サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する専門調査会 第5回 議事要旨

第5回 議事要旨

開催要領

  1. 開催日時:2001年5月11日(金曜日)15時30分~17時00分
  2. 場所:内閣府542特別会議室
  3. 出席委員
    会長:牛尾 治朗 ウシオ電機(株)代表取締役会長
    専門委員:大田 弘子 政策研究大学院大学助教授
    同(会長代理):島田 晴雄 慶應義塾大学経済学部教授
    同:樋口 美雄 慶應義塾大学商学部教授
    ※経済財政諮問会議の本間議員、吉川議員がオブザーバーとして出席

議事次第

  1. 開会
  2. 「サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する専門調査会緊急報告」について

配布資料

  • 資料1 サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する専門調査会(第4回)議事要旨(案)
  • 資料2-1 サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する専門調査会緊急報告(案)
  • 資料2-2 サービス産業雇用創出の例示(案)

概要

島田会長代理より開会の挨拶及び議事の説明があった後、専門調査会(第4回)議事要旨が諮られ、公表されることとなった。

緊急報告について

(島田会長代理)これまでの4回にわたる議論等を踏まえ、委員間で作成した緊急報告(案)について報告させていただく。

  • 本報告は大別して(1)政策的な意義と雇用創出の例示、(2)そのために必要なシステム改革の具体的提示、から成っている。雇用創出の例示に挙げられた数字については、最終的にはもっと詰めていく必要があるかもしれない。
  • 政策的な意義としては、不良債権の早期処理等後始末型の構造改革が急がれる中、それに伴う痛みに耐えるために、雇用創出型の構造改革を提示したいということである。雇用創出型の構造改革は、消費の増大とそれによる雇用、所得の造出と、経済活性化の好循環を生み出すことを可能にするが、より大局的には、生活者が安心と真の豊かさを享受できる本当の先進成熟経済の経済構造の構築を可能にする。
  • 雇用創出型の構造改革の実行により、生活の向上と経済の活性化が図られ、これから5年後に500万人の雇用創出が行われれば、失業率は4%以下の水準に引き下げられるというシナリオを示したものである。
  • 雇用創出の例示において注目した産業は、過去10年で特に雇用の造出が大きかった分野であり、いずれもストックの価値を最大化するのを助けるサービスである。これらの分野においては、第3次産業における雇用が90年代に12%伸びていた中で、22%の伸びを示している。この伸びをさらに加速させることにより、ストックの質の向上、使用価値の最大化が図られるものと思われる。以下、個別分野ごとに説明する。
  • 個人・家庭向けサービスは、家事や庶務代行サービス、健康増進サービス、移動支援サービス、資産運用、医療情報サービス等コンシェルジェサービスを包含した概念である。諸条件の整備が進めば195万人程度の雇用増が見込まれる。
  • 社会人向け教育サービスについては、高齢化と技術変化が加速する中、社会人のスキルを常にアップデートしていくことが非常に重要になっている。生涯教育や高度な職業教育について、アメリカ並みのサービス水準が実現すれば、20万人程度の雇用増が期待される。
  • 企業・団体向けサービスは、企業や自治体などのITを活用した管理や運営の効率化の動きの中で出てくる、専門的な情報支援サービスやサードパーティロジスティクスなどの物流支援サービス、人材派遣サービス等である。これらの分野は非常な勢いで伸びており、今後5年間で90万人程度の雇用増が見込まれる。
  • 住宅関連サービスについては、現在供給過剰な状態にある住宅ストックを、今後社会資本として大切にメンテナンスし、使用価値を高水準で維持する過程において、リフォーム、メンテナンス、管理サービスや住宅の評価、売買の仲介、情報提供等のサービス分野で55万人程度の雇用増が見込まれる。
  • 子育てサービスについては、エンゼルプラン等に基づいて保育所の整備が進められているが、大都市を中心として供給が不足している。また放課後児童クラブも十分でない。民間活力の活用等でこれらの整備が進めば、35万人程度の雇用増が見込まれる。
  • 高齢者ケアサービスについては、介護施設の供給が不足している一方、在宅介護の問題は多い。特に、中産階級層に対する施設サービスが不足しており、施設サービスを受けながら介護保険による手当てもされるケアサービスを展開する必要がある。行政財産の民間による活用をはじめ、このために必要な制度整備が進めば、50万人程度の雇用増が見込まれるとともに、施設サービスに対する需要を満たすことが可能になる。
  • 医療サービスについては、日本の医療制度は国民皆保険の下で均質的で安定したサービスを保障するように設計されているが、非効率な部分も抱えている。医療情報の開示や第三者評価の促進、診療報酬体系の見直し等により効率化を進めれば、医療サービスの質の改善や選択肢の多様化が図られ、そのために必要な雇用が55万人程度創出されるものと期待される。
  • リーガルサービスについては、司法基盤が経済システム、社会システムにおける利害調整や事実上の紛争処理機能を担う時代が来ている。法曹三者以外の隣接職種や官庁、企業の法務担当者等も含めた広義のリーガルサービス従事者について、20万人程度の雇用増が見込まれる。
  • 環境サービスは規模は小さいが過去10年間で一番大きく伸びてきた産業であり、今後5年間でも10万人程度の雇用増が見込まれる。
  • 日本経済の再活性化のためには地域の雇用創出が重要であるが、地域は中央からの財政補助に依存する傾向を強めており、自立の活力をそぐ結果となっている。地方交付税の抜本的見直しと併せ、地方行政に対する国の関与の見直し、国庫補助金の見直し、国・地方の税財源配分の改革を果敢に実行し、地域の財政運営の自立度を高め、サービス育成、雇用創出の機会の創出を行うことが必要である。
  • 厳しい財政制約下で、成熟社会の生活者の多様なウォンツによりきめ細かく柔軟に対応するためには民間活力の効果的な活用が不可欠。このため、民間活力を発揮させるシステム改革により、政府の役割を生活分野の直接市場管理から、情報提供と監視、参入障壁の撤廃と事後規制といったインフラを整備した上での間接管理に転換する。
  • 具体的には、民間の新規サービスを不当に妨害しないよう、ノーアクションレター制度を全ての行政分野で実施することや、民間の参入障壁となる参入規制や公的機関への一方的な助成による競争条件の格差をなくすことが必要である。
  • 生活サービスの提供方式として、公のストックを活用し、民による効率的で安価で良質なサービスを提供するという公設民営方式が有効な仕組みである。その実現のために行政財産の民間の使用に関する制限を改革する必要がある。
  • その他、資本市場の障碍となる規制・規則の撤廃・改正、商法の総合的な見直し、労働時間の短縮を進め、人々が所得と時間を合理的に組み合わせて使えるような社会システム改革が必要である。
  • 雇用創出型の構造改革実現のための重要な鍵となるのが労働市場全体のバンピング(玉突き)型の労働力の再配分による雇用構造のフレキシブルな転換であり、そのためには“転職が怖くない”労働市場システムを整備する必要がある。
  • 具体的には、民間の就職情報提供、能力開発、就職斡旋の一体化サービスの提供、人々のキャリアチョイスを助けるためのキャリアカウンセラー機能の充実、ホワイトカラーの転職を容易にするための職務内容の社会的な明確化と標準化が必要である。
  • 雇用に関する性差別の禁止や、年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けての環境整備についても、鋭意進める必要がある。
  • 働く人々の自主的な能力開発を促進するため、自己啓発投資への助成が行われているが、更なる拡充や、また課税最低限を下げるなどメリハリをつけた税制体系にすることを条件に、優遇税制の導入を検討する余地がある。
  • 育児等で退職した者などの再就職希望者に対する教育訓練、職業能力開発に対する支援の充実も必要。
  • 現在の退職金税制は長期勤続のほうがずっと有利な仕組みになっており、転職が不利にならないよう、401k制度のように転職に対して中立的な制度に見直す必要がある。
  • 雇用保険制度は今年度から解雇された失業者には手厚い給付が行われるように制度改正された。反面、自己都合による失業者には必ずしも十分でなく、転職の抑制要因となる可能性がある。一方で、モラルハザードの懸念はあるが、積極的な転職意欲を損ねないような制度運用にする必要がある。
  • 現在の解雇法制は、労働法上単純で抽象的に規定されているため、運用において迅速な処理ができなかったり、不透明な部分もある等、企業側、労働者側双方に問題が生じている。ADR(裁判外紛争処理)の整備・充実も含めた改善が必要。
  • 例えば配偶者特別控除制度により、一定以上の労働に対する意欲が損なわれるという面がある。また、社会保険制度においては、短時間雇用者や被扶養配偶者に対する配慮に欠ける面がある。こうした制度を女性の就業を促進するような形に見直す必要がある。
  • 労働者派遣期間の大幅な延長等の規制緩和を進めるともに、社会保険制度など制度面での弾力的な適用を可能にすることで、勤労者が多様な就業形態を柔軟に選択できるようにする必要がある。
  • 本報告の提言については、サービス分野以外の雇用創出にも資するものと考えている。また、経済財政諮問会議において雇用のセーフティネットに関する総合的な議論が行われる際に、本報告が活用されることを大いに期待したい。

(大田委員)「雇用構造の転換を進めるシステム改革」に挙げられている具体策のうち、配偶者特別控除制度の見直しについて、女性の就業意欲を阻害しないよう、配偶者特別控除制度とともに、配偶者控除制度も見直す必要がある。

(島田会長代理)配偶者特別控除は世帯の税負担の格差をやわらげるために後から追加したものであり、もともとの配偶者控除が問題だ。

(樋口委員)配偶者特別控除は、所得金額に応じて適用の仕方が2つのケースに分かれる。一定額以下のところでは、配偶者控除プラス配偶者特別控除という形で、上乗せして控除ができる仕組みになっている。

(島田会長代理)極端に言えば、配偶者控除そのものをなくして、基礎控除にすることもありうる。

(牛尾会長)現在の制度では配偶者控除と配偶者特別控除を合計すれば76万円になる。これをなくすかどうかというのは大きな問題だ。例えば、控除をなくし、歳出面で手当をする、という方法もあり、この点については議論が必要だ。

(島田会長代理)橋本総理のいわゆる6大改革の際、今のような議論について提言したところ、家族制度についてどのように考えるのか、という強い反論があった。私としては、配偶者控除については、妻が働いて所得を得れば夫の所得控除が減るという程度の話で、家族制度と大きな関係があるとは考えていない。

(牛尾会長)この問題は、企業側にも問題がある。企業の賃金の中に配偶者手当や扶養者手当といった手当がついているが、現実的に考えた場合、能力と賃金、といった対応関係からいえば、家族を持っていようが、子供を持っていようが、企業のコーポレートガバナンスからいえば関係がないことだ。そのため、家族制度等について考えるとき、行政側だけでなく、企業のそのような制度も併せて考えなければならない。

(島田会長代理)扶養手当については無くしている企業が結構多いのではないか。

(牛尾会長)管理職に対しては3分の1程度の企業は無くしているのではないか。

(島田会長代理)一方で、扶養控除や配偶者控除を受けていることが、社宅の入居条件になっているところが多く、配偶者が働き出したとたんに社宅から出て行かなければならない、という仕組みになっている企業が多いのではないか。こうした制度は、女性の就業にとって大きな障害となる。

(牛尾会長)社内結婚の場合は入居を優先させるといった逆の例もある。

(島田会長代理)家族問題については、税制、企業の問題を併せて、きちんと議論する必要がある。

(牛尾会長)今後、コーポレートガバナンスの観点から、税制、給与の問題について、パッケージとして提言できるよう検討する必要があるのではないか。

(大田委員)「民間活力を発揮させるシステム改革」に挙げられている具体策のうち、「厳しい財政制約に配慮しつつ」、経営主体による助成や競争条件の格差をなくすとともに助成対象の民間への転換を進め、利用者の選択を機能させる、という提案について、財政制約が問題なのではなく、要は競争条件をイコールにしようということである。また、ノーアクションレター制度について「日本版」とあるのは何か理由があるのか。

(事務局)ノーアクションレター制度が外国の制度を示すものであるから、「日本で行われる」、という意味を付与したものである。日本での正式名称は「法令適用事前確認手続き」である。

(牛尾会長)それでは、「法令適用事前確認手続き(ノーアクションレター制度)」という表記にすればよい。

(大田委員)雇用創出の例示における「医療サービス」の中で、償還払い制度の導入が提案されているが、厚生労働省は、導入によってかえってコストが高くなったり、非常に手間がかかったりすると反論している。これについてはどうか。

(島田会長代理)医療サービスにおいて提案した項目については、それによって、医療にかかわるそれぞれの主体に対し、効率意識、コスト意識を持ってもらうことを企図している。診療報酬体系の見直しは、一種の標準医療費制度であるが、この制度は医者のコスト意識を高めるものである。薬価差の縮小についても、非効率な薬屋の淘汰を促すことで、効率性を高めるものである。その上で、患者のコスト意識を高めることが必要であり、そのために償還払い制度の導入を提案している。患者負担を増やすためのものでなく、あくまでコスト意識を持ってもらうためのものである。

(牛尾会長)償還払いというのは、まず始めに患者が費用を全て払い、後で保険者に対し請求するというもの。患者にも手間がかかるので、不必要な治療は減る。他の国ではやっているところもある。

(島田会長代理)導入した国はあるが、だんだんと減っているのではないか。

(本間議員)これは、コストを患者に意識させることにより、来院者を少なくするということを企図するものであり、処理コストのような部分をあまり強調して、提案から落とす必要はないのではないか。

(牛尾会長)償還払い制度の下では、例えば、今まで治療に2000円払っていたのが、まず1万円払って8000円戻ってくるということになるので、1万円の立替えが生じる。

(本間議員)それについては、現在も患者が後で支払い明細を受け取るというような形はあり、部分的にはもう行われている。

(牛尾会長)制度の導入に対して、医者の反対は強いだろう。患者にしてみれば、高額を要する余分な検査はしない、ということになる。

(島田会長代理)実際、制度の導入によりどれだけコストがかかるのか、ということについては情報も十分でないため見積もることはできないが、アメリカの証券市場が、監視機能を担うSECに相当数の職員をおいてチェックをしているように、効率的な市場システムを維持するためにコストがかかるのは当然である。そのことと、プレイヤーがコスト意識を持つような仕掛けにするかどうかというのは別問題である。

(牛尾会長)やはり行政コストはかかる。

(島田会長代理)どのくらいかはやってみないと分からないのではないか。

(樋口委員)(償還払い制度を導入している)フランスはかなりかかっているのではないか。

(本間議員)それは、e-ガバメントをやろうとしているのだから、簡単にクリアできる問題ではないか。

(島田会長代理)国民にコスト意識が欠如しているのが問題だ。

(本間議員)国民の問題というよりも、むしろ情報が欠如していることに伴うモラルハザードが起きているということだ。

(樋口委員)税制についても然り。企業が肩代わりして、申告までしてもらって税金を納めてもらっている。

(牛尾会長)本来ならば、国民一人一人がやるべきことだ。

(島田会長代理)情報がないからタダだと思っているわけで、実際はものすごくコストがかかっているということを知れば、自分の健康は医療制度が守ってくれるのではなく、自分が守るものだという自覚が芽生え、健康的な生活を送るようになる。

(樋口委員)今までは国が自覚しないで済むようなシステムを作ってきたということだ。

(本間議員)患者というのは何も分からない愚かなものだ、ということを前提に社会保証制度全体が出来上がっているということ自身が、非効率な需要を生んでいるということだ。そこをきちんと内部化させるような形でやりましょう、ということだ。

(島田会長代理)こうしたことについて、経済財政諮問会議において、公開の場で議論ができるような仕掛けを作っていただきたい。

(牛尾会長)「医療サービス」のところで、混合診療の自由化についても挙げられている。混合診療の自由化とは、保険外診療についても、保険診療と併せ、一層の自由化を図っていくことだが、これにより、医療サービスが非常に増加する。

(大田委員)保険外診療の自由化、との表記のほうが分かりやすいのではないか。

(牛尾会長)現在のシステムでは、希望者が予約料を追加的に支払えば優先的に予約を取れるようなシステムがない。また、情報の透明性を高め、患者が自ら求めるサービスに応じた医療費を支払うような仕組みが必要ではないか。そうすることにより、医療機関の間で競争が生まれ、医療サービスの雇用が増えるが、行政コストは増えない、という仕組みができる。

(小林政策統括官)「雇用構造の転換を進めるシステム改革」で挙げられている具体的項目の中に、「年齢にかかわりなく働ける社会の実現に向けての環境整備」とあるが、「年齢・障害」としてはどうか。

(牛尾会長)「雇用構造の転換を進めるシステム改革」で挙げられている具体的項目については、今後、派遣期間の延長や有期雇用の検討などの提言の具体的内容についてもきちっと示す必要があるだろう。

(小林政策統括官)「総理も、国会で有期雇用の検討について答弁されている。

(牛尾会長)アメリカでは有期雇用は当然のことだ。

(島田会長代理)派遣については、2年前までは期間1年という制約がかかっていなかったのではないか。

(樋口委員)特定の26業種についてはかかっていなかった。

(牛尾会長)単純労働については1年以内ということだ。

(本間議員)年限を区切る、というのは差別ではないのか。

(牛尾会長)派遣で働くという地位を考えてのことではないか。

(本間議員)終身雇用を前提に、有期雇用について、差別をしているということではないのか。

(樋口委員)派遣労働者の雇用主は派遣元会社であり、その雇用関係は1年に限られているわけではない。1年に限られているのは、派遣先と派遣元の契約であり、つまり、労働者にとっては働く「同一の場所」が1年以内だということだ。

(牛尾会長)労働者にとってみれば、これを3年程度にしてほしいということだ。

(島田会長代理)派遣法改正の経緯としては、従来26業種に限られていた派遣の範囲を広げよう、という方向で進められた。それには労使合意が必要であり、経営側は当然自由化に意欲的だったが、労働側でその見返りとして1年以内という期限を設けるということで折り合った。その発想の背後にあるのは、過去の臨時工などは恵まれない立場で、派遣労働者は常に恵まれない立場であり、常にノーマルなのは正規雇用だ、という考え方だ。

(本間議員)そうした考え方は、奴隷制における雇用を前提としているのではないか。お前の権利を私が守ってやる的な発想が労働行政にあるのではないか。

(樋口委員)派遣法の改正がなされたときに、3年後の見直し条項を入れている。3年後は来年であり、どういった内容になるかにかかわらず、必然的に見直しはしなければならない。

(牛尾会長)本間議員が言う通り、終身雇用をもって美徳とする、という発想をこの際止めて、70歳まで働く社会を前提に、50年間で能力に応じて3度4度と自由に転職するということが幸せだ、というようにコンセプトを変えないといけない。しかし、厚生労働省の根底に、終身雇用でずっと保護することが弱きものを助けることだ、という思想があるのではないか。

(樋口委員)かつてそうだった厚生労働省も、ここのところ変わりつつある。今年3月の立法化で、軸足はほとんど逆になっている。

(島田会長代理)厚生労働省よりむしろ労働組合が問題ではないか。労働行政は、労使の合意を得なければできない仕組みになっている。

(牛尾会長)(雇用の流動化を)もしやろうとすれば、組合は1社1組合ではなくて、横割りのトレードユニオンにならざるを得ない。しかし、これは世界的に成功した例がない。

(樋口委員)組合といっても正社員の代表者が組合員であり、官労使の協議の場である審議会にはその人たちが出てくるわけで、派遣労働者が出てくるわけではない。そのため、派遣労働者の意見が伝わりにくい、という問題はある。

(牛尾会長)3年の有期雇用が認められれば、雇用は急激に増える。それが現行制度では認められていないために、残業で調整しているということだ。

(本間議員)雇用主側から見ても、長期雇用を前提にしてしまうと、固定要因になってしまい、雇用が生み出せない状況を作り出している。

(島田会長代理)長期雇用制度は、重工業中心で高度成長した時代にはぴったりの仕組みだ。しかし、技術革新が激しくなり、また産業のサービス化が進むと、雇用期間は短いほうが有利な場合が出てきたり、働き手も女性や、短時間労働のほうがいいというニーズも出てきている。外国人にしてもそうである。

(本間議員)キャリアアップをして、人生楽しく生きましょう、という発想が求められる。

(牛尾会長)キャリアアップの方法の価値観が増えてきたのは一番良いことだ。

(吉川議員)実質的なワークシェアリングになる。

(島田会長代理)労働者のほうが労働にフレキシビリティーを求めているという面があるのに、組織化された労働組合の古い考え方が、労働市場の変化に追いついて行ってないということだ。このあたりについても議論を深めたい。

(牛尾会長)労働組合の組織率は既に15%程度まで落ちている。

(島田会長代理)労働組合の利益を代表するのではなく、労働者の利益を代表するような組織に変わるということだ。

(本間議員)雇用の受け皿について、NPOにも触れる必要があるのではないか。

(島田会長代理)子育てサービスで記述している学童保育などは、NPOが非常になじむ分野だ。特に、定年退職の人の受け皿になるのではないか。

(牛尾会長)環境サービスの分野もNPOがなじむ分野だ。

(小林政策統括官)「「民間活力を発揮させるシステム改革」のなかで、NPOを含めた民間活力の活用、としてはどうか。

(本間議員)報告の全体として、雇用主側を問題にしているのか、雇用者側を問題にしているのか、という書き分け方がやや曖昧で、それに対しインセンティブを付与する場合も、どういう具合に仕分けをしていくのかということが分かりにくくなっている。

(牛尾会長)雇用の供給側と需要側で、供給側から書いている部分と、需要側から書いている部分がやや混合している。マーケットと商品が混ざっているということだ。
混在している最大の理由は、サービス業において、少なくとも日本の実情では、現状で供給不足になっている部分が半分程度有り、本報告において、そのような部分については供給中心に記述している。一方、需給がバランスしているところについては、需要側から記述しているためだ。

(島田会長代理)基本的には、日本のサービス業の世界では、人々の需要に応えるサービスがない。整理すると、以下のようになる。

  • 消費者が求めているサービスが提供されていないため、支払能力は募っているが、サービス産業が起きてこない。これは、サービスに対する需要の話。
  • サービスが盛んになると、サービス産業が増え、雇用の需要につながるわけで、我々が期待しているのはこの点である。

(吉川議員)考え方としては、サービスに対する需要は潜在的に非常に大きく、そこでネックになっているのはサービスの供給であり、規制改革等で条件を整えれば、サービス部門における労働に対する派生需要がいくらでも出てくる、ということではないか。

(樋口委員)但し、話はそこで終わらず、今度は働く側のインセンティブをどう高めるか、という考え方が報告に入っている。

(本間議員)その点について、それを推進していくための方法が、規制改革や制度改革等いろいろ挙げられているが、税制や政府支出など政府の関与の仕方も含め、もう少し整理して分かりやすくしていただきたい。

(樋口委員)民間活力を発揮させるシステム改革として、制度の規制緩和を求める話、税制改革の話、国民の理解を求める話の3つの質の異なるものが並んでおり、分かりにくくなってしまっている。

(島田会長代理)雇用の需給とサービスの需給の書き分けについては、今後記述に厚みを持たせる中で解決する。
もう一つ、システム改革のメニューが混在している話についても、個別のサービス分野の中で必要なメニューについて明確化していきたい。

(本間議員)また、報告に盛り込まれた施策を行っていくとき、例えば今まで公的部門により提供されていたサービスが、民間にアウトソーシングされる、その時に質的な担保をどう取るかというのが非常に重要な問題になる。役所の議論では、規制緩和をすると、社会的な安全の部分が保証されないからダメだ、というのがずっとある。そうすると、マーケット化したときの保証について、それは市場の実績基準できちんと担保する、ということを明記したほうが、役所との関係では特に抵抗が少なくなるのではないか。また、実績基準については、様々な格付けやNPOによる評価等が雇用創出の問題としても扱われており、その中で例えば地方の行政の自治能力を格付けしよう、という議論も出てきている。

(島田会長代理)報告においても、住宅関連サービスとして、住宅の品質評価などで雇用創出を見込んでいるところだ。

(本間議員)報告において、例えば大学の学部・学科設置の自由化と書いてあるが、これについても、役所による事前の協議審査によるチェックでなく、事後的に、実績によって大学を検証するということに移行するということだ。

(島田会長代理)トータルで民間活力を導入するということは、市場機能を担保するために、情報提供、審査、その審査の結果による処罰、が必要だ。

(本間議員)サービス部門というのは人間にかかわる問題であり、きちんとした品質を保証しないと、弱者が非常に知識的な被害を被る可能性がある。そこをどう担保するかも問題だ。

(牛尾会長)日本人はモノに対する評価能力は比較的高いが、サービスに対する評価に関しては極めて主観的になり、非常に慎み深くなって評価を避けるところがある。そのため、現在、新しい情報社会の中で、日本人の人間性や日本社会の特殊性が問われているが、サービスという目に見えないものを評価することができるかどうか、自分の意見が言えるかどうかということが非常に重要なポイントである。
例えばアメリカでは、劇の上演が行われる際、初日の劇評の結果次第では3日で閉めてしまう。つまり、そのような評価が初めにないとだめだということだ。日本では評価がなされない。

(本間議員)品質評価される部分で価格付けがなされるという仕組みが必要だ。日本のサービス業が劣悪なのは、品質の比較ができず、価格と品質のマッチングがきちんとできていないことに問題がある。

(大田委員)「地域の雇用創出」の中で地方交付税制度の抜本的見直しが提言されているが、「見直し」でなく「改革」としていただきたい。単なる見直しでなく、改革が必要だ。補助金の削減によって交付税総額を減らすだけではダメだ。

(吉川議員)不良債権処理のような後始末型の構造改革だけではうまくいかず、前向きの、広い意味での構造改革が非常に重要であるというのはその通りだ。
これから5年後に500万人の雇用創出が期待できるとのことだが、その中で取り分け即効性のあるようなところはあるのか。

(島田会長代理)例えば、「高齢者ケアサービス」について、需要の増大に対し供給が遅れているため、報告で指摘しているようなケアハウスの供給体制が政策措置によって整備されれば、10万人の雇用は確実に実現される。子育てや学童保育についても同じである。
これとは別に、市場の自然発生的な需要創出のメカニズムを通じて雇用創出が図られるのは、「企業・団体向けサービス」である。例えば、ソフトウェアをそれぞれの企業にとって使いやすくするように適応させ、提供するようなサービスが急速に展開している。これに、例えば現在三重県が近隣県と集合してインフラ作りを進めているが、そうした動きと合わされば非常な相乗効果を生む。

(樋口委員)報告でいろいろな条件整備として提言しているものには、法律改正など制度の大掛かりな変更を必要とするものや、あるいは通達変更で足りるものなどがあり、子育ての分野などには軽微な制度変更によって雇用創出が可能になるものがあるということだ。

(島田会長代理)また、500万人の雇用創出というと数字として非常に大きいような感じがするが、80年代の10年間で日本でもサービス業で既に650万人の雇用が創出されており、報告で提言した政府による制度整備が前倒しで進めば、雇用創出のスピードが早まるということは十分可能である。そうであれば、500万人という数字は決して荒唐無稽の数字ではない。

(樋口委員)現実には、公共事業が時代に逆行するような需要を作り出すということがあったのに対し、今回の報告は、むしろ将来的に必要となる需要を前倒しで作り出そう、ということだ。
また、女性の就労の問題についても、まとまった記述が必要かと思うがどうか。

(牛尾会長)そうした考え方を述べることは必要だろう。
女性の就労の問題に関しては、これからは男性も女性も全員70歳まで働くということを前提にして、専業主婦や60歳で退職する人を例外的な存在として考える。こうした前提に立って社会保障制度を考えるべきではないか。

(島田会長代理)配偶者控除の見直し等に踏み込めば、結果として女性の雇用を促進するのではないか。

(樋口委員)発想の転換というのを書くということだ。

(牛尾会長)男女共同参画はまさにみんなが働くということだ。

(島田会長代理)それは決して女性のためだけのものではなく、現在行われているのは、例えば女性が子供を産めるように、男性に産休を取得させよう、ということである。

(牛尾会長)やはりそうした考え方も重要だろう。

(樋口委員)誰もが性や年齢、障害にかかわりなく参画できる社会、ということだ。
そうであれば、やはり個人に番号が必要、という世界になるのではないか。

(牛尾会長)納税番号というと抵抗があるので、セキュリティーナンバーとでも言うべきか。治安維持の観点からも、ある部分は管理していかないと危険だ。

(大田委員)年金番号導入のときが導入のチャンスだった。しかし、総務省も住民台帳の番号を作ってしまっているため、また議論がややこしくなる。

(牛尾会長)小泉内閣はもっと大きなチャンスだ。

(島田会長代理)報告のなかでは、学部の自由化は強い抵抗を受けた。つまり、きちんとした内容を持っている大学と、不法就労の外国人の温床となっているような日本語学校が同じ扱いになってもいいのか、という議論だ。

(牛尾会長)市場に委ねると上手くいくかいかないか、どちらを信じるかということだ。

(島田会長代理)文部科学省は、教育基本法や学校教育法のもとで教育制度がきちっとできているからこそ、教育へのコントロールができ、国民がきちんと教育を受けることができて、日本国が成り立っているという論拠。つまり、国民の教育は文部科学省が責任を負っていて、制度を一歩でも外せば、国民を教育できなくなる、という発想だ。そうした論理と、自由な、クリエイティブな教育を可能にするための制度の自由化の論理を、公開の場で徹底的に議論することになっている。
それでは、本日の議論を踏まえ、微修正をした上で、本調査会の緊急報告について取りまとめることと致したい。
ここで、牛尾会長よりご挨拶をいただきたい。

(牛尾会長)本調査会で検討をしている間に、政権が交代し、大変な変化の時期に入ったと認識している。我々も、相当意識を変えてやらなければ、従来とはまったくスピードが変わってしまったという気がしている。
政府部内にも、「産業構造改革・雇用対策本部」が本日設置され、本調査会とも連携しつつ検討を進めると聞いているが、不良債権の処理を進めた場合の雇用への影響に対するセーフティネットについても、本調査会での検討事項が対応していくということで、非常に大事なポイントになってきたと認識している。
取りまとめられた緊急報告については、あくまでも緊急的なものという位置付けであり、竹中大臣からも、このような政府の会議の報告としては初めての事例となるが、今後、オープンソースムーブメントというやり方で、国民の対話を通じて進めていきたい、という話があった。
経済財政諮問会議では、6月末を目途に来年度予算の骨太の方針を取りまとめることとしているが、緊急報告に盛り込まれた内容についても、十分に反映させていきたいと思っている。また、今後、様々な雇用の問題についても、さらに議論を深めていきたい。
わずか2ヶ月という短期間の中で、本報告を取りまとめられた委員各位のご尽力に敬意を表したい。

(以上)