産業動向(平成10年5月)

平成10年5月


業種別動向の推移

業種別動向の推移イメージ


概況

我が国産業の最近の動向について次のような特徴がみられる。

(1)需要面をみると、個人消費関連では、乗用車販売、家電の国内出荷、旅行販売が弱い動きとなっている。

設備投資関連では、工作機械の受注は堅調に推移している。一方、産業機械の受注、建設機械の出荷には弱い動きが続いている。

建設関連では、住宅建設に弱い動きが続いている。

輸出では、家電、自動車、鉄鋼等が堅調に推移しているものの、石化製品はやや弱い動きとなっている。

(2)供給面をみると、生産では、コンピュータ関連機器、自動車はやや弱い動きとなった。また、鉄鋼、化学、家電、半導体は弱い動きとなった。

情報サービスは好調に推移し、広告は底固く推移している。一方、国内貨物は弱い動きが続いている。

輸入は、鉄鋼では減少傾向となった。

(3)このように最近の我が国産業をみると、一部に好調な業種もあるものの、弱い動きがみられる業種が増加している。


鉄鋼(普通鋼鋼材)の国内受注は、弱い動きとなっている。また、普通鋼の国内在庫は高水準が続いており、内需の低迷などから在庫調整ペースは鈍っている。粗鋼生産量は、2月7.4%減、3月8.6%減と弱い動きとなり、足もとも低水準の生産となっている。

化学(石油化学)の基礎原料であるエチレンの生産は、定修に加え減産の動きもあり、前年割れとなっている。汎用樹脂の生産、国内出荷は需要減を映じてこのところ弱い動きとなっており、海外出荷は東南アジア市況が低迷のなか、全体的にやや弱い動きとなっている。

紙・板紙の生産は、紙で一部に生産調整の動きがみられるものの総じて底固いほか、板紙で弱い動きとなっている。一方、在庫は、新設備の稼働や出荷の伸び悩みなどから、高い水準が続いている。このようななか、市況は紙、板紙ともにこのところ横ばい傾向となっている。

一般機械の生産は、2月7.0%減、3月3.4%減(速報)とやや弱い動きとなった。産業機械の受注は、内外需の不振により弱い動きが続いている。工作機械の受注は、堅調に推移している。建設機械の出荷については、内需の落ち込み等により弱い動きが続いている。

産業用電気機械・電子部品では、半導体集積回路の出荷額は、2月4.8%減、3月8.2%減(速報)と弱い動きとなり、足もとでは16MDRAMを中心に生産調整の動きがみられる。コンピュータ関連機器の生産額は、1月11.3%減、2月5.2%減とやや弱い動きとなっている。通信機器については、1月14.1%減の後、2月携帯電話の生産が増加したことから、8.5%増となった。

家電の国内出荷は、2、3月は、前年の高水準の反動も大きく、主要品目の殆どで大幅な減少となった。足もとでは、総じて弱い荷動きとなっている。輸出は、総じて堅調に推移している。家電の生産額は、国内需要の不振により、足もとも白物家電を中心に弱い動きとなっている。

自動車の国内販売は、3月20.3%減、4月5.9%減と低調な動きが続いている。輸入車販売も前年割れが続いている。完成車の輸出は堅調な動きとなっている。以上から、生産は、2月前年並、3月10.6%減とやや弱い動きとなっている。

建設業大手50社の受注額は、3か月連続で減少となった。民間建築着工は、大宗を占める居住用建築の減少幅が大きく、全体的に減少傾向となっている。公共工事着工は97年度累計で2.8%減となった。

住宅着工戸数は、持家、貸家の減少を中心として引き続き弱い動きとなっている。

運輸・旅行は、国内貨物輸送は、引き続き弱い動きとなっている。旅行関連は、海外旅行の落ち込みにより、弱い動きとなっている。

情報サービス業売上高は、主力の受注ソフトウェアが好調であることから、2月3.3%増、3月6.3%増と好調に推移している。

リース契約額は、2月は0.9%増、3月は前年の水準が高かったことにより17.2%減となったものの、主力の情報関連機器を中心に基調としては底固く推移している。

電力需要は、2月1.4%増の後、3月は民生用の電灯、業務用電力が堅調に推移したものの、大口電力が生産活動の停滞状況を映じて前年実績を下回ったこと等により、全体としては前年並みとになった。

広告の売上高は、2月2.9%増の後、3月は5.9%減となり、46か月振りに前年比減となったが、基調としては底固く推移している。広告量でみると、情報・通信は高い伸びが続いているが、自動車・関連品で弱い動きとなっている。


1.鉄鋼

普通鋼鋼材の国内受注は、弱い動きとなっている。また、普通鋼の国内在庫は高水準が続いており、内需の低迷などから在庫調整ペースは鈍っている。粗鋼生産量は、2月7.4%減、3月8.6%減と弱い動きとなり、足もとも低水準の生産となっている。

  • 普通鋼鋼材の国内出荷(前年同月比)は、2月13.5%減、3月12.6%減となり、弱い動きが続いている。
    これを受注面からみると、普通鋼鋼材の国内受注は、1月12.3%減、2月15.0%減と二ケタ減が続いており、弱い動きとなっている。
    用途別にみると、建設向けは、土木用、建築用ともに弱い動きが続いた結果、1月11.2%減、2月11.8%減となった。
    製造業向けは、1月9.6%減、2月13.1%減となり、弱い動きが続いている。内訳別では、ウェイトの高い自動車用は、乗用車生産台数の減少を背景に大幅減となるなど弱い動きがみられる。また、造船用は引き続き堅調な動きとなっているものの、電気機械用や産業機械用など殆どの用途では前年を大きく下回る動きとなっている。
    こうした状況のなか、国内在庫は、2月595万トン(前年同月比16.3%増)の後、3月は563万トン(同9.3%増)となったものの、依然としてその水準は高く、国内需要の低迷などから在庫調整ペースは鈍っている。
  • 鉄鋼の輸出入(全鉄鋼ベース、前年同月比)をみると、輸出数量はメーカー各社の積極的な輸出姿勢を映じて2月12.8%増、3月18.1%増となった。
    これを仕向け先別にみると、主要仕向先であるアセアン、韓国向けは通貨危機の影響などから大幅減となっている。一方で、増加が続く米国、EU向けは、2、3月ともに大幅な増加となった。
    輸出船積平均単価は、低付加価値製品のウェイトが高まっていることや国際市況の軟化により、円、ドルベースともに総じて低下傾向となっている。
    輸入数量は、国内の需給緩和を映じた岸壁在庫の積み上がり等から2月16.2%減、3月12.4%減となった。こうしたなか、普通鋼鋼材の輸入先を国別にみると、韓国からの入着が1月以降二ケタ増となっている。
  • 粗鋼の生産は、2月767万トン(前年同月比7.4%減)、3月814万トン(同8.6%減)と弱い動きとなっており、足もとでも低水準での生産となっている。
  • 鋼材の市況をみると、条鋼類では、H形鋼は在庫調整の進展により一部で下げ止まり感が窺えるものの、異形棒鋼は弱い動きとなっている。鋼板類では、需要の落ち込みが続いていることなどから、冷延薄板、厚鋼板ともに総じて弱含んでいる。

2.化学(石油化学)

基礎原料であるエチレンの生産は、定修に加え減産の動きもあり、前年割れとなっている。汎用樹脂の生産、国内出荷は需要減を映じてこのところ弱い動きとなっており、海外出荷は東南アジア市況が低迷のなか、全体的にやや弱い動きとなっている。

  • 石油化学製品の基礎原料であるエチレンの生産は、3月558万トン(前年同月比11.6%減)、4月531万トン(速報、前年同月比11.3%減)と、定修に加え減産の動きもあり、前年割れとなっている。汎用樹脂の生産については、内外の需要減を映じて減産の動きがあり、全体的に弱い動きとなっている。
    在庫水準については、全体的にやや過剰感がみられる。
  • 汎用樹脂の国内出荷については、需要減を映じてこのところ弱い動きとなっている。主要樹脂別にみると、低密度ポリエチレンは主力のフィルム向けが減少となり、全体でも減少となった。高密度ポリエチレンは主力の射出向けで増加となったものの、全体では減少となった。塩化ビニルについては、減少傾向が続いている住宅着工等の動きを映じて弱い動きが続いている。汎用樹脂最大の需要を有するポリプロピレンは、自動車向け等の需要減を映じて弱い動きがみられる。ポリスチレンは電気工業向け、包装用向けが増加となったが、全体では減少となった。
  • 汎用樹脂の輸出は、アジアの通貨危機の影響により全体的にやや弱い動きとなっているが、塩化ビニルについては、旺盛な中国需要を背景に引き続き増加傾向となっている。
    汎用樹脂の東南アジア市況については、通貨危機等を背景に全体的に低迷している。

3.紙・パルプ

紙・板紙の生産は、紙で一部に生産調整の動きがみられるものの総じて底固いほか、板紙で弱い動きとなっている。一方、在庫は、新設備の稼働や出荷の伸び悩みなどから、高い水準が続いている。このようななか、市況は紙、板紙ともにこのところ横ばい傾向となっている。

  • 紙の生産(前年同月比)は、2月1.0%増、3月0.9%増と総じて底固い動きとなったものの、足もとでは一部に生産調整の動きがみられる。出荷は、2月0.2%減となった後、3月前年並となり伸び悩みがみられる。一方、在庫は、新設備の稼働や出荷の伸び悩み等から、依然高い水準が続いている。
    紙の生産を品目別にみると、新聞巻取紙は、総じて底固い動きとなっている。
    印刷・情報用紙では、非塗工類は、上級紙での増加が続いているほか、微塗工紙でチラシ向け等が底固い動きとなっていることから、総じて堅調な動きとなっている。塗工紙は、販促用のチラシ、カタログ等の商業印刷向けで、軽量コート紙を中心に総じて堅調に推移している。情報用紙は、複写原紙でこのところ弱い動きがみられるものの、コピー用等のPPC用紙で堅調な推移となっていることから、総じて底固い動きとなっている。
    衛生用紙は、市況対策などから生産調整の動きがみられる。
  • 板紙の生産(前年同月比)は、段ボール需要の減少などを背景に2月2.8%減、3月6.0%減と弱い動きとなっている。出荷は、段ボール原紙で家電やパソコンなど電気関連向けに減少が続き、2月4.7%減、3月6.1%減と弱い動きとなった。こうした状況のなか、在庫は、2月21.4%増、3月22.7%増と大幅増が続いた。
    板紙の生産を品目別にみると、段ボール原紙は、需給緩和を映じた在庫の積み上がり等から弱い動きとなっている。
  • パルプの生産(前年同月比)は、このところの製品需要の伸びの鈍化を映じて2月1.4%増となった後、3月0.1%減となった。
  • 紙、板紙の輸出入(数量ベース、前年同月比)をみると、輸出は、主要仕向先であるアジア向けでコート紙を主体とした増加が続いた結果、2月16.1%増、3月10.3%増となった。
    一方、輸入は、2月23.3%減の後、3月11.4%増となったものの総じて落ち着いた動きとなった。
  • 紙の市況をみると、紙、板紙ともにこのところ横ばい傾向となっている。

4.一般機械

一般機械の生産は、2月7.0%減、3月3.4%減(速報)とやや弱い動きとなった。産業機械の受注は、内外需の不振により弱い動きが続いている。工作機械の受注は、堅調に推移している。建設機械の出荷については、内需の落ち込み等により弱い動きが続いている。

  • 一般機械の生産(季調済前月比)は、ボイラ・原動機や特殊産業機械などの減少により2月7.0%減、3月3.4%減(速報)とやや弱い動きとなった。増加した機種は、16機種中、2月には5機種、3月には3機種(速報)となった。
    機械受注(原動機・産業機械・工作機械のみ、金額ベース、前年同期比)をみると、2月28.9%減、3月8.4%減となっている。
    輸出入の動向(事務用機器を除く・円ベース、前年同期比)をみると、輸出は2月4.3%減、3月2.2%減となった。輸入は2月2.6%増、3月7.9%増となった。
  • 産業機械の受注(日本産業機械工業会調べ、金額ベース、前年同期比)は、2月35.8%減、3月10.9%減と弱い動きとなった。需要者別にみると、官公需が堅調であるほか、3月は製造業において鉄鋼業向けでIPP(独立系発電事業者)関連が大きく伸びたことにより、内需は8か月振りにプラスとなったものの、基調としては弱い動きとなっている。外需は、3月は中東向けやアフリカ向けのプラントの受注があったものの、昨年の水準が高かったことに加え主力のアジア向けが引き続き低迷していることから減少が続いている。
  • 工作機械の受注(日本工作機械工業会調べ、金額ベース、前年同期比)は、2月2.6%増のあと、3月1.5%減となり、46か月振りにマイナスに転じたものの、堅調に推移している。需要者別にみると、内需は、自動車工業向けは底固いものの、特殊要因や消費税率引き上げ前の駆け込み需要の影響で前年の水準が高かったことなどにより、2か月連続で前年割れとなった。外需は、北米向けや欧州向けを中心に好調に推移しており、15か月振りで内需を上回った。
  • 建設機械の出荷(日本建設機械工業会調べ、本体・金額ベース、前年同期比)は、2月21.3%減、3月21.2%減と、弱い動きが続いている。需要者別にみると、内需は、公共工事需要の減少等により12か月連続で前年割れとなった。外需については、アジア向けは引き続き低迷しているが、北米や欧州向けを始め他地域は総じて好調であるため、3か月連続でプラスとなっている。

5.産業用電気機械・電子部品

半導体集積回路の出荷額は、2月4.8%減、3月8.2%減(速報)と弱い動きとなり、足もとでは16MDRAMを中心に減産の動きもみられる。コンピュータ関連機器の生産額は、1月11.3%減、2月5.2%減とやや弱い動きとなっている。通信機器については、1月14.1%減の後、2月は携帯電話の生産が増加したことから、8.5%増となった。

  • 半導体集積回路の出荷額(前年同月比)は、2月4.8%減、3月8.2%減(速報)と弱い動きが続き、足もとでは16MDRAMを中心に減産の動きがみられる。DRAMの価格は、国内外のパソコン需要が低迷していること等から、供給過剰感が強まり、弱含みとなっている。在庫率はメモリーの在庫が増加していることから、1月0.86、2月0.90と上昇傾向にある。
  • コンピュータ関連機器の生産額(前年同月比)は、1月11.3%減、2月5.2%減とやや弱い動きとなっている。内訳をみると、パソコンは、前年の水準が高いことから、2月2.7%減、3月25.1%減(速報)となった。また、周辺機器は、パソコンの販売が不振なことから、2月2.4%減、3月は6.0%減(速報)と弱い動きが続いている。
  • 通信機器の生産額(前年同月比)は、1月14.1%減、2月は携帯電話が増加したことから、8.5%増となった。また、電子交換機は2月31.2%減、3月25.4%減(速報)、ISDN、デジタル専用線に関連する搬送装置も1月19.4%減、2月18.7%減と大幅な前年割れとなっている。

6.家庭電器

家電の国内出荷(台数ベース)は、2、3月は、前年の高水準の反動も大きく、主要品目の殆どで大幅な減少となった。足もとでは、総じて弱い荷動きとなっている。輸出は、総じて堅調に推移している。家電の生産額は、国内需要の不振により、足もとも白物家電を中心に弱い動きとなっている。

  • 家電の国内出荷(台数ベース)は、2、3月は前年の高水準の反動も大きく、主要品目の殆どで大幅な減少となった。足もとでは、総じて弱い荷動きとなっている。
    AV家電は、2、3月は各品目とも弱い荷動きとなったものの、足もとでは、総じてやや弱い荷動きとなっている。品目別では、カラーテレビは、2、3月よりは減少幅が縮小しているものの、弱い荷動きとなっている。VTRは、総じてやや弱い荷動きとなっている。ビデオカメラは、デジタルビデオカメラの新製品投入により底固い荷動きとなっている。
    一方、白物家電は、2、3月は、各品目とも荷動きが大幅に減少したものの、足もとでは、総じて弱い荷動きとなっている。品目別では、冷蔵庫は、やや弱い荷動きながらも水準的には回復の動きがみられる。洗濯機は、弱い荷動きとなっている。電子レンジは、底固い荷動きとなっている。エアコンは、減少幅の縮小はみられるものの、引き続き弱い荷動きとなっている。
  • 家電の輸出(台数ベース)は、総じて堅調に推移している。特に、カラーテレビは香港向けを中心に、また、VTRは、米国、香港向けを中心に、ともに大幅な増加がみられている。一方、CDプレーヤは、このところ大幅な増加を示していたが、3月は前年を下回った。
  • 家電の輸入(台数ベース)は、カラーテレビは、このところ増加が続いていたが、2、3月と減少に転じた。VTRも、3月は減少に転じた。
  • 家電の生産額(前年同月比)は、国内需要の不振から、1月13.8%減、2月14.1%減となった。足もとも、白物家電を中心に弱い動きとなっている。

7.自動車

自動車の国内販売は、3月20.3%減、4月5.9%減と低調な動きが続いている。輸入車販売も前年割れが続いている。完成車の輸出は堅調な動きとなっている。以上から、生産は、2月前年並、3月10.6%減とやや弱い動きとなっている。

  • 自動車全体の国内販売(新車新規登録・届出台数、前年同月比)は、一部の新型車には動きが見られるものの、既存車種の落ち込みが大きいことから、低調な動きが続いており、3月20.3%減、4月5.9%減となり、13か月連続の前年割れとなった。車種別にみると、普通乗用車、軽乗用車で4月は前年を上回ったが、トラックは大幅な落ち込みが続いている。
    輸入車販売では、一部欧州車に動きがみられるものの、国内市場の低調さを映じて、3月34.6%減、4月3.8%減と前年割れが続いている。
  • 自動車の輸出(完成車台数ベース、前年同月比)は、円安傾向に下支えされて受注が好調であることなどから、2月13.9%増、3月13.0%増と堅調な動きとなっている。仕向地別にみると、北米、中南米、欧州向けなど多くの地域で増加傾向となっているが、アジア地域向けは大幅減が続いている。
    自動車部品の輸出(日本自動車工業会々員11社分、ドルベース)は、部品の現地調達が進展していることから、海外生産用、OEM用とも減少傾向が続いており、2月22.2%減、3月24.0%減となっている。
  • 以上から、自動車の生産(完成車台数ベース、前年同月比)は、国内販売の長期低迷を映じて、2月前年並、3月10.6%減とやや弱い動きとなっている。車種別にみると、小型車、軽自動車は減少傾向が続いており、輸出向けに好調だった普通トラックもアジア向けの輸出が大幅減となっていることから減少傾向になっている。

8.建設・住宅

建設業大手50社の受注額は、3か月連続で減少となった。民間建築着工は、大宗を占める居住用建築の減少幅が大きく、全体的に減少傾向となっている。公共工事着工は97年度累計で2.8%減となった。

住宅着工戸数は、持家、貸家の減少を中心として引き続き弱い動きとなっている。

[建設]

  • 建設業大手50社の受注額(対前年同期比)は、2月0.6%減、3月4.7%減と3カ月連続で減少となった。受注の約6割を占める民間工事をみると、3月1.0%減となり、一進一退の動きとなっている。製造業向けは、業種によりばらつきがみられるものの、化学、輸送機械を中心に、全体では底固い動きとなっている。ウェイトのより大きい非製造業向けは、不動産業、サービス業で堅調に推移しているものの、電気・ガス業等については前年高水準の反動で減少が続いており、全体ではやや弱い動きとなっている。受注の約3割を占める官公庁工事は、引き続き減少傾向が続いている。海外工事は主力の東南アジアにおいて、通貨危機の影響により受注元に慎重な動きがみられ、弱い動きが続いている。
    施工高は、1月13.7%減、2月7.6%減となった。また、未消化工事高は、15か月連続で減少となった。
    また、地方大手建設業者470社の受注は、官公庁工事が寄与し、2か月連続で増加となった。
  • 建築の着工状況(床面積)をみると、着工床面積の約9割を占める民間建築の減少が大きく響いており、全体的に減少傾向となっている。内訳をみると、民間建築の大宗を占める居住用建築では引き続き減少傾向となっている。また、非居住用建築についても全体的にやや弱い動きがみられる。
  • 公共工事着工(総工事費評価額)は、2月11.8%増、3月1.8%減となった結果、97年度累計で2.8%減となった。
    民間土木工事着工は、2月15.2%増、3月48.2%減となった。

[住宅]

  • 住宅着工(戸数)は、低金利が続くなか、2月13.6%減、3月11.9%減と引き続き弱い動きとなっている。また、3月の年率換算値では131万戸となっている。利用関係別では、引き続き持家、貸家の減少幅が大きく、持家は13か月連続、貸家も16か月連続の減少となっている。分譲についても3月はマンション、一戸建てともに減少となり、全体で2ケタ減となった。
  • 戸建住宅産業の最近の動きについては、構造別の着工戸数は木造、非木造ともに弱い動きが続いている。建築単価については、1m2当たりの工事費予定額で木造、鉄骨ともにほぼ横ばいで推移しているが、1戸あたりの面積については全体で緩やかに縮小している。
  • マンション産業の最近の動きについては、着工は首都圏において再び増加となったものの、その他の地域で減少となり、全体では3月7.1%減と8か月振りに減少となった。新規契約率(首都圏)については、3月71.0%、4月69.3%と低い水準で推移しており、在庫水準も高いものとなっている。

9.運輸・旅行

国内貨物輸送は、引き続き弱い動きとなっている。旅行関連は、海外旅行の落ち込みにより、弱い動きとなっている。

  • 国内貨物輸送(前年同月比:トンベース)は、引き続き弱い動きとなっている。
    内訳をみると、一般トラックは1月7.0%減、2月5.5%減、特別積合せトラックは、1月3.0%減、2月7.4%減(速報)と弱い動きが続いている。なお、宅配貨物取扱個数は1月3.4%増、2月1.8%増(速報)と一部のサービスが好調なものの、全体としては伸びの鈍化がみられる。内航海運(貨物船)は1月5.8%減、2月3.9%減と弱い動きが続いている。JR貨物は、車扱いの減少に加え、コンテナの建設残土輸送が一巡したことから前年割れしており、2月2.6%減、3月7.2%減(速報)と弱い動きが続いている。航空貨物は前年の水準が高かったこともあり、2月2.6%減、3月6.6%減(速報)と前年割れが続いている。
  • 国際貨物輸送は、航空貨物の輸出は、貨物トン数(全国ベース)でみると、2月10.2%増、3月2.4%増と堅調なものの、伸びが鈍化している。内訳をみると、欧州向けのコンピュータ関連、半導体関連等が堅調なものの、韓国、フィリピン等のアジア向けの荷動きが低調となっている。輸入は国内需要が弱いことから、2月0.1%増、3月4.2%減と弱い動きとなっている。外航海運の貨物トン数は、輸出は2月2.2%減、3月3.8%減となった。輸入は2月3.9%減、3月4.3%減となった。
  • 大手旅行会社(鉄道旅客協会加盟13社)の取扱額(前年同月比)をみると2月4.2%減、3月7.1%減となり、弱い動きとなっている。内訳をみると、国内旅行は、2月2.6%減、3月2.8%減であったのに対し、海外旅行は、2月9.7%減、3月14.8%減と弱い動きとなり、GWについても一部の低価格商品を除き、前年割れとなった。主要旅客輸送機関の実績(人数ベース、前年同月比)をみると、JR旅客は、定期外は1月0.5%減、2月1.3%減となった。航空(3社)は国内線は2月1.6%増、3月は0.6%減(速報)、国際線は2月2.2%減、3月0.5%減(速報)とやや弱い動きとなっている。

10.情報サービス

情報サービス業売上高は、主力の受注ソフトウェアが好調であることから、2月3.3%増、3月6.3%増と好調に推移している。

  • 情報サービス業売上高(前年同月比)は、売上高の5割強を占める受注ソフトウェアが好調であることから、2月3.3%増、3月6.3%増と好調に推移している。
  • 業務種類別にみると、
    受注ソフトウェアは、官公庁、通信業、金融業向けソフトウェア開発の需要が引き続き好調に推移したことなどから2月12.7%増、3月12.4%増となっている。
    ソフトウェアプロダクトは、2月に前年が商社向け大口需要により水準が高かったことなどから13.6%減の後、3月1.1%減となった。
    計算事務等情報処理は、一部企業の業務撤退の特殊要因などから2月0.2%増、3月1.1%減となっている。
    システム等管理運営受託は、通信業、製造業向けアウトソーシングの需要増により、2月14.4%増、3月13.6%増と好調に推移している。
  • 雇用状況は、若干緩和しているものの、システム・エンジニアを中心に広範囲に不足感が続いている。

11.リース

リース契約額は、2月は0.9%増、3月は前年の水準が高かったことにより17.2%減となったものの、主力の情報関連機器を中心に基調としては底固く推移している。

  • リース契約額(リース事業協会調べ、前年同期比)は、商業・サービス業用機械・設備などでは需要が低迷しているものの、主力の情報関連機器では通信機器が堅調であるなど基調としては底固く、2月は0.9%増、3月は前年の水準が高かったことの反動などにより17.2%減となった。
  • 物件別の最近の動向をみると、
    契約額の約4割を占める情報関連機器は、通信機器は堅調なものの、前年の水準が高かったことにより、2月0.5%減、3月18.9%減となった。
    商業・サービス業用機械・設備は、引き続き高額の設備投資を控える動きがあるなど、2月4.6%減、3月26.6%減と前年割れが続いている。
    事務用機器は、情報関連機器への需要のシフトやコピー機の価格低下などの影響を受け、2月18.9%減、3月27.3%減と減少が続いている。
    産業機械は、2月28.4%増と4か月連続で2ケタ増が続いたあと、3月は前年の水準が高かったことにより、16.2%減となった。
    工作機械についても、2月18.9%増のあと、3月は前年の水準が高かったことにより、20.6%減となり、6か月振りにマイナスに転じた。
    土木建設機械は民間建築需要の減少などにより、2月6.0%減、3月14.5%減と、このところ弱い動きとなっている。
    自動車は、前年水準が高かったことなどにより、2月9.4%減、3月15.1%減となった。
  • リース料率は、低い水準で推移しているが、一部の企業で引き上げる動きも見られる。

12.電力

電力需要は、2月1.4%増の後、3月は民生用の電灯、業務用電力が堅調に推移したものの、大口電力が生産活動の停滞状況を映じて前年実績を下回ったこと等により、全体としては前年並となった。

  • 電力需要(9社計、前年同期(月)比)は、2月1.4%増の後、3月は民生用が堅調であったが、大口電力が生産活動の停滞状況を映じて前年実績を下回ったこと等により、全体としては前年並となった。
    用途別にみると、家庭用電灯需要は、契約口数が安定した伸びとなっており、堅調に推移している。業務用電力は、契約電力がビル需要の回復や郊外型大型店の増加などにより安定した伸びとなっているのを反映して堅調な伸びとなっている。小口電力のうち、低圧電力は、気温が高めに推移したことや生産活動の停滞状況の影響もあり11月以降前年実績を下回っている。高圧電力Aは、生産活動の停滞状況を映じて低調に推移している。大口電力は、生産活動の停滞状況を映じて3か月連続して前年実績を下回った。
    地域別にみると、東海、北陸、近畿、中国が前年実績を下回っている。
  • 大口電力需要を自家発電を含め業種別にみると、鉄鋼は、粗鋼生産の減産などから5か月連続して前年実績を下回っている。化学は、主要樹脂の生産の伸び悩み等により、3月は前年実績を下回っている。パルプ・紙は、一部生産調整の動きもあり、伸び率が鈍化している。電気機械は、半導体や電子通信機器の生産が堅調に推移しているのを映じて安定した伸び率となっている。輸送用機械は、自動車の国内販売の不振などによる生産減により3か月連続して前年実績を下回っている。非鉄は、半導体関連需要の生産は堅調であるが、アルミニューム圧延品の生産の伸び悩み等により、伸び率が鈍化している。セメントは、公共工事向けの需要減少などから前年実績を大きく下回っている。
    地域別にみると、非鉄やパルプ・紙で生産設備の増設があった東北を除き、3月はその他全ての地域で前年実績を下回っており、特に近畿は5か月連続して前年実績を下回っている。

13.広告

広告の売上高は、2月2.9%増の後、3月は5.9%減となり、46か月振りに前年比減となったが、基調としては底固く推移している。広告量でみると、情報・通信は高い伸びが続いているが、自動車・関連品で弱い動きとなっている。

  • 主要10社の売上高(前年同月比)をみると、2月2.9%増の後、3月は前年が高水準であったこともあり5.9%減(8社ベース)となり、46か月振りに前年比減となったが、基調としては底固く推移している。
    媒体別では、ウエイトの大きいテレビは、機動的に運用できるスポットで完売状況が続いているが、やや伸び悩みの傾向にある。雑誌は、女性誌や地域情報誌で堅調な伸びが続いている。新聞は、このところ弱い動きとなっている。4媒体以外は、屋外広告などの不振により3月は減少した。
  • 広告量(前年同月比)の動向をみると、テレビ番組は概ね前年割れが続いており、テレビスポットもやや弱い動きとなっている。新聞は、カラー広告が底固い動きを続けているが、案内広告は弱い動きを続けている。
    出稿業種別にみると、情報・通信は、パソコン関連や電話、衛星放送が好調で、テレビ、新聞で高い伸びが続いている。飲料・嗜好品は、ウイスキー、ビール、健康飲料などが好調で、テレビスポット、新聞で高い伸びとなっている。一方、自動車・関連品は、テレビ番組で高い伸びとなっているものの、テレビスポット、新聞で弱い動きが続いている。不動産・住宅設備は新聞、テレビで弱い動きが続いている。