緊急経済対策への質問に対する追加回答

(12月14日付「インターネット・FAX代表質問」で回答しきれなかった質問の一部に対する回答です。)

回答 : 経済企画庁長官
堺屋 太一

Q. 景気浮揚策の一環として、現在の超低金利政策を変更し、3~4%にできませんか。
A. 金利を引上げれば、金利所得が増え消費が伸びると主張する見方もあります。しかし、現下の経済状況の下では、低い金利が設備投資や住宅投資を支え、これらによって雇用、国民の所得が支えられているものと考えられます。金利引上げは、需要の減少を招く方が大きいと考えられています。金利政策は日銀の所管事項ですが、政府としては、緊急経済対策を始めとする諸施策を強力に推進することにより「不況の環」を断ち切るよう、全力を尽くしてまいります。
Q. これ以上赤字国債を発行して、回収できる見込みはあるのですか。
A. 財政の健全化は重要ですが、中長期的に考えるべきことです。今はまず不況の克服、経済の再生を優先すべきでしょう。これが成れば、まず経済の成長による税の自然増収、第二に景気対策事業の抑制による歳出の削減、第三には国有財産の処理など多様な選択肢が考えられます。今、赤字を出すと、次には必ず増税と考えるべきではありません。
アメリカの財政も10年前には約3000億ドルの大赤字でしたが、今年度は800億ドルもの黒字になるといいます。増税もありましたが、以前よりはずっと低い税率で、主として経済が成長して税の自然増収と冷戦消滅による軍事費の削減が大きかったからです。日本も経済が立ち直れば、財政健全化のいろいろな可能性が考えられるわけです。
Q. マインドを改善するために、金融政策によって調整インフレを生じさせることも必要なのではないでしょうか。
A. 「調整インフレ論」とは、一般的には、デフレ防止のため、適度な率の物価上昇を促進し、実質金利の低下等を通じて、消費や投資を喚起する政策論を指すものと思われます。しかし、その内容は論者によって幅があり、また、種々の問題点等も議論されています。私としては政策的に物価を上昇させるのは、市場経済を歪める危険があるので、現状では採るべきではないと考えています。
Q. 我が国のコンピューター技術、その普及の遅れを踏まえ、コンピューター関連の購入費は企業、個人を問わず全額税金の控除対象としてはどうでしょうか。
A. 我が国の将来にとって、情報化投資は極めて重要と考えております。このため、平成11年度税制改正では、企業がコンピューターを購入するときに、100万円未満のものは単年度で償却することとしております。これは日本のコンピューター需要を大幅に引き上げ、日本の電子産業だけではなく、世界各国の電子産業にも重要な市場を提供することになるでしょう。
Q. 土木建築等の公共事業は技術革新により雇用創出機能が低下し、景気対策として十分に機能しなくなったと考えられます。そこで、新しい研究所を作り、そこに働く研究者と事務職員を雇うなどすればよいのではないでしょうか。
A. 公共事業の景気対策としての効果は、いわゆるバブル経済の後遺症の影響等によって低下している可能性もありますが、経済企画庁のマクロモデルによる公共投資乗数は以前のモデルと比べても大きな変化はなく、その乗数効果は1.21と、他の財政支出よりも高いと考えられています。特に、今回の対策では、経済に対する即効性、波及性、未来性の三つを重視しました。
日本が21世紀においても活力と創造性を持ち、すべての人々が安全で安心して暮らせる国であることを目指して、「生活空間倍増戦略プラン」と「産業再生計画」と共に「21世紀先導プロジェクト」をも発足させることとしています。社会資本の整備においてはこれら3つも踏まえ、情報通信・科学技術や、環境、福祉・医療・教育などの分野に重点的な投資を行うこととしています。