産業動向(平成11年11月)

平成11年11月


産業動向の推移

産業動向の推移イメージ


概況

我が国産業の最近の動向について次のような特徴がみられる。

(1)最近の産業動向は、設備投資関連業種では低調または不振が続いているものの、各種の政策効果の浸透に加え、情報通信関連製品の需要増加、自動車の生産の増加、アジア経済の回復及びこれらの波及効果から、横ばい状況から堅調となったものが3業種、低調から横ばい状況となったものが3業種あり、総じてみれば改善がみられる。

(2)製造業をみると、

素材型産業では、紙・パルプは横ばい状況から堅調となり、鉄鋼は低調から横ばい状況となった。化学(石油化学)は横ばい状況が続いている。

加工組立型産業では、半導体は横ばい状況から堅調となり、自動車は低調から横ばい状況となった。コンピュータ関連機器、通信機器、家電は横ばい状況が続き、工作機械、建設機械は低調に推移している。また、産業機械は不振が続いている。

(3)非製造業をみると、

電力は横ばい状況から堅調となり、情報サービスは堅調に推移している。広告は低調から横ばい状況となり、旅行、外食は横ばい状況が続いている。また、建設・住宅、国内貨物、リースは低調に推移している。

鉄鋼は低調から改善し横ばい状況となった。これは、普通鋼鋼材の国内出荷に持ち直しの動きがみられるなか、粗鋼生産もアジア向け輸出の増加等を背景に持ち直しの動きが続き、また国内在庫をみると、在庫率がほぼ適正水準となっているからである

化学(石油化学)は横ばい状況が続いている。これは、エチレン及び汎用樹脂についてみると、国内出荷はおおむね前年を上回る水準で推移しており、生産は輸出増を映じて増加傾向となっているからである。

紙・パルプは、横ばい状況から改善し堅調となった。これは、生産、出荷が堅調に推移しており、また在庫をみると、紙の在庫率がほぼ適正水準となっているからである。

一般機械では、産業機械は不振が続いている。これは、受注について、官公需向けに動きはみられたものの、設備投資の冷え込みを映じて、引き続き低迷しているからである。工作機械は低調に推移している。これは、受注について、マイナス幅は縮小しているものの、依然として大幅な前年割れが続いているからである。建設機械は低調に推移している。これは、出荷について、設備投資の冷え込みを映じて、内需の持ち直しの動きに力強さがみられないからである。

産業用電気機械・電子部品では、半導体集積回路は、横ばい状況から改善し堅調となった。これは、パソコン、携帯電話向け製品が好調に推移しているからである。コンピュータ関連機器は、横ばい状況が続いている。これは、ウェイトの大きいパソコンが好調に推移しているものの、その他の製品は低調な動きが続いているからである。通信機器は、横ばい状況が続いている。これは、携帯電話が好調に推移しているものの、通信インフラの設備投資が低調であるからである。

家電は横ばい状況が続いている。これは、国内出荷(台数ベース)は総じて底固く推移しており、生産も、おおむね横ばいで推移しているからである。

自動車は低調から改善し横ばい状況となった。これは、完成車輸出が前年割れの傾向にあるものの、国内販売(新車新規登録・届出台数)がおおむね横ばいで推移し、生産に持ち直しの動きがみられるからである。

建設・住宅は低調に推移している。これは、住宅着工は前年を上回る水準で推移しているものの、公共工事については事業の実施が進んでいるが、着工の動きは低調となっており、民間工事や非居住用建築の減少傾向が続いているからである。

運輸・旅行では、国内貨物輸送は、低調に推移している。これは、大宗を占める一般トラックが、生産関連貨物及び建設関連貨物に荷動きがみられるものの、基調としては依然前年割れとなっているからである。

旅行関連は、横ばい状況が続いている。これは、個人旅行者数に動きがみられるものの、団体旅行者数の減少や商品価格の低下等により、取扱高が一進一退で推移しているからである。

情報サービスは堅調に推移している。これは、主力の受注ソフトウェアの売上高が、堅調に推移しているからである。

外食は横ばい状況が続いている。これは、既存店ベースでは、売上高、利用客数が前年割れを続けているものの、全店ベースでは店舗数が増加傾向にあり、売上高、利用客数も前年比増で推移しているからである。

リースは低調に推移している。これは、リース契約額が、設備投資の冷え込みを映じて、基調として引き続き減少しているからである。

電力は横ばい状況から改善し堅調となった。これは、大口電力が8月に20か月振りに増加に転じた後、9月も増加を続けたことと、民生用電力が大きな伸びとなったからである。

広告は低調から改善し横ばい状況となった。これは、テレビを中心に売上高に持ち直しの動きがみられるからである。


1.鉄鋼

鉄鋼は低調から改善し横ばい状況となった。これは、普通鋼鋼材の国内出荷に持ち直しの動きがみられるなか、粗鋼生産もアジア向け輸出の増加等を背景に持ち直しの動きが続き、また国内在庫をみると、在庫率がほぼ適正水準となっているからである。

  •  普通鋼鋼材の国内出荷(前年同月比)は、8月5.7%増、9月1.0%増となり、持ち直しの動きがみられる。
     これを受注面からみると、普通鋼鋼材の国内受注は、7月6.5%増、8月6.4%増となり、持ち直しの動きがみられる。
     用途別にみると、建設向けは、土木用が公共工事向けに堅調に推移しているなか、建築用でも住宅向けで二ケタ増が続いていること等から、全体でも、7月0.9%増、8月9.3%増となり、総じて堅調に推移している。
     製造業向けは、7月7.2%増、8月4.4%増となり、持ち直しの動きがみられる。内訳別では、ウェイトの高い自動車用は、軽自動車向けに引き続き動きがみられており、また普通、小型乗用車向けもモデルチェンジ等により引き続き増加していることから、全体でも持ち直しの動きが続いている。また、その他の用途では、造船用は低調に推移しており、また電気機械用はやや減少している。
     こうした状況のなか、国内在庫は、8月542万トン(前年同月比6.4%減)、9月531万トン(同6.2%減)と減少傾向にあり、また在庫率も改善していることからほぼ適正水準となっている。
  •  鉄鋼の輸出入(全鉄鋼ベース、前年同月比)をみると、輸出数量は、8月3.6%減、9月3.1%減と減少が続いているものの、半製品の大幅増や鋼板類の増加から、基調としては底固い動きとなっている。なお、前月比でみると、アジア向けの大幅な増加から、1月以降増加基調にある。

これを仕向け先別にみると、米国向けは、アンチ・ダンピング提訴の影響から、大幅な減少が続いている。一方、韓国、アセアン向けは景気が回復傾向にあることから、鋼板類を中心に大幅な増加が続いている。

輸出船積平均単価は、ドルベースではおおむね横ばいで推移しており、また円ベースでは円高の影響もあってやや低下している。

輸入数量は、8月17.0%増、9月25.6%増となり、前年が低水準であったことから増加が続いている。

  •  粗鋼の生産は、8月800万トン(前年同月比3.3%増)、9月810万トン(同4.3%増)となり、アジア向け輸出の増加等を背景に持ち直しの動きが続いている。
  •  鋼材の市況をみると、条鋼類では、棒鋼はやや上昇しているものの、H形鋼は需要の低迷等からやや低下している。鋼板類では、冷延薄板は横ばい状況にあり、また厚鋼板はやや低下している。

2.化学(石油化学)

化学(石油化学)は横ばい状況が続いている。これは、エチレン及び汎用樹脂についてみると、国内出荷はおおむね前年を上回る水準で推移しており、生産は輸出増を映じて増加傾向となっているからである。

  •  石油化学製品の基礎原料であるエチレンの生産は、主にアジア向け輸出が増加したことにより、9月620千トン(前年同月比12.8%増)、10月645千トン(速報、前年同月比12.1%増)となった。汎用樹脂の生産についても、9月にポリスチレン及び低密度ポリエチレンが減少となったものの、輸出増を映じて、おおむね増加傾向となっている。

在庫水準については、改善されてきており、おおむね適正水準に近づきつつある。

  •  汎用樹脂の国内出荷については、ここ数年と比較すると低い水準であるものの、おおむね前年を上回る水準で推移している。主要樹脂別にみると、低密度ポリエチレンは、主力のフィルム向け等で増加となり、全体でも増加となった。高密度ポリエチレンはほぼ前年並みとなった。汎用樹脂最大の需要を有するポリプロピレンは、主力の自動車工業向け等の工業部品向けがほぼ前年並みとなり、全体では微増となった。ポリスチレンは、大幅増が続いた反動もあり、8月以降減少となった。塩化ビニルについては、公共工事や住宅関連需要により増加となった。
  •  汎用樹脂の輸出についてはおおむね、中国をはじめとしたアジア向けを中心に増加傾向となっている。

汎用樹脂の東南アジア市況については、需要が回復してきたことに加え、原油及びナフサ価格が上昇していることを映じて、上昇基調となっている。


3.紙・パルプ

紙・パルプは、横ばい状況から改善し堅調となった。これは、生産、出荷が堅調に推移しており、また在庫をみると、紙の在庫率がほぼ適正水準となっているからである。 

  •  紙の生産(前年同月比)は、8月5.9%増、9月3.6%増となり、堅調に推移している。出荷は、販促用のチラシ向け等で堅調に推移していることから、8月3.9%増、9月3.0%増と堅調に推移している。一方、在庫は総じて減少傾向にあり、在庫率もほぼ適正水準となっている。

紙の生産を品目別にみると、新聞巻取紙は底固い動きとなっている。印刷・情報用紙では、塗工紙で引き続き増加傾向にあること等から、堅調に推移している。非塗工類は、上級紙が堅調に推移していることから、全体でも増加に転じ、持ち直しの兆しがみられる。塗工紙は、微塗工紙、塗工紙ともに引き続き増加傾向にある。情報用紙は、ウェイトの高いPPC用紙が総じて堅調に推移していること等から、全体でも底固い動きとなっている。

衛生用紙は、需要が回復してきていることから、堅調に推移している。

  •  板紙の生産(前年同月比)は、8月2.6%増、9月3.6%増と堅調に推移している。出荷は、飲料向けが残暑の影響等から増加し、また加工食品向け等でも動きがみられていることから、8月9.4%増、9月6.7%増と堅調に推移している。こうした状況のなか、在庫は総じて減少傾向にあるものの、在庫率はやや高い水準にある。

板紙の生産を品目別にみると、段ボール原紙は堅調に推移している。

  •  パルプの生産(前年同月比)は、紙の需要が堅調に推移していることから、8月2.8%増、9月1.6%増となり、持ち直しの動きが続いている。
  •  紙、板紙の輸出入(数量ベース、前年同月比)をみると、輸出は、中国向け等が堅調に推移していることから、8月23.6%増、9月31.7%増となり、引き続き増加傾向にある。

一方、輸入は、8月5.2%増の後、9月16.6%減となり、基調としては減少傾向にある。

  •  紙の市況をみると、紙、板紙ともに横ばい状況にある。

4.一般機械

産業機械は不振が続いている。これは、受注について、官公需向けに動きはみられたものの、設備投資の冷え込みを映じて、引き続き低迷しているからである。工作機械は低調に推移している。これは、受注について、マイナス幅は縮小しているものの、依然として大幅な前年割れが続いているからである。建設機械は低調に推移している。これは、出荷について、設備投資の冷え込みを映じて、内需の持ち直しの動きに力強さがみられないからである。

  •  一般機械の生産(季調済前月比)は、8月6.5%増、9月5.0%減(速報)と、一進一退で推移している。増加した機種は、17機種中、8月には10機種、9月には6機種(速報)となった。

機械受注(原動機・産業機械・工作機械・半導体製造装置のみ、金額ベース、前年同月比)をみると、8月は半導体製造装置の大幅な増加等により18.5%増となった後、9月は原動機、産業機械、工作機械が大幅な減少となったことから、19.2%減となった。

輸出入の動向(事務用機器を除く・円ベース、前年同月比)をみると、輸出は8月12.8%減、9月8.4%減と減少が続いている。輸入も8月13.0%減、9月11.9%減と減少が続いている。

  •  産業機械は不振が続いている。産業機械の受注(日本産業機械工業会調べ、金額ベース、前年同月比)は、8月33.3%増の後、9月31.0%減となった。需要者別にみると、内需は官公需向け環境装置に動きがみられたものの、製造業向け、非製造業向けともに減少が続いていることから、引き続き低迷している。外需は、8月は前年比増となったものの、プラント受注が減少していること等から、低水準で推移している。
  •  工作機械は低調に推移している。工作機械の受注(日本工作機械工業会調べ、金額ベース、前年同月比)は、8月19.4%減、9月17.9%減と、マイナス幅は縮小しているものの、依然として大幅な減少が続いている。需要者別にみると、内需は、8月は自動車向けで前年比増、9月は一般機械、電気機械、商社・代理店向けで前年比増となり、全体のマイナス幅は縮小した。外需は、アジア向けは増加しているものの、ウェイトの高い北米向けと欧州向けで減少が続いており、依然として前年を下回っている。
  •  建設機械は低調に推移している。建設機械の出荷(日本建設機械工業会調べ、本体・金額ベース、前年同月比)は、8月8.3%減、9月12.4%減となった。需要者別にみると、内需は、掘削機械の持ち直しの動きが足踏み状態にあり、設備投資の冷え込みを映じて建設用クレーンの大幅減が続いたことから、8月5.5%減、9月9.9%減となった。外需は、欧州向けが好調なことに加え、アジア向けも大幅な増加が続いているものの、北米・中南米向けは大幅な減少が続き、8月13.1%減、9月18.5%減となった。

5.産業用電気機械・電子部品

半導体集積回路は、横ばい状況から改善し堅調となった。これは、パソコン、携帯電話向け製品が好調に推移しているからである。コンピュータ関連機器は、横ばい状況が続いている。これは、ウェイトの大きいパソコンが好調に推移しているものの、その他の製品は低調な動きが続いているからである。通信機器は、横ばい状況が続いている。これは、携帯電話が好調に推移しているものの、通信インフラの設備投資が低調であるからである。

  •  半導体集積回路は、横ばい状況から改善し堅調となった。パソコン、携帯電話向けの製品が好調なことから、出荷額(前年同月比)は、7月13.9%増、8月15.0%増と増加しており、在庫率は、8月0.68に低下している。また、DRAMの価格は、需給が引き締まりつつあること等により、このところ上昇している。
  •  コンピュータ関連機器は、横ばい状況が続いている。ウェイトの大きいパソコンが好調に推移しているものの、その他の製品は低調であることから、生産額(前年同月比)は、7月0.9%増の後、8月1.6%減となった。パソコンは、7月39.4%増、8月9.7%増と個人向けを中心に好調に推移している。周辺装置は、8月2.1%減、9月11.0%減(速報)と低調な動きが続いている。
  •  通信機器は、横ばい状況が続いている。生産額(前年同月比)は、7月8.2%増、8月9.0%増と増加したものの、通信インフラに関する設備投資の前年水準が低かった影響等によることから、総じてみれば横ばい状況が続いている。内訳をみると、通信インフラ関連では、ISDN、デジタル専用線に関連する搬送装置は、前年水準が低かったことの影響から、7月39.2%増、8月40.0%増と増加し、電子交換機は8月2.9%増の後、9月1.8%減となり、総じてみれば低調な推移となっている。携帯電話は、7月2.6%増の後、新機種投入を控え、8月5.4%減となったものの、総じてみれば引き続き好調に推移している。

6.家庭電器

家電は横ばい状況が続いている。これは、国内出荷(台数ベース)は総じて底固く推移しており、生産も、おおむね横ばいで推移しているからである。

  •  家電の国内出荷(台数ベース)は、総じて底固く推移している。

AV家電をみると、品目ごとにばらつきがあるものの、総じて底固く推移している。品目別では、カラーテレビは、中型の平面ブラウン管型を中心に底固く推移している。VTRは、直近も含めこのところ前年を下回っている。ビデオカメラは、前年並みの水準で推移している。CDプレーヤ(MDプレーヤを含む)は、水準としては高いものの、前年を大きく下回った。なお、MD搭載型のラジカセやステレオセットは堅調に推移している。

白物家電をみると、買い替え需要や住宅需要の増加もあり、総じて底固く推移している。品目別では、冷蔵庫は400リットル以上の大型が大幅に増加しており、全体でも前年を上回っている。洗濯機は前年をやや下回る水準で推移している。電子レンジは前年並みの水準で推移している。エアコンは、残暑の影響もあり8、9月とも前年を大きく上回った。

  •  家電の輸出(台数ベース)は基調としては減少傾向が続いている。カラーテレビは、香港向けを中心に8月は増加したが、9月は再び減少した。VTRは、アメリカ向けを中心に大幅に減少した。CDプレーヤは、アメリカ向けが増加しているものの、シンガポールやメキシコ向け等の減少から、全体では一進一退の動きとなっている。
  •  家電の輸入(台数ベース)は基調としては増加傾向が続いている。カラーテレビはマレーシア、中国の増加から8月は大幅に増加したが、9月はマレーシアの減少から全体では前年並みとなった。VTRは中国、インドネシアの減少から前年を下回った。
  •  家電の生産額(前年同月比)は、西日本を中心とした夏場の天候不順もあり、白物家電を中心に生産を抑制する動きがみられたことから、7月2.3%減、8月0.7%減と前年をやや下回ったが、基調としてはおおむね横ばいで推移している。

7.自動車

自動車は低調から改善し横ばい状況となった。これは、完成車輸出が前年割れの傾向にあるものの、国内販売(新車新規登録・届出台数)がおおむね横ばいで推移し、生産に持ち直しの動きがみられるからである。

  •  自動車全体の国内販売(新車新規登録・届出台数、前年同月比)は、9月2.2%増の後、10月は登録稼動日数が前年より少なかったこともあり4.4%減となったものの、新型車の投入やモデルチェンジの効果もみられ、おおむね横ばいで推移している。車種別にみると、普通乗用車はモデルチェンジをした車が好調であることから、10月に前年を上回った。小型乗用車は一部の新型車が好調なものの、全体では低調に推移している。普通トラックは9、10月とも再び前年割れとなった。小型トラックは新型車の効果がみられるもののやや前年を下回った。軽乗用車は高水準で推移しているものの、新規格車の投入から1年を経過したことから、直近では前年をやや下回っている。軽トラックは堅調に推移している。

輸入車販売では、9月1.6%増の後、10月は逆輸入車の減少等により9.8%減となった。

  •  自動車の輸出(完成車台数ベース、前年同月比)は、8月3.1%減の後、9月4.3%増となったものの、前年割れの傾向が続いている。仕向地別にみると、主力の北米向けは好調なものの、欧州向けは前年割れが続いている。その他の地域では、アジア向けは持ち直しつつあるものの、中東向け、南米向けは大幅な前年割れが続いており、中米向けもこのところ減少している。

自動車部品の輸出(日本自動車工業会々員11社分、ドルベース)は、海外生産用部品、OEM用部品とも増加していることから、8月21.9%増、9月13.7%増と増加傾向にある。

  •  自動車の生産(完成車台数ベース、前年同月比)は、8月5.9%増、9月10.7%増と持ち直しの動きがみられる。車種別にみると、普通乗用車は輸出の増加やモデルチェンジの効果から増加している。小型乗用車、普通トラックは国内販売が基調として低迷していることや輸出の減少等から前年割れが続いている。小型トラックは新型車の投入効果がみられるものの、前年並みに伸びが鈍化している。軽乗用車は前年を大幅に上回る水準で推移し、軽トラックも増加傾向が続いている。

8.建設・住宅

建設・住宅は低調に推移している。これは、住宅着工は前年を上回る水準で推移しているものの、公共工事については事業の実施が進んでいるが、着工の動きは低調となっており、民間工事や非居住用建築の減少傾向が続いているからである。

[建設]

  •  建設業大手50社の受注額(前年同月比)は、8月6.9%減、9月5.2%減と、減少幅は縮小しつつあるものの、減少傾向が続いている。受注の約6割を占める民間工事をみると、8月3.7%減の後、9月2.4%増となり、6か月振りに増加となった。民間工事の内訳をみると、製造業向けは、主力の電気機械は増加となったものの、化学や輸送機械等の減少幅が大きく、全体でも大幅な減少が続いている。ウェイトのより大きい非製造業向けは、マンションを中心とした不動産業やサービス業の増加から、9月は全体でも増加となった。受注の約3割を占める官公庁工事については、大規模な受注が一段落しており、4か月連続で減少となった。海外工事も減少傾向が続いている。

施工高は、7月13.4%減、8月13.5%減となった。また、未消化工事高は、33か月連続で減少となった。

また、地方大手建設業者470社の受注額(前年同月比)は、民間、官公庁ともに大きく減少したため、8月13.0%減、9月12.8%減となった。

  •  建築の着工状況(床面積)をみると、主として居住用建築物の増加が大きかったことから、8月5.4%増、9月4.3%増となった。内訳をみると、着工床面積の6割近くを占める民間居住用建築では、8月11.8%増、9月12.8%増と、7か月連続して増加となった。民間非居住用建築については、サービス業用等で増加となる月があるものの、鉱工業用で大幅減が続いており、全体でも減少傾向が続いている。
  •  公共工事着工(総工事費評価額)は、8月7.4%減、9月10.8%減となった結果、4~9月累計では3.6%減となり、事業の実施は進んでいるが、着工は低調な動きとなっている。これは、都道府県等の地方の機関が減少したことに加え、9月には国の機関も減少したためである。

民間土木工事着工は、8月0.7%減、9月27.2%減となった。

[住宅]

  •  住宅着工(戸数)は、8月8.4%増、9月10.5%増となり、また9月の年率換算値では126万戸となっており、前年を上回る水準で推移している。利用関係別でみると、持家の着工が底固く推移しているのに加え、分譲のうち特にマンションの着工が増加している。貸家についてもほぼ前年並みとなった。
  •  戸建住宅産業の最近の動きについては、構造別の着工戸数は、ウェイトの約半分を占める木造は回復傾向にあり、非木造についても、鉄骨鉄筋コンクリート造を中心に増加となった。建築単価については、1平方メートル当たりの工事費予定額では、木造はほぼ前年並で推移しており、非木造はやや高くなっている。1戸あたりの面積については、利用関係別ではややばらつきがあるが、おおむね緩やかな増加傾向にある。
  •  マンション産業の最近の動きについては、全体の着工は、8月29.4%増、9月39.4%増と、3か月連続して二ケタの増加となった。圏別にみると、三大都市圏全てで増加が続いている。ただし、この動きは住宅減税の適用を受けるための駆け込み着工である面が強いと考えられる。なお、新規契約率(首都圏)については、金利先高感及び減税等の理由により、8月73.7%、9月77.5%と10か月連続で70%を超えており、引き続き好調である。また、在庫については、前月に比べると若干増加しているものの、9千戸を下回る低い水準が続いている。

9.運輸・旅行

国内貨物輸送は、低調に推移している。これは、大宗を占める一般トラックが、生産関連貨物及び建設関連貨物に荷動きがみられるものの、基調としては依然前年割れとなっているからである。

旅行関連は、横ばい状況が続いている。これは、個人旅行者数に動きがみられるものの、団体旅行者数の減少や商品価格の低下等により、取扱高が一進一退で推移しているからである。

  •  国内貨物輸送は、低調に推移している。内訳をみると、一般トラック(前年同月比:トンベース)は、7月3.2%減の後、8月0.4%増となり、生産関連貨物及び建設関連貨物に荷動きがみられることにより、増加に転じているが、基調としては依然前年割れとなっている。特別積合せトラックは、7月0.5%増、8月5.3%増と、このところ消費財を中心に増加しており、宅配貨物は増加が続いている。内航海運(貨物船)は、6月2.9%減、7月5.3%減となり、総じてみれば一進一退の動きとなっている。JR貨物は、8月2.0%増、9月2.4%増(速報)と増加したものの、路線災害により前年水準が低かったことの反動等によることから、依然不振が続いている。航空貨物は、8月6.3%増、9月4.2%増(速報)と増加が続いている。
  •  国際貨物輸送は、改善の動きが続いている。航空貨物は、貨物トン数(全国ベース)でみると、アジア経済の回復等により、輸出は、8月15.7%増、9月17.2%増、輸入は、8月14.7%増、9月15.3%増となった。外航海運の貨物トン数は、輸出は8月0.5%増の後、9月5.8%減となり、輸入は8月2.1%減の後、9月6.1%増となった。
  •  旅行関連は、横ばい状況が続いている。大手旅行会社(鉄道旅客協会加盟13社)の取扱額(前年同月比)は、団体旅行の夏季需要の持ち直し等により、8月は0.2%増となったものの、9月は2.4%減と再び減少した。内訳をみると、国内旅行は8月0.7%増の後、9月2.9%減となり、海外旅行は8月0.6%減、9月1.6%減となった。主要旅客輸送機関の実績(人数ベース、前年同月比)をみると、JR旅客は、定期外は8月0.4%増となった。航空(3社)は、国内線は8月2.9%増、9月0.5%増(速報)、国際線は8月13.7%増、9月6.7%増(速報)と増加が続いている。

10.情報サービス

情報サービスは堅調に推移している。これは、主力の受注ソフトウェアの売上高が、堅調に推移しているからである。

  •  情報サービス業売上高(前年同月比)は、8月3.1%増、9月7.3%増となり、約6割を占める主力の受注ソフトウェアが堅調であることから、全体でも堅調に推移している。
  •  業務種類別にみると、
    • 受注ソフトウェアは、金融業、通信業向け等の需要増により、8月4.0%増、9月8.3%増と堅調に推移している。
    • ソフトウェアプロダクトは、8月5.6%減、9月0.8%増となった。
    • 計算事務等情報処理は、金融業、流通業向け等の需要増から8月2.5%増、9月3.3%増となった。
    • システム等管理運営受託は、金融業、製造業等のアウトソーシングの需要増により、8月8.7%増、9月25.3%増と好調に推移している。
  •  雇用状況は、高等技術者や新たなニーズに対応できる技術者は不足感が続いているものの、全体的には不足感は緩和している。

11.外食

外食は横ばい状況が続いている。これは、既存店ベースでは、売上高、利用客数が前年割れを続けているものの、全店ベースでは店舗数が増加傾向にあり、売上高、利用客数も前年比増で推移しているからである。

  •  大手外食企業が加盟している(社)日本フードサービス協会の調査により、全店ベース(前年同月比)の状況をみると、売上高は8月2.1%増、9月2.3%増となった。これは、客単価が下落傾向にあるものの、店舗数が8月5.7%増、9月5.3%増と引き続き増加傾向にあり、合わせて利用客数が8月4.7%増、9月4.0%増といずれも前年比増で推移しているからである。直近も同様の傾向で推移している。

なお、既存店ベース(前年同月比)でみると、利用客数は、新規出店増に伴う店舗間の競合もあり、8月1.9%減、9月2.6%減と前年割れを続けている。また、客単価は消費者の低価格指向や店舗側の低価格設定等により引き続き下落傾向にあり、この結果、売上高は8月4.3%減、9月3.7%減と前年割れを続けている。

  •  業態別の売上高(全店ベース)をみると、ファーストフードはこのところ前年をやや下回っている。和風や麺類が伸びている一方で、持ち帰り米飯・寿司の分野が大きく落ち込んでおり、業態別にばらつきがみられる。ファミリーレストランは、洋風、中華・その他の分野が店舗数の増加から売上げを伸ばしており、全体でも前年比増で推移している。パブレストラン・居酒屋は、特に居酒屋の分野で店舗数、利用客数、売上げとも大きく伸ばしている。

12.リース

リースは低調に推移している。これは、リース契約額が、設備投資の冷え込みを映じて、基調として引き続き減少しているからである。

  •  リースは低調に推移している。リース契約額(リース事業協会調べ、前年同月比)は、8月5.4%増の後、9月1.8%減となった。設備投資の冷え込みを映じて、全体的に低水準で推移する中、8月は前年水準が落ち込んでいたことを主因に、主力の情報関連機器をはじめ、ほとんどの物件で前年比増となった。しかし、9月には情報関連機器、商業用・サービス業用機器等の主力物件が再び前年割れとなったことから、全体でもマイナスとなり、基調は依然として低調に推移している。
  •  物件別の最近の動向をみると、

契約額の約4割を占める情報関連機器は、8月は通信機器に需要がみられたことから8.2%増となったものの、9月は2.3%減と低調に推移している。

商業・サービス業用機械・設備は、8月はスーパー向け店舗設備に需要がみられ2.2%増となったものの、9月は6.5%減となった。

事務用機器は、前年水準が低かったことに加え、複写機の増加もあって、8月0.3%増、9月1.0%増と微増が続いた。

産業機械は、8月3.3%増の後、前年に自動車向け金型の大口受注があった反動もあって、9月は5.4%減となった。

工作機械は、既存設備のリースバック取引や金属工作機械の大口受注があったことから、8月6.1%増、9月15.3%増となった。

土木建設機械は、8月は3.5%減となったものの、公共工事の事業の実施が進む中、景気低迷による、買取からリースへの需要のシフトもあって、9月は7.3%増と増加基調が続いている。

自動車は、8月5.1%増、9月2.4%減となった。

医療機器は、放射線治療機器や磁気診断装置の大口受注等により、8月11.7%増、9月11.5%増と増加が続いている。

  •  リース料率は、低い水準で推移している。

13.電力

電力は横ばい状況から改善し堅調となった。これは、大口電力が8月に20か月振りに増加に転じた後、9月も増加を続けたことと、民生用電力が大きな伸びとなったからである。

  •  電力需要(9社計、前年同期(月)比)は、8月2.0%増の後、9月には5.9%増と大きな伸びとなった。これは、大口電力が8月に20か月振りに増加に転じた後、9月も増加を続けたことと、民生用電力(電灯、業務用電力)が大きな伸びとなったからである。

用途別にみると、家庭用電灯需要は9月は9.1%増と大幅な増加となった。これは、8、9月の気温が高めに推移したため、冷房需要が増加したことと、検針期間が長かったためである。業務用電力も気温の影響により、9月には5.7%増と大きな伸びとなった。また、小口電力のうち、低圧電力についても電灯と同じ理由で大幅な増加となり、高圧電力Aも8月から2か月連続の増加となった。大口電力も8月には2.6%増と、20か月振りに増加に転じた後、9月も2.8%増となった。

7~9月期について地域別にみると、北海道、東北、関東、東海、北陸は増加となったものの、近畿、中国、四国、九州は前年実績を下回った。

  •  大口電力需要を自家発電を含め業種別にみると、9月はセメント以外の全ての主要業種が増加となった。鉄鋼は、7月に20か月振りに増加に転じた後、3か月連続の増加となった。化学は、汎用樹脂の生産増により、8月に続き9月も増加となった。パルプ・紙は、印刷・情報用紙の生産が堅調なことから5か月連続の増加となった。セメントは、5月には21か月振りに増加に転じたものの、生産の低迷傾向は変わらず、再び6月以降4か月連続の前年割れとなった。電気機械は、パソコンや携帯電話の生産が好調なこと等から、6月以降4か月連続の増加となった。輸送用機械は、自動車の生産増により、8、9月と2か月連続の増加となった。非鉄は、アルミニューム圧延品等の生産の回復により、7月に16か月振りに増加に転じた後、3か月連続の増加となった。

地域別にみると、8月は全地域で増加となったものの、9月は四国のみがわずかに前年実績を下回った。


14.広告

広告は低調から改善し横ばい状況となった。これは、テレビを中心に売上高に持ち直しの動きがみられるからである。

  •  広告は低調から改善し横ばい状況となった。主要10社の売上高(前年同月比)をみると、8月にテレビの増加により2.3%増となった後、9月は1.1%減となったが、マスコミ4媒体計では1.2%増となり、テレビを中心に持ち直しの動きがみられる。

媒体別では、ウェイトの大きいテレビが、8月に2か月連続で増加した後、9月は0.2%の微減となった。新聞は、自動車・関連品は減少が続いているものの、情報・通信の大幅増等により増加となった。雑誌は、主要広告業種の化粧品・トイレタリー、ファッション・アクセサリー等の減少により減少となった。4媒体以外は折込み等好調なものもあるが、自動車の低迷等で減少となった。

  •  広告量(前年同月比)の動向をみると、テレビはテレビスポットが8か月連続の増加となった。また、テレビ番組で98年3月から19か月減少が続いているものの、このところ減少幅が縮小してきている。一方、新聞は、カラー広告、全面広告が4か月連続、案内広告も3か月連続で増加している。

出稿業種別にみると、金融・保険が株式売買委託手数料自由化の影響もあって、証券会社を中心に、情報・通信がパソコンや携帯電話を中心に、それぞれテレビで引き続き好調に推移している。また、住宅減税等の影響から、不動産・住宅設備がこのところテレビスポットで増加している。家電・AV機器も冷蔵庫、洗濯機、平面ブラウン管型テレビ等の出稿が増加し、テレビで大幅に増加となった。一方、これまで好調であった飲料・嗜好品はこのところ伸び悩んでいる。また、比較的ウェイトの大きい自動車・関連品も、軽自動車は好調なものの、他の車種が振るわず依然各媒体で減少が続いている。