産業動向(平成11年9月)

平成11年9月


産業動向の推移

産業動向の推移イメージ


概況

我が国産業の最近の動向について次のような特徴がみられる。

(1)最近の産業動向は、低調から横ばい状況となったのが2業種、不振から低調となったのが2業種あり、総じてやや改善している。これは、各種の政策効果の浸透などで、国内販売に持ち直しの動きがみられ、在庫は調整が進んでおり、また、生産は低い水準でおおむね横ばいだが、アジア向け輸出の回復もあり、持ち直しの兆しもみられるからである。

(2)製造業をみると、

素材型産業では、化学(石油化学)が低調から横ばい状況となった。紙・パルプは横ばい状況が続いている。また鉄鋼は不振から低調となった。

加工組立型産業では、通信機器が低調から横ばい状況となった。半導体、コンピュータ関連機器、家電は横ばい状況が続き、自動車、工作機械、建設機械は低調に推移している。なお、産業機械は不振が続いている。

(3)非製造業をみると、

情報サービスは堅調に推移し、旅行、外食、電力は横ばい状況が続いている。国内貨物は不振から低調となった。また建設・住宅、リース、広告は低調に推移している。

鉄鋼は不振から低調となった。これは、普通鋼鋼材の国内出荷に持ち直しの兆しがみられるなか、粗鋼生産もアジア向け輸出の増加等を背景に持ち直しの動きがみられ、また国内在庫も在庫率はやや高い水準にあるものの、在庫調整に進展がみられているからである。

化学(石油化学)は低調から改善し横ばい状況となった。これは、エチレン及び汎用樹脂についてみると、国内出荷は、おおむね前年を上回る水準にまで回復してきており、生産は輸出増を映じて増加傾向となっているからである。

紙・パルプは、横ばい状況が続いている。これは、出荷が総じて堅調に推移し、生産が持ち直してきている一方、在庫をみると、在庫率が依然としてやや高い水準にあるからである。

一般機械では、産業機械は不振が続いている。これは、受注が官公需向けに動きはみられたものの、設備投資の冷え込みを映じて、引き続き低迷しているからである。工作機械は低調に推移している。これは、受注について、内需の大幅減に加え、外需も前年割れが続いているからである。建設機械は低調に推移している。これは、出荷について、設備投資の冷え込みを映じて、内需の持ち直しの動きに力強さがみられないからである。産業用電気機械・電子部品では、半導体集積回路は、横ばい状況が続いている。これは、パソコン向け製品等が堅調に推移しているためである。コンピュータ関連機器は、横ばい状況が続いている。これは、ウェイトの大きいパソコンが堅調であるものの、その他の製品は低調であるからである。通信機器は、低調から改善し横ばい状況となった。これは、通信インフラの設備投資は総じて低調ではあるものの、携帯電話が好調に推移しているからである。

家電は横ばい状況が続いている。これは、国内出荷(台数ベース)は総じて底固く推移しており、生産も、全体としては横ばいで推移しているからである。

自動車は低調に推移している。これは、国内販売(新車新規登録・届出台数)がおおむね横ばいで推移しているものの、完成車輸出は前年割れが続いており、生産も低調に推移しているからである。

建設・住宅は低調に推移している。これは、公共工事については、着工の動きはこのところ低調だが事業の実施が進んでおり、住宅着工については全体として前年を上回る水準を保っているものの、民間工事や非居住用建築が大幅に減少しているからである。

運輸・旅行では、国内貨物輸送は、不振から低調となった。これは、消費、住宅関連の貨物に荷動きがみられ、大宗を占める一般トラックの減少幅が縮小しているからである。

旅行関連は、横ばい状況が続いている。これは、個人旅行者数に動きがみられるものの、団体旅行者数の減少や商品価格の低下等により、取扱高が減少したからである。

情報サービスは堅調に推移している。これは、主力の受注ソフトウェアの売上高が、堅調に推移しているからである。

外食は横ばい状況が続いている。これは、既存店ベースでは、売上高、利用客数が前年割れを続けているものの、全店ベースでは店舗数が増加傾向にあり、売上高、利用客数も前年比増で推移しているからである。

リースは低調に推移している。これは、リース契約額が、設備投資の冷え込みを映じて引き続き減少しているからである。

電力は横ばい状況が続いている。これは、大口電力が19か月連続で前年実績を下回ったものの、民生用電力が底固く推移しているからである。

広告は低調に推移している。これは、企業の広告費削減の動きを映じて、売上高の減少傾向が続いているからである。


1.鉄鋼

鉄鋼は不振から低調となった。これは、普通鋼鋼材の国内出荷に持ち直しの兆しがみられるなか、粗鋼生産もアジア向け輸出の増加等を背景に持ち直しの動きがみられ、また国内在庫も在庫率はやや高い水準にあるものの、在庫調整に進展がみられているからである。

  •  普通鋼鋼材の国内出荷(前年同月比)は、6月1.5%増と増加に転じた後、7月は0.9%減となったものの、このところ持ち直しの兆しがみられる。

これを受注面からみると、普通鋼鋼材の国内受注は、5月2.3%減の後、6月2.1%増と増加に転じ、このところ持ち直しの兆しがみられる。

用途別にみると、建設向けは、土木用が公共工事向けに堅調に推移しているなか、建築用でも住宅向けが二ケタ増となっていることから、全体でも、5月2.3%増、6月3.6%増となり、持ち直しの動きがみられる。

製造業向けは、5月7.1%減の後、6月1.5%増と増加に転じ、このところ持ち直しの兆しがみられる。内訳別では、ウェイトの高い自動車用は、軽自動車に引き続き動きがみられているなか、普通、小型乗用車においてもモデルチェンジに向けた需要が増加しており、全体でも持ち直しの動きがみられる。また、その他の用途では、産業機械用、造船用は依然として低調に推移しているものの、電気機械用は6月に増加に転じており、持ち直しの動きがみられる。

こうした状況のなか、国内在庫は、6月537万トン(前年同月比6.7%減)、7月522万トン(同4.0%減)と減少傾向にあり、在庫調整に進展がみられている。なお、在庫率は改善してきているものの、やや高い水準にある。

  •  鉄鋼の輸出入(全鉄鋼ベース、前年同月比)をみると、輸出数量は、6月6.2%減の後、7月前年並となり、半製品の大幅増や鋼板類の増加から、総じて底固い動きとなっている。

これを仕向け先別にみると、米国向けは、アンチ・ダンピング提訴の影響から、大幅な減少が続いている。一方、韓国、アセアン向けは景気が回復傾向にあることから、鋼板類を中心に大幅な増加が続いている。

輸出船積平均単価は、円ベース、ドルベースともにおおむね横ばいで推移している。

輸入数量は、6月2.4%減の後、7月11.2%増となったものの、低水準で推移している。

  •  粗鋼の生産は、6月753万トン(前年同月比2.8%減)の後、7月809万トン(同5.1%増)と増加に転じ、アジア向け輸出の増加等を背景に、持ち直しの動きがみられる。
  •  鋼材の市況をみると、条鋼類では、H形鋼、棒鋼ともに上昇しつつあるものの、勢いに欠ける状況にある。鋼板類では、冷延薄板は横ばい状況にあり、また厚鋼板はこのところ低下している。

2.化学(石油化学)

化学(石油化学)は低調から改善し横ばい状況となった。これは、エチレン及び汎用樹脂についてみると、国内出荷は、おおむね前年を上回る水準にまで回復してきており、生産は輸出増を映じて増加傾向となっているからである。

  •  石油化学製品の基礎原料であるエチレンの生産は、主にアジア向け輸出が増加したことにより、7月600千トン(前年同月比1.2%減)、8月661千トン(速報、前年同月比13.2%増)となった。汎用樹脂の生産についても、輸出増を映じて、増加傾向となっている。

在庫水準については、改善されてきており、樹脂毎に差があるものの、適正水準に近づきつつある。

  •  汎用樹脂の国内出荷については、ここ数年と比較すると低い水準であるものの、おおむね前年を上回る水準にまで回復してきている。主要樹脂別にみると、低密度ポリエチレンは、主力のフィルム向けを中心に増加となり、全体でも増加となった。高密度ポリエチレンは、主力のフィルム向けは減少したが、全体ではほぼ前年並みとなった。汎用樹脂最大の需要を有するポリプロピレンは、工業部品向けが増加となり、全体でも微増となった。ポリスチレンは、包装用や電機工業向けが増加となり、全体でも微増となった。塩化ビニルについては、公共工事や住宅関連需要により増加となった。
  •  汎用樹脂の輸出は、ポリスチレンは減少となっているものの、ポリエチレン等は中国をはじめとしたアジア向け輸出を中心に増加傾向となっている。

汎用樹脂の東南アジア市況については、需要が回復してきたことに加え、原油及びナフサ価格が上昇していることを映じて、回復基調となっている。


3.紙・パルプ

紙・パルプは、横ばい状況が続いている。これは、出荷が総じて堅調に推移し、生産が持ち直してきている一方、在庫をみると、在庫率が依然としてやや高い水準にあるからである。

  •  紙の生産(前年同月比)は、6月2.8%増、7月6.2%増となり、持ち直しの動きとなっている。出荷は、販促用のチラシ向け等で堅調に推移していることから、6月2.9%増、7月4.9%増と堅調に推移している。一方、在庫は総じて減少傾向にあるものの、在庫率は依然としてやや高い水準にある。

紙の生産を品目別にみると、新聞巻取紙は底固い動きとなっている。印刷・情報用紙では、塗工紙で増加傾向にあること等から、持ち直しの動きとなっている。非塗工類は、上級紙で持ち直していることから、全体でも減少幅が縮小してきている。塗工紙は、微塗工紙、塗工紙ともに増加傾向にある。情報用紙は、ウェイトの高いPPC用紙が総じて堅調に推移していること等から、全体でも底固い動きとなっている。

衛生用紙は、市況対策が一段落しており、生産においても持ち直しの動きとなっている。

  •  板紙の生産(前年同月比)は、6月3.1%増と増加に転じた後、7月も2.6%増となり、持ち直しの兆しがみられる。出荷は、加工食品、飲料向け等に動きがみられ、6月8.7%増、7月5.3%増と底固い動きとなっている。こうした状況のなか、在庫は総じて減少傾向にあるものの、在庫率は依然としてやや高い水準にある。

板紙の生産を品目別にみると、段ボール原紙は、需要が回復してきていることから、生産も持ち直しの兆しがみられる。

  •  パルプの生産(前年同月比)は、紙の需要が堅調に推移していることから、6月1.0%増、7月5.7%増となり、持ち直しの動きとなっている。
  •  紙、板紙の輸出入(数量ベース、前年同月比)をみると、輸出は、中国向け等が堅調に推移していることから、6月34.3%増、7月46.7%増となり、引き続き増加傾向にある。

一方、輸入は、6月19.3%減、7月15.4%減となり、板紙では総じて増加が続いているものの、全体の基調としては減少傾向にある。

  •  紙の市況をみると、紙は採算意識の高まり等から、このところ底入れ感が窺われる。また板紙は横ばい状況にある。

4.一般機械

産業機械は不振が続いている。これは、受注が官公需向けに動きはみられたものの、設備投資の冷え込みを映じて、引き続き低迷しているからである。工作機械は低調に推移している。これは、受注について、内需の大幅減に加え、外需も前年割れが続いているからである。建設機械は低調に推移している。これは、出荷について、設備投資の冷え込みを映じて、内需の持ち直しの動きに力強さがみられないからである。

  •  一般機械の生産(季調済前月比)は、6月3.8%増、7月2.0%減(速報)と、一進一退で推移している。増加した機種は、17機種中、6月には9機種、7月には6機種(速報)となった。

機械受注(原動機・産業機械・工作機械・半導体製造装置のみ、金額ベース、前年同月比)をみると、6月9.2%減の後、7月は半導体製造装置の大幅な増加により1.0%増となった。

輸出入の動向(事務用機器を除く・円ベース、前年同月比)をみると、輸出は6月11.9%減、7月11.5%減と減少が続いている。輸入も6月19.7%減、7月17.5%減と減少が続いている。

  •  産業機械は不振が続いている。産業機械の受注(日本産業機械工業会調べ、金額ベース、前年同月比)は、6月34.3%減、7月3.0%減となった。需要者別にみると、内需は官公需向けゴミ処理装置、水質汚濁防止装置等に動きがみられたものの、製造業向けでは大幅減が続き、非製造業向けでも減少が続いていることから、引き続き低迷している。外需は、7月にはアジア向けと北米向けの増加により前年を上回った。
  •  工作機械は低調に推移している。工作機械の受注(日本工作機械工業会調べ、金額ベース、前年同月比)は、6月34.1%減、7月28.7%減と、マイナス幅は縮小しているものの、依然として大幅な減少となっている。需要者別にみると、内需は、商社・代理店向けで前年比増となったものの、全体では大幅減が続いている。外需は、アジア向けは増加しているものの、ウェイトの高い北米向けと欧州向けで減少が続いており、依然として前年を下回っている。
  •  建設機械は低調に推移している。建設機械の出荷(日本建設機械工業会調べ、本体・金額ベース、前年同月比)は、6月9.4%減、7月6.6%減となった。需要者別にみると、内需は、掘削機械は持ち直してきているものの、設備投資の冷え込みを映じて建設用クレーンの大幅減が続き、6月1.1%減、7月7.1%減となった。外需は、欧州向けが好調なことに加え、7月にはアジア向け、オセアニア向けが増加となったものの、北米・中南米向けは大幅な減少が続き、6月21.5%減、7月5.8%減となった。

5.産業用電気機械・電子部品

半導体集積回路は、横ばい状況が続いている。これは、パソコン向け製品等が堅調に推移しているためである。コンピュータ関連機器は、横ばい状況が続いている。これは、ウェイトの大きいパソコンが堅調であるものの、その他の製品は低調であるからである。通信機器は、低調から改善し横ばい状況となった。これは、通信インフラの設備投資は総じて低調ではあるものの、携帯電話が好調に推移しているからである。

  •  半導体集積回路は、横ばい状況が続いている。パソコン向けの製品等が堅調なことから、出荷額(前年同月比)は、5月11.1%増、6月11.2%増と増加しており、在庫率は、6月0.71に低下している。また、DRAMの価格は、このところ下げ止まっている。
  •  コンピュータ関連機器は、横ばい状況が続いている。ウェイトの大きいパソコンが堅調なものの、その他の製品は低調であることから、生産額(前年同月比)は、5月4.1%減、6月15.0%減となった。パソコンは、5月34.1%増の後、6月13.6%減となったものの、個人向けを中心に堅調に推移している。周辺装置は、6月10.9%減、7月13.8%減(速報)と低調な動きが続いている。
  •  通信機器は、低調から改善し横ばい状況となった。生産額(前年同月比)は、通信インフラの設備投資が総じて低調なことから、5月3.0%減、6月4.4%減となったものの、携帯電話は好調に推移しており、総じてみれば横ばいとなっている。内訳をみると、通信インフラ関連では、ISDN、デジタル専用線に関連する搬送装置は、5月19.2%減、6月11.7%減、電子交換機は6月3.9%減、7月5.6%減(速報)と減少しており、低調に推移している。また、携帯電話は、5月52.0%増、6月16.7%増と引き続き好調に推移している。

6.家庭電器

家電は横ばい状況が続いている。これは、国内出荷(台数ベース)は総じて底固く推移しており、生産も、全体としては横ばいで推移しているからである。

  •  家電の国内出荷(台数ベース)は、総じて底固い荷動きとなっている。

AV家電をみると、品目ごとにばらつきがあるものの、総じて底固い荷動きとなっている。品目別では、カラーテレビは、直近も含め基調としては底固い荷動きとなっている。VTRは、前年ワールドカップ需要の反動もあり、直近も含め前年を下回っている。ビデオカメラは、前年をやや下回る水準で推移している。CDプレーヤ(MDプレーヤを含む)は、伸び率が鈍化しているものの、引き続き高水準で推移している。

白物家電をみると、天候要因により月ごとの増減があるものの、買い替え需要や住宅着工の持ち直しの効果もあり、総じて底固い荷動きとなっている。品目別では、冷蔵庫が大型を中心に6月は大幅増となったが、7月は天候要因もあり減少した。直近では前年を上回っている。洗濯機は前年をやや下回る水準で推移し、電子レンジは前年並みとなっている。エアコンは、6月は前年を大きく上回ったものの、年間需要のピークとなる7月は、西日本を中心とした長雨の影響から前年を大幅に下回った。直近では前年を上回っている。なお、その他の品目では、ウェイトは小さいながら、除湿機や乾燥機類が大幅増となった。

  •  家電の輸出(台数ベース)は減少傾向が続いている。カラーテレビは、高水準の前年の反動もあり、香港向けを中心に6、7月とも大幅に減少した。VTRは、アメリカや香港向けを中心に大幅に減少した。CDプレーヤは、シンガポール向け等の減少から、全体でも減少を続けている。
  •  家電の輸入(台数ベース)は増加傾向にある。カラーテレビはマレーシア、中国、タイを中心に大幅に増加した。VTRはマレーシアを中心に前年並みの水準となった。
  •  家電の生産額(前年同月比)は、5月2.3%減の後、6月は天候要因もあり白物家電が増加したことから全体では1.1%増と、ほぼ横ばいで推移している。

7.自動車

自動車は低調に推移している。これは、国内販売(新車新規登録・届出台数)がおおむね横ばいで推移しているものの、完成車輸出は前年割れが続いており、生産も低調に推移しているからである。

  •  自動車全体の国内販売(新車新規登録・届出台数、前年同月比)は、7月3.8%減の後、8月は一部新型車の効果や登録稼働日数の増加等から8.1%増となった。なお、7~8月累計では0.6%増と、おおむね横ばいで推移している。車種別にみると、普通乗用車、小型乗用車は低調に推移している。普通トラックは、各メーカーが排ガス規制に対応していない従来車種の在庫調整を進めたため、8月は前年を上回った。小型トラックは、新型車の効果等もあり、8月は前年を上回った。軽乗用車は引き続き好調に推移しており、軽トラックは新規格車の効果から増加傾向にある。

輸入車販売では、新型車等の増加により7月5.9%減の後、8月3.0%増となった。

  •  自動車の輸出(完成車台数ベース、前年同月比)は、7月6.1%減、8月7.9%減と前年割れが続いている。仕向地別にみると、主力の北米向けは堅調に推移しているものの、欧州向けはドイツを中心に前年割れが続いている。その他の地域では、アジア向けは持ち直してきているものの、中東向け、南米向けは大幅な前年割れが続いており、中米向けはこのところ減少している。

自動車部品の輸出(日本自動車工業会々員11社分、ドルベース)は、海外生産用のアジア向けで持ち直してきていることから、6月17.4%増、7月11.1%増と大幅に増加した。

  •  自動車の生産(完成車台数ベース、前年同月比)は、6月2.5%減、7月3.6%減と依然として低調に推移している。車種別にみると、普通乗用車は輸出の増加から底固く推移している。小型乗用車、普通トラックは国内販売が基調として低迷していることや輸出の減少等から前年割れが続いている。小型トラックは新型車の投入等により増加している。軽乗用車は前年を大幅に上回る水準で推移し、軽トラックは新規格車の効果から増加傾向にある。

8.建設・住宅

建設・住宅は低調に推移している。これは、公共工事については、着工の動きはこのところ低調だが事業の実施が進んでおり、住宅着工については全体として前年を上回る水準を保っているものの、民間工事や非居住用建築が大幅に減少しているからである。

[建設]

  •  建設業大手50社の受注額(前年同月比)は、6月17.3%減、7月20.2%減と減少傾向にある。受注の約6割を占める民間工事をみると、6月17.8%減、7月19.9%減となり、増加した3月を除き二ケタの減少が続いている。民間工事の内訳をみると、製造業向けは、主力の電気機械をはじめ、他の業種でも落ち込み、全体でも大幅な減少が続いている。ウェイトのより大きい非製造業向けは、月単位では増加となる業種もあるが、全体としては低調に推移している。受注の約3割を占める官公庁工事についても、大規模な受注が一段落したため、6月以降地方が減少となり、7月には国も減少となった結果、全体でも2か月連続で減少となった。海外工事も減少傾向が続いている。

施工高は、5月12.0%減、6月13.3%減となった。また、未消化工事高は、31か月連続で減少となった。

また、地方大手建設業者470社の受注額(前年同月比)は、民間の減少幅が大きく、6月0.3%減、7月13.2%減となった。

  •  建築の着工状況(床面積)をみると、減少幅は縮小しており、6月4.4%増となったものの、7月は非居住用の大幅な減少により9.2%減となった。内訳をみると、着工床面積の6割近くを占める民間居住用建築では、5か月連続して増加となっているものの、民間非居住用建築のうち鉱工業用で大幅減が続き、6月にほぼ前年並みとなった商業用でも7月は大幅な減少となった。
  •  公共工事着工(総工事費評価額)は、都道府県、市区町村等の地方の機関を中心に減少となり、6月7.8%減、7月7.9%減となったが、4~7月累計では1.5%増となった。着工の動きはこのところ低調だが、事業の実施が進んでいる。

民間土木工事着工は、6月23.7%減、7月35.8%減となった。

[住宅]

  •  住宅着工(戸数)は、6月7.3%増、7月1.9%増となり、また7月の年率換算値では115万戸となっており、全体としては前年を上回る水準を保っている。利用関係別でみると、持家は増加幅が縮小しているもののおおむね回復傾向にあり、分譲も7月には増加となった。貸家については引き続き減少傾向となっている。
  •  戸建住宅産業の最近の動きについては、構造別の着工戸数は、ウェイトの約半分を占める木造は回復傾向にあり、非木造についても、鉄骨造が増加となるなど減少幅は縮小している。建築単価については、1平方メートル当たりの工事費予定額では、木造はほぼ前年並で推移しているものの、非木造の単価が高くなり、全体でもやや高くなった後、直近では横ばいとなっている。1戸あたりの面積については、利用関係別ではややばらつきがあるものの、分譲を中心に増加しており、全体でも緩やかな増加傾向にある。
  •  マンション産業の最近の動きについては、全体の着工は、6月6.0%減の後、7月12.5%増と、17か月振りの増加となった。圏別にみると、近畿圏が増加となったのに加え、首都圏でも6か月振りの増加となった。また、新規契約率(首都圏)については、金利先高感及び減税等の理由により、6月83.1%、7月80.8%と8か月連続で70%を超えており、引き続き好調である。また、在庫についても、7月はやや増加したものの、減少傾向にあり、9千戸を下回る低い水準が続いている。

9.運輸・旅行

国内貨物輸送は、不振から低調となった。これは、消費、住宅関連の貨物に荷動きがみられ、大宗を占める一般トラックの減少幅が縮小しているからである。

旅行関連は、横ばい状況が続いている。これは、個人旅行者数に動きがみられるものの、団体旅行者数の減少や商品価格の低下等により、取扱高が減少したからである。

  •  国内貨物輸送は、不振から低調となった。これは、消費、住宅関連の貨物に荷動きがみられ、大宗を占める一般トラックの減少幅が縮小しているからである。

内訳をみると、一般トラック(前年同月比:トンベース)は、5月3.7%減、6月2.5%減と依然前年割れではあるものの、このところ減少幅が縮小している。特別積合せトラックは、5月0.3%増、6月3.0%増と消費財を中心に増加しており、宅配貨物は増加が続いている。内航海運(貨物船)は、5月1.5%増、6月3.3%減と一進一退の動きとなっている。JR貨物は、6月9.2%減、7月10.6%減と不振が続いている。航空貨物は、6月3.8%増、7月2.5%増(速報)と増加している。

  •  国際貨物輸送は、改善の動きがみられる。航空貨物は、貨物トン数(全国ベース)でみると、アジア経済の回復等により、輸出は、6月18.2%増、7月18.4%増、輸入は、6月14.9%増、7月15.6%増となった。外航海運の貨物トン数は、輸出は6月6.6%減、7月0.5%増となり、輸入は6月3.5%増、7月3.0%増となった。
  •  旅行関連は、横ばい状況が続いている。大手旅行会社(鉄道旅客協会加盟13社)の取扱額(前年同月比)は、個人旅行者数に動きがみられるものの、団体旅行者数の減少や商品価格の低下等により、6月5.6%減、7月5.9%減となった。内訳をみると、国内旅行は6月4.0%減、7月4.3%減となり、海外旅行は6月8.5%減、7月9.4%減となった。主要旅客輸送機関の実績(人数ベース、前年同月比)をみると、JR旅客は、定期外は6月0.2%増となった。航空(3社)は、国内線は6月4.5%増、7月0.4%増(速報)、国際線は6月15.4%増、7月14.6%増(速報)と増加傾向にある。

10.情報サービス

情報サービスは堅調に推移している。これは、主力の受注ソフトウェアの売上高が、堅調に推移しているからである。

  •  情報サービス業売上高(前年同月比)は、6月1.2%減の後、7月2.3%増となり、約6割を占める主力の受注ソフトウェアが堅調であることから、全体でも堅調に推移している。
  •  業務種類別にみると、

・受注ソフトウェアは、6月1.1%増、7月6.7%増となり、通信業、金融業向けの需要増により堅調に推移している。

・ソフトウェアプロダクトは、6月22.4%減、7月18.1%減となった。

・計算事務等情報処理は、金融業、流通業向け等の需要増から6月0.3%増、7月1.8%増となった。

・システム等管理運営受託は、金融業、製造業等のアウトソーシングの需要増により、6月6.5%増、7月6.8%増と好調に推移している。

  •  雇用状況は、高等技術者は不足感が続いているものの、全体的には不足感は緩和している。

11.外食

外食は横ばい状況が続いている。これは、既存店ベースでは、売上高、利用客数が前年割れを続けているものの、全店ベースでは店舗数が増加傾向にあり、売上高、利用客数も前年比増で推移しているからである。

  •  大手外食企業が加盟している(社)日本フードサービス協会の調査により、全店ベース(前年同月比)の状況をみると、売上高は6月2.6%増、7月1.8%増となった。これは、客単価が下落傾向にあるものの、店舗数が6月4.6%増、7月4.2%増と引き続き増加傾向にあり、合わせて利用客数が6月4.8%増、7月3.8%増といずれも前年比増で推移しているからである。直近も同様の傾向で推移している。

なお、既存店ベース(前年同月比)でみると、利用客数は、6月2.5%減と、ワールドカップ開催の影響から低水準となった前年を更に下回ったほか、7月は前半の天候不順の影響もあり3.0%減となった。また、客単価は消費者の低価格指向や店舗側の低価格設定等により引き続き下落傾向にあり、この結果、売上高は6月4.0%減、7月4.7%減と前年割れを続けている。

  •  業態別の売上高(全店ベース)をみると、ファーストフードはほぼ前年並みで推移しているが、和風の分野が大きく伸びている一方、競合の激しい洋風や持ち帰り米飯・回転寿司の分野が前年割れとなる等、業態別にばらつきがみられる。ファミリーレストランは、販促効果から引き続き前年を上回っているものの、伸び率は鈍化している。パブレストラン・居酒屋は、前年比増で推移している。

12.リース

リースは低調に推移している。これは、リース契約額が、設備投資の冷え込みを映じて引き続き減少しているからである。

  •  リースは低調に推移している。リース契約額(リース事業協会調べ、前年同月比)は、6月8.5%減、7月3.1%減と引き続き減少している。土木建設機械、医療機器は増加が続き、7月には産業機械、工作機械が増加となったものの、主力の情報関連機器が依然として低調に推移しており、設備投資の冷え込みを映じている。
  •  物件別の最近の動向をみると、

契約額の約4割を占める情報関連機器は、6月10.6%減、7月5.0%減と低調に推移している。

商業・サービス業用機械・設備は、6月7.5%減、7月3.8%減となった。

事務用機器は、6月6.6%減、7月16.1%減と減少が続いている。

産業機械は、6月11.0%減の後、7月は自動車工業向けの金型に動きがみられ5.0%増と15か月振りに増加となった。

工作機械は、6月23.5%減の後、7月は既存設備のリースバック取引があったことから47.9%増と大幅な増加となった。

土木建設機械は、公共工事の増加の影響もあって、6月64.5%増、7月8.8%増と増加が続いている。

自動車は、6月8.1%減、7月1.5%減となった。

医療機器は、6月18.0%増、7月1.3%増と増加が続いている。

  •  リース料率は、低い水準で推移している。

13.電力

電力は横ばい状況が続いている。これは、大口電力が19か月連続で前年実績を下回ったものの、民生用電力が底固く推移しているからである。

  •  電力需要(9社計、前年同期(月)比)は、6月1.3%増、7月3.2%減となった。これは、大口電力が19か月連続で前年実績を下回ったものの、民生用電力 (電灯、業務用電力)が底固く推移しているからである。

用途別にみると、家庭用電灯需要は7月は6.1%減と大幅な前年割れとなった。これは、6月下旬から7月上旬にかけての気温が前年に比べてかなり低めとなったことから、冷房需要が減少したことと、検針期間が短かったためである。業務用電力も気温の影響により、7月には1.3%減と前年割れとなった。また、小口電力のうち、低圧電力についても電灯と同じ理由で前年実績割れとなり、高圧電力Aは減少傾向が続いている。大口電力も19か月連続の前年実績割れとなったが、このところ減少幅が縮小している。

4~6月期について地域別にみると、関東、東海、北陸、近畿の4地域が前年実績を下回った。

  •  大口電力需要を自家発電を含め業種別にみると、7月は鉄鋼、パルプ・紙、電気機械、非鉄が前年比プラスになったものの、それ以外の業種は前年実績割れとなっている。鉄鋼は、20か月振りにプラスに転じた。化学は、6月には3か月振りにプラスに転じたものの、7月には苛性ソーダ等の生産の低迷により再び前年割れとなった。パルプ・紙は、生産が増加したことから3か月連続のプラスとなった。セメントは、5月には21か月振りにプラスとなったものの、生産の低迷傾向は変わらず、再び6、7月と2か月連続の前年割れとなった。電気機械は、パソコンや携帯電話の生産が堅調なこと等から、6、7月と2か月連続のプラスとなった。輸送用機械は、6月には前年並となったものの、7月には自動車生産の低調等により再び前年割れとなった。非鉄は、アルミニューム圧延品等の生産の回復により、16か月振りにプラスに転じた。

地域別にみると、7月は北海道、東北、関東、中国がプラスとなった。


14.広告

広告は低調に推移している。これは、企業の広告費削減の動きを映じて、売上高の減少傾向が続いているからである。

  •  広告は低調に推移している。主要10社の売上高(前年同月比)をみると、企業の広告費削減の動きを映じて、6月3.8%減の後、7月はテレビで増加したものの、新聞等が減少し、2.6%減となった。

媒体別では、ウェイトの大きいテレビが、金融・保険、薬品・医療用品等の増加により1.4%増となった。雑誌は、主要広告業種の化粧品・トイレタリーは減少が続いているものの、ファッション・アクセサリー等の増加により微増となった。新聞は、自動車・関連品、官公庁・団体等の大幅減により減少となっている。4媒体以外は、交通広告等の不振により減少となった。

  •  広告量(前年同月比)の動向をみると、テレビはテレビ番組で98年3月から17か月減少が続いているものの、テレビスポットが6か月連続の増加となった。新聞は、減少傾向が続いてはいるが、案内広告が2年ぶりに増加となったほか、カラー広告、全面広告も増加した。

出稿業種別にみると、金融・保険が金融自由化の進展もあって外資系金融機関の活発な広告展開を中心にテレビで引き続き堅調に推移している。また、情報・通信が、通信事業の再編に伴う告知や各社のサービス競争等からテレビスポットを中心に増加し、これまで減少が続いていた家電・AV機器も冷蔵庫、平面ブラウン管型テレビ等の出稿が増加し、テレビスポットで大幅に増加となった。一方、これまで好調であった飲料・嗜好品は昨年が酒税法改正の影響等で好調だった反動もあって各媒体で減少している。また、各媒体で比較的ウェイトの大きい自動車・関連品も、軽自動車は好調なものの、他の車種が振るわず依然減少が続いている。