産業動向(平成10年9月)

平成10年9月


産業動向の推移

産業動向の推移イメージ


概況

我が国産業の最近の動向について次のような特徴がみられる。

(1)最近の我が国産業をみると、多くの業種が低調または不振であり、極めて厳しい状況にある。これは、個人消費が低調であることや、設備投資が減少していること等を映じて、在庫水準が依然高く、生産調整の動きが強まっている産業や、国内販売の低迷が続いている産業が多いからである。

(2)製造業をみると、素材型産業では、紙・パルプは低調に推移しており、鉄鋼、化学は不振が続いている。加工組立型産業では、自動車、半導体、コンピュータ関連機器、通信機器、家電は低調に推移しており、産業機械、建設機械では不振が続いている。一方、工作機械はやや悪化しているものの、横ばい圏内で持ちこたえている。

(3)非製造業を見ると、情報サービスは好調に推移しているが、広告は低調となった。リース、旅行も低調に推移しており、国内貨物、建設・住宅は不振が続いている。一方、電力は横ばい状態が続いている。


鉄鋼は不振が続いている。これは、国内需要の低迷が長引いていることにより普通鋼鋼材の国内受注が低調に推移していることや、普通鋼の国内在庫が前年を上回る動きが続いていることなどから、依然として在庫調整が続いているからである。

化学(石油化学)は不振が続いている。これは、需要減を映じて基礎原料であるエチレンの生産や汎用樹脂で減産の動きが続いており、国内出荷が減少傾向にあるからである。

紙・パルプは低調である。これは、需要の落ち込みにより出荷が低調であり、在庫も高水準であるなか、生産面においても、紙で、一部の用紙を除き生産調整の動きが強まり、また板紙も低調に推移しているからである。

一般機械では、産業機械は、不振が続いている。これは、受注が内外需の不振により低迷しているからである。工作機械は、やや悪化しているものの横ばい圏内で持ちこたえている。これは、受注が外需は好調に推移しているからである。建設機械は、不振が続いている。これは、出荷が建築需要の落ち込みを映じて大幅減となっているからである。

産業用電気機械・電子部品では、半導体集積回路は低調に推移している。これは、パソコンの法人需要等が低迷しているため、出荷額が減少傾向にあるからである。コンピュータ関連機器は低調に推移している。これは、法人需要等が低迷しているため、生産額が減少傾向にあるからである。通信機器は低調に推移している。これは、通信インフラの整備の一巡により、生産額が減少傾向にあるからである。

家電は、このところ下げ止まり感があるものの、依然として低調に推移している。これは、国内出荷(台数ベース)と輸出は、総じて底固い推移となっているが、生産額については、下げ止まり感があるものの、依然として低調な推移となっているからである。

自動車は低調に推移している。これは、完成車輸出が底固いものの、国内販売が低調なため、生産が低調に推移しているからである。

建設・住宅は不振が続いている。建設業大手50社の受注額は、民間・官公庁ともに減少が続いていることや、住宅着工戸数が、引き続き減少傾向にあるからである。

運輸・旅行は、国内貨物輸送は不振が続いている。これは、国内生産活動及び消費活動の低迷を映じて、すべての輸送形態が減少傾向となっているからである。旅行関連は低調に推移している。これは、団体旅行の落ち込み等のため、大手旅行会社の取扱額が減少傾向で推移しているからである。

情報サービスは好調に推移している。これは、主力の受注ソフトウェアが好調なため売上高が増加しているからである。

リースは低調に推移している。これは、設備投資意欲の減退を映じて、リース契約額が、主力の情報関連機器を始めほとんどの物件で前年を下回り、減少傾向となっているからである。

電力は横ばい状態が続いている。これは、電灯が好調な伸びとなったものの、業務用電力の伸びが鈍化し、また、大口電力が生産活動の停滞状況を映じて7か月連続で前年実績を下回ったからである。

広告はやや悪化しており低調となった。これは、企業の広告費削減の動きを映じて、売上高が6月、7月と減少し、8月に入っても減少が続いているからである。


1.鉄鋼

鉄鋼は不振が続いている。これは、国内需要の低迷が長引いていることにより普通鋼鋼材の国内受注が低調に推移していることや、普通鋼の国内在庫が前年を上回る動きが続いていることなどから、依然として在庫調整が続いているからである。

  • 普通鋼鋼材の国内出荷(前年同月比)は、6月13.7%減、7月16.7%減と二ケタ減が続いており、低調に推移している。
    これを受注面からみると、普通鋼鋼材の国内受注は、5月17.4%減、6月15.7%減と低調に推移している。
    用途別にみると、建設向けは、土木用に一部下げ止まりの兆しが窺えるものの、建築用が低調な動きとなったことから、5月11.1%減、6月9.9%減となった。
    製造業向けは、5月17.1%減、6月20.4%減と、低迷状態にある。内訳別では、ウェイトの高い自動車用は、乗用車生産台数の減少を背景に大幅減となるなど低調に推移している。また、その他の用途でも前年を大きく下回っている。
    こうした状況のなか、国内在庫は、6月578万トン(前年同月比5.0%増)、7月547万トン(同1.8%増)と、前年を上回る動きが続いているものの、増勢に歯止めがかかってきている。
  • 鉄鋼の輸出入(全鉄鋼ベース、前年同月比)をみると、輸出数量はメーカー各社の積極的な輸出努力を反映して、6月30.6%増、7月36.4%増となった。
    これを仕向け先別にみると、米国、EU向けは6、7月ともに三ケタ増が続くなど、好調な動きとなった。一方、アセアン向けは経済情勢の影響などから、低調に推移している。輸出船積平均単価は、国際市況の軟化などにより、円、ドルベースともに低下傾向にある。
    輸入数量は、国内の需給緩和を映じた岸壁在庫の積み上がり等から6月36.7%減、7月34.1%減となった。
  • 粗鋼の生産は、減産の動きがみられた結果、6月775万トン(前年同月比10.9%減)、7月769万トン(同12.6%減)となった。
  • 鋼材の市況をみると、条鋼類では、H形鋼は引き続き低下傾向にある。また、棒鋼は底ばいでの推移となっている。鋼板類では、輸入が減少したものの、それ以上に需要が低迷していることから、冷延薄板、厚鋼板ともにこのところ低下傾向にある。

2.化学(石油化学)

化学(石油化学)は不振が続いている。これは、需要減を映じて基礎原料であるエチレンや汎用樹脂で減産の動きが続いており、国内出荷が減少傾向にあるからである。

  • 石油化学製品の基礎原料であるエチレンの生産は、7月608千トン(前年同月比4.6%増)の後、8月585千トン(速報、前年同月比7.9%減)となり、引き続き減産の動きが続いている。汎用樹脂の生産についても、内外の需要減を映じて減産の動きがみられ、全体的に減少傾向となっている。
    在庫水準については、減少傾向にあるものの全体ではやや過剰感が残っている。
  • 汎用樹脂の国内出荷については、需要減を映じて全体的に引き続き減少傾向となっている。主要樹脂別にみると、低密度ポリエチレンは主力のフィルム向けを中心として減少となった。高密度ポリエチレンは主力の射出向けを中心として減少となった。塩化ビニルについては、弱い動きが続いている住宅着工等の動きを映じて二ケタ減が続いている。汎用樹脂最大の需要を有するポリプロピレンは、自動車向け等の需要減を映じて減少が続いている。ポリスチレンは主力の電気工業向け等で減少となった結果、全体でも減少となった。
  • 汎用樹脂の輸出は、樹脂によりばらつきがみられるが、全体としては底固い動きが続いている。
    汎用樹脂の東南アジア市況については、一部に反発の動きがあるものの、引き続き全体的には低迷している。

3.紙・パルプ

紙・パルプは低調に推移している。これは需要の減少を背景に、出荷が低調であり、在庫も高水準であるなか、生産面においても、紙で一部の用紙を除き生産調整の動きが強まり、また板紙も低調に推移しているからである。

  • 紙の生産(前年同月比)は、一部の用紙を除き生産調整の動きが強まったことから、6月3.3%減、7月5.6%減と、このところ減少傾向にある。出荷は、6月1.6%減、7月3.5%減と前年割れが続いている。一方、在庫は、依然高水準で推移している。
    紙の生産を品目別にみると、新聞巻取紙は、総じて底固い動きとなっている。印刷・情報用紙では、需要の減少を背景に減産の動きがみられる。非塗工類は、微塗工紙は堅調に推移しているものの、全体では減少傾向にある。塗工紙は、カタログ、チラシ向け等が減少していることから、低調に推移している。情報用紙は、コピー用等のPPC用紙の伸びが鈍化しているほか、複写用紙、フォーム用紙は依然として低調である。
    衛生用紙は、市況対策などから生産調整が続いている。
  • 板紙の生産(前年同月比)は、段ボール需要の減少などを背景に6月6.8%減、7月7.5%減と低調に推移している。出荷は、段ボール原紙、紙器用板紙ともに低調な荷動きが続き、6月4.2%減、7月5.3%減となった。こうした状況のなか、在庫は、6月18.3%増、7月15.4%増と二ケタ増が続いている。
    板紙の生産を品目別にみると、段ボール原紙は、低調に推移している。
  • パルプの生産(前年同月比)は、製品需要の減少を背景として、6月6.4%減、7月8.1%減となった。
  • 紙、板紙の輸出入(数量ベース、前年同月比)をみると、輸出は、6月5.1%増、7月0.4%増と、総じて伸びが鈍化してきている。一方、輸入は、6月3.7%増の後、7月5.8%減となり、基調としては弱い動きとなっている。
  • 紙の市況をみると、紙、板紙ともにこのところの需給緩和を背景として、低下傾向にある。

4.一般機械

産業機械は不振が続いている。これは、受注が内外需の不振により低迷しているからである。工作機械は、やや悪化しているものの横ばい圏内で持ちこたえている。これは、受注が外需は好調に推移しているからである。建設機械は不振が続いている。これは、出荷が建築需要の落ち込みを映じて大幅減となっているからである。

  • 一般機械の生産(季調済前月比)は、基調としては減少傾向である。6月は前月の反動により1.8%増となったものの、ボイラ・原動機などの減少により7月は1.0%減(速報)となった。増加した機種は、17機種中、6月には8機種、7月には6機種(速報)となった。
    機械受注(原動機・産業機械・工作機械のみ、金額ベース、前年同期比)をみると、6月28.5%減、7月33.4%減と減少幅が拡大している。
    輸出入の動向(事務用機器を除く・円ベース、前年同期比)をみると、輸出は6月4.2%増、7月2.5%増と、2か月連続で増加となった。輸入は6月5.6%増、7月7.6%増となった。
  • 産業機械は不振が続いている。産業機械の受注(日本産業機械工業会調べ、金額ベース、前年同期比)は、6月35.4%減、7月29.2%減と9か月連続で二ケタの大幅減となり、足もとも低迷が続いている。需要者別にみると、7月は化学工業向けや鉄鋼業向けでボイラ・原動機が伸びたものの、ウェイトの高い電力業向けを始めその他は総じて不振であることから、減少が続いている。外需は、主力のアジア向けの低迷が続き、7月は大型プラントの受注が見られなかったことから大幅減となった。
  • 工作機械は、やや悪化しているものの横ばい圏内で持ちこたえている。工作機械の受注(日本工作機械工業会調べ、金額ベース、前年同期比)は、前年が高水準だったこともあり、6月7.8%減、7月10.8%減となった。需要者別にみると、内需は、設備投資意欲の減退によりほとんどの業種で大幅減が続いており、足もとも前年割れの動きとなっている。一方、外需は、北米向けや欧州向けを中心に引き続き好調で、5か月連続で内需を上回り、その幅も拡大している。
  • 建設機械は不振が続いている。建設機械の出荷(日本建設機械工業会調べ、本体・金額ベース、前年同期比)は、6月21.5%減、7月23.7%減となり、足もとも低迷が続いている。需要者別にみると、内需は、建築需要の落ち込みを映じて、トンネル機械を除くすべての機種で大幅減となった。外需は、北米・中南米向け、欧州向けでミニショベルが好調なものの、主力のアジア向けの低迷に加えオセアニア向けでも減少が続いており、4か月連続でマイナスとなった。

5.産業用電気機械・電子部品

半導体集積回路は低調に推移している。これは、パソコンの法人需要等が低迷しているため、出荷額が減少傾向にあるからである。コンピュータ関連機器は低調に推移している。これは、法人需要等が低迷しているため、生産額が減少傾向にあるからである。通信機器は低調に推移している。これは、通信インフラの整備の一巡により、生産額が減少傾向にあるからである。

  • 半導体集積回路は、低調に推移している。パソコンの法人需要等が低迷していることから、出荷額(前年同月比)は、5月13.8%減、6月14.6%減と減少傾向にある。在庫率は16MDRAMを中心に6月1.01と高水準で推移しており、16MDRAMから64MDRAMへ生産のシフトが進んでいる。DRAMの価格は、64MDRAMでは韓国メーカーの減産による持ち直しの動きも見られるものの、基調としては、供給過剰感から低水準で推移している。
  • コンピュータ関連機器は、低調に推移している。ウインドウズ98の販売により個人需要には一部持ち直しの動きもみられるものの、依然として法人需要は低迷しており、生産額(前年同月比)は、5月20.9%減、6月12.4%減と二ケタ減が続いている。内訳をみると、パソコンは、5月37.2%減の後、ウインドウズ98搭載製品の生産により、6月2.7%増となった。また、周辺機器は、6月4.7%減、7月は6.6%減(速報)と低調な動きが続いている。
  • 通信機器は、低調に推移している。通信インフラの整備が一巡していることから、生産額(前年同月比)は、5月30.1%減、6月24.0%減と減少傾向にある。内訳をみると、携帯電話は5月2.8%減、6月0.5%増とこれまでのような堅調さはみられず、電子交換機は6月38.4%減、7月29.8%減(速報)と大幅な減少となっており、ISDN、デジタル専用線に関連する搬送装置も5月40.2%減、6月30.4%減と大幅な減少となっている。

6.家庭電器

家電は、このところ下げ止まり感があるものの、依然として低調に推移している。これは、国内出荷(台数ベース)と輸出は、総じて底固い推移となっているが、生産額については、下げ止まり感があるものの、依然として低調な推移となっているからである。

  • 家電の国内出荷(台数ベース)は、総じて底固い荷動きとなっている。
    AV家電をみると、足もとも含め、総じて底固い荷動きがみられている。品目別にみると、カラーテレビは、サッカーW杯効果の反動もあり、足もとも前年をやや下回る荷動きとなっている。VTRは、BS内蔵型が好調であるなど、全般的に堅調な荷動きとなっている。ビデオカメラは、新製品投入も相まって、足もと堅調な荷動きとなっている。
    白物家電をみると、足もとも含め、総じて底固い荷動きとなっている。品目別にみると、冷蔵庫は、350l以上の大型が下支えしており、底固い荷動きとなっている。洗濯機は、新機軸商品が投入され始めたものの、現在のところその効果も力弱く、前年を下回る荷動きとなっている。電子レンジは、オーブンレンジに下げ止まり感があり、このところ前年水準前後の荷動きとなっている。エアコンは、特に西日本での気温の上昇に、前年低水準の反動も相まって、7、8月と大幅な増加となった。
  • 家電の輸出(台数ベース)は、総じて底固い推移となっている。カラーテレビは、香港向けを中心に、6、7月と大幅に増加した。VTRは、米国、香港向けを中心に堅調である。一方、CDプレーヤは、メキシコ向けの減少から、前年を下回っている。
  • 家電の輸入(台数ベース)は、中国の増加から、カラーテレビ、VTRともに、7月は増加に転じた。
  • 家電の生産額(前年同月比)は、白物家電を中心に大きく減少し、5月15.9%減、6月7.0%減となった。足もとでは、在庫過剰感が薄れ、また、新冷凍年度向けエアコンの生産早期化の動きが広がっていることなどから下げ止まり感があるものの、依然として低調な推移となっている。

7.自動車

自動車は低調に推移している。これは、完成車輸出が底固いものの、国内販売が低調なため、生産が低調に推移しているからである。

  • 自動車全体の国内販売(新車新規登録・届出台数、前年同月比)は、7月8.3%減、8月7.9%減と、17か月連続の前年割れとなり、低調に推移している。車種別にみると、普通乗用車、小型乗用車は新型車の投入効果により下げ止まりの動きとなっている。普通トラック、小型トラックは法人需要の減少により大幅な落ち込みが続いている。軽自動車は、規格改定前の販売促進により足もと減少幅が縮小しているものの、前年割れが続いている。
    輸入車販売では、国内市場の低調さを映じて、7月19.8%減、8月23.0%減と前年割れが続いている。
  • 自動車の輸出(完成車台数ベース、前年同月比)は、前年高水準の反動から、6月9.9%減、7月5.8%減となっているものの、基調としては底固く推移している。仕向地別にみると、北米向けは一部に現地の在庫調整のため輸出を抑制する動きがあるものの、総じて底固く推移している。欧州、中東、中南米向けは堅調である。アジア地域向けは大幅な前年割れが続いている。
    自動車部品の輸出(日本自動車工業会々員11社分、ドルベース)は、部品の現地調達が進展していることから、海外生産用、OEM用とも減少傾向が続いており、6月20.6%減、7月11.3%減となっている。
  • 以上から、自動車の生産(完成車台数ベース、前年同月比)は、6月9.9%減、7月10.7%減と低調に推移している。車種別にみると、小型トラックは法人需要の低迷により大幅な前年割れが続いている。その他は国内販売、アジア向け輸出の低迷などから前年割れが続いている。

8.建設・住宅

建設・住宅は不振が続いている。これは、建設業大手50社の受注額が、民間、官公庁ともに減少が続いていることや、住宅着工戸数が、引き続き減少傾向にあるからである。

[建設]

  • 建設業大手50社の受注額(対前年同期比)は、6月3.9%減、7月14.3%減と減少が続いている。受注の約6割を占める民間工事をみると、7月13.3%減と再び減少に転じた。製造業向けは、主力の電気機械等での減少が響き、このところ全体で減少が続いている。ウェイトのより大きい非製造業向けは、サービス業が底固く推移しているものの、全体では弱い動きとなっている。受注の約3割を占める官公庁工事は、引き続き減少傾向が続いている。海外工事は主力の東南アジアにおいて、通貨危機の影響により受注元に慎重な動きがみられ、弱い動きが続いている。
    施工高は、5月13.8%減、6月10.7%減となった。また、未消化工事高は、19か月連続で減少となった。
    また、地方大手建設業者470社の受注は、民間、官公庁ともに減少が続いている。
  • 建築の着工状況(床面積)をみると、着工床面積の約9割を占める民間建築の減少が大きく響いており、全体的に減少傾向となっている。内訳をみると、民間建築の大宗を占める居住用建築では引き続き減少傾向となっており、非居住用建築についても用途別にばらつきがみられるものの、全体的に弱い動きとなっている。
  • 公共工事着工(総工事費評価額)は、6月7.5%減、7月6.1%減と5か月連続で減少となっており、4~7月累計では12.4%減となった。

民間土木工事着工は、6月1.6%増、7月5.4%増となった。

[住宅]

  • 住宅着工(戸数)は、6月11.7%減、7月11.3%減と19か月連続で減少となり、引き続き減少傾向となっている。また、7月の年率換算値は110万戸となったが、これは約13年振りの水準である。利用関係別では、持家の減少幅は縮小しつつあるものの、貸家は引き続き2ケタの減少を続けており、分譲についてもこのところ減少幅が大きくなってきている。
  • 戸建住宅産業の最近の動きについては、構造別の着工戸数は木造、非木造ともに弱い動きが続いている。建築単価については、1平方メートル当たりの工事費予定額で木造がこのところ緩やかな低下傾向にあり、1戸あたりの面積については各利用関係別で緩やかに縮小している。
  • マンション産業の最近の動きについては、着工は首都圏をはじめとして各都市部で減少となっており、全体では6月20.3%減、7月19.1%減と5か月連続で減少となっている。新規契約率(首都圏)については、6月73.2%、7月74.9%とこのところ緩やかに上昇しているが、在庫水準は依然高いものとなっている。

9.運輸・旅行

国内貨物輸送は不振が続いている。これは、国内生産活動及び消費活動の低迷を映じて、すべての輸送形態が減少傾向となっているからである。

旅行関連は低調に推移している。これは、団体旅行の落ち込み等のため、大手旅行会社の取扱額が減少傾向で推移しているからである。

  • 国内貨物輸送は、不振が続いている。国内生産活動及び消費活動の低迷を映じて、すべての輸送形態が減少傾向となっている。
    内訳をみると、一般トラック(前年同月比:トンベース)は5月10.2%減、6月は10.7%減と大幅な減少が続いている。特別積合せトラックは、宅配貨物は底固い動きであるものの、その他の荷動きが不振であることから、5月9.4%減、6月2.8%減(速報)と減少が続いている。内航海運(貨物船)は5月15.3%減、6月3.7%減と不振が続いている。JR貨物は、車扱いに加えてコンテナも減少傾向にあることから、5月10.9%減、6月12.3%減(速報)と不振が続いている。航空貨物は、6月2.0%増、7月1.2%減(速報)と低調に推移している。
  • 国際貨物輸送は、低調に推移している。航空貨物の輸出は、貨物トン数(全国ベース)でみると、韓国、フィリピン等のアジア向けの荷動きの低迷により、6月4.5%減、7月4.9%減と減少が続いている。輸入は国内需要が弱いことから、6月6.3%減、7月5.6%減と減少が続いている。外航海運の貨物トン数は、輸出は6月10.9%減、7月1.3%減となった。輸入は6月15.0%減、7月11.8%減となった。
  • 旅行関連は、低調に推移している。大手旅行会社(鉄道旅客協会加盟13社)の取扱額(前年同月比)をみると、団体旅行の落ち込み等のため、6月4.3%減、7月1.0%減と減少傾向で推移している。夏休みについては、安価な企画商品は堅調なものの、その他の旅行商品は低調である。内訳をみると、国内旅行は6月は3.1%増、7月0.8%減、海外旅行は6月6.5%減、7月1.2%減と低調に推移している。主要旅客輸送機関の実績(人数ベース、前年同月比)をみると、JR旅客は、定期外は6月0.9%減となった。航空(3社)は国内線は6月1.6%減、7月0.9%増(速報)となった。国際線は6月、7月(速報)共に1.6%増となった。

10.情報サービス

情報サービスは好調に推移している。これは、主力の受注ソフトウェアが好調なため、売上高が増加しているからである。

  • 情報サービス業売上高(前年同月比)は、売上高の5割強を占める受注ソフトウェアが好調であることから、6月16.3%増、7月1.8%増となっている。
  • 業務種類別にみると、
    • 受注ソフトウェアは、官公庁、通信業、金融業向けソフトウェア開発の需要が引き続き好調なことから、6月23.2%増、7月6.9%増と好調に推移している。
    • ソフトウェアプロダクトは、6月に大口需要があり40.4%増の後、7月6.9%増となり、堅調に推移している。
    • 計算事務等情報処理は、6月0.6%増の後、7月は前年のスポット需要の反動により3.3%減となったものの、底固く推移している。
    • システム等管理運営受託は、通信業、製造業のアウトソーシングの需要増により、6月23.4%増、7月15.1%増と好調に推移している。
  • 雇用状況は、若干緩和しているものの、技術者を中心に不足感が続いている。

11.リース

リースは、低調に推移している。これは、設備投資意欲の減退を映じて、リース契約額が、主力の情報関連機器を始めほとんどの物件で前年を下回り、減少傾向となっているからである。

  • リースは、低調に推移している。リース契約額(リース事業協会調べ、前年同期比)は、6月は大口需要も見られたことから0.8%減と小幅な減少だったものの、7月は主力の情報関連機器を始めほとんどの物件で前年を下回り、5.9%減となり、足もとも減少傾向が続いている。これは、中小企業を中心とする設備投資意欲の減退を映じたものである。
  • 物件別の最近の動向をみると、
    契約額の約4割を占める情報関連機器は、6月は通信機の大口需要が見られたことから1.5%増となったが、電算機では設備の更新を抑制する動きが続いており、7月は2.9%減となり、足もとも減少傾向となっている。
    商業・サービス業用機械・設備は、高額の設備投資を控える動きが続き、6月は4.7%減、7月は底固かった商業用機械設備でもマイナスとなり、9.3%減となった。
    事務用機器は、情報関連機器へのシフトによる需要の低迷に加え、コピー機の価格低下などの影響により、6月8.1%減、7月9.0%減と前年割れが続いている。
    産業機械は、中小企業を中心とする設備投資意欲の減退を映じて、6月8.3%減、7月9.0%減と、減少が続いている。
    工作機械については、6月0.7%減の後、7月は大口需要が見られたなどことから4.5%増となった。
    土木建設機械は6月は前年低水準の反動により9.7%増となったものの、民間建築需要の落ち込みを映じて、7月は9.6%減となり、依然として減少傾向にある。
    自動車は、6月13.8%減、7月16.3%減となった。
  • リース料率は、低い水準で推移しているものの、一部に引き上げる動きが見られる。

12.電力

電力は、横ばい状態が続いている。これは電灯が好調な伸びとなったものの、業務用電力の伸びが鈍化し、また、大口電力が生産活動の停滞状況を映じて7か月連続で前年実績を下回ったからである。

  • 電力需要(9社計、前年同期(月)比)は、6月0.5%増の後、7月も0.5%増と横ばいとなった。これは、電灯が好調であったが、大口電力が生産活動の停滞状況を映じて前年実績を下回ったこと等による。
    用途別にみると、家庭用電灯需要は7月は5.9%増と大きな伸びとなった。これは、当月の検針期間が前年に比べ長かったためである。なお、契約口数については、このところの住宅着工戸数の低迷を映じて伸び率は鈍化しつつある。業務用電力は、東日本などでの気温が前年に比べて低く冷房用需要が減少したため、7月は2.7%増と低めな伸びとなった。また小口電力のうち、低圧電力についても同じ理由で、冷房、冷蔵需要の減少が見られたことから低い伸びとなった。なお、生産活動の停滞状況を映じて、小口電力のうち高圧電力Aは、9年11月以降前年実績を下回る等低調に推移しており、大口電力は、7か月連続の前年実績割れとなっている。
    4~6月期について地域別にみると、北海道、北陸、近畿、中国が前年実績を下回っている。
  • 大口電力需要を自家発電を含め業種別にみると、電気機械を除く全業種で前年実績を下回っており、生産活動の停滞状況を裏付ける形になっている。鉄鋼は、粗鋼生産の減少などから8か月連続して前年実績を下回っている。化学は、内需の不振などに伴い、エチレンや汎用樹脂の生産が低迷していることから5か月連続の前年割れとなっている。パルプ・紙は、洋紙・板紙の生産が前年を下回ったため、7月もマイナスとなった。セメントは、内需の不振により生産が減少していることなどから11か月連続の前年割れとなっているが、7月は3.7%減と減少幅が小さくなった。電気機械は、電子機器等の生産が堅調に推移していること等により、プラスの伸びを続けている。輸送用機械は、自動車の国内販売の不振などによる生産減により、7か月連続して前年実績を下回っている。非鉄は、アルミニューム圧延品の生産減等により、4か月連続のマイナスの伸びとなっている。
    地域別にみると、これまでプラスを続けていた四国も7月はマイナスとなり、全ての地域で前年実績を下回っており、特に近畿は9か月連続の前年割れとなっている。

13.広告

広告はやや悪化しており低調となった。これは、企業の広告費削減の動きを映じて、売上高が6月、7月と減少し、8月に入っても減少が続いているからである。

  • 広告はやや悪化しており低調となった。主要10社の売上高(前年同月比)をみると、企業の広告費削減の動きを映じて、6月2.3%減の後、7月は参議院選挙関連等の売り上げ増があったものの、1.0%減となり、8月に入っても減少が続いている。
    媒体別では、ウエイトの大きいテレビは、機動的に運用できるスポットで今までの完売状況に変化がみられ、料金単価の低下もみられる。雑誌は、創刊は活発なものの、主要媒体の女性誌が伸び悩んでいる。新聞は、7月には参議院選挙関連の広告増があったことなどで増加したが、基調として減少傾向で推移している。4媒体以外は、DMは好調なものの屋外広告等の減少により一進一退の動きとなっている。
  • 広告量(前年同月比)の動向をみると、テレビはテレビ番組、テレビスポットとも減少傾向が続いている。新聞は、カラー広告が堅調な動きを続けているが、案内広告は低調な動きが続いている。
    出稿業種別にみると、情報・通信は、パソコン関連や電話、衛星放送が好調で、テレビ、新聞で堅調に推移している。飲料・嗜好品は、ウイスキー、ビール、健康飲料等が好調で、テレビ番組、新聞で堅調に推移している。一方、自動車・関連品及び不動産・住宅設備は、テレビスポット、新聞とも大幅な減少が続いている。