緊急経済対策(要旨)

平成10年11月16日
経済企画庁

はじめに

今次の緊急経済対策は、日本経済を一両年のうちに回復軌道に乗せる第一歩であり、来たる平成11年度には、次の三つの目標を達成することとする。

  • (1)  平成11年度の経済を、はっきりプラス成長と自信を持って言える需要創造
  • (2)  失業者を増さない雇用と起業の推進
  • (3)  国際協調の推進、とりわけ対外経済摩擦の抑制

第1章 緊急経済対策と日本経済再生の道筋

  1. 経済情勢の認識
        我が国経済は、極めて厳しい状況にある。今年度後半から来年度にかけて、十分な対策と監視が必要である。
  2. 緊急経済対策の基本的考え方
    • 11年度にはっきりプラス成長と自信を持って言えるよう、まず、金融システム安定・信用収縮対策、併せて、景気回復策を緊急に実行する。
    • 景気回復策は、景気回復への、① 即効性、② 波及性、③ 未来性の3原則に沿って実施する。
    • 世界経済、特に、我が国と密接な相互依存関係にあるアジア経済にとって、我が国経済の再生が極めて重要であるとの認識に立ち本対策を実施する。
    • このような方針の下、100万人規模の雇用創出・安定を目指し、総事業規模17兆円超の事業を緊急に実施する(これに恒久的減税6兆円超を含めれば、20兆円を大きく上回る規模となる。)
  3. 経済再生の道筋
    • (1)  本対策は、我が国経済を一両年のうちに回復軌道に乗せるための政策対応の第一歩であり、平成12年度までに経済再生を図ることとし、機動的弾力的な経済運営を行う。
    • (2)  11年度は、はっきりとしたプラス成長へ転換し、回復基盤を固める年とする。
    • (3)  12年度は、回復軌道に乗せる年とする。これらの進捗状況を見極め、13年度からは、民需中心の安定成長軌道に乗ることを期待する。
    • (4)  以上の経済再生の道筋を踏まえ、中期的な経済の姿と政策対応の在り方について展望を策定する。

第2章 経済再生のための緊急対策

  • 金融システムの安定化・信用収縮対策
    1. 金融システムの安定化対策
      • 資本増強制度の実効ある運用を図る。
      • 検査監督行政を効果的に運用し、信用供与の円滑化・資本増強等を促す。
      • 金融機関による主体的な資本増強等への取り組みを促す。
      • 金融機関の情報開示を改善する。
      • 金融機関の財務状況等の把握の強化を図る。
    2. 信用収縮対策等
      • 貸し渋り・融資回収対策を強化する(中小企業のみならず、中堅企業向けなど)。(5.9兆円程度)
      • 資金供給ルートの拡充・多様化
    3. 日本銀行による金融政策の適切かつ機動的な運営
  • 21世紀型社会の構築に資する景気回復策
    1. 21世紀先導プロジェクトの実施
      今後新たに、各省庁連携して、未来を先取りする4つのテーマ(① 先端電子立国、② 未来都市の交通と生活、③ 安全・安心、ゆとりの暮らし、④ 高度技術と流動性のある安定雇用社会の構築)のプロジェクトに積極的に取り組む。
    2. 生活空間活性化策
      • 生活空間倍増戦略プランの策定
        • ゆとりとうるおいのある生活空間を倍増
      • 土地・債権流動化
      • 住宅投資の促進(1.2兆円程度)
        • 住宅金融公庫の融資の貸付金利の引き下げ、融資額の大幅拡充、住宅ローン返済困難者対策の着実な実施、広くて良質な住宅の整備促進等
    3. 産業再生・雇用対策
      • 産業再生計画の策定(中小企業関連施策を含む)
        • 新規開業、既存企業の活性化、新規・成長15分野、人材移動の円滑化、創造的技術開発疋普及、情報化、物流システムの高度化等
        • ベンチャー、中心市街地等中小企業対策
      • 雇用対策(1兆円程度)
        • 「雇用活性化総合プラン」を実施
        • 「緊急雇用創出特別基金(仮称)」を創設
    4. 社会資本の重点的な整備(8.1兆円程度)
      • ① 情報通信・科学技術、② 環境、③ 福祉・医療・教育、④ 物流効率化・産業競争力強化、⑤ 農山漁村等地域活性化、⑥ 民間投資誘発等都市再生、⑦ 防災に重点的な社会資本整備を行う。災害復旧対策にも適切に対応。
      • 北海道など特に厳しい経済状況にある地域や不況業種の実情に十分配慮。
      • 民間資金を活用する観点からPFIを推進するため、所要の措置を講ずる。
    5. 恒久的な減税等
      • 個人所得課税減税(最高税率50%、4兆円規模)
      • 法人課税減税(実効税率40%程度)
      • 住宅建設・民間設備投資等政策税制について検討
      • 個人消費喚起、地域経済活性化のため地域振興券(0.7兆円程度)
    6. 財政構造改革法の凍結
      • 財政構造改革法を凍結することとし、所要の法案を次の国会に提出する。
  • 世界経済リスクへの対応
    世界経済・アジア経済にとって、日本経済の再生が重要。密接な相互依存関係にあるアジア等を支援。(1兆円程度)
    1. アジア諸国の通貨危機等への対応
      • 日本輸出入銀行の融資、円借款、アジア通貨危機支援資金(仮称)設立等により、アジア諸国の通貨危機等に対応する。
    2. アジアの現地日系企業等に対する支援
      • アジア経済に重要な役割を果たす現地日系企業等を支援するため、中小企業金融公庫・国民金融公庫による融資や我が国企業の事業参加機会拡大を図るための資金支援及び経済構造改革のための特別の円借款の創設の早急な検討を行う。