「日本経済2016-2017」刊行にあたって

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内閣府経済財政分析担当では、毎年「日本経済」シリーズを公表し、「年次経済財政報告」後の日本経済の現状に関する分析を提供しています。今回の報告書では、雇用・所得環境の改善や海外経済の緩やかな回復を背景に、好循環が拡大しつつある日本経済の動向を概観するとともに、第4次産業革命と呼ばれる技術革新が進みつつある中で、日本経済が新たな産業革命の動きをいち早く取り込み、経済成長や国民の豊かさにつなげるための課題について分析しています。

第1章では、日本経済が緩やかな回復基調にある背景について概観するとともに、個人消費や設備投資など需要項目の動向、物価の現状、労働市場における人口動態の影響等について分析しています。具体的には、個人消費については、可処分所得の伸びが緩やかであったことや若年層の消費性向の低下等を背景に、力強さに欠ける動きが続いてきたものの、2016年後半には持ち直しに向かいつつあること、民間設備投資については、企業マインドの慎重さが抑制的に働いているものの、海外移転などの構造的な下押し要因は弱まっていること等について分析しています。また、消費者物価については、2016年前半の原油価格下落や為替レートの円高方向への動き等によって上昇率の鈍化がみられる中で、今後のデフレ脱却のためには賃金上昇の継続が鍵となることについて論じています。過去と比べて改善が進む労働市場については、生産年齢人口減少の影響は、女性や高齢者の労働参加率上昇によって緩和されている一方、短時間労働者の増加もあって、マンアワーでみた総労働供給や労働生産の伸びは緩やかなものにとどまっており、労働供給制約への対応策の必要性を論じています。

第2章では、第4次産業革命と呼ばれる技術革新が進展している状況について概観するとともに、日本経済が新たな産業革命の動きに適応していくための課題について分析しています。具体的には、第4次産業革命がもたらす経済的なインパクト及び雇用や働き方などへの影響の可能性について論じるとともに、日本経済が新たな技術革新に適応するための課題として、R&Dの効率性やイノベーションの国際的な競争力、ICTへの適応、専門人材の育成等について論じています。

本報告書の分析が日本経済の現状に対する認識を深め、その先行きを考える上での一助となれば幸いです。

平成29年1月

内閣府政策統括官
(経済財政分析担当)
井野 靖久

※本報告の本文は、原則として2016年12月14日までに入手したデータに基づいている。

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