総合経済対策

平成10年4月24日
経済対策閣僚会議

目次


我が国経済の直面する課題

  • 我が国経済は、アジア地域の通貨・金融市場の混乱、昨秋の金融機関の経営破綻、それに伴う家計や企業の景況感の厳しさが個人消費や設備投資等に影響を及ぼし、景気は停滞状態を示すようになった。
  • これに対し政府は、21世紀を切りひらく緊急経済対策、所得減税、金融安定化策等、累次の景気浮揚のための施策を決定・実施に努めてきたが、内外の悪条件が一斉に重なって、雇用の先行き不安等を背景に消費が低調な動きとなるなど景気停滞は厳しさを増し、極めて深刻な状態となっている。
  • 我が国経済の活力を維持し、また、アジア経済の安定化に貢献するためにも、このような経済状況から速やかに脱却し、景気の早期回復を図ることが重要である。
  • 景気停滞が長引いている背景には、金融機関や企業の不良債権問題、日本的な経済システムの制度疲労の問題、産業の空洞化の問題があり、これらが景気回復の妨げとなっているため、早急にこれら問題の解決を図る必要がある。

21世紀の展望をひらく経済対策の在り方

  • 我が国経済を力強い回復軌道に乗せるとともに、21世紀における活力ある我が国経済社会を実現するため、次のような基本的な考え方の下で経済対策を進める。
  • 第一は、社会資本整備と減税による思い切った内需拡大策を講じ、国内需要の喚起を図る。
  • 第二は、経済構造改革を強力に推進する。上記の内需拡大策は、短期的な需要喚起を図ると同時に、民間活力を発揮させるよう規制緩和を進めつつ、21世紀を見据えて真に必要とされる社会資本を整備するなど、我が国経済の体質を改善・強化する経済構造改革の方向と整合的なものとする。
  • 第三は、景気回復の阻害要因となっている不良債権の処理を促進する。
  • このような基本的な考え方に立ち、以下の内容からなる総合経済対策を講じる。このための国と地方の減税や社会資本整備の財政負担は合計で12兆円規模、総事業費は16兆円超と過去最大となる。
  • なお、財政構造改革法については、政府・与党財政構造改革会議決定「財政構造改革法の弾力化等について」に沿って所要の改正を行うものとする。

  • 21世紀を見据えた社会資本の整備等
    内需拡大のため、21世紀を見据えて、豊かで活力のある経済社会の構築に向けて、真に必要となる社会資本等を整備することとし、国・地方あわせて総額7兆7,000億円程度の事業を実施する。なお、社会資本の整備に当たっては、コストの縮減、費用対効果分析の積極的活用等を通じて、効率性、透明性を高めることに十分に配慮を行う。
    1. 国を中心とした社会資本等の整備等
      • (1)環境への負荷の少ない経済社会の実現
        環境への負荷の少ない経済社会の実現を目指し、特に緊急性の高いダイオキシン・環境ホルモン対策や水質保全対策に思い切った対応を図るとともに、地球温暖化をはじめとする地球環境問題について研究・対策等を進めるほか、新エネルギー施設やリサイクル施設等の整備を行うこととし、環境・新エネルギー特別対策事業として1兆6,000億円程度の事業を実施する。
      • (2)将来の発展基盤となる情報通信の高度化・科学技術の振興
        我が国将来の発展基盤となる情報通信の高度化や科学技術の振興を図るとの観点から、研究開発用超高速光ファイバネットワーク、地上放送デジタル化推進のための研究開発施設、電線共同溝の整備等を図るほか、電子商取引の推進、情報通信の高度化のための技術・研究開発の促進等を行うとともに、先端的・独創的・基礎的研究開発の推進、新規産業創出を目指した産学官連携の促進並びに次世代を担う若手研究者育成等を図ることとし、情報通信高度化・科学技術振興特別対策事業として1兆円程度の事業を実施する。
      • (3)少子・高齢化等に対応した福祉・医療・教育
        少子・高齢化の急速な進展等を踏まえ、新ゴールドプランの前倒し等社会福祉施設の整備、療養型病床群への転換促進等医療施設の整備等を図るとともに、現下の教育問題への対応として、「心の教室」(カウンセリング・ルーム)の整備等「心の教育」の充実を図るほか、学校教育における情報化の推進、大学改革等に伴う施設の高度化・重点的整備等を行うこととし、福祉・医療・教育特別対策事業として1兆円程度の事業を実施する。
      • (4)物流効率化のための基盤整備
        多様な物流サービスの効率的な提供に向けて、国際ハブ空港・ハブ港湾、高規格幹線道路等の整備、空港・港湾等へのアクセス強化等を図るとともに、物流拠点施設の整備等を行うこととし、物流効率化特別対策事業として8,000億円程度の事業を実施する。
      • (5)国民の生命、財産の安全確保のための緊急防災
        災害から国土を保全し、国民の生命、身体及び財産を保護するため、地域の特性を勘案しつつ、災害等危険箇所緊急解消対策等の実施により、災害に強い体制の整備を行うこととし、緊急防災特別対策事業として8,000億円程度の事業を実施する。
      • (6)中心市街地活性化等民間投資誘発
        公共投資の経済効果を最大限高める観点から、中心市街地活性化などの民間投資を誘発する事業を推進することとし、中心市街地活性化等民間投資誘発特別対策事業として8,000億円程度の事業を実施する。
      • (7)災害復旧事業
        災害復旧事業については、復旧進度を大幅に高めることにより、速やかな事業実施を図ることとし、2,000億円程度の事業を実施する。
    2. 地方単独事業の推進
      地方単独事業についても、地域の実情に即して、住民に身近な社会資本等の整備が図られるよう、地方公共団体に対して、1兆5,000億円程度の追加を要請する。
    3. 公共事業等の施行促進
      • (1)平成10年度の公共事業等の執行については、上半期末における契約済額の割合が全体として過去最高を上回る81%以上となることを目指して、可能な限り施行の促進を図る。なお、第1・四半期において、できる限り多くの契約を行うよう努めるものとする。
         その実施に当たっては、北海道等の各地域の経済情勢、社会資本の整備状況等を十分に配慮して行う。
      • (2)地方公共団体においても、上記の各措置に準じて地方単独事業を含む事業の円滑な執行を図るよう要請する。
    4. PFIの推進
      民間の技術力、経営力及び資金力を活用した新たな手法による社会資本整備(PFI)については、今国会に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律案(仮称)」が提出される予定であることを踏まえ、政府内のPFI推進体制を整備するとともに、補正予算に調査調整費を計上して、具体的なPFIプロジェクトの導入手法等の推進方策について早急に検討するものとする。また、財政投融資を適切に活用し、プロジェクトファイナンスの考え方に基づき、PFI事業推進に資する融資制度を日本開発銀行等に創設する。
    5. 住宅投資の促進
      住宅投資の促進を図るため、財政投融資を適切に活用し、ファミリー向け賃貸住宅、木造住宅等に対する住宅金融公庫の融資条件の改善等を行う。
       また、優良田園住宅の建設の促進を図るため、適切な配慮を行う。
    6. 北海道経済に関する措置
      地域の中核的な銀行であった北海道拓殖銀行の経営破綻という特殊事情に鑑み、早急に地域経済の活性化を図るため、公共事業等の執行に当たって、過去最高の前倒しを行う。また、観光関連基盤の整備を含め公共事業の同地域への重点的な傾斜配分を行う。さらに、観光資源情報の高度化等を推進し、観光振興を図る。
       加えて、貸し渋り等により資金調達に支障をきたすおそれのある企業の事業活動を支援する観点から、財政投融資を適切に活用し、北海道東北開発公庫における設備資金及び設備投資に伴う運転資金融資の拡充を図る。
  • 特別減税等による経済の活性化
    所得税・個人住民税について特別減税の追加・継続(合計4兆円)を行う。投資、住宅について税制上、政策的な配慮を行う。
    1. 特別減税の追加・継続 所得税・個人住民税について、本年すでに2兆円の特別減税を実施しているところであるが、早急に2兆円の特別減税を以下の概要により追加実施する。
       また、来年も2兆円の特別減税を行う。減税方法等については今後検討する。

      (追加特別減税の実施の概要)
      • (1)減税規模  2兆円(所得税1.4兆円、個人住民税0.6兆円)
      • 減税方式  定額控除方式
        平成10年分の所得税額・平成10年度分の個人住民税
        所得割額の範囲内で一定の金額を控除
      • (3)減税額
        減税額
      • (4)実施方法
        (所得税)
        • 給与所得者‥‥平成10年8月1日以後に支払われる給与に係る源泉徴収税額から控除。
        • 年金受給者‥‥給与所得者に準じた方法により実施。
        • 事業所得者‥‥予定納税の通知の期限・第1期分の納期をそれぞれ1ヵ月遅らせた上で第1期分の予定納税額から控除(当初分と追加分を合わせて実施)。予定納税のない者は、来年の確定申告において実施。
        (注)今回の特別減税の緊要性に鑑み、必要な準備作業を整えた上、新聞、インターネット、パンフレット、説明会等の各般の手段を活用して源泉徴収義務者向けの周知・広報活動を適時適切に行い、その円滑な実施に努める。
        • 給与所得者‥‥平成10年6月の特別徴収税額を徴収せず、当初分と追加分を合わせた特別減税の額を控除した後の年税額を7月以降の11か月で徴収する。なお、特別徴収税額の通知期限(5月31日)を1ヵ月遅らせる。
        • 年金受給者、事業所得者等‥‥平成10年度第1期分の納付額から控除する。なお、第1期分の納期(6月中で条例で定める日)を1ヵ月遅らせる。

        (注)今回の特別減税の緊要性に鑑み、地方公共団体と協力し、必要な準備作業を整えるとともに、各種広報媒体を活用して納税者及び特別徴収義務者向けの周知・広報活動を適時適切に行い、その円滑な実施に努める。
    2. 政策減税
      <投資減税>
      • (1)民間投資を促進するための税制上の措置
        民間投資の促進のための1年間の臨時時限の措置(6月1日実施)として、
        1. 中小企業者等が取得等をする一定の機械装置、器具備品、大型貨物自動車及び内航船舶について、7%の税額控除又は30%の特別償却を選択適用(リース資産についても、税額控除を適用)することができる中小企業投資促進税制を創設するほか、
        2. 特定電気通信設備の特別償却制度について、地域における教育・福祉に関する情報提供にも資する観点から、地方の放送事業者が取得する一定の放送番組制作設備を追加し、20%の特別償却を認める。
      • (2)研究開発を促進するための税制上の措置
        ベンチャー企業を含む中小企業の研究開発を促進する観点から、中小企業者等の試験研究費に係る税額控除の特例について、1年間の臨時時限の措置として、税額控除率を6%から10%に引き上げる。
      <住宅減税>
      • (1)住宅取得促進税制について、住宅借入金等の年末残高1,000万円以下の部分に適用される控除率を拡充し、平成10年居住分について控除限度額の総額を170万円から180万円に引き上げる等の措置を講じる。
      • (2)宅地建物取引業者が、一定の買取仲介により、既存住宅(及びその用地)を個人(居住者)から取得し、取得後6ヵ月以内に他の個人(居住者)に譲渡した場合においては、2年間の臨時時限の措置として、宅地建物取引業者の既存住宅(及びその用地)の取得に対し、個人(居住者)に係る不動産取得税の特例措置と同等の特例措置を講じる。
      (注)以上の政策減税による減収規模は、国税分初年度670億円(投資減税)、平年度2,630億円(投資減税、住宅減税)、地方税分初年度50億円(投資減税、住宅減税)、平年度390億円(投資減税、住宅減税)となる。
    3. 法人課税
      法人課税については、今後3年のうちにできるだけ早く、国・地方を合わせた総合的な税率を国際的な水準並みにするよう、検討を行う。
    4. 所得課税
      個人所得課税については、公正・透明で国民の意欲が引き出せるような税制を目指し、幅広い観点から検討を行う。
    5. 臨時福祉特別給付金等
      平成10年分所得税等の特別減税の追加実施に関連し、老齢福祉年金の受給者等及び高齢の低所得者の生活の安定と福祉の向上並びに低所得の在宅寝たきり老人等に対する在宅介護の支援に資するため、臨時特例の措置として、臨時福祉特別給付金(1,500億円程度)を支給する。
       なお、子育て支援、高齢者・障害者支援を総合的に展開するため、社会福祉・医療事業団の長寿社会福祉基金を拡充(1,200億円増資)し、長寿・子育て・障害者基金(仮称)と改称する。
  • 経済構造改革の推進等
    我が国の資本、人材、技術等の優れた経済資源が最適に活用され、時代のニーズに円滑に対応できる柔軟で創造的な経済構造を構築する必要がある。民間部門がその活力を最大限に発揮できるようにするとともに、弱者の保護にも配慮しつつ自己責任の原則を貫徹する条件を整えるなど、我が国経済の発展基盤を整備する。そのため、先般取りまとめられた規制緩和推進3か年計画に基づき規制緩和を強力に推進するのに加え、ベンチャー企業育成、中小企業対策、雇用対策等を講じる。
    1. ベンチャー企業育成
      創造力や独創性に富む個人や企業が、新規技術・事業に積極果敢に挑戦できるような環境整備に努め、ベンチャー企業の育成を図る。
      • (1)ベンチャー企業等の資金調達環境の抜本的改善
        1. 新規事業法認定企業に対する債務保証等の強化
          ベンチャー企業等の資金調達環境を改善するため、産業基盤整備基金等の保証基金を拡充することにより、新規事業法認定企業やソフトウェア・ベンチャーに対する債務保証事業を強化する。また、各県のベンチャー財団を通じた間接投資の強化及び「ベンチャーリース事業」の新設を行い、併せて販路開拓面の支援を強化する。
        2. 店頭登録市場における機能の強化
          ベンチャー企業等への資金供給の円滑化が図られるよう、店頭登録市場の機能強化に努める。このため、証券取引法の改正法案の今通常国会における早期成立を図るとともに、証券会社がマーケットメイク機能(自己売買による流動性供給機能)を発揮するための環境整備を図る。
        3. ベンチャーキャピタルの活性化
          「中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律案」の今通常国会における早期成立を図るとともに、ベンチャー投資の評価方法に関するガイドラインを策定する等により、多様な投資家がベンチャー投資を行いやすくするための環境を整備する。
        4. 政府系金融機関等のベンチャー企業向け支援
          財政投融資及び民間資金を適切に活用し、政府系金融機関等によるベンチャー企業のワラント債を含む社債引受機能の活用等多様な支援方法を検討する。
      • (2)政府調達等におけるベンチャー企業の取扱い
        政府や政府関係機関における一般競争入札等において、参加資格等級設定の弾力的運用や実績要件の緩和等、引き続き制度改善を図り、内外無差別の原則の下で、ベンチャー企業等の入札機会の増大を図るとともに、技術開発委託等におけるベンチャー企業等の参加を促進する。
      • (3)人材、技術面からの支援
        ベンチャー企業に対し、人材、技術等の面での支援充実を図る。
    2. 中小企業対策等
      中小企業等を支援していくことは、構造改革を強力に進めていく上でも重要である。このため、中小企業に対する必要な資金供給が妨げられることがないよう、財政投融資の活用による中小企業への融資の拡充や、創造的中小企業の支援等を行うこととし、事業費2兆円を追加する。また、中堅企業等に対する資金供給の円滑化を図る。
      • (1)中小企業金融対策等
        1. 中小企業金融の対象を拡大するため、小売業・サービス業、卸売業の定義を見直し、資本金の上限額を引き上げることとし、所要の改正法案を提出するとともに、所要の措置を講ずる。
        2. 危機的状況にある中小企業の資金調達状況を踏まえ、政府系金融機関に新たな貸付制度を創設するとともに、これに伴う追加出資を行う。また、中小企業の事業展開を支援するため、政府系金融機関に新たな貸付制度を創設する。更に、マル経融資の貸付規模の追加及び貸付返済期間延長を行う。
        3. 中小企業への弾力的な信用保証を十分に確保するため、中小企業信用保険公庫の準備基金及び信用保証協会基金補助金の積み増しを行う。なお、金融機関の自己資本比率の計算上、信用保証協会の保証付融資については、リスクウェイトを10%とする措置を講じたところであり、今後、金融機関における中小企業向け融資への適切な対応が期待される。
        4. 地域の実情に即して中小企業等の資金調達に支障が生じないよう、地方公共団体に対して、単独施策として、信用保証協会の経営基盤の強化を図りつつ、5,000億円の融資枠を追加するよう要請する。
        5. 農林漁業者・木材産業等の資金調達の円滑化を図るため、農林漁業・木材産業等に係る信用保証の充実を図るとともに、農林公共事業等による木材利用の推進を図る。
      • (2)創造的中小企業の支援
         中小企業の創造的活動を支援するため、中小企業の共同利用が可能な高度な設備機器の公的機関への設置、各県のベンチャー財団による地方の創造的中小企業対策の強化、販路開拓支援等を図る。
      • (3)中小企業の経済構造改革の支援
         工場、卸団地のリニューアル等を促進し、地方の製造・物流拠点を強化するため、中小企業事業団高度化融資を拡充する。また、製配販ネットワークの整備、コンピュータ2000年問題等への対応のため、情報機器の配備等中小企業の情報化を促進する。
      • (4)中心市街地の商業等の活性化
         中心市街地における商業等の活性化を図るため、市町村の基本計画作成のための調査研究や商業施設・商業基盤施設の整備等を促進する。
      • (5)中堅企業等金融対策
         いわゆる貸し渋り等により資金調達が困難となっている中堅企業等を支援するため、財政投融資の適切な活用により、日本開発銀行において「金融環境対応等保証制度」を創設するなど、政府系金融機関の対応の強化を図る。
      • (6)民間金融機関の資金供給機能の円滑化
         最近の金融機関に対するいわゆる貸し渋り批判がある中で、民間金融機関はその本来の使命である資金の円滑な供給に努めていく必要がある。
         民間金融機関が経済の将来的な発展に資するために、健全な中小・中堅企業等に対する円滑な資金供給に支障を来さないよう要請する。
    3. 雇用対策
      厳しい雇用失業情勢の中で、「緊急雇用開発プログラム」を実施して、雇用安定や人材の育成を図り、雇用の先行き不安を払拭するための施策を講ずる。同時に、従来型産業での雇用調整の中で、新規産業における雇用拡大の実現のため、労働移動の円滑化を図り、また、少子高齢化が進む中で、高齢者や女性の高い労働ポテンシャルを積極的に引き出していく必要がある。
      • (1)「緊急雇用開発プログラム」等の実施
        1. から4. の柱からなる「緊急雇用開発プログラム」等を実施するため、事業費500億円程度を追加する。
        1. 雇用調整助成金拡充による雇用維持の支援、出向・再就職あっせん等による失業なき労働移動の支援、企業内における職業能力開発や労働者の主体的能力開発への支援を行う。
        2. 離職者の再就職を促進するため、「ホワイトカラー等雇用支援ネットワーク」等の強化、特定求職者雇用開発助成金の拡充等を行う。また、雇用保険受給者等の再就職の促進等、障害者の雇用支援、ならびに公共職業訓練の機動的・弾力的な実施や高度化等を図る。
        3. 雇用環境の厳しい地域における雇用創出の支援や、ベンチャー企業等中小企業への支援を行う。
        4. 労働行政関係機関において夜間等の緊急雇用労働相談・支援窓口を設置する。さらに、未払賃金立替払の迅速化を図る。
        5. 地域における育児・介護情報提供機能の強化等仕事と家庭の両立支援対策を実施する。
      • (2)労働者派遣事業・労働者募集の見直し
        1. 労働者派遣事業制度の全般的見直しを進め、対象業務の範囲のネガティブリスト化、派遣期間、労働者保護のための措置等を中心に中央職業安定審議会の結論を得て、実情に即したネガティブリスト化の範囲の限定、及び育児休業特例労働者派遣における派遣期間の制限の見直し、並びに高年齢者特例派遣における派遣期間の制限及び対象業務の見直しを行う。
        2. 通勤圏外の労働者の直接募集に係る届出制及び委託募集に係る許可制の見直しについて、中央職業安定審議会において、平成10年12月を目途に基本的方向を決定した上、可能な限り速やかに必要な措置を行う。
      • (3)企業年金のポータブル化、確定拠出型年金制度導入の検討
        確定拠出型年金の導入について、年金制度全般の動向をみつつ、労働移動に対応した年金のポータブル化、投資運用のしくみ等を含め、早急に検討を行う。
    4. 資金供給システムの変革
      最近の資産デフレによる担保価値の下落等により、金融機関の資金供給機能が十分に発揮されていない現状に鑑みても、証券市場の総合的改革により、新規企業や新規事業に多様な資金供給チャンネルを通じて資金が流れるようにする。これまで、証券総合口座の導入、銀行等からの店舗借りによる投資信託の直接販売の導入、証券会社による未上場・未登録株の取扱いの解禁、厚生年金基金の資産運用規制の撤廃等、資金供給を活発化させる施策をとってきた。さらに、投資顧問業者といった専門家の能力の活用等、資産運用の一層の効率化等が図れるよう、以下の措置を実施する。
      • (1)投資顧問業に関する規制緩和(投資一任業者の再委任)
         顧客が投資判断及び投資の権限を投資顧問業者に委任する投資一任契約において、投資判断等を委任された業者が投資判断等を外部へ再委任することを認めるための、投資顧問業法の整備を行う(今通常国会に改正法案提出中、平成10年12月施行予定)。
      • (2)私募投資信託
         私募投資信託を証券投資信託として位置づける(今通常国会に改正法案提出中、平成10年12月施行予定)。
      • (3)投資信託委託会社の運用の指図の外部委託
         投資信託委託会社による外国関連会社等への運用の指図の外部委託を解禁する(今通常国会に改正法案提出中、平成10年12月施行予定)。
      • (4)店頭登録市場における機能の強化(再掲)
      • (5)郵貯自主運用資金の増額等
         郵便貯金事業の健全な経営を確保するため、郵便貯金の自主運用資金である金融自由化対策資金を4兆円増額し、もって郵便貯金資金の市場への適切な還元を図る。また、郵貯・簡保本体による指定単運用を可能とするよう検討し、機動的かつ弾力的な資金運用を進め、もって郵便貯金事業及び簡易生命保険事業の健全な経営の確保に努める。
      • (6)企業年金のポータブル化、確定拠出型年金制度導入の検討(再掲)
  • 土地・債権の流動化と土地の有効利用
    債権債務関係の迅速・円滑な処理、土地の整形・集約化と都市再開発の促進、都市再構築のための土地需要の創出に係る思い切った措置を総合的に講ずることにより、土地取引を活性化し、不良債権問題を抜本的に解決する。
     このため、国・地方あわせて総額2.3兆円程度の事業を実施する。
    1. 債権債務関係の迅速・円滑な処理
      • (1)不動産担保付不良債権等に係る債権債務関係の整理のため、あっせん・調停等当事者の合意に基づく手続を通じて不動産担保付不良債権等に係る債権債務関係等を明確化し、整理するための体制(臨時不動産関係権利調整委員会(仮称)の設置)の整備に向け、必要となる法律案を次期国会に提出すべく総合的な検討を行うとともに、当該あっせん・調停等によって債権者及び債務者の合意が得られ、債務者の合理的な再建計画が策定される場合の税制上の措置を検討する。
      • (2)担保不動産の売却、不良債権の一括売却、証券化等のための収益還元法の活用等による債権並びに不動産の適正評価手続(デュー・デリジェンス)の確立と税務上の対応の明確化を図る。
      • (3)競売制度の迅速・円滑化等のため、情報の開示促進、手続の簡素化の促進、執行妨害対策の強化、競売実施体制の充実強化に向け、制度全般の見直しについて、引き続き検討する。
      • (4)債権回収と債権管理を行ういわゆるサービサーについては、現在進められている立法化の動きも踏まえ、必要な検討を行う。
      • (5)共同債権買取機構(CCPC)の機能の拡充を図るとともに、担保不動産の有効利用・流動化の推進と不良債権の実質的処理の促進を図る。
      • (6)資産担保証券(ABS)の流通市場整備のため、不動産インデックス(指標)を始めとする不動産の情報化及び不動産情報のディスクロージャーの拡充を推進する。また、郵貯・簡保資金による資産担保証券(ABS)への運用について、平成11年度に向けて検討する。
         なお、今後のABS市場の発展状況を見極め、不良債権処理を促進する観点から、モラルハザードが発生しないよう十分な配慮をしつつ、官民の幅広い市場関係者の寄与のあり方を含めた、市場育成のための環境整備についての更なる検討を行う。
      • (7)中小企業の発行する社債に信用保証協会の保証を付す等、社債発行を促進するための方策について、早急に結論を得るべく検討するとともに、私募債の転売制限を撤廃する。
    2. 土地の整形・集約化と都市再開発の促進
      • (1)都市再開発を強力に進めるための仕組みづくりとして、建設大臣が積極的に再開発事業を後押しする手続を確立するとともに、都市再開発法の認可手続の迅速化、敷地整序型土地区画整理事業の推進を図る。
      • (2)住宅・都市整備公団を活用した低未利用地の有効利用促進のため、公団内に土地有効利用事業推進本部(仮称)の設置、土地取得のための臨時の出資金・財政投融資の適切な活用等を通じて、新たな仕組みを整備し、3,000億円程度の事業を実施する。
      • (3)土地の流動化・有効利用に向け、民間都市開発推進機構の土地取得業務枠を5,000億円程度拡大するとともに、時限的に専門家集団からなる都市開発プロモート体制を整備し、情報交換、民間都市開発プロジェクト等に対する助言、計画の提案等を積極的に行う。
      • (4)政府系金融機関等による都市再開発等に対する信用補完を充実することとし、住宅金融公庫の保険業務の拡充(3,500億円程度の事業の追加)、民間都市開発推進機構の参加業務の追加(400億円程度)等の措置を講じる。
    3. 都市再構築のための公的土地需要の創出
      • (1)今後の社会資本整備を円滑かつ効率的に進める観点をも踏まえ、国の公共用地の先行取得を推進することとし、3,200億円程度の事業を実施する。
      • (2)地方公共団体等における用地の先行取得の促進を図るため、土地開発基金及び土地開発公社の活用を図るとともに、公共用地先行取得等事業債等による積極的な対応を図ることにより、8,000億円の規模で事業費の追加を要請する。また、基幹的な公共施設用地の先行取得に係る利子負担軽減措置について面積要件を緩和する。
      • (3)防災性の高い安全なまちづくりのため、防災性向上に資する公園緑地の整備の拡充等を行う。
      • (4)高齢者・障害者等にやさしいまちづくりのため、新ゴールドプラン等による施設整備の前倒しを行うとともに、高齢者向け公営住宅等の供給を促進する。
      • (5)中心市街地活性化などにより都市の再生を図る。
  • アジア支援策
    通貨・金融の混乱により経済的困難に直面しているアジア諸国の経済安定化や構造改革支援のため、IMF等の国際金融機関やG7諸国等と協調しつつ、以下の措置を講ずる。すなわち、外貨不足等により困難な状況にあるアジア諸国経済の早期安定化に資するよう、貿易金融の円滑化等を支援するとともに、円借款の活用等により社会的弱者等にも配慮しつつ経済構造改革を支援する。また、アジア諸国の長期的経済発展や雇用確保等に資するため、人材育成等の支援を強化する。さらに、食糧・医療品等生活必需品確保のための支援を行う。このため、総額7,000億円程度の資金を確保する。
    1. 貿易金融の円滑化等支援
      財政投融資を適切に活用し、日本輸出入銀行のツー・ステップ・ローン、投資金融及び輸入金融により、貿易金融の円滑化及び現地日系企業等のアジアにおける投資活動の支援等を行う。
    2. 円借款の活用等による経済改革支援
      • (1)アジア諸国の経済構造改革に資するため、政策支援アドバイザー、専門家チーム等派遣・研修員受入等の技術協力を行う。
      • (2)経済構造改革支援のための円借款供与及びノンプロジェクト無償資金協力を行う。その際、社会的弱者対策、人材育成、失業者対策、農業・農村対策等に重点を置くとともに、アジア諸国の構造調整努力を支援するための足の速い円借款について緊急特利制度を設ける。
      • (3)通貨価値が大きく下落した国に対しては、最近の為替レートに従い計算した所得水準に基づき円借款金利を適用する。
      • (4)円借款による中小企業、裾野産業育成、及び農業・農村等支援を行う。
      • (5)円借款案件等の円滑な実施を確保するため、ローカルコスト支援を行う。
      • (6)構造改革支援のためのプロジェクト発掘支援を強化する。
      • (7)アジア諸国を対象に向こう3年間で5,000億円を目途として、既存施設の改修等や環境分野への円借款供与を促進する。
    3. 人材育成等環境整備
      • (1)人道・医療・保健対策等の観点から、無償資金協力の活用、研修員受け入れ・専門家派遣等の技術協力の活用、国際機関を通じた対応を強化する。
      • (2)雇用確保等のための民間技術者等に対する研修、技術・経営分野の民間専門家の派遣を行う。
      • (3)我が国における留学生受入れ体制を充実する。また、優遇された条件の円借款を活用して留学生支援を行う。
      • (4)アジア諸国の貿易・投資促進のための支援を行う。
      • (5)社会的弱者救済・貧困の改善に資するASEANの開発戦略の支援・地域的プロジェクト発掘などのため、ASEAN基金に対し新たな拠出を行う。
    4. 食糧・医療品支援
      • (1)インドネシアにおける食糧不足を解消するため、新たな緊急食糧支援の仕組みを活用し、政府米50万トンを同国へ貸付けるとともに、無償資金協力等により、10万トン程度を国際市場から調達し供与する。
      • (2)農業生産に必要な機材・肥料等の供与により食糧増産支援を行う。
      • (3)無償資金協力により医薬品等人道支援を行う。

以上の決定事項を着実かつ迅速に実施することで、我が国経済の早期回復と活性化を図る。このため、経済対策の主な施策分野について、内閣官房長官主宰による関係省庁の会議を機動的に開催し、実施状況の点検を行い、必要な措置について討議・推進していく。


(別紙)

土地・債権の流動化と土地の有効利用

我が国経済に対する不良債権問題の悪影響を真に払拭するためには、不良債権等を実質的に処理し、問題を解消させることが不可欠であり、そのためには、不良債権等の背後にある担保不動産に関わる諸問題を解決することが必要である。このため、債権債務関係の円滑な処理、土地の整形・集約化と都市再開発の促進、都市再構築のための土地需要の創出に係る思い切った措置を総合的に講ずることにより、土地取引を活性化し、不良債権問題を抜本的に解決する。その際、土地は資源であるという発想に立ち、土地の有効活用やスペースの増大を図り、ゆとりある生活環境や経済活動空間の実現を併せて目指す必要がある。

  1. 債権債務関係の迅速・円滑な処理
    土地に係る複雑に絡み合った権利関係を整理するとともに、土地を保有する事業者の円滑な事業再建を進めつつ、金融機関等が保有する不良債権等の円滑な処理を促進することにより、担保不動産等の有効利用が行えるよう条件整備を行う。
    • (1)不動産担保付不良債権等に係る債権債務関係の整理
      1. 不動産担保付不良債権等に係る債権債務関係の整理のため、あっせん・調停等当事者の合意に基づく手続を通じて不動産担保付不良債権等に係る債権債務関係等を明確化し、整理するための体制(臨時不動産関係権利調整委員会(仮称)の設置)の整備に向け、必要となる法律案を次期国会に提出すべく総合的な検討を行う。
         なお、債務者の企業等の再建計画の実行と連動した金融機関等の債権放棄を促進するため、臨時不動産関係権利調整委員会(仮称)のあっせん、調停等によって債権者及び債務者の合意が図られ、債務者の合理的な再建計画が策定される場合に、債権放棄による損失の損金算入及び債務免除益の累積欠損金との相殺を認める措置を検討する。
      2. 不良債権処理を徒に先送りすることなく、最終的な処理を進め、金融機関の本来の役割である事業者の前向きの経営展開に対する資金供給に努めていくため、民間金融機関に対し、取引先事業者の合理的な再建計画策定への真摯な協力等を求めるなど、不良債権の実質的処理に積極的に取り組むよう要請を行う。
         なお、合理的な再建計画に基づく債権放棄により発生する損失は税務上損金の額に算入される旨の一般的取扱いにつき、一層の明確化を図る。
    • (2)適正評価手続(デュー・デリジェンス)の確立
      1. 適正評価手続(デュー・デリジェンス)を導入するに当たっては、まずは担保不動産について検討を進め、担保不動産又はこれらに関する権利の経済的価値を判定し、債務者の資産状況をも考慮した債権の適正な価値を決定するための適切な手続、特に、将来収支予想に基づく収益還元法を活用するための適切な手法を確立することが求められる。このため、収益還元手法のさらなる精緻化等を検討するとともに、個々の不動産投資データ(賃貸物件においては、賃料・敷金等)の整備拡充並びに情報公開を進める。
      2. このため、具体的には、日本不動産鑑定協会等と協力して、不良債権の担保等となっている不動産の鑑定評価に当たって不動産鑑定士が留意しなければならない事項等をとりまとめ、その周知徹底を図って的確な評価が行われるよう努めることとする。
      3. また、証券化等のため、不動産並びに不動産担保付債権等の譲渡が特定目的会社(SPC)等に対し行われる場合に、例えば、不動産鑑定士による収益還元法を活用した評価をベースとすることにより、証券化等の取引の目的に一層適合した評価を可能とする。
      4. 債権並びに不動産の適正な評価方法・手続の確立を前提として、公正中立な団体等からその評価方法・手続の税務上の取扱いに係る照会が行われた場合には、税務当局はその方法による価格決定に公正性が担保されている限りにおいて、原則的にこれを尊重する。
    • (3)競売制度の迅速・円滑化及び倒産法制の整備
      1. 不動産競売手続の一層の迅速化・円滑化を図るため、競売物件の情報の開示促進と開かれたマーケットの形成、競売手続の簡素化の促進、執行妨害対策の強化、裁判所の競売実施体制の充実強化に向け、制度全般の見直しについて、引き続き検討する。
      2. 経済的に破綻した債務者の財産関係につき、裁判所の関与の下に、公正・衡平に関係者の権利関係の調整をする、法的倒産処理手続の充実・整備に向け、現在行っている検討の結論をできるだけ早期に得る。
    • (4)債権回収と債権管理を行ういわゆるサービサー
       債権回収及び債権管理を行ういわゆるサービサーについては、不良債権等の処理の促進にも資するものであり、現在進められている立法化の動きも踏まえ、必要な検討を行う。
    • (5)一般金融機関の不良債権の回収、買取りの仕組み
       共同債権買取機構(CCPC)の機能の拡充を図るとともに、都市開発の推進のためにプロモート機能が強化される民間都市開発推進機構、住宅・都市整備公団に設置される土地有効利用事業推進本部(仮称)、民間都市開発事業者等との連携を強化することにより、担保不動産の有効利用・流動化の推進と不良債権の実質的処理の促進を図る。
       金融機関の自己競落会社についても、民間都市開発推進機構をはじめ、関係各方面と連携しつつ、保有する土地の有効利用を推進することが望まれている。このため現在、担保不動産の自己競落に関し、原則として裁判所が公告した最低売却価額によることとされているが、この要件を撤廃するなど、環境整備を図る。
    • (6)不動産投資情報の整備・拡充等による資産担保証券(ABS)の市場整備
      1. 不動産を裏付けとするABSの流通市場を育成するためには、不動産に関する情報が投資家に適切に提供されることが最も重要であり、不動産インデックス(指標)を始めとする不動産の情報化及び不動産情報のディスクロージャーの拡充を積極的に推進する。
      2. 郵貯・簡保資金の運用対象を多様化し、預金者・加入者の利益に資するため、安全・確実な資産担保証券(ABS)に対する運用について平成11年度に向けて検討する。
      3. 特定目的会社(SPC)発行社債のうち適切なものを店頭市場の基準気配銘柄に加え、さらに、(株)債券決済ネットワークにのせてオンライン決済を行う。
      4. 欧米の資産担保証券(ABS)市場においては、銀行、損害保険会社等の民間金融機関による保証業務が、ABS市場の重要なインフラとなっている。我が国においても、本年に入って損害保険会社がABSの保証業務を行うなど、環境が整ってきており、今後、多くの金融機関が、ABSに対する保証業務に前向きに取り組んでいくことが期待される。
      5. 今後のABS市場の発展状況を見極め、不良債権処理を促進する観点から、モラルハザードが発生しないよう十分な配慮をしつつ、官民の幅広い市場関係者の寄与のあり方を含めた、市場育成のための環境整備についての更なる検討を行う。
    • (7)中小企業の資金調達手段の多様化
       中小企業の発行する社債に信用保証協会の保証を付す等、中小企業の社債発行を促進するための方策について、早期に結論を得るべく検討するとともに、私募債に関する一定の情報の入手を可能とした上で、6月末までを目途に私募債の転売制限を撤廃し、中小企業の資金調達の円滑化を促進する。
  2. 土地の整形・集約化と都市再開発の促進
    複雑に絡み合った債権債務関係の整序を前提に、いわゆる虫食い地・低未利用地の整形・集約化を進めることにより、土地の付加価値を高め、これらを活用して都市再開発を積極的に推進する。
    • (1)都市再開発を強力に進めるための仕組みづくり
      1. 都市再開発事業を迅速化するよう、特に緊急に再開発を促進すべき地区について、建設大臣が積極的に再開発事業を後押しする手続を確立する。
      2. 都市再開発法の認可手続を迅速化するよう地方公共団体を指導するとともに、引き続き民間再開発を円滑に進めるための方策について法制面の課題を含め検討する。
      3. 散在する低未利用地の集約や土地の整形化により土地の有効高度利用を図る敷地整序型土地区画整理事業について、支援の充実を図りつつ推進する。
    • (2)住宅・都市整備公団を活用した土地有効利用のための事業の推進
       住宅・都市整備公団の技術力とノウハウを集中的に活用し、低未利用地における再開発、まちづくりの推進を図るため、公団内における土地有効利用事業推進本部(仮称)の設置、土地取得のための臨時の出資金・財政投融資の適切な活用など、公団を活用した新たな仕組みを整備するとともに、官民共同による取組みを推進する。
    • (3)民間都市開発推進機構を活用した土地の流動化・有効利用のためのプロモート体制の構築等
       土地の有効利用を円滑に推進するため、民間都市開発推進機構の土地取得枠を拡大するとともに、同機構に時限的に都市開発・金融・行政・法律等の専門家集団からなる都市開発プロモート体制(民間再開発支援のためのセンター)を整備し、関係機関と連携して土地の有効利用のための情報交換、民間都市開発プロジェクト等に対する助言、情報提供、計画の提案等を積極的に行う。また、民間都市開発推進機構の土地取得・譲渡業務の拡充を行う。
    • (4)都市再開発等に対する信用補完の充実
      1. 優良な都市の再開発等を進めるため、民間からの資金調達に対し、日本開発銀行、住宅金融公庫等の政府系金融機関による信用補完の充実を図る。また、財政投融資等の適切な活用を図り、プロジェクトファイナンス的な手法により、日本開発銀行の融資等の活用を図るとともに、住宅金融公庫、民間都市開発推進機構の融資、参加業務等の拡充を図る。
      2. 特定目的会社の発行する資産担保証券で、優良な都市再開発事業等のプロジェクト性のあるもので保証を要するような場合、民間金融機関等が保証を付すことが困難であり、かつ、当該プロジェクトが社会的に意義が高く政策的に支援する必要があるものについて、日本開発銀行が保証を付すことを検討する。
  3. 都市再構築のための公的土地需要の創出
    現下の経済情勢の下、民間の事業意欲が大きく後退していることを踏まえれば、都市の再構築に当たって国・地方公共団体が積極的に役割を果たしていくことが必要となっている。このため、防災対策、高齢者福祉、中心市街地活性化等都市の再構築のため必要となる公的土地需要への積極的な対応、民間需要不足への補完のための諸施策を広範に講じる。
    • (1)防災性の高い安全なまちづくり
      1. 都市計画道路等の整備の促進を図るための公共用地の先行取得の推進やグリーンオアシス緊急整備事業(防災性向上に資する公園緑地の整備)の拡充等を行う。
      2. 避難地・避難路となる道路・公園の整備と借地借家法の特例の活用等による建築物の建替え・不燃化の促進等により、密集市街地の解消に向けた取組みを強化する。
    • (2)高齢者・障害者等にやさしいまちづくり
      1. 新ゴールドプラン、エンゼルプラン、障害者プランによる施設整備の前倒しを行うとともに、地方公共団体が一定の要件を満たす特別養護老人ホーム、身体障害者療護施設等を建設運営する社会福祉法人に貸し付ける目的で用地等を取得する場合に地方債措置を講じる。
      2. 民間住宅等の買取り・借上げも含め、公営住宅の供給を推進するとともに、公営住宅と福祉施設の併設、福祉と連携を図ったシルバーハウジングプロジェクトなど高齢者向け公営住宅の供給を推進する。
    • (3)中心市街地活性化などによる都市の再生
      1. 空洞化の進行している中心市街地の活性化を図るため、中心市街地法に基づき、商業、業務、居住などの都市機能の集積・再配置、道路等の基盤施設の整備を推進する。
      2. 多目的公共空間の創出による都市再開発を促進するため、市街地再開発事業による保留床等を多目的公共空間として活用する場合の支援策を講じるとともに、国庫補助事業及び地方単独事業を活用した公の施設としての民間建築物の買取りを推進する。
      3. 都市構造再編プログラムに基づき都市計画道路の整備を推進し、民間活力を活用した市街地整備を誘導する。
      4. 公共用地や代替用地等を先行取得することにより、将来のまちづくりへの積極投資を促進する。