月例経済報告(平成10年11月)

平成10年11月16日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済:需要面をみると、個人消費は低調である。これは、収入が減少していることに加え、消費者の財布のひもが依然として固いからである。住宅建設は、マンションの不振もあって低水準が続いている。設備投資は、大幅に減少している。特に中小企業の減少が著しい。公共投資は、前倒し執行や10年度第1次補正予算の効果が現れてきた。

産業面をみると、鉱工業生産は、減少傾向が緩やかになってきたが、最終需要が低調なために、低い水準にある。在庫は前年を下回る水準にまで減少してきた。しかし、在庫率が依然高水準であり過剰感は強い。企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、中小企業を中心に厳しさが増している。

雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数が減少し、勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率はこれまでの最高水準で推移している。

輸出は、アジア向けが減少しているものの、欧米向けなどが好調なため、全体としては横ばい状態となっている。輸入は、減少テンポが弱まり、おおむね横ばい状態となっている。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、緩やかに増加している。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、10月は、月初の136円台から115円台まで大幅に上昇し、その後は114円台から119円台で推移した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。また、消費者物価は、基調として安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、10月はおおむね横ばいで推移した。長期金利は、10月はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、10月は一進一退で推移した。マネーサプライ(M2+CD)は、9月は前年同月比3.9%増となった。また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を高めており、手元流動性確保に向けての動きを強めている。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大しているものの、先行きに対する不透明感がみられる。実質GDPは、4~6月期前期比年率1.8%増の後、7~9月期は同3.3%増(暫定値)となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は鈍化している。雇用は拡大している。物価は安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。連邦準備制度理事会(FRB)は、10月15日に公定歩合を0.25%引き下げ4.75%に、またフェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を0.25%引き下げ5.00%にする金融政策の変更を発表した。10月の長期金利(30年物国債)は、総じてやや上昇した。株価(ダウ平均)は、総じて上昇した。

西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになっている。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大しており、イギリスでは鈍化している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下している。イギリスでは低水準で推移している。物価は、ドイツ、フランスでは安定しており、イギリスでは一時の騰勢は鈍化してきている。なお、イングランド銀行は、10月8日に2年4カ月ぶりに政策金利(レポ金利)を0.25%引き下げ、7.25%とした。東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は、下落している。貿易収支は、輸入の不振から大幅な黒字である。韓国では、景気は後退している。失業率は上昇している。物価は、騰勢は鈍化している。貿易収支は、輸入減少により大幅な黒字が続いている。

国際金融市場の10月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、月上旬に大幅減価した後、月後半以降はやや増価した(モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)10月30日 106.2、9月末比4.2%の減価)。内訳をみると、10月30日現在、対円では9月末比15.0%減価、対マルクでは同0.9%減価した。

国際商品市況の10月の動きをみると、上旬から中旬にかけて強含んだが、その後はやや弱含みに推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、産油国石油相による会合で追加減産合意がなされなかったことなどから、月を通じておおむね弱含みで推移した。


我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は低調である。これは、収入が減少していることに加え、消費者の財布のひもが依然として固いからである。住宅建設は、マンションの不振もあって低水準が続いている。設備投資は、大幅に減少している。特に中小企業の減少が著しい。公共投資は、前倒し執行や10年度第1次補正予算の効果が現れてきた。

輸出は、アジア向けが減少しているものの、欧米向けなどが好調なため、全体としては横ばい状態となっている。

生産は、減少傾向が緩やかになってきたが、最終需要が低調なために、低い水準にある。在庫は前年を下回る水準にまで減少してきた。しかし、在庫率が依然高水準であり過剰感は強い。

雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数が減少し、勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率はこれまでの最高水準で推移している。

また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を高めており、手元流動性確保に向けての動きを強めている。

こうした中、海外の景気減速などについての懸念があることや為替レートが大きく動いたこともあって、経済の先行きに対する不透明感が依然強い。

以上のように、景気は低迷状態が長引き、極めて厳しい状況にある。

このような厳しい経済状況の下、10月には、金融機能再生法、金融機能早期健全化法を「車の両輪」とする新たな法的枠組みが整えられた。また、経済戦略会議は、「短期経済政策への緊急提言」を発表した。

政府は11月中旬までに緊急経済対策を策定し、それを受けて第3次補正予算を編成する。

1.国内需要:設備投資は、大幅に減少

個人消費は、低調である。これは、収入が減少していることに加え、消費者の財布のひもが依然として固いからである。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で8月2.4%減の後、9月は 1.5%減(前月比0.8%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比 1.1%減、勤労者以外の世帯では同1.7%減となった。形態別にみると、耐久財は増加、サービス等は減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比1.0%減、勤労者世帯では同0.7%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で8月3.1%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で8月4.2%減の後、9月は3.9%減(前月比0.1%増)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で8月 4.3%減の後、9月5.3%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で8月3.7%減の後、9月2.3%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を除く)新車新規登録台数は、前年同月比で10月は14.0%減となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で9月は10.6%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、9月は前年同月比で国内旅行が6.3%減、海外旅行は6.2%減となった。

当庁「消費動向調査」(9月調査)によると、消費者態度指数は、6月に前期差2.1ポイント低下の後、9月には同1.2ポイントの低下となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で8月2.4%減の後、9月(速報)は0.7%減(事業所規模30人以上では同0.4%減)となり、うち所定外給与は、9月(速報)は同8.9%減(事業所規模30人以上では同8.4%減)となった。実質賃金は、前年同月比で8月1.9%減の後、9月(速報)は0.5%減(事業所規模30人以上では同0.0%)となった。なお、平成10年夏季賞与は、事業所規模5人以上では前年比2.1%減(前年は同1.5%増)となった。

住宅建設は、マンションの不振もあって低水準が続いている。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で8月7.2%増(前年同月比11.4%減)となった後、9月は3.2%減(前年同月比14.0%減)の9万5千戸(年率114万戸)となった。9月の着工床面積(季節調整値)は、前月比3.9%減(前年同月比11.5%減)となった。9月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比1.2%減(前年同月比0.1%増)、貸家は同2.0%減(同16.5%減)、分譲住宅は同11.6%減(同23.1%減)となっている。

設備投資は、大幅に減少している。特に中小企業の減少が著しい。

日本銀行「企業短期経済観測調査」(9月調査)により設備投資の動向をみると、主要企業の10年度設備投資計画は、製造業で前年度比4.8%減(6月調査比2.3%下方修正)、非製造業で同1.0%減(同0.5%下方修正)となっており、全産業では同2.3%減(同1.1%下方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比10.4%減(6月調査比2.3%下方修正)、非製造業で同12.7%減(同0.3%上方修正)となり、中小企業では製造業で同17.1%減(同3.1%上方修正)、非製造業で同16.5%減(同4.1%上方修正)となっている。

なお、10年4~6月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で10.6%減(うち製造業7.9%増、非製造業19.0%減)となった。

先行指標の動きをみると、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で7月は3.7%減 (前年同月比24.1%減)の後、8月は3.5%減(同25.0%減)となり、基調は減少傾向となっている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、9月は前月比18.7%増(前年同月比15.8%減)となったが、このところ弱い動きとなっている。内訳をみると、製造業は前月比29.7%増(前年同月比24.4%減)、非製造業は同13.2%増(同13.5%減)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、前倒し執行や10年度第1次補正予算の効果が現れてきた。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で7月6.1%減の後、8月は1.2%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で8月3.5%増の後、9月は23.8%増となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で8月14.7%減の後、9月は19.5%増となった。

2.生産雇用:依然として厳しい雇用情勢

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、減少傾向が緩やかになってきたが、最終需要が低調なために、低い水準にある。在庫は前年を下回る水準にまで減少してきた。しかし、在庫率が依然高水準であり過剰感は強い。

鉱工業生産は、前月比で8月1.3%減の後、9月(速報)は、化学、繊維等が減少したものの、電気機械、輸送機械等が増加したことから、2.5%増となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で10月は機械、鉄鋼等により1.1%減の後、11月は機械、鉄鋼等により0.3%減となっている。鉱工業出荷は、前月比で8月1.3%減の後、9月(速報)は、生産財、資本財等が増加したことから、3.2%増となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で8月0.3%減の後、9月(速報)は、精密機械が増加したものの、化学、鉄鋼等が減少したことから、1.2%減となった。また、9月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は111.8と前月を3.0ポイント下回った。

主な業種について最近の動きをみると、電気機械では、生産は9月は増加し、在庫は2か月連続で減少した。輸送機械では、生産は9月は増加し、在庫は3か月連続で減少した。化学では、生産は2か月連続で減少し、在庫は4か月連続で減少した。

農業生産の動向をみると、平成10年産水稲の全国作況指数(10月15日現在)は、98の「やや不良」となっている。

雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数が減少し、勤め先や事業の都合による失業者 が増加して、完全失業率はこれまでの最高水準で推移している。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、8月0.50倍の後、9月0.49倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、8月0.88倍の後、9月0.85倍となった。雇用者数は、減少している。 総務庁「労働力調査」による雇用者数は、9月は前年同月比0.7%減(前年同月差35万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、8月前年同月比0.1%減(季節調整済前月比0.0%)の後、9月(速報)は同0.3%減(同0.0%)となり(事業所規模30人以上では前年同月比0.6%減)、産業別には製造業では同1.8%減となった。9月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差3万人減の292万人、完全失業率(同)は、8月4.3%の後、9月4.3%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では8月前年同月比16.5%減(季節調整済前月比1.2%増)の後、9月(速報)は同 17.0%減(同1.9%減) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比17.0%減)。

企業の動向をみると、企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、中小企業を中心に厳しさが増している。

前記「企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、主要企業(全産業)では、10年度上期の経常利益は前年同期比27.9%の減益(除く電力・ガスでは同28.3%の減益)の後、10年度下期には同8.9%の増益(除く電力・ガスでは同11.3%の減益)が見込まれている。産業別にみると、製造業では10年度上期に前年同期比32.6%の減益の後、10年度下期には同13.0%の増益が見込まれている。また、非製造業(除く電力・ガス)では10年度上期に前年同期比18.8%の減益の後、10年度下期には同7.9%の増益が見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では10年度上期に2.92%になった後、10年度下期は3.96%と見込まれている。また、非製造業(除く電力・ガス)では10年度上期に1.40%となった後、10年度下期は1.52%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が拡大した。

また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(9月調査、季節調整 値)でみると、売上げD.I.(「増加」-「減少」)は、10年7~9月期は「減少」超幅が拡大し、純益率D.I.(「上昇」-「低下」)は、「低下」超幅が縮小した。業況判断D.I.(「好転」-「悪化」)は、10年7~9月期は前期と同水準で推移した。

企業倒産の状況をみると、件数は、高い水準で推移している。

銀行取引停止処分者件数は、9月は1,091件で前年同月比15.7%増となった。業種別に件数の前年同月比をみると、製造業で37.8%、サービス業で30.4%の増加となった。

3.国際収支:貿易・サービス収支の黒字は、緩やかに増加

輸出は、アジア向けが減少しているものの、欧米向けなどが好調なため、全体としては横ばい状態となっている。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で8月3.6%減の後、9月は3.3%増(前年同月比1.0%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、電気機器等が減少したが、輸送用機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジアが減少したが、中東等が増加した。

輸入は、減少テンポが弱まり、おおむね横ばい状態となっている。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で8月2.9%減の後、9月3.5%増(前年同月比6.9%減)となった。この動きを品目別(金額ベース)にみると、食料品等が増加した。同じく地域別にみると、EU等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、8月に1兆1,436億円の黒字の後、9月は1兆2,632億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、緩やかに増加している。

8月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大するとともに、サービス収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、9,054億円となった。また、経常収支(季節調整値) は、所得収支及び貿易・サービス収支の黒字幅が拡大し、経常移転収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、1兆5,707億円となった。投資収支(原数値)は、5,413億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、 6,088億円の赤字となった。

10月末の外貨準備高は、前月比19億ドル増加して2,140億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、10月は、月初の136円台から115円台まで大幅に上昇し、その後は114円台から119円台で推移した。一方、対マルク相場(インターバンク17時時点) は、10月は、月初の81円台から70円台まで大幅に上昇し、その後は70円台から73円台で推移した。

4.物価:国内卸売物価は、弱含みで推移

国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。

9月の国内卸売物価は、食料用農畜水産物(鶏卵)等が上昇した一方、非鉄金属(銅地金)等が下落したことから、前月比保合い(前年同月比2.0%の下落)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したことに加え、円高から円ベースでは前月比4.5%の下落(前年同月比2.9%の上昇)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで下落したことに加え、円高から円ベースでは前月比4.2%の下落(前年同月比2.2%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比1.1%の下落(前年同月比1.5%の下落)となった。

10月上中旬の動きを前旬比でみると、国内卸売物価は上旬が保合い、中旬が0.1%の下落、輸出物価は上旬が2.1%の下落、中旬が5.9%の下落、輸入物価は上旬が1.5%の下落、中旬が4.8%の下落、総合卸売物価は上旬が0.4%の下落、中旬が1.3%の下落となっている。

企業向けサービス価格は、9月は前年同月比0.6%の下落(前月比0.2%の下落)となった。

商品市況(月末対比)は石油等は上昇したものの、非鉄等の下落により10月は下落した。10月の動きを品目別にみると、C重油等は上昇したものの、銅地金等が下落した。

消費者物価は、基調として安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で8月0.1%の下落の後、9月は医療保険制度要因のはく落等により0.5%の下落(前月比0.4%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で8月0.3%の下落の後、9月は0.2%の下落(前月比0.8%の上昇)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で9月0.3%の下落の後、10月(中旬速報値)は一般食料工業製品が下落から上昇に転じたこと等により0.2%の下落(前月比0.1%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で9月0.1%の下落の後、10月(中旬速報値)は0.4%の上昇(前月比0.8%の上昇)となった。

5.金融財政:民間金融機関の貸出が低調なことから、企業の貸出態度に対する懸念が高まり、手元流動性確保に向けての動きが強まる

最近の金融情勢をみると、短期金利は、10月はおおむね横ばいで推移した。長期金利は、10月はおおむね横ばいで推移した。株式相場は、10月は一進一退で推移した。マネーサプライ(M2+CD)は、9月は前年同月比3.9%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレート、2、3か月物ともに、10月はおおむね横ばいで推移した。

公社債市場をみると、国債流通利回りは、10月はおおむね横ばいで推移した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、8月は短期は0.010%ポイント低下し、長期は0.079%ポイント低下したことから、総合では前月比で0.029%ポイント低下し  1.873%となった。

マネーサプライ(M2+CD)の月中平均残高を前年同月比でみると、9月(速報)は 3.9%増となった。また、広義流動性でみると、9月(速報)は3.2%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関の貸出平残(全国銀行)は、9月(速報)は前年同月比2.7%減となった。10月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が70億円となった。また、10月の国内公募事業債の起債実績は7,950億円となった。

また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を高めており、手元流動性確保に向けての動きを強めている。

株式市場をみると、日経平均株価は、10月は一進一退で推移した。

6.海外経済:アメリカ、追加利下げ

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大しているものの、先行きに対する不透明感がみられる。実質GDPは、4~6月期前期比年率1.8%増の後、7~9月期は同3.3%増(暫定値)となった。個人消費、住宅投資は増加している。設備投資の伸びはマイナスとなった。鉱工業生産(総合)は鈍化している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は8月前月差30.9万人増の後、9月は同6.9万人増となった。失業率は9月4.6%となった。物価は安定している。9月の消費者物価は前月比 0.0%、生産者物価(完成財総合)は同0.3%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、拡大している。連邦準備制度理事会(FRB)は、10月15日に公定歩合を0.25%引き下げ4.75%に、またフェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を0.25%引き下げ5.00%にする金融政策の変更を発表した。10月の長期金利(30年物国債)は、総じてやや上昇した。株価(ダウ平均)は、総じて上昇した。

西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになっている。4~6月期の実質GDPは、ドイツでは、4月の付加価値税引上げの影響などから、前期比年率0.4%増、フランス同2.6%増、イギリス同2.3%増(確報値)となった。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大しており、イギリスでは鈍化している(鉱工業生産は、ドイツ8月前月比1.0%減、フランス7~8月対6月比0.3%減、イギリス8月前月比0.4%減)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下している。イギリスでは低水準で推移している(9月の失業率は、ドイツ10.7%、フランス11.7%、イギリス4.6%)。物価は、ドイツ、フランスでは安定しており、イギリスでは一時の騰勢は鈍化してきている(9月の消費者物価上昇率は、ドイツ前年同月比0.8%、フランス同0.5%、イギリス同3.2%)。なお、イングランド銀行は、10月8日に2年4カ月ぶりに政策金利(レポ金利)を0.25%引き下げ、7.25%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は、下落している。貿易収支は、輸入の不振から大幅な黒字である。韓国では、景気は後退している。失業率は上昇している。物価は、騰勢は鈍化している。貿易収支は、輸入減少により大幅な黒字が続いている。

国際金融市場の10月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、月上旬に大幅減価した後、月後半以降はやや増価した(モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)10月30日106.2、9月末比4.2%の減価)。内訳をみると、10月30日現在、対円では9月末比15.0%減価、対マルクでは同0.9%減価した。

国際商品市況の10月の動きをみると、上旬から中旬にかけて強含んだが、その後はやや弱含みに推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、産油国石油相による会合で追加減産合意がなされなかったことなどから、月を通じておおむね弱含みで推移した。