産業動向(平成11年5月)

平成11年5月


産業動向の推移

産業動向の推移イメージ


概況

我が国産業の最近の動向について次のような特徴がみられる。

(1)最近の産業動向は、多くの業種が依然として低調または不振であるものの、いくつかの業種で改善の動きがみられ、下げ止まりつつある。これは、各種の政策効果に下支えされて、国内販売に一部持ち直しの動きがみられ、素材型産業でも在庫の過剰感が薄れ、生産が低水準ながら下げ止まりつつあるからである。

(2)製造業をみると、

素材型産業では、紙・パルプは低調から横ばい状況となり、化学(石油化学)は不振から低調になった。鉄鋼は不振が続いている。

加工組立型産業では、コンピュータ関連機器は低調から横ばい状況となった。家電は横ばい状況が続き、工作機械、半導体、通信機器、自動車は低調に推移しており、産業機械、建設機械は不振が続いている。

(3)非製造業をみると、

旅行が低調から横ばい状況となり、建設・住宅は不振から低調となった。情報サービスは堅調に推移し、外食、電力は横ばい状況となっている。リース、広告は低調に推移し、国内貨物は不振が続いている。

鉄鋼は不振が続いている。これは、国内在庫は減少しているものの、国内需要の低迷が長引いていることにより、普通鋼鋼材の国内受注が総じて低調に推移し、粗鋼の減産が続いているからである。

化学(石油化学)は不振から低調となった。これは、輸出増を映じて汎用樹脂の生産が低水準ながらも増加となり、国内出荷についても下げ止まってきているからである。

紙・パルプは低調から改善し横ばい状況となった。これは、生産は低調に推移しているものの、出荷で持ち直しの動きがみられ、また在庫で過剰感が薄れつつあるからである。

一般機械では、産業機械は不振が続いている。これは、受注が内外需の不振により引き続き低迷しているからである。工作機械は低調に推移している。これは、内需の大幅減に加え外需も前年割れが続き、前年が高水準だったこともあり、受注が大幅な減少となったからである。建設機械は不振が続いている。これは、出荷が内需の不振により引き続き低迷しているからである。

産業用電気機械・電子部品では、半導体集積回路は低調に推移している。これは、パソコン向け以外の製品の需要の低迷により、出荷が減少しているからである。コンピュータ関連機器は低調から改善し横ばい状況となった。これは、ウエイトの大きいパソコンが堅調であるからである。通信機器は持ち直しの兆しもあるものの、低調に推移している。これは、通信インフラの設備投資が総じて低調であるからである。

家電は、横ばい状況が続いている。これは、国内出荷(台数ベース)は底固く推移しており、生産も、全体としては横ばいで推移しているからである。

自動車は低調に推移している。これは、完成車輸出が底固く推移し、軽自動車の販売、生産が好調に推移しているものの、全体の販売が持ち直しの動きに足踏みがみられ、依然低水準であり、生産は低調に推移しているからである。

建設・住宅は不振から低調となった。これは、公共工事着工が堅調に推移し、持家を中心とした住宅着工に持ち直しの動きがみられ、建設業大手50社の受注額や建築着工床面積は、下げ止まりつつあるからである。

運輸・旅行では、国内貨物輸送は持ち直しの兆しもみられるものの、不振が続いている。これは、航空貨物等に荷動きがみられるものの、多くの輸送形態が減少しているからである。

旅行関連は低調から改善し横ばい状況となった。これは、5月連休の暦の配列が良かったこと等により、海外旅行を中心に旅行者数が増加したからである。

情報サービスは堅調に推移している。これは、主力の受注ソフトウェアの売上高が、堅調に推移しているからである。

外食は横ばい状況が続いている。これは、既存店ベースでは、売上高、利用客数が前年割れを続けているものの、全店ベースでは店舗数が増加傾向にあり、売上高、利用客数も前年比増で推移しているからである。

リースは低調に推移している。これは、リース契約額が、設備投資の冷え込みを映じて引き続き減少しているからである。

電力は横ばい状況が続いている。これは、電灯や業務用電力が堅調な伸びとなったものの、大口電力が生産活動の停滞状況を映じて15か月連続で前年実績を下回ったからである。

広告は低調に推移している。これは、企業の広告費削減の動きを映じて、売上高の減少が続いているからである。


1.鉄鋼

鉄鋼は不振が続いている。これは、国内在庫は減少しているものの、国内需要の低迷が長引いていることにより、普通鋼鋼材の国内受注が総じて低調に推移し、粗鋼の減産が続いているからである。

  • 普通鋼鋼材の国内出荷(前年同月比)は、2月5.7%減、3月5.9%減と低調に推移している。
     これを受注面からみると、普通鋼鋼材の国内受注は、1月6.8%減、2月6.0%減と低調に推移している。
     用途別にみると、建設向けは、土木用が公共工事向けに増加が続いているものの、建築用が依然として低調に推移していることから、全体では1月0.9%減、2月1.9%減となり、前年をやや下回る動きが続いている。
     製造業向けは、1月9.3%減、2月5.9%減と低調に推移している。内訳別では、ウェイトの高い自動車用は、軽乗用車等一部に動きがみられたものの、全体では低調に推移している。また、その他の用途でもほとんどの用途で前年を下回っている。
     こうした状況のなか、国内在庫は、2月568万トン、3月537万トンと減少が続いており、在庫調整にやや進展がみられている。
  • 鉄鋼の輸出入(全鉄鋼ベース、前年同月比)をみると、輸出数量は、ウェイトの高い普通鋼鋼材で減少傾向が続いていることから、2月13.3%減と減少に転じ、3月も10.0%減となった。
     これを仕向け先別にみると、米国向けは、アンチ・ダンピング提訴の影響等から、大幅な減少が続いている。一方、韓国、アセアン向けは大幅な増加が続いている。
     輸出船積平均単価は、ドルベースではこのところ上昇していたものの、輸出品目の構成変化等により、3月は低下となった。また、円ベースでは低下傾向が続いている。
     輸入数量は、国内需要の低迷が長引いていることから、2月15.0%減、3月24.5%減となった。
  • 粗鋼の生産は、減産が続き、2月706万トン(前年同月比8.0%減)、3月720万トン(同11.6%減)となった。
  • 鋼材の市況をみると、条鋼類では、H形鋼は需要の低迷が長引いていることから、低下傾向となっている。また、棒鋼は横ばい状況にある。鋼板類では、冷延薄板、厚鋼板ともにこのところ低下している。

2.化学(石油化学)

化学(石油化学)は不振から低調となった。これは、輸出増を映じて汎用樹脂の生産が低水準ながらも増加となり、国内出荷についても下げ止まってきているからである。

  • 石油化学製品の基礎原料であるエチレンの生産は、輸出向けの増加及び定修がなかったことにより、3月659千トン(前年同月比18.1%増)、4月611千トン(速報、前年同月比15.3%増)となった。汎用樹脂の生産については、全体的には低水準で推移しているものの、輸出増を映じて、減少幅が縮小し、3月には増加となった。
     在庫水準については、やや過剰感が残るものの、改善されつつある。
  • 汎用樹脂の国内出荷については、減少傾向が続いていたが、3月には増加となり、下げ止まってきている。主要樹脂別にみると、低密度ポリエチレンは主力のフィルム向けを中心として増加となった。高密度ポリエチレンは主力のフィルム向けが横ばいとなり、全体でも前年並となった。塩化ビニルについては、公共工事関連需要により減少幅が縮小している。汎用樹脂最大の需要を有するポリプロピレンは、工業部品向けを中心に増加となったが、全体では前年並となった。ポリスチレンは主力の包装用を中心として増加となった。
  • 汎用樹脂の輸出は、塩化ビニルは、市況の低迷等により減少となっているものの、底固く推移しており、ポリエチレン等は中国をはじめとしたアジア向け輸出を中心に増加となっている。
     汎用樹脂の東南アジア市況については、需要が回復しつつあることに加え、韓国、台湾での定修及びプラントトラブルにより供給が伸び悩んだこと等から、反転しつつある。

3.紙・パルプ

紙・パルプは、低調から改善し横ばい状況となった。これは、生産は低調に推移しているものの、出荷で持ち直しの動きがみられ、また在庫で過剰感が薄れつつあるからである。 

  • 紙の生産(前年同月比)は、2月0.4%増の後、3月1.2%減となり、一部では持ち直しの動きとなっているものの、全体の基調としては低調に推移している。出荷は、販促用のチラシ向け等で堅調に推移したことから、2月1.2%増、3月2.0%増となり、持ち直しの動きとなっている。なお、3月は国内出荷、輸出ともに過去最高となった。一方、在庫は減少傾向にあり、このところ過剰感が薄れつつある。
     紙の生産を品目別にみると、新聞巻取紙は、広告出稿の増加等により増加が続いている。印刷・情報用紙では、塗工紙で持ち直しの動きとなっているものの、全体では減産基調にある。非塗工類は、需要の減少を背景に低調に推移している。塗工紙は、微塗工紙、塗工紙ともに持ち直しの動きとなっている。情報用紙は、ウェイトの高いPPC用紙が総じて堅調に推移しているものの、複写用紙、フォーム用紙では減少が続いており、全体でも総じて低調に推移している。
     衛生用紙は、市況対策にはやや進展がみられているものの、依然として生産調整が続いている。
  • 板紙の生産(前年同月比)は、2月1.9%減の後、3月0.8%増となったものの、基調としては低調に推移している。出荷は、家電、加工食品向け等に動きが見られ、2月4.9%増、3月5.2%増と、持ち直しの動きとなっている。こうした状況のなか、在庫は、減少傾向にあり、このところ過剰感が薄れつつある。 
     板紙の生産を品目別にみると、段ボール原紙は、基調としては低調に推移している。
  • パルプの生産(前年同月比)は、2月2.9%減、3月3.2%減と低調に推移している。
  • 紙、板紙の輸出入(数量ベース、前年同月比)をみると、輸出は、中国向け等が堅調に推移していることから、2月14.6%増、3月34.6%増と、増加傾向にある。
     一方、輸入は、国内市況の低迷等を背景に、2月7.9%減、3月12.5%減と、減少傾向にある。
  • 紙の市況をみると、紙、板紙ともに横ばい状況にある。

4.一般機械

産業機械は不振が続いている。これは、受注が内外需の不振により引き続き低迷しているからである。工作機械は低調に推移している。これは、内需の大幅減に加え外需も前年割れが続き、前年が高水準であったこともあり、受注が大幅な減少となったからである。建設機械は不振が続いている。これは、出荷が内需の不振により引き続き低迷しているからである。

  • 一般機械の生産(季調済前月比)は、2月2.5%減、3月4.4%増(速報)と、減少傾向が緩やかになってきている。増加した機種は、17機種中、2月には9機種、3月には11機種(速報)となった。
     機械受注(原動機・産業機械・工作機械・半導体製造装置のみ、金額ベース、前年同期比)をみると、2月7.9%減、3月9.6%減と引き続き減少している。
     輸出入の動向(事務用機器を除く・円ベース、前年同期比)をみると、輸出は2月14.2%減、3月8.0%減と、8か月連続の減少となった。輸入は2月19.8%減、3月12.1%減となった。
  • 産業機械は不振が続いている。産業機械の受注(日本産業機械工業会調べ、金額ベース、前年同期比)は、2月10.4%減、3月8.7%減となった。需要者別にみると、内需は官公需向けごみ処理装置、水質汚濁防止装置等に動きがみられたものの、製造業向けでは大幅減が続いており、総じてみれば引き続き低迷している。外需は、3月にはアジア向けが増加に転じたものの、全体では前年を大きく下回った。
  • 工作機械は低調に推移している。工作機械の受注(日本工作機械工業会調べ、金額ベース、前年同期比)は、2月31.8%減、3月26.7%減と、前年が高水準であったこともあり、大幅な減少となっている。需要者別にみると、内需は、官公需・学校向けに動きがあったものの、全体では大幅減が続いている。外需は、ウェイトの高い北米向けで減少が続いており、6か月連続で前年割れとなった。
  • 建設機械は不振が続いている。建設機械の出荷(日本建設機械工業会調べ、本体・金額ベース、前年同期比)は、2月13.7%減、3月9.3%減となった。需要者別にみると、内需は、建設用クレーンの落ち込みが依然として厳しく、引き続き低迷している。外需は、欧州向けが好調であることに加え、このところアジア向けに持ち直しの動きが見られ、3月には12か月振りに前年を上回った。

5.産業用電気機械・電子部品

半導体集積回路は低調に推移している。これは、パソコン向け以外の製品の需要の低迷により、出荷が減少しているからである。コンピュータ関連機器は低調から改善し横ばい状況となった。これは、ウエイトの大きいパソコンが堅調であるからである。通信機器は、持ち直しの兆しもあるものの、低調に推移している。これは、通信インフラの設備投資が総じて低調であるからである。

  • 半導体集積回路は、低調に推移している。メモリ等のパソコン向けの製品は持ち直しているものの、その他の製品で需要が低迷していることから、出荷額(前年同月比)は、1月4.7%減、2月2.7%減と減少している。在庫率は、2月0.97と横ばいで推移している。DRAMの価格は、再び軟調な動きがみられる。
  • コンピュータ関連機器は、低調から改善し横ばい状況となった。ウェイトの大きいパソコンが堅調なことから、生産額(前年同月比)は、1月8.9%減の後、2月1.2%減と下げ止まりの動きが見られる。パソコンは、個人向けが堅調であることに加えて、減税の効果もあり、法人向けにも持ち直しの動きがみられることから、1月8.0%増、2月11.0%増と堅調な動きとなっている。周辺機器は、1月10.5%減、2月6.0%減(速報)と低調な動きが続いている。
  • 通信機器は、一部に持ち直しの兆しもみられるものの、低調に推移している。通信インフラの設備投資は総じて低調であるものの、製品によっては持ち直しの兆しがみられることから、生産額(前年同月比)は、1月9.7%減、2月2.5%減と減少幅が縮小している。内訳をみると、通信インフラ関連では、ISDN、デジタル専用線に関連する搬送装置は1月14.3%増、2月4.0%増とインターネットの需要増等から増加しているが、電子交換機は2月4.8%減の後、3月8.7%増(速報)となったものの、基調としては低調である。また、携帯電話は、1月は8.0%減となったものの、2月は10.5%増となり、基調として堅調に推移している。

6.家庭電器

家電は横ばい状況が続いている。これは、国内出荷(台数ベース)は底固く推移しており、生産も、全体としては横ばいで推移しているからである。

  • 家電の国内出荷(台数ベース)は、底固い荷動きとなっている。
     AV家電をみると、底固い荷動きとなっている。品目別では、カラーテレビが新製品投入の効果も落ち着いてきたこと等から、このところ前年を下回る水準で推移している。VTRは、高画質型を中心に引き続き底固い荷動きとなっている。ビデオカメラは、2、3月ともデジタル機種を中心に大幅に増加するなど、堅調に推移している。CDプレーヤ(MDプレーヤを含む)は、伸び率が鈍化してきたものの、引き続き高水準で推移している。
     白物家電をみると、買い替え需要やこのところの住宅着工の持ち直しの動き等もあり、全体として底固い荷動きとなっている。品目別では、冷蔵庫は3月が前年を下回ったものの、350リットル以上の大型を中心に基調としては底固い荷動きとなっている。洗濯機は、新製品の浸透などから基調としては底固い荷動きとなっている。電子レンジは、前年をやや上回る水準で推移している。エアコンは基調として底固い荷動きとなっている。
  • 家電の輸出(台数ベース)は、減少傾向が続いている。カラーテレビは、2月が香港向けの減少から全体では大きく前年を下回ったが、3月は前年比増となった。VTRは、高水準の前年の反動もあり、アメリカや香港向けを中心に前年を大きく下回った。CDプレーヤは、アメリカを中心に減少したが、メキシコ等の増加からこのところ減少幅が縮小している。
  • 家電の輸入(台数ベース)は、カラーテレビが2、3月ともマレーシアやタイを中心に大幅に増加した。VTRは、2月はマレーシアを中心に大幅増となったが、3月は同国からの輸入が減少したことにより全体では前年を下回った。
  • 家電の生産額(前年同月比)は、1月4.6%減となったものの、2月は3.6%増と、白物家電を中心に持ち直しの動きもみられ、全体としては横ばいで推移している。

7.自動車

自動車は低調に推移している。これは、完成車輸出が底固く推移し、軽自動車の販売、生産が好調に推移しているものの、全体の販売が持ち直しの動きに足踏みがみられ、依然低水準であり、生産は低調に推移しているからである。

  • 自動車全体の国内販売(新車新規登録・届出台数、前年同月比)は、3月2.1%減、4月0.6%増と、持ち直しの動きに足踏みがみられ、依然低水準で推移している。車種別にみると、普通乗用車、小型乗用車は低調に推移している。普通トラックは建設用で持ち直しの動きがみられることから、減少幅は縮小している。小型トラックは大幅な落ち込みが続いている。軽乗用車は好調に推移しており、軽トラックは新規格車の効果から、増加傾向にある。
     輸入車販売では、新型車等一部は増加しているものの、多くは前年割れが続いており、3月3.9%減、4月0.6%減となった。
  • 自動車の輸出(完成車台数ベース、前年同月比)は、2月4.2%減、3月1.9%減となっているものの、底固く推移している。仕向地別にみると、北米向け、欧州向けは堅調に推移している。アジア向けは一部には持ち直しの動きがあるものの、全体では前年割れが続いている。南米向けは大幅な前年割れが続いている。
     自動車部品の輸出(日本自動車工業会々員11社分、ドルベース)は、海外生産用のアジア向けで持ち直しの動きがみられることから、2月4.6%減、3月3.3%増となった。
  • 自動車の生産(完成車台数ベース、前年同月比)は、2月5.7%減の後、3月3.8%増となったものの、依然として低調に推移している。車種別にみると、普通乗用車は輸出の増加から底固く推移している。小型乗用車、普通トラック、小型トラックは国内販売、アジア向け輸出の低迷等から前年割れが続いている。軽乗用車は前年を大幅に上回る水準で推移し、軽トラックは新規格車の効果から増加傾向にある。

8.建設・住宅

建設・住宅は不振から低調となった。これは、公共工事着工が堅調に推移し、持家を中心とした住宅着工に持ち直しの動きがみられ、建設業大手50社の受注額や建築着工床面積は、下げ止まりつつあるからである。

[建設]

  • 建設業大手50社の受注額(前年同月比)は、2月2.3%減の後、3月5.0%増となり、このところ下げ止まりつつある。受注の約6割を占める民間工事をみると、2月10.2%減と8か月連続で二ケタ減となっていたが、3月には2.3%増となった。民間工事の内訳をみると、製造業向けは、主力の化学、電気機械をはじめ、他の業種でも落ち込み、全体でも減少が続いている。ウェイトのより大きい非製造業向けは、3月には電気・ガス業、サービス業を中心として増加となった。受注の約3割を占める官公庁工事は、国、地方共に増加となり、全体でも3か月連続で二ケタ増となっている。海外工事は、主力の東南アジアにおいて、引き続き受注元に慎重な動きがみられ、減少傾向が続いている。
     施工高は、1月10.5%減、2月10.9%減となった。また、未消化工事高は、27か月連続で減少となった。
     また、地方大手建設業者470社の受注額(前年同月比)は、2月前年並の後、官公庁の増加が寄与し、3月5.3%増となった。
  • 建築の着工状況(床面積)をみると、減少幅は縮小している。内訳をみると、民間の非居住用建築のうち鉱工業用では大幅減が続いているものの、サービス業用及び着工床面積の6割近くを占める民間居住用建築等では、3月に増加となった。
  • 公共工事着工(総工事費評価額)は、補正予算の効果により国、地方共全ての機関において増加となった結果、2月33.5%増、3月19.5%増と堅調に推移しており、98年度累計でも4.6%増となった。
     民間土木工事着工は、2月44.1%減の後、3月33.3%増と、再び増加となった。

[住宅]

  • 住宅着工(戸数)は、2月9.4%減の後、3月前年並と27か月振りの増加となり、持ち直しの動きがみられる。また、3月の年率換算値では、130万戸となっている。利用関係別でみると、持家は回復傾向にあるものの、貸家、分譲については引き続き減少傾向となっている。
     住宅金融公庫の98年度第4回融資申込は前年度比66.8%増と、第3回に引き続き大幅増となった。
  • 戸建住宅産業の最近の動きについては、構造別の着工戸数は、ウェイトの約半分を占める木造は回復傾向にあるが、非木造については依然二ケタの減少が続いている。建築単価については、1平方メートル当たりの工事費予定額では、木造はこのところ前年並で推移しており、全体でもほぼ前年並となっている。1戸あたりの面積については、利用関係別ではややばらつきがあるものの、全体では緩やかな増加傾向にある。
  • マンション産業の最近の動きについては、着工は、落ち込みの大きい近畿圏に加え、首都圏においても減少したため、全体では2月17.4%減、3月20.5%減と13か月連続で減少となっている。一方、新規契約率(首都圏)については、金利先高観及び減税等の理由により、2月81.6%、3月79.2%と4か月連続で70%を超えており、好調である。また、在庫についても4か月連続で減少しており、19か月振りの低い水準となっている。

9.運輸・旅行

国内貨物輸送は持ち直しの兆しもみられるものの、不振が続いている。これは、航空貨物等に荷動きがみられるものの、多くの輸送形態が減少しているからである。

旅行関連は低調から改善し横ばい状況となった。これは、5月連休の暦の配列が良かったこと等により、海外旅行を中心に旅行者数が増加したからである。

  • 国内貨物輸送は、持ち直しの兆しもみられるものの、不振が続いている。これは、航空貨物等に荷動きがみられるものの、国内生産活動及び消費活動の低迷を映じて、多くの輸送形態が減少しているからである。
     内訳をみると、一般トラック(前年同月比:トンベース)は、土木関連で荷動きが一部にみられるものの、1月8.0%減、2月6.6%減と減少している。特別積合せトラックは1月4.0%減、2月0.4%減(速報)と低調に推移しており、宅配貨物は伸び率が鈍化している。内航海運(貨物船)は、公共投資関連には動きがみられるものの、全体としては減少している。JR貨物は、不振が続いている。航空貨物は、2月5.2%増、3月5.0%増(速報)と東京発の貨物が増加したことから底固い動きとなっている。
  • 国際貨物輸送は、低調から改善し、横ばい状況となった。航空貨物については、アジア発の荷動きの回復等から、貨物トン数(全国ベース)でみると、輸出は、2月、3月共に2.5%増、輸入は、2月2.6%増、3月8.1%増となった。外航海運の貨物トン数は、輸出は2月1.0%増、3月0.2%増となった。輸入は2月5.1%減、3月1.8%減となった。
  • 旅行関連は、低調から改善し横ばい状況となった。大手旅行会社(鉄道旅客協会加盟13社)の取扱額(前年同月比)をみると、2月は5.7%減の後、3月は0.3%減と減少幅が縮小し、直近では、5月暦の配列が良かったこと等により、海外旅行を中心に旅行者数が増加している。内訳をみると、国内旅行は2月3.1%減、3月1.7%減となったが、直近は増加傾向にある。海外旅行は2月7.2%減の後、3月は3.2%増となり、直近ではアジア方面を中心に旅行者数が増加した。主要旅客輸送機関の実績(人数ベース、前年同月比)をみると、JR旅客は、定期外は2月0.1%増となり、航空(3社)は国内線は2月3.2%増、3月4.9%増(速報)となった。国際線は2月7.0%増、3月11.0%増(速報)となった。

10.情報サービス

情報サービスは堅調に推移している。これは、主力の受注ソフトウェアの売上高が、堅調に推移しているからである。

  • 情報サービス業売上高(前年同月比)は、約6割を占める主力の受注ソフトウェアが、堅調であることから、2月1.7%増の後、3月10.9%増と9か月振りの二ケタ増となり、堅調に推移している。
  • 業務種類別にみると、
    • 受注ソフトウェアは、官公庁、金融業向け等が引き続き好調なことから、2月2.1%増、3月12.9%増と堅調に推移している。
    • ソフトウェアプロダクトは、2月1.2%減、3月7.4%増となった。
    • 計算事務等情報処理は、2月1.1%増の後、3月は金融業向け等の需要増から6.9%増となり、底固く推移している。
    • システム等管理運営受託は、金融業、製造業等のアウトソーシングの需要増により、2、3月とも12.1%増と好調に推移している。
  • 雇用状況は、高等技術者は不足感が続いているものの、全体的には不足感は緩和している。

11.外食

外食は横ばい状況が続いている。これは、既存店ベースでは、売上高、利用客数が前年割れを続けているものの、全店ベースでは店舗数が増加傾向にあり、売上高、利用客数も前年比増で推移しているからである。

  • 全店ベース(前年同月比)でみると、売上高は2月4.8%増、3月前年並みとなった。これは、客単価が下落傾向にあるものの、店舗数が2月4.3%増、3月4.2%増と引き続き増加傾向にあり、利用客数は2月6.4%増、3月は週末に悪天候が重なったこともあり、2.6%増と伸びが鈍化したが、いずれも前年比増で推移しているからである。
     なお、既存店ベース(前年同月比)では、利用客数が、促販活動の実施や新商品投入の効果等から2月1.5%増と9か月ぶりに増加したものの、3月は3.8%減と再び前年割れとなった。また、客単価も下落傾向にあることから、売上高は、2月0.3%減、3月5.6%減と前年割れを続けている。
  • 業態別の売上高(全店ベース)は、ファーストフードが、前年比増で推移してきたが、3月は前年を下回った。ファミリーレストランやパブレストラン・居酒屋は、2、3月とも引き続き前年比増で推移している。

12.リース

リースは低調に推移している。これは、リース契約額が、設備投資の冷え込みを映じて引き続き減少しているからである。

  • リースは低調に推移している。リース契約額(リース事業協会調べ、前年同期比)は、2月13.1%減、3月5.8%減と引き続き減少している。事務用機器、土木建設機械等に動きが見られたものの、設備投資の冷え込みを映じて、主力の情報関連機器が低調であることに加え、産業機械、工作機械等で大幅減が続いている。
  • 物件別の最近の動向をみると、
     契約額の約4割を占める情報関連機器は、2月7.4%減、3月2.5%減と低調に推移している。
     商業・サービス業用機械・設備は、2月18.4%減、3月3.4%増となった。商業用機械設備は前年割れが続いているものの、サービス業用機械設備が増加したことから、3月は24か月振りの増加となった。
     事務用機器は、2月8.7%減の後、3月は前年の反動から、8.3%増と17か月振りの増加となった。
     産業機械は、設備投資の冷え込みを映じて、2月37.2%減、3月24.3%減と大幅減が続いている。
     工作機械は、設備投資の冷え込みを映じて、2月29.1%減、3月32.8%減と大幅減が続いている。
     土木建設機械は、2月4.6%減の後、公共工事の増加等により、3月は15.9%増となった。
     自動車は、2月1.7%減、3月0.9%減となった。
  • リース料率は、低い水準で推移している。

13.電力

電力は横ばい状況が続いている。これは、電灯や業務用電力が堅調な伸びとなったものの、大口電力が生産活動の停滞状況を映じて15か月連続で前年実績を下回ったからである。

  • 電力需要(9社計、前年同期(月)比)は、2月1.4%減の後、3月2.5%増となった。これは、民生用電力(電灯、業務用電力)が暖房需要により高めな伸びとなったためである。
     用途別にみると、家庭用電灯需要は3月は6.5%増と高い伸びとなった。これは、2月の気温が前年に比べ低めとなり暖房需要が増加したことと、検針期間が前年に比べて長かったためである。業務用電力も暖房需要の増加により3月は4.0%増と高めな伸びとなった。小口電力のうち、低圧電力については高い伸びとなったが、高圧電力Aは、17か月振りに増加に転じたものの低い伸びに止まった。大口電力は生産活動の停滞状況を映じて、15か月連続の前年実績割れとなった。
     1~3月期について地域別にみると、北海道、東北、四国以外の6地域は前年実績を下回った。
  • 大口電力需要を自家発電を含め業種別にみると、3月は化学、輸送機械が前年比プラスになったものの、それ以外の業種は前年実績割れを続けており、生産活動の停滞状況を裏付ける形となっている。鉄鋼は、粗鋼生産が前年実績を大幅に下回ったことから、16か月連続して前年割れとなった。化学は、3月には汎用樹脂の増産等により0.2%増と13か月振りにプラスに転じた。パルプ・紙は、2月には0.1%増とプラスになったが、3月は再び1.2%のマイナスとなった。セメントは、生産が低迷していること等から19か月連続で前年割れとなった。電気機械は、半導体等での生産調整の影響で、5か月連続の前年割れとなった。輸送用機械は、3月には軽四輪を中心とした乗用車の生産増により1.3%増と15か月振りにプラスに転じた。非鉄は、アルミニューム圧延品の生産減等により、12か月連続の前年割れとなった。
     地域別にみると、3月は北陸、四国以外の7地域で前年実績を下回った。

14.広告

広告は低調に推移している。これは、企業の広告費削減の動きを映じて、売上高の減少傾向が続いているからである。

  • 広告は基調として低調に推移している。主要10社の売上高(前年同月比)をみると、2月14.0%減と大幅減の後、3月は新聞、雑誌が増加し、0.6%増(速報)となったものの、企業の広告費削減の動きが続いており、売上高の減少傾向が続いている。
     媒体別では、ウェイトの大きいテレビは、機動的に運用できるスポットで下げ止まりの兆しが見られるものの、主要広告主に抑制の動きが続き、引き続き減少している。雑誌は、飲料・嗜好品等では増加しているものの、主要広告業種の化粧品・トイレタリーやファッション・アクセサリー等の減少が影響して基調として低調な動きとなっている。新聞は、金融・保険、官公庁・団体等で増加し、3月は8か月振りに増加となった。4媒体以外は、低調に推移している。
  • 広告量(前年同月比)の動向をみると、テレビはテレビスポットが2か月連続で増加しているものの、テレビ番組で減少が続いている。新聞は、カラー広告、全面広告が3月に増加したものの、案内広告で低調な動きが続いている。
     出稿業種別にみると、金融・保険が金融自由化の進展もあって外資系金融機関の活発な広告展開を中心に新聞、テレビで好調に推移している。ビール、健康飲料等の広告が活発な飲料・嗜好品はテレビスポットを中心に増加している。一方、これまで好調であった情報・通信はこのところ減少傾向にある。軽自動車の好調さもあってテレビ番組で堅調だった自動車・関連品はテレビスポット、新聞で大幅に減少している。不動産・住宅設備、化粧品・トイレタリーは減少が続いている。