産業動向(平成10年7月)

平成10年7月


業種別動向の推移

業種別動向の推移イメージ


概況

我が国産業の最近の動向について次のような特徴がみられる。

(1)需要面をみると、個人消費関連では、家電の国内出荷が底固く、乗用車販売、旅行販売が弱い動きとなっている。

設備投資関連では、工作機械の受注はやや弱い動きとなっており、産業機械の受注、建設機械の出荷は弱い動きが続いている。

建設関連では、受注に減少傾向がみられ、住宅建設は弱い動きが続いている。

輸出では、鉄鋼、家電、自動車が底固い動きとなっている。

(2)供給面をみると、生産では、鉄鋼、化学、一般機械、コンピュータ関連機器、通信機器、家電、自動車は弱い動きとなっている。

情報サービスは好調に推移しているが、広告はやや弱い動きとなっており、国内貨物は弱い動きが続いている。

輸入では、鉄鋼で減少傾向となっている。

(3)このように最近の我が国産業をみると、多くの業種で弱い動きとなっている。


鉄鋼(普通鋼鋼材)の国内受注は、弱い動きが続いている。また、普通鋼の国内在庫は国内需要の低迷などから高水準が続いている。粗鋼生産量は、4月13.6%減、5月13.6%減と弱い動きが続いており、足もとも低水準の生産となっている。

化学(石油化学)の基礎原料であるエチレンの生産は、前年割れが続いており、減産の動きが本格化している。汎用樹脂の生産、国内出荷は需要減を映じて減少傾向となっており、海外出荷は東南アジア市況が低迷のなか、樹脂によりばらつきがみられる。

紙・板紙の生産は、紙で生産調整の動きがみられ、減少に転じているほか、板紙で弱い動きが続いている。一方、在庫は、出荷の伸び悩みなどから、依然として高い水準が続いている。このようななか、市況は紙、板紙ともにこのところ弱含みで推移している。

一般機械の生産は、4月4.7%減、5月8.6%減(速報)と、弱い動きとなっている。産業機械の受注は、内外需の不振により7か月連続で二ケタの大幅減となり、足もとも弱い動きが続いている。工作機械の受注は、国内の設備投資意欲の減退により、やや弱い動きとなった。建設機械の出荷は、一段と弱い動きとなっている。

産業用電気機械・電子部品では、半導体集積回路の出荷額は、3月8.1%減、4月7.8%減と弱い動きが続いている。コンピュータ関連機器の生産額は、3月12.3%減、4月16.2%減と2か月連続二ケタ減となり、足もとでも弱い動きとなっている。通信機器については、通信インフラの整備が一巡していることから、4月は24.6%減となり、弱い動きとなっている。家電の国内出荷(台数ベース)は、5月以降持ち直しの動きがみられ、足もとでは総じて底固い荷動きとなっている。輸出は、総じて底固い推移となっている。家電の生産額は、足もとも総じて弱い動きとなっている。

自動車の国内販売は、5月7.4%減、6月8.8%減と低調な動きが続いている。輸入車販売も前年割れが続いている。完成車の輸出は底固い動きとなっている。以上から、生産は、4月14.1%減、5月19.7%減と弱い動きとなっている。

建設業大手50社の受注額は、5か月連続で減少となった。民間建築着工は、大宗を占める居住用建築の減少幅が大きく、全体的に減少傾向となっている。公共工事着工は3か月連続で減少となっている。

住宅着工戸数は、持家、貸家、分譲ともに減少が続いている。

運輸・旅行は、国内貨物輸送は、ほとんどの輸送形態で減少傾向がみられ、一段と弱い動きとなっている。旅行関連は、海外旅行の不振により引き続き弱い動きとなっている。

情報サービス業売上高は、主力の受注ソフトウェアが好調であることから、4月7.4%増、5月14.2%増となり、足もとも好調に推移している。

リース契約額は、設備投資意欲の減退などにより、主力の情報関連機器にも落ち込みがみられ、4月1.9%増、5月5.9%減となり、足もとも弱い動きとなっている。

電力需要は、4月3.3%増の後、5月は業務用電力が好調に推移したものの、民生用の電灯の伸びが鈍化したこと、また、大口電力が生産活動の停滞状況を映じて5か月連続で前年実績を下回ったこと等により、全体としては0.4%の微増に止まった。

広告の売上高は、4月1.3%増の後、5月は2.4%減となり、足もともやや弱い動きとなっている。広告量でみると、情報・通信は高い伸びが続いているが、自動車・関連品で弱い動きが続いている。


1.鉄鋼

普通鋼鋼材の国内受注は、弱い動きが続いている。また、普通鋼の国内在庫は国内需要の低迷などから高水準が続いている。粗鋼生産量は、4月13.6%減、5月13.6%減と弱い動きが続いており、足もとも低水準の生産となっている。

  • 普通鋼鋼材の国内出荷(前年同月比)は、4月15.3%減、5月17.6%減と二ケタ減が続いており、弱い動きとなっている。
    これを受注面からみると、普通鋼鋼材の国内受注は、3月16.9%減、4月17.9%減と依然として、弱い動きが続いている。
    用途別にみると、建設向けは、土木用、建築用ともに弱い動きが続いた結果、3月12.8%減、4月10.5%減となった。
    製造業向けは、3月17.9%減、4月19.3%減となり、足もとでも弱い動きが続いている。内訳別では、ウェイトの高い自動車用は、乗用車生産台数の減少を背景に大幅減となるなど弱い動きがみられる。また、その他の用途でも前年を大きく下回っている。
    こうした状況のなか、国内在庫は、4月571万トン(前年同月比7.9%増)、5月585万トン(同6.5%増)と、国内需要の低迷などから高水準が続いている。
  • 鉄鋼の輸出入(全鉄鋼ベース、前年同月比)をみると、輸出数量はメーカー各社の積極的な輸出姿勢を映じて4月8.9%増、5月15.8%増となった。
    これを仕向け先別にみると、主要仕向先であるアセアン、韓国向けは通貨危機の影響などから大幅減となっている。一方で、増加が続く米国、EU向けは、4、5月ともに大幅な増加となった。輸出船積平均単価は、国際市況の軟化などにより、円、ドルベースともに総じて低下傾向となっている。また、ドルベースでは昨年12月より700ドルを下回っており、足もとでも低水準で推移している。
    輸入数量は、国内の需給緩和を映じた岸壁在庫の積み上がり等から4月26.9%減、5月35.0%減となった。
  • 粗鋼の生産は、4月764万トン(前年同月比13.6%減)、5月797万トン(同13.6%減)と弱い動きが続いており、足もとでも低水準での生産となっている。
  • 鋼材の市況をみると、条鋼類では、H形鋼は在庫調整のペースが鈍っており、弱い動きとなっている。鋼板類では、需要の落ち込みが続いていることなどから、冷延薄板、厚鋼板ともに総じて弱含んでいる。

2.化学(石油化学)

基礎原料であるエチレンの生産は、前年割れが続いており、減産の動きが本格化している。汎用樹脂の生産、国内出荷は需要減を映じて減少傾向となっており、海外出荷は東南アジア市況が低迷のなか、樹脂によりばらつきがみられる。

  • 石油化学製品の基礎原料であるエチレンの生産は、5月603万トン(前年同月比3.0%減)、6月540万トン(速報、前年同月比10.7%減)と、前年割れが続いており、減産の動きが本格化している。汎用樹脂の生産についても、内外の需要減を映じて減産の動きがみられ、全体的に減少傾向となっている。
    在庫水準については、全体的に過剰感がみられる。
  • 汎用樹脂の国内出荷については、需要減を映じて全体的に減少傾向となっている。主要樹脂別にみると、低密度ポリエチレンは主力のフィルム向け等で減少となった。高密度ポリエチレンは主力の射出向けで減少となり、全体でも減少となった。塩化ビニルについては、弱い動きが続いている住宅着工等の動きを映じて減少が続いている。汎用樹脂最大の需要を有するポリプロピレンは、自動車向け等の需要減を映じて減少が続いている。ポリスチレンは主力の電気工業向け等で減少となった結果、全体でも減少となった。
  • 汎用樹脂の輸出は、樹脂により増減にばらつきがみられる。
    汎用樹脂の東南アジア市況については、引き続き全体的に低迷している。

3.紙・パルプ

紙・板紙の生産は、紙で生産調整の動きがみられ、減少に転じているほか、板紙で弱い動きが続いている。一方、在庫は、出荷の伸び悩みなどから、依然として高い水準が続いている。このようななか、市況は紙、板紙ともにこのところ弱含みで推移している。

  • 紙の生産(前年同月比)は、4月2.0%増の後、5月3.3%減と減少に転じ、足もととでも、生産調整の動きがみられる。出荷は、4月0.8%減、5月4.3%減と弱い動きとなった。一方、在庫は、出荷の伸び悩みなどから、依然として高い水準が続いている。
    紙の生産を品目別にみると、新聞巻取紙は、総じて底固い動きとなっている。
    印刷・情報用紙では、需要の減少を背景に、足もとでは減産の動きがみられる。非塗工類は、微塗工紙を除き、前年を下回る動きとなっている。塗工紙は、軽量コート紙が底固く推移しているものの、総じてやや弱い動きとなっている。情報用紙は複写用紙、フォーム用紙で弱い動きがみられ、PPC用紙も伸びに鈍化がみられることから、総じて前年を下回る動きとなっている。衛生用紙は、市況対策などから生産調整の動きがみられる。
  • 板紙の生産(前年同月比)は、段ボール需要の減少などを背景に4月4.6%減、5月5.7%減と弱い動きが続いている。出荷は、段ボール原紙で電器、繊維、住宅関連向け等を中心に減少が続き、4月4.7%減、5月7.1%減と弱い動きとなった。こうした状況のなか、在庫は、4月23.4%増、5月24.1%増と大幅増が続き、荷動きが弱くなっている。
    板紙の生産を品目別にみると、段ボール原紙は、需給緩和を映じた在庫の積み上がり等から弱い動きとなっている。
  • パルプの生産(前年同月比)は、このところの製品需要の伸びの鈍化を映じて4月3.2%減、5月3.3%減となった。
  • 紙、板紙の輸出入(数量ベース、前年同月比)をみると、輸出は、4月23.6%増の後、5月6.9%減となったものの総じて落ち着いた動きとなった。
    一方、輸入は、4月22.7%減、5月8.6%減と弱い動きとなっている。
  • 紙の市況をみると、紙、板紙ともにこのところ弱含みで推移している。

4.一般機械

一般機械の生産は、4月4.7%減、5月8.6%減(速報)と、弱い動きとなっている。産業機械の受注は、内外需の不振により7か月連続で二ケタの大幅減となり、足もとも弱い動きが続いている。工作機械の受注は、国内の設備投資意欲の減退により、やや弱い動きとなった。建設機械の出荷は、一段と弱い動きとなっている。

  • 一般機械の生産(季調済前月比)は、減少が続いている土木建設機械に加え、特殊産業機械などの減少により4月4.7%減、5月8.6%減(速報)と弱い動きとなっている。増加した機種は、17機種中、4月には6機種、5月には4機種(速報)となった。
    機械受注(原動機・産業機械・工作機械のみ、金額ベース、前年同期比)をみると、4月18.2%減、5月30.8%減と減少幅が拡大している。
    輸出入の動向(事務用機器を除く・円ベース、前年同期比)をみると、輸出は4月9.5%減、5月4.9%減と、このところ減少している。輸入は4月6.7%増、5月6.4%減となった。
    産業機械の受注(日本産業機械工業会調べ、金額ベース、前年同期比)は、4月13.0%減、5月20.2%減と7か月連続で二ケタの大幅減となり、足もとも弱い動きが続いている。需要者別にみると、5月はウェイトの高い電力業向けでボイラ・原動機が大きく伸びたものの、製造業向けは総じて不振であることから、弱い動きが続いている。外需は、主力のアジア向けが引き続き低迷していることに加え、5月は大型プラントの受注が見られなかったことから、大幅減となった。
  • 工作機械の受注(日本工作機械工業会調べ、金額ベース、前年同期比)は、4月3.2%減、5月は前年高水準の反動もあり、16.2%減と、やや弱い動きとなった。需要者別にみると、内需は、設備投資意欲の減退により主力の一般機械工業向け、自動車工業向けで大幅に落ち込んだことから、減少幅が拡大しており、足もとも弱い動きとなっている。外需は、北米向けや欧州向けを中心に引き続き好調に推移しており、3か月連続で内需を上回った。
  • 建設機械の出荷(日本建設機械工業会調べ、本体・金額ベース、前年同期比)は、4月21.1%減、5月29.4%減と、一段と弱い動きとなっている。需要者別にみると、内需は、建築需要の落ち込みを映じて建設用クレーンが半減するなど、14か月連続で前年割れとなり減少幅も拡大している。外需は、北米・中南米向けは好調なものの、欧州向けでは伸びが鈍化しており、主力のアジア向けは引き続き低迷していることから、2か月連続でマイナスとなっている。

5.産業用電気機械・電子部品

半導体集積回路の出荷額は、3月8.1%減、4月7.8%減と弱い動きが続いている。コンピュータ関連機器の生産額は、3月12.3%減、4月16.2%減と2か月連続の二ケタ減となり、足もとでも弱い動きとなっている。通信機器については、通信インフラの整備が一巡していることから、4月は24.6%減となり、弱い動きとなっている。

  • 半導体集積回路の出荷額(前年同月比)は、3月8.1%減、4月7.8%減と弱い動きが続き、減産の動きがみられる。DRAMの価格は、国内外のパソコン需要が低迷していること等から、供給過剰感が強まり、弱含みとなっている。在庫率はメモリーの在庫が増加していることから、4月は1.00と、上昇傾向にある。
  • コンピュータ関連機器の生産額(前年同月比)は、3月12.3%減、4月16.2%減、と2か月連続の二ケタ減となり、足もとでも弱い動きとなっている。内訳をみると、パソコンは、国内需要の低迷が続いていることから、3月2.7%減、4月25.1%減となり、在庫調整の動きもみられる。また、周辺機器は、パソコン販売の不振が続いていることから4月6.5%減、5月は10.1%減(速報)と弱い動きが続いている。
  • 通信機器の生産額(前年同月比)は、通信インフラの整備が一巡していることから、3月1.2%増となったものの、4月24.6%減となり、弱い動きとなっている。内訳をみると、携帯電話は4月26.9%増と堅調な動きであるものの、電子交換機は4月35.1%減、5月39.2%減(速報)と大幅な減少となっており、ISDN、デジタル専用線に関連する搬送装置も3月4.6%増になった後、4月35.1%減と大幅な減少となっている。

6.家庭電器

家電の国内出荷(台数ベース)は、5月以降持ち直しの動きがみられ、足もとでは総じて底固い荷動きとなっている。輸出は、総じて底固い推移となっている。家電の生産額は、足もとも総じて弱い動きとなっている。

  • 家電の国内出荷(台数ベース)は、4月は総じて弱い荷動きとなったものの、5月以降持ち直しの動きがみられ、足もとでは総じて底固い荷動きとなっている。
    AV家電は、4月は各品目とも弱い荷動きがみられたものの、5月以降持ち直しの動きがみられており、足もとは底固い荷動きとなっている。品目別では、カラーテレビは、6月は、サッカーW杯効果もあり大型を中心に増加に転じ、足もとも底固い荷動きとなっている。VTRは、5、6月とBS内蔵型に大幅な増加がみられ、足もとも総じて底固い荷動きとなっている。ビデオカメラは、6月は前年高水準の反動から前年を下回っているものの、基調としては底固い推移となっている。
    一方、白物家電は、このところ持ち直しの動きがみられ、足もとは天候要因も相まり、総じて底固い荷動きとなっている。品目別では、冷蔵庫は、大型に持ち直しの動きがみられ、このところ底固い荷動きとなっている。洗濯機は、このところ前年水準程度となっているものの、基調としてはやや弱い荷動きとなっている。電子レンジは、底固い荷動きとなっている。エアコンは、気温の上昇に伴い、足もと堅調な荷動きとなっている。
  • 家電の輸出(台数ベース)は、総じて底固い推移となっている。VTRは、米国、香港向けを中心に大幅な増加がみられるが、カラーテレビは、中国向けが大幅に減少となっていることから、4、5月と減少に転じている。CDプレーヤは、底固い推移となっている。
  • 家電の輸入(台数ベース)は、アセアンの減少から、カラーテレビ、VTRともに、4、5月と大幅な減少となった。
  • 家電の生産額(前年同月比)は、国内需要の不振から、白物家電を中心に弱い動きとなっており、3月13.7%減、4月13.6%減となった。足もとでは、国内向けは持ち直しの動きとなっているものの、輸出向けに弱い動きがみられ、総じて弱い動きとなっている。

7.自動車

自動車の国内販売は、5月7.4%減、6月8.8%減と低調な動きが続いている。輸入車販売も前年割れが続いている。完成車の輸出は底固い動きとなっている。以上から、生産は、4月14.1%減、5月19.7%減と弱い動きとなっている。

  • 自動車全体の国内販売(新車新規登録・届出台数、前年同月比)は、一部の新型車には動きが見られるものの、既存車種の落ち込みが大きいことから、低調な動きが続いており、5月7.4%減、6月8.8%減となり、15か月連続の前年割れとなった。車種別にみると、普通乗用車は前年を僅かに上回ったものの、小型乗用車は落ち込みが続いている。普通トラック、小型トラックは法人需要の減少により大幅な落ち込みが続いている。軽自動車は、規格改定を控えているため、新型車が少ないこともあり、落ち込みが続いている。
    輸入車販売では、国内市場の低調さを映じて、5月15.6%減、6月25.5%減と前年割れが続いている。
  • 自動車の輸出(完成車台数ベース、前年同月比)は、前年の水準が高いこともあり、4月4.9%増、5月3.0%減となっているものの、底固い動きとなっている。仕向地別にみると、北米向けで総じて底固い動きとなっているものの、一部に現地の在庫調整のため輸出を抑制する動きが見られる。欧州、中南米向けは堅調な動きとなっているものの、伸びは鈍化している。アジア地域向けは大幅減が続いている。
    自動車部品の輸出(日本自動車工業会々員11社分、ドルベース)は、部品の現地調達が進展していることから、海外生産用、OEM用とも減少傾向が続いており、4月24.2%減、5月18.9%減となっている。
  • 以上から、自動車の生産(完成車台数ベース、前年同月比)は、国内販売の長期低迷を映じて、4月14.1%減、5月19.7%減と弱い動きとなっている。車種別にみると、普通乗用車、小型乗用車は国内販売の低迷や前年高水準であった反動から、大幅な減少となっている。普通トラックはアジア向け輸出の大幅減により、小型トラックは国内法人需要の低迷により減少が続いている。軽自動車は規格改定を控えて減産幅が大きくなっている。

8.建設・住宅

建設業大手50社の受注額は、5か月連続で減少となった。民間建築着工は、大宗を占める居住用建築の減少幅が大きく、全体的に減少傾向となっている。公共工事着工は3か月連続で減少となっている。

住宅着工戸数は、持家、貸家、分譲ともに減少が続いている。

[建設]

  • 建設業大手50社の受注額(対前年同期比)は、4月15.1%減、5月27.5%減と5か月連続で減少が続いている。受注の約6割を占める民間工事をみると、5月28.4%減となり、3か月連続で減少となった。製造業向けは、主力の電気機械で増加となったものの、他のほとんどの業種で減少となり、全体では減少となった。ウェイトのより大きい非製造業向けは、サービス業が堅調に推移しているものの、前年高水準の反動で減少が続いている電気・ガス業をはじめとして、他の多くの業種でも減少となり、全体では弱い動きとなっている。受注の約3割を占める官公庁工事は、引き続き減少傾向が続いている。海外工事は主力の東南アジアにおいて、通貨危機の影響により受注元に慎重な動きがみられ、弱い動きが続いている。
    施工高は、3月10.6%増、4月11.8%減となった。また、未消化工事高は、17か月連続で減少となった。
    また、地方大手建設業者470社の受注は、民間、官公庁ともに減少となった。
  • 建築の着工状況(床面積)をみると、着工床面積の約9割を占める民間建築の減少が大きく響いており、全体的に減少傾向となっている。内訳をみると、民間建築の大宗を占める居住用建築では引き続き減少傾向となっており、非居住用建築についても用途別にばらつきがみられるものの、全体的に弱い動きとなっている。
  • 公共工事着工(総工事費評価額)は、4月4.9%減、5月31.6%減と3か月連続で減少となっている。
    民間土木工事着工は、4月3.5%増、5月31.5%減となった。

[住宅]

  • 住宅着工(戸数)は、低金利が続くなか、4月16.1%減、5月17.0%減と引き続き弱い動きが続いている。また、5月の年率換算値は125万戸となっている。利用関係別では、引き続き持家、貸家が大きく減少しているが、このところ分譲についても減少幅が大きくなってきている。
  • 戸建住宅産業の最近の動きについては、構造別の着工戸数は木造、非木造ともに弱い動きが続いている。建築単価については、1・当たりの工事費予定額で木造、鉄骨ともに、このところ緩やかな低下傾向にあり、1戸あたりの面積については各利用関係別で緩やかに縮小している。
  • マンション産業の最近の動きについては、着工は首都圏において再び増加となったものの、その他の地域で減少となり、全体では5月9.3%減と3か月連続で減少となった。新規契約率(首都圏)については、5月71.4%、6月73.2%と低い水準で推移しており、在庫水準も高いものとなっている。

9.運輸・旅行

国内貨物輸送は、ほとんどの輸送形態で減少傾向がみられ、一段と弱い動きとなっている。旅行関連は、海外旅行の不振により引き続き弱い動きとなっている。

  • 国内貨物輸送(前年同月比:トンベース)は、ほとんどの輸送形態で減少傾向がみられ、一段と弱い動きとなっている。
    内訳をみると、一般トラックは3月5.1%減、4月は9.4%減と大幅な減少となり、足もとでも弱い動きが続いている。特別積合せトラックは、宅配貨物は底固い動きであるものの、その他の荷動きが低調であることから、3月8.2%減、4月3.5%減(速報)と弱い動きが続いている。内航海運(貨物船)は3月9.8%減、4月14.3%減と弱い動きが続いている。JR貨物は、車扱いに加えてコンテナも減少傾向にあることから、4月10.1%減、5月17.4%減(速報)と減少幅が拡大している。航空貨物は、4月1.7%減、5月3.3%減(速報)、6月は前年並みとなった。
  • 国際貨物輸送は、これまで好調だった航空貨物の輸出は、貨物トン数(全国ベース)でみると、韓国、フィリピン等のアジア向けの荷動きが低調なことから、4月3.6%減、5月0.5%減とやや弱い動きとなっている。輸入は国内需要が弱いことから、4月7.1%減、5月7.2%減と弱い動きとなっている。外航海運の貨物トン数は、輸出は4月2.8%減、5月15.9%減となった。輸入は4月8.9%減、5月2.8%減となった。
  • 大手旅行会社(鉄道旅客協会加盟13社)の取扱額(前年同月比)をみると4月0.4%減、5月4.3%減となり、引き続き弱い動きとなっている。内訳をみると、国内旅行は、前年の反動から4月は4.9%増となったものの、個人客の動きが鈍いことから5月3.3%減となった。海外旅行は、韓国以外の全地域が不振であることから、4月9.2%減、5月5.8%減と引き続き弱い動きとなっている。主要旅客輸送機関の実績(人数ベース、前年同月比)をみると、JR旅客は、定期外は4月2.6%増となった。航空(3社)は国内線は4月3.7%増、5月は3.4%増(速報)となったものの、6月は前年割れとなっている。国際線は4月0.9%減、5月3.6%減(速報)とやや弱い動きとなっている。

10.情報サービス

情報サービス業売上高は、主力の受注ソフトウェアが好調であることから、4月7.4%増、5月14.2%増となり、足もとも好調に推移している。

  • 情報サービス業売上高(前年同月比)は、売上高の5割強を占める受注ソフトウェアが好調であることから、4月7.4%増、5月14.2%増となり、足もとも好調に推移している。
  • 業務種類別にみると、
    • 受注ソフトウェアは、官公庁、通信業、金融業向けソフトウェア開発の需要が引き続き好調に推移したことなどから、4月18.4%増、5月33.9%増となっている。
    • ソフトウェアプロダクトは、4月3.0%増、5月3.4%減となっているものの、足もと底固く推移している。
    • 計算事務等情報処理は、一部企業の業務撤退の特殊要因などから、4月1.3%減、5月1.8%減となっているものの、底固く推移している。
    • システム等管理運営受託は、通信業、製造業向けアウトソーシングの需要増により、4月14.6%増、5月23.4%増と好調に推移している。
  • 雇用状況は、若干緩和しているものの、システム・エンジニアを中心に広範囲に不足感が続いている。

11.リース

リース契約額は、設備投資意欲の減退などにより、主力の情報関連機器にも落ち込みがみられ、4月1.9%増、5月5.9%減となり、足もとも弱い動きとなっている。

  • リース契約額(リース事業協会調べ、前年同期比)は、設備投資意欲の減退などにより主力の情報関連機器が落ち込んだほか、商業・サービス業用機械、事務用機器が引き続き低迷していることなどから、4月1.9%増、5月5.9%減となり、足もとも弱い動きとなっている。
  • 物件別の最近の動向をみると、
    • 契約額の約4割を占める情報関連機器は、4月は12.0%増となったが、電算機ではこのところ設備の更新を抑制する動きが見られることなどにより、5月は6.7%減となり、足もとも弱い動きとなっている。
    • 商業・サービス業用機械・設備は、高額の設備投資を控える動きが続くなど、4月9.8%減、5月5.0%減とやや弱い動きが続いている。
    • 事務用機器は、情報関連機器への需要のシフトやコピー機の価格低下などの影響を受け、4月18.7%減、5月2.4%減と弱い動きが続いている。
    • 産業機械は、中小企業を中心とした設備投資意欲の減退などにより、4月0.3%増、5月4.0%減と、このところやや弱い動きとなっている。
    • 工作機械については、4月16.3%増のあと、5月は需要減に加え前年高水準の反動により11.3%減となった。
    • 土木建設機械は民間建築需要の落ち込みを映じて、4月1.6%減、5月15.7%減と、弱い動きが続いている。
    • 自動車は、4月11.0%減、5月22.4%減となった。
  • リース料率は、低い水準で推移している。

12.電力

電力需要は、4月3.3%増の後、5月は業務用電力が好調に推移したものの、民生用の電灯の伸びが鈍化したこと、また、大口電力が生産活動の停滞状況を映じて5か月連続で前年実績を下回ったこと等により、全体としては0.4%の微増に止まった。

  • 電力需要(9社計、前年同期(月)比)は、4月3.3%増の後、5月は業務用電力が好調であったが、大口電力が生産活動の停滞状況を映じて前年実績を下回ったこと等により、全体としては0.4%の微増に止まった。
    用途別にみると、家庭用電灯需要は5月は1.1%増と低めの伸びとなった。これは、4月が検針期間の関係で7.8%増と大きな伸びを示した反動であるが、基調的には住宅着工戸数の低迷による契約口数の伸び悩みを映じて鈍化しつつある。業務用電力は、4月中旬から下旬にかけての気温が前年に比べて高めに推移し、冷房用需要の増加が見られたことから、5月は6.7%増と、4月の6.8%増に続き高い伸びとなった。また小口電力のうち、低圧電力についても同じ理由で、冷房、冷蔵需要の増加が見られたことから高めの伸びとなった。なお、生産活動の停滞状況を映じて、小口電力のうち高圧電力Aは、9年11月以降前年実績を下回り低調に推移しており、大口電力は、5か月連続の前年実績割れとなっている。
    地域別にみると、北海道、北陸、近畿、中国が前年実績を下回っている。
  • 大口電力需要を自家発電を含め業種別にみると、電気機械を除く全業種で前年実績を下回っており、生産活動の停滞状況を裏付ける形になっている。鉄鋼は、粗鋼生産の減産などから6か月連続して前年実績を下回っている。化学は、内需の不振や輸出の減少に伴い、エチレンや汎用樹脂の生産が低迷していることから3か月連続の前年割れとなっている。パルプ・紙は、段ボール原紙などの板紙が生産減となったことから、5月はマイナスとなった。セメントは、公共工事向けの需要減少などから9年9月以来9か月連続の前年割れとなっているが、特に5月は17.9%減と大幅な落ち込みとなった。電気機械は、電子通信機器の生産が堅調に推移していること等により、安定した伸びを続けている。輸送用機械は、自動車の国内販売の不振などによる生産減により、5か月連続して前年実績を下回っている。非鉄は、アルミニューム圧延品の生産の伸び悩み等により、これまでは低い伸びとなっていたが、4月からは前年比マイナスとなった。
    地域別にみると、パルプ・紙で生産設備の増設があった四国を除き、5月は全ての地域で前年実績を下回っており、特に近畿は7か月連続の前年割れとなっている。

13.広告

広告の売上高は、4月1.3%増の後、5月は2.4%減となり、足もともやや弱い動きとなっている。広告量でみると、情報・通信は高い伸びが続いているが、自動車・関連品で弱い動きが続いている。

  • 主要10社の売上高(前年同月比)をみると、広告主の広告費抑制傾向がみられることから、4月1.3%増の後、5月は2.4%減となり、足もともやや弱い動きとなっている。
    媒体別では、ウエイトの大きいテレビは、機動的に運用できるスポットで完売状況は続いているが、4月以降やや料金の低下がみられる。雑誌は、創刊は活発なものの、女性誌等の広告は伸び悩んでいる。新聞は、このところ弱い動きとなっている。4媒体以外は、折込みチラシや屋外広告等の減少によりやや弱い動きとなっている。
  • 広告量(前年同月比)の動向をみると、テレビ番組はやや弱い動きが続いており、テレビスポットもこのところやや弱い動きとなっている。新聞は、カラー広告が堅調な動きを続けているが、案内広告は弱い動きとなっている。
    出稿業種別にみると、情報・通信は、パソコン関連や電話、衛星放送が好調で、テレビ、新聞で高い伸びが続いている。飲料・嗜好品は、ウイスキー、ビール、健康飲料等が好調で、テレビ番組、新聞で堅調な伸びとなっている。一方、自動車・関連品は、テレビスポット、新聞で弱い動きが続いている。不動産・住宅設備は新聞、テレビで弱い動きが続いている。