円台となった。一方、対マルク相場(インターバンク17時時点) は、11月は、月初の70円台から一時73円台まで下落したが、その後一進一退で推移し、72円台となった。

4.物価:国内卸売物価は、弱含みで推移

国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。

10月の国内卸売物価は、加工食品(焼ちゅう)等が上昇したものの、非鉄金属(銅地金)等が下落したほか、電力・都市ガス・水道(大口電力)も夏季割増料金の終了から下落し、前月比0.6%の下落(前年同月比2.1%の下落)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したことに加え、円高から円ベースでは前月比6.0%の下落(前年同月比3.0%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比5.7%の下落(前年同月比7.9%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比1.7%の下落(前年同月比2.8%の下落)となった。

11月上中旬の動きを前旬比でみると、国内卸売物価は上旬、中旬ともに保合い、輸出物価は上旬が0.2%の下落、中旬が1.7%の上昇、輸入物価は上旬が0.3%の下落、中旬が1.3%の上昇、総合卸売物価は上旬が0.1%の下落、中旬が0.3%の上昇となっている。

企業向けサービス価格は、10月は前年同月比0.8%の下落(前月比0.1%の下落)となった。

商品市況(月末対比)は非鉄等は上昇したものの、木材等の下落により11月は下落した。11月の動きを品目別にみると、亜鉛地金等は上昇したものの、ヒノキ正角等が下落した。

消費者物価は、基調として安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で9月0.5%の下落の後、10月は一般食料工業製品が下落から上昇に転じたこと等により0.4%の下落(前月比0.2%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で9月0.2%の下落の後、10月は0.2%の上昇(前月比0.7%の上昇)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で10月0.2%の下落の後、11月(中旬速報値)は繊維製品の上昇幅の縮小等の一方、一般生鮮商品が下落から上昇に転じたこと等により0.2%の下落(前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で10月0.4%の上昇の後、11月(中旬速報値)は1.0%の上昇(前月比0.1%の下落)となった。

5.金融財政:民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持ち、手元流動性確保に向けての動きが続く

最近の金融情勢をみると、短期金利は、11月はおおむね横ばいで推移した。長期金利は、11月はやや上昇した。株式相場は、11月は上昇した。マネーサプライ(M2+CD)は、10月は前年同月比3.9%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレート、2、3か月物ともに、11月はおおむね横ばいで推移した。

公社債市場をみると、国債流通利回りは、11月はやや上昇した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、10月は短期は0.004%ポイント上昇し、長期は0.047%ポイント上昇したことから、総合では前月比で0.016%ポイント上昇し1.855%となった。

マネーサプライ(M2+CD)の月中平均残高を前年同月比でみると、10月(速報)は 3.9%増となった。また、広義流動性でみると、10月(速報)は3.0%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関の貸出平残(全国銀行)は、10月(速報)は前年同月比3.3%減となった。11月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債がゼロとなった。また、11月の国内公募事業債の起債実績は1兆245億円となった。

また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っており、手元流動性確保に向けての動きを続けている。

株式市場をみると、日経平均株価は、11月は上昇した。

6.海外経済:アメリカ、追加利下げ

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大しているものの、先行きにやや不透明感がみられる。実質GDPは、4~6月期前期比年率1.8%増の後、7~9月期は同3.9%増(速報値)となった。個人消費、住宅投資は増加している。設備投資の伸びはマイナスとなった。鉱工業生産(総合)の伸びは鈍化している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。雇用者数(非農業事業所)は9月前月差15.7万人増の後、10月は同11.6万人増となった。失業率は10月4.6%となった。物価は安定している。10月の消費者物価は前月比0.2%の上昇、生産者物価(完成財総合)は同0.2%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。連邦準備制度は、11月17日に公定歩合を0.25%引き下げ4.50%に、またフェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を0.25%引き下げ4.75%にする金融政策の変更を発表した。11月の長期金利(30年物国債)は、月上旬に上昇し、その後は総じて低下した。株価(ダウ平均)は、総じて上昇し、月下旬には最高値を更新した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は拡大しているものの、そのテンポに鈍化懸念がみられる。フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきており、イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになっている。実質GDPは、ドイツ4~6月期前期比年率0.4%増、フランス7~9月期同2.1%増、イギリス4~6月期同2.3%増(要素価格、なお、市場価格では、7~9月期同1.5%増)となった。鉱工業生産は、ドイツでは拡大しているが、そのテンポに鈍化懸念がみられる。フランスでは拡大テンポが緩やかになってきており、イギリスでは伸びは鈍化している(9月の鉱工業生産は、ドイツ前月比2.6%減、フランス同0.6%減、イギリス同0.7%減)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下している。イギリスでは低水準で推移している(10月の失業率は、ドイツ10.6%、フランス11.6%、イギリス4.6%)。物価は、安定している(10月の消費者物価上昇率は、ドイツ前年同月比0.7%、フランス同0.4%、イギリス同3.1%)。なお、イングランド銀行は、前月に続き11月5日に政策金利(レポ金利)を0.5%引き下げ、6.75%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は、下落している。貿易収支は、輸出の減少から黒字幅が縮小した。韓国では、景気は後退している。失業率は上昇している。物価の騰勢は鈍化している。貿易収支は、輸入減少により大幅な黒字が続いている。

国際金融市場の11月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、総じて増価した(モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)11月30日108.5、10月末比2.2%の増価)。内訳をみると、11月30日現在、対円では10月末比6.0%増価、対マルクでは同2.4%増価した。

国際商品市況の11月の動きをみると、上旬はやや強含んだものの、その後は下落基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、緊迫していたイラク情勢が緩和したことなどから、月を通じておおむね弱含みで推移した。