平成13年度の経済見通しと経済運営の基本的態度(平成13年1月31日閣議決定)
平成13年1月31日
閣議決定
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1.平成12年度の我が国経済と国際経済情勢
(1)これまでの経済運営
我が国経済は、平成10年には、「不況の環」とも呼ぶべき厳しい状況にあったが、同年11月に決定した「緊急経済対策」により、デフレスパイラルに陥りかねない危機的状況からの脱却に成功した。その後、平成11年11月に決定した「経済新生対策」の推進を通じ、景気回復の一段の推進と経済社会構造の改革の実現に努めてきた。
こうした政策の効果もあって、経済は企業部門を中心に緩やかな改善を続けている。しかしながら、依然として雇用情勢は厳しく、個人消費もおおむね横ばいの状態にあるため、昨年10月、急激な公需の落ち込みを回避し、我が国経済を自律的回復軌道に確実に乗せるとともに、21世紀にふさわしい経済社会を構築するため、「日本新生のための新発展政策」を決定し、現在、これを強力に推進しているところである。
(2)国際経済情勢
我が国をとりまく世界経済情勢をみると、欧米・アジアでは景気は拡大し、総じて良好な状態がなお続いているが、拡大テンポが低下している米国経済の今後の動向、原油価格の推移等に留意する必要がある。
(3)平成12年度の我が国経済
最近の我が国経済は、家計部門の改善が遅れるなど、厳しい状況をなお脱していないものの、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きが継続し、全体としては、緩やかな改善が続いている。景気への影響を考える上で、改善が遅れている雇用情勢、高水準な倒産件数・負債金額、昨年春以降下落基調で推移している株価、地域により差異はあるもののバブル崩壊後下落してきた地価、改善がみられるものの依然存在する過剰設備・過剰債務等の動向にも留意する必要がある。今後、年度末に向けて所得の増加に伴う個人消費の緩やかな改善、平成12年度補正予算の効果発現による需要の下支え等から自律的回復に向けた動きが広がっていくと見込まれる。
こうした状況の下で、平成12年度の国内総生産の実質成長率は1.2%程度になると見込まれる。
2.平成13年度の経済運営の基本的態度
以上のような情勢を踏まえ、平成13年度においては、次の3項目を重点として、適切かつ機動的な経済運営を行う。
(1)自律的な景気回復の実現
経済を自律的回復軌道に確実に乗せるため、「日本新生のための新発展政策」の着実かつ円滑な実施を図るとともに、平成13年度予算においては、公共事業は前年度当初予算と同程度の規模を確保し、地方財政にも配慮して、その適切な執行を図る。また、税制面においては、新たな住宅ローン税額控除制度を創設するとともに中小企業投資促進税制を継続して実施するなど民間投資の促進に資する措置等を講ずる。
また、日本銀行に対して、経済の自律的回復を確実なものとするため、金融・為替市場の動向も注視しつつ、豊富で弾力的な資金供給を行うなど、引き続き適切かつ機動的に金融政策を運営するよう要請する。
(2)時代を先取りした経済構造改革の推進
時代を先取りした経済構造改革を推進し、IT革命の実現等による中長期的な経済成長力の向上を目指す。
1) IT革命の飛躍的推進
超高速ネットワークインフラ整備及び競争政策、電子商取引ルールと新たな環境整備、電子政府の実現、人材の育成の強化、の4つを重点分野として集中的に取り組む。
2) 環境問題への対応
循環型社会形成の推進、地球温暖化対策、有害化学物質対策等に取り組むとともに、事業活動及び製品等のグリーン化を促進する。
3) 少子高齢化対策
政府・与党社会保障改革協議会等において社会保障制度について総合的・包括的な改革に取り組むとともに、公共空間等のバリアフリー化、高齢者雇用の促進や仕事と子育ての両立のための就労環境整備、保育サービスの充実等を図る。
4) 都市基盤、生活基盤の整備
渋滞解消、快適かつ活力ある都市空間の創出を図るとともに、生活基盤充実・防災対策等に取り組む。
5) 産業新生のための事業環境整備
企業法制等の基本法制の整備、会社分割・合併等の企業組織再編成に係る税制の整備、雇用・能力開発システムの整備、創造的技術革新のための基盤整備、中小企業対策、金融システムの安定化・金融市場の活性化、債権流動化の促進等に取り組む。
(3)世界経済の持続的発展への貢献
多角的貿易体制の維持強化を図るため世界貿易機関(WTO)新ラウンドの平成13年内の立ち上げ、アジア太平洋経済協力(APEC)、ASEAN+日中韓等のアジア太平洋地域における重層的な地域協力の枠組みの構築、国際金融システムの強化、アジア諸国等に対する情報化支援等に努めることにより世界経済の持続的発展に貢献する。
今後、本年1月6日に発足した経済財政諮問会議での調査審議を踏まえ、経済運営を行うこととする。
3.平成13年度の経済見通し
平成13年度には、緩やかな雇用・所得環境の改善と企業の増益基調の継続を背景として、個人消費、設備投資等の民需を中心とした経済成長を続ける姿が定着し、自律的回復軌道をたどる。
平成13年度の我が国経済は、国内総生産の実質成長率が1.7%程度となるなど、別添の主要経済指標のとおりと見通される。
(1)実質国内総支出
1) 個人消費
個人消費は、雇用情勢が改善し、雇用者報酬が引き続き増加することなどから、緩やかに増加する(対前年度比1.5%程度の増)。
2) 民間設備投資
設備投資は、企業収益の改善等により引き続き増加する(対前年度比3.8%程度の増)。
3) 民間住宅投資
住宅投資は、前年度をやや下回る(対前年度比1.9%程度の減)。
4) 政府支出
政府支出は、公的固定資本形成は減少するものの、医療保険給付の増加等により前年度をやや上回る(対前年度比1.0%程度の増)。
5) 外需
外需は、緩やかな世界経済の減速等により財貨・サービスの輸出(実質)の伸びが鈍化し、前年度をやや下回る(実質成長率に対する外需の寄与度0.0%程度のマイナス)。
(2)労働・雇用
雇用情勢については、経済の回復にともない、完全失業率は前年度に比べやや低下する(4.5%程度)。
(3)鉱工業生産
鉱工業生産は、伸びの鈍化はあるものの、民需の回復により引き続き増加する(対前年度比2.4%程度の増)。
(4)物価
国内卸売物価は、電気機器等の趨勢的下落によりやや下落(対前年度比0.4%程度の下落)し、消費者物価は、緩やかな消費の増加の中で下落幅を縮小する(対前年度比0.2%程度の下落)。
(5)国際収支
貿易・サービス収支及び経常収支の黒字幅はやや縮小する(経常収支対GDP比2.3%程度)。
(注)我が国経済は民間活動がその主体をなすものであること、また、特に国際環境の変化には予見し難い要素が多いことにかんがみ、主要経済指標の諸計数はある程度幅を持って考えられるべきものである。