サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する専門調査会 第4回 議事要旨

第4回 議事要旨

開催要領

  1. 開催日時:2001年4月26日(木曜日)14時30分~17時30分
  2. 場所:内閣府542特別会議室
  3. 出席委員
    専門委員:大田 弘子 政策研究大学院大学助教授
    同(会長代理):島田 晴雄 慶應義塾大学経済学部教授
    同:樋口 美雄 慶應義塾大学商学部教授
    ※牛尾会長は所用のため欠席

議事次第

  1. 開会
  2. 関係省庁ヒアリング(時間はおおよその目安)
    • 総務省(14時30分~15時00分)
    • 経済産業省(15時00分~15時30分)
    • 文部科学省(15時30分~16時00分)
    • 厚生労働省(16時00分~16時30分)
    • 国土交通省(16時30分~17時00分)
    • 法務省(17時00分~17時30分)
  3. 第5回会合等について

配布資料

  • 資料1サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する専門調査会(第3回)議事要旨(案)

概要

島田会長代理より開会の挨拶及び議事の説明があった後、専門調査会(第3回)議事要旨(案)が諮られ、出席していない委員の了承を得られ次第、公表されることとなった。

総務省ヒアリング

(総務省)地方財政全般について簡単にご説明申し上げる。

  • 地方財政は非常に厳しい状況にあり、毎年多額の財源不足額を出している。13年度についても一般歳出について前年度比▲0.6%と切り込みを行ったが、それでも地財対策前で10.6兆円の財源不足を生じている。
  • 財源不足については、従来国の特別会計から不足分を借り入れることによって埋め合わせをしていたところであるが、地方の借入金残高が13年度末で188兆円と見込まれるなど巨額に達したため、13年度より責任関係の明確化、透明化を図るべく、不足分の1/2を特例地方債、1/2を国の特例加算という形で分担するという仕組みに変えたところ。
  • ただし、地方の借入金が増大する主因として、(1)国が借入金に依存した財政運営を行っている結果、地方財政も借入金に依存せざるを得なくなるという構造的な問題がある、(2)景気対策のための公共事業追加や恒久減税により地方に財源不足が生じている、といったことが挙げられ、必ずしも地方固有の問題にとどまらない。
  • また、地方の一般歳出の7割は国の施策が大きなウエイトを占める公共投資、社会保障、教育の3分野であり、歳出規模の抑制のためには、こうした分野における国と地方の役割分担の見直しが不可欠である。
  • 現在、地方の歳入については地方税と交付税により賄われているが、今後、できる限り受益と負担を意識するという方向性からすると、地方税を増やしていくべきである。そのために、(1)国の関与を減らして、地方の自主的な財政運営を可能にする、(2)税源偏在の少ない税制を仕組んでいく、(3)行政サービスの地域格差をどこまで許容するかについての国民の合意、等が必要である。
  • また、現在の交付税制度についても、(1)基準財政需要額は定数削減や外部委託等も織り込んで計算するなど贅沢経費を含めていない、(2)交付税の算定の合理化を進めている、等の取り組みにより、財政の効率化を図っているところ。
  • 投資的事業をした場合の元利償還費の交付税算入という措置について、モラルハザードになっているのではないか、という議論があるが、地方債発行額に応じて元利償還費を交付税算入する措置について今後重点化するなど、地方債の起債についてもう少し抑制的に働くような仕組みについて、今後検討していく。
  • 合併についても、分権の受け皿として必要との認識の下、合併が促進されるようなスキーム作りに取り組んでおり、その中で前向きに取り組む自治体も増えてきている。

(樋口委員)基準財政需要額の算定に外部委託も織り込んでいるということだが、雇用に与える影響についてどう考えるか。また、地方自治体と第3セクターの関係、民間企業との関係について、どう考えるか。

(総務省)外部委託については、交付税においても外部委託を促進するインセンティブになるような算定をしており、積極的に取り組むというスタンスでやっている。
第3セクターとの関係については、自治体の責任は限られた法的な責任の範囲内にとどまり、第3セクターが経営危機に瀕したら地方財政が非常に厳しくなる、ということにはならない。ただし、第3セクターが地域経済に与える影響が大きいケースにあっては、自治体が地元の経済に一定の責任を持ってどこまで対応していくかという問題はある。それについては、それぞれの自治体において対応していくものと考えている。
また、最近は第3セクターについての反省にも立って、自治体におけるPFIの取り組みを促しているところである。

(島田会長代理)以下の点について教えていただきたい。

  • 地方の産業の自立は非常に重要だと考えているが、地方の考え方として、県外から資源を誘引して産業を興すという気持ちに乏しいのではないか。
  • いわゆるハコ物についての意識が強く、ソフト、サービスについては弱いのではないか。
  • 制度的な問題として、地方自治体が経費を節約した場合、留保分の扱いは基準財政需要との関係でどうなるのか。つまり、努力して税収を豊かにして経済的に自立をすれば得をするような仕組みになっているのか。
  • 経済財政諮問会議の「国と地方の関係」グループの議論において、補助金と交付税についてはなるべく明快に、単純化していこうという方向性が示されていると思うが、その中で特に事業の補助金の見直しについてどう考えるか。
  • 市町村の合併の目標はどの程度か。自治体が財政規律をしっかり持ち、それができないところは強制的に合併させるといったメカニズムがないと合併は促進されないのではないか。

(総務省)合併については、閣議においても「市町村合併後の自治体数を1,000を目標とする」という方針を踏まえることが決定されているところ。

(坂統括官)小規模団体において人口一人あたりの行政経費が割高になる傾向を基準財政需要に反映させるという「段階補正」について、これを見直せばいいのではないか。

(総務省)実際に人口密度が低ければ行政経費は余計にかかってしまう。段階補正は、規模が小さいところは経費が余計に掛かることを考慮するという面と、規模が大きいところは経費が掛からないことを考慮するという両面がある。段階補正をなくせば、大規模の団体には今までより多くの額を交付しなければならなくなり、難しい問題だ。

(坂統括官)合併のインセンティブにはなるのではないか。

(総務省)なるかもしれないが、それは結局交付税というものをどう考えるかというところに帰着する。

(島田会長代理)段階補正の考え方については、世間から見ると非常に複雑で分かりにくい。

(坂統括官)基本的に現状を追認しているということではないか。

(島田会長代理)その現状が、過去の段階補正でむしろ補強されてきたという面があるのではないか。

(総務省)そうした面はある。そこのところについては、ここ3年ほど簡素化しようとする方向で見直しを進めている。

(島田会長代理)簡素化の次のステップについても検討する必要がある。

(総務省)次の段階にいけるかどうかは、交付税というものをどう考えるかということ。現在の交付税の計算方法は、人口10万人の標準団体を捉えて基準額を算出し、それを個別団体に当てはめていくという方法をとっているため、規模の違いによる段階補正が必要であるが、そのときの補正をどういう形で行うのがいいかということ。

(島田会長代理)段階補正については、現状追認しているために、無駄が生じているのではないか。例えば、隣接する自治体で重複投資があり、整理統合が求められるような場合でも、段階補正は現状を追認するような仕組みになっている。

(総務省)そのことは、日本のインフラをどの程度整備するべきかという公共事業の整理の問題になる。
また、合併のために財政的にムチを振るう、ということはいろいろな面で難しいと思うが、そのため、我々としては簡素化という切り口で、ある程度今までの方向を変えていくというところで、どこまでできるかということではないかと考えている。

(島田会長代理)この専門調査会の観点は、雇用を生みたい、そのために産業を活性化させたい、ということであり、全国各地の人々が、真剣になって産業を興していくという気持ちを持てるような仕掛けにしたいというのがキーポイントである。

(総務省)その時に、日本の国民性かどうかという議論はあるが、ある程度どこにいても同じような行政サービスを受けられるのが良いのか、それとも行政サービスの水準が違ったほうが良いのかということについて、国民のおおまかなコンセンサスが要るのではないかと考えている。そこのところについては、ある程度のサービスの格差は当然出てくると思われるが、どのくらいの格差なら許されるのかということについて、国民のはっきりしたコンセンサスがないどころか、例えば税金についてみると、少しでも隣の自治体より高く取っただけで、非常に抵抗があり、国民の横並び意識が非常に強いというところにひとつの問題がある。

(樋口委員)以下の点について教えていただきたい。

  • 基準財政需要額の算定にあたり、民間委託による経費削減効果を反映しているとのことだが、民間委託によりなぜ経費が削減できるのか。
  • 経済学的に考えれば、国民が住む地域の選択は国民の選好にゆだねられ、他地域が良いということになれば地域間移動がおこるということになるが、旧自治省の施策では人が移動するというよりも財源が移動してしまい、その結果特に高齢者で地域間移動が非常に減ってきている。これについてどう考えるか。

(総務省)民間委託の経費削減効果については、民間と公務員の賃金の問題があると思うが、その前提として、そのサービスについて、公的な主体により安定的に、良質なものが供給されるべきかどうかという判断がなければならない。

(樋口委員)それは、公務のほうが良質のサービスを提供できるという前提があるということではないか。

経済産業省ヒアリング

(経済産業省)産業構造・雇用構造の観点から見た課題についてご説明申し上げる。

  • 経済活性化のために、経済のサービス化の流れに沿った諸制度の見直しと、高齢者の金融資産、実物資産の有効活用方策、が大きな課題と認識しており、このために取り組むべき具体的な課題として、(1)少子高齢化に伴う労働力人口の減少にどう対応していくか、(2)高齢者が保有する膨大な金融資産、実物資産をどう活用するか、(3)医療、介護、保育等の分野における規制改革をどう進めていくか、(4)円滑な労働移動と新たな雇用機会創出のための雇用システム改革をどう進めていくか、ということが挙げられる。こうした課題に取り組むにあたっては、諸課題の実施の目標と時期をはっきりさせることが重要だと考えている。
  • (1)については、労働力人口は2010年、2025年にはそれぞれ現在より相当大きく減っていく見込みであり、こうした減少を緩和するために高齢者の就労促進と女性のM字カーブの解消を目指すことが必要である。
  • 2010年、2025年の産業別雇用者数を産業連関表で推計すると、ビジネス支援産業、情報産業、医療福祉産業、余暇娯楽産業の分野で雇用者が大幅に増加するが、こうした産業は高齢者、女性の就業率が高く、高齢者、女性労働力の受け皿となることが期待される。
  • 実現のための具体的な施策として、高齢者の就業促進のためには募集・採用段階における年齢制限の是正、女性の就業促進のためには育児・介護等の負担軽減や配偶者控除制度、社会保険制度等のあり方の見直しが必要である。
  • (2)については、将来不安から高齢者層の消費が活発でなく、65歳以上の高齢者世帯の金融資産は平均2,560万円、実物資産は平均7,000万円と膨大になっている。これらが遺産として残される結果、無駄に資産が相続され、個人にとっても社会にとっても好ましい結果にはなっていない。
  • 特に、アメリカとの違いで見ると、日本では実物資産の取り崩しが非常に少なくなっているが、これは、アメリカにおいては中古住宅市場が発達しているため、高齢者の住み替えが比較的行われているためである。
  • 高齢者の消費のポテンシャルは、電通の試算によれば非常に大きく、リバースモーゲージの活用が進めばさらに大きく伸びる見込みである。
  • これらを踏まえれば、資産活用のための政策課題として、老後の生活設計が見通せる安定的な社会保障制度を示していくことが必要であり、また、リバースモーゲージ制度の導入や中古住宅市場の整備促進が必要である。
  • (3)について、保育、介護、医療のそれぞれの分野について検討する。
  • 保育については、女性労働力の確保と少子化傾向の反転のため、現在20代後半の第二次ベビーブーマー世代の女性が安心して子供を生み、仕事と育児を両立させることができる環境を整えることが必要であり、そういう点で今後10年間の対応が鍵である。
  • 仮にこの10年間でM字カーブを解消するとすると、それに伴い保育が必要となる児童数は約84万人、そのために必要な保育所の施設数は9,700箇所で、約10万人の保育士の確保が必要になると試算できる。
  • そのための政策課題としては、地方自治体の財政制約があるなか、民間の参入促進や公設民営の促進等民間の活用、あるいは消費者の選択を広げていくという意味でバウチャー制の導入が重要だと考えられる。
  • 介護については、高齢者、特に世帯主が75歳以上の単独または夫婦のみの世帯数が相当数増えていくことが見込まれており、こうした高齢者世帯を在宅サービスだけでケアするには限界があるため、財政制約を考えながら利用者のニーズに適応した施設介護サービスを提供していけるかどうかが鍵である。
  • 高齢者の施設介護サービスに対するニーズは、ある試算によれば2015年で約175万人に上るとされており、現在のゴールドプランによる施設整備のペースを延長したとしても、施設数は絶対的に不足する。また、利用者サイドから見た介護の選択肢が非常に限られている、そういった選択肢の不足というのも問題である。
  • このため、政策課題としては、民間参入の促進を始めとして、供給を拡大するための諸規制の見直し、あるいは公的セクターと民間事業者の競争条件の整備が必要である。
  • 医療については、マッキンゼーの分析によれば、生産性とサービス水準をアメリカと同程度まで高めることによって100万人の雇用増が見込まれる。
  • これを踏まえれば、政策課題として、医療分野への市場原理の導入が不可欠。そのために患者に対する情報提供を担保しつつ、供給側の競争制約要因を排除し、競争に対するインセンティブを与えることが必要である。
  • (4)について、より市場メカニズムが機能する方向での雇用システムの改革が必要。そのために(1)円滑な労働移動のための制度改革、(2)効果的な能力開発・人材育成、(3)パート・派遣等多様な雇用形態の環境整備、が必要である。
  • (1)については、労働市場のマッチング機能の強化のため、民間の職業紹介機能の強化や雇用情報の提供機能の充実、能力開発と職業紹介の連携強化等が必要。また、年金のポータビリティの確保や退職金税制のあり方の検討など、転職に対する制度の中立化を図っていくことも必要。
  • (2)については、民間の教育訓練期間を活用した能力開発の促進や、大学、大学院の活用による人材育成、といったことが必要。また、適切な人材評価を行うため、特にホワイトカラーの職務・能力評価基準を明確にしていくことが前提になる。
  • (3)については、特に労働者派遣について、営業や販売等の業務について派遣期間が1年となっており、また派遣の対象業務から製造の業務が除外されているなど重要な部分での規制が残っており、国民のニーズにも合っていないため、更なる緩和を早期に実施することが必要。

(樋口委員)高齢者の残す遺産が多くなっているということだが、そうであれば、少子化の進展とあいまって1人あたりの相続額は更に大きくなることが予想される。現在、社会的には相続税の税率を緩和するという声が強いようだが、緩和した場合、どういう家に生まれたか、親が残した遺産の多寡で子供の生涯が決まっていくという可能性がある。この点についてどう考えるかにつき見解を伺いたい。

(島田会長代理)産業連関表を使っての将来予測などについて、情報を共有していきたい。また、雇用システム改革の提言については、厚生労働省との関係はどうなっているのか。

(経済産業省)厚生労働省にはストレートに問題提起を行っているが、現状の規制制度にもそれなりの合理性や経緯もあり、経済産業省としてやれることに限界はある。

(島田会長代理)雇用創出について、政府部内のベクトルは大まかには同じ方向を向いていると思うが、それを本当に連動させて制度改革を行っていくことが必要だ。今日お話いただいたことはサービス業で雇用を創出するというシナリオであるが、不良債権の直接償却が進められた時に、サービス業が雇用の受け皿として機能するという面もあり、そういう方向性でリテールの制度改革も含め大いに力を合わせてやっていきたい。

(経済産業省)現状の制度にはそれなりの合理性は存在するが、それにスピード感、ボリューム感という概念を入れたときに、今までの哲学がそのままでいいかということだ。例えば保育政策についても、制度を変えたときに困ったところは十分承知しているが、では現状の制度で十分足りるのか、ということがこれからの行政に追加されるべき視点であり、そのために知恵を出してやっていきたい。

(島田会長代理)方向性は出ても、それについていつ、どのくらいやるのかということが大事だ。

(樋口委員)今後サービス業、とりわけ都市型のサービス業が中心になる可能性があり、地方における雇用がますます空洞化し、公共事業に頼らないと雇用創出ができなくなるという懸念がある。産業構造で考えた場合、製造業は地方に多いが、製造業についてはどう考えているか。

文部科学省ヒアリング

(文部科学省)経済社会の変化に対応した人的資本の形成についてご説明申し上げる。

  • 人づくりのための戦略的な未来への先行投資をいかに行うか、ということが大切。その際、雇用の流動化、キャリアパスの多様化、求められる人材・能力が時代とともに変化をする、といった点に留意しつつ、一人一人が生涯にわたり必要とするときに知識、技術、能力を向上できるような仕組みを作る必要がある。
  • そのため、(1)高等教育機関へのアクセスの拡大、(2)大学の設置認可等事前規制の自由化、(3)事後チェック型行政への移行に伴う多元的な評価システムの確立と情報公開の推進、(4)ファウンディングシステムとしての機関補助から個人補助への転換、(5)学校の設置主体の規制緩和、について問題提起がなされていると認識している。
  • (1)については、現在、社会人のニーズに応えようとする各大学の取り組みを支援するという基本的な枠組みの下で動いており、制度改正等も行っている結果、各大学における取り組みは進展している。
  • (2)については、基本的には大学の設置認可は正規の学校制度にどう位置付けるかということを確認する仕組みであり、その仕組みは国際的にも基本的に共通なものである。また、それは最低基準の教育研究水準をどう担保するかという仕組みでもある。しかし、そうした認識に立ちつつも、大学設置基準の大綱化や、設置認可申請手続きの弾力化・簡素化といった措置は講じてきているところ。
  • (3)については、現在その取り組みを進めてきているところであるが、事後チェックシステムについて、仮に経営能力が乏しい大学、質が低い大学が退出する仕組みが、変更、中止勧告や命令等により強制的に退出する仕組みを意味しているのであれば、私学の自主性という理念からも文部科学省としては強く懸念を抱くものである。
  • (4)については、高等教育に対する公的支出はGDP比で見て極めて低く、また個別の私学の収入を見ても欧米に比して非常に少なく、経営基盤が極めて脆弱であるという問題がある。そうした中で、現状は私学助成が教育研究の安定性の下支えや、高度化・情報化等のプロジェクトに対するバックアップとしての役割、向上への誘導的機能を果たしているといったことを勘案すると、私学助成を廃止するというのは問題がある。
  • また、育英奨学事業も充実に取り組んできており、現在は貸与を希望する学生にはほぼ貸与することが可能になるような仕組みになっているが、社会人との関係でいえば、経済的な問題は残っている。なお、別途厚生労働省においては、教育訓練給付金という形の仕組みで助成措置があるが、1年未満等制度上の制限もある。
  • 勤労学生控除については、なかなか改善の目途が立っていない状況である。
  • 結論的には、現在の脆弱な高等教育の仕組みにあっては、機関補助、個人補助という形でどちらかに特化するということでなく、むしろ両方あいまった形で教育研究、教育機会の確保を図っていくというようにあるべきではないか。
  • (5)については、現在の設置者を公の性質を持つものに限定している学校教育法の仕組みは、利潤の追求を目的とした経済活動を基本とする営利法人は公共性、安定性、継続性を確保することが実態として難しいのではないかという経験的な流れからできあがったものであり、学校の経営主体が健全な発達をし、脆弱なファウンディングの仕組みの中で安定的かつ継続的に、教育という目的を達成する仕組みを作っていくための1つの枠組みであるということをご理解いただきたい。

(大田委員)本調査会の観点からは、生涯教育、社会人教育の場を広げていく一方で、大学の側からも社会人のニーズの高まりに対応するように性格を変えていくということが求められる。その時に、大学がカリキュラムの組み方や開講時間等について、自らニーズを汲み取りながらそれに応えていく、そういったイノベーティブな精神、態度が必要である。
そのために、大学設置の認可制を届出制に緩和すべきであり、それに併せて、事後チェックをするために私学の財務に関する情報開示を義務付けなければならない。国立大学についても、財務状況、少なくとも内部補助や学費の算定等については当然開示されなければならない。社会人教育の場合には特に情報開示は不可欠である。また、税制面で優遇をしているという観点からも、一刻も早く情報開示の義務づけを行うべきだと考えている。
また、そうした制度になったときに、当然ダメなところは退出していかなければならないわけで、情報の非対称性がある場合には事前の最小限の規制と、情報開示及び退出のルールはセットで不可欠なものである。従って、金融機関と同じく、財務状況が悪化すれば早期是正措置、業務停止命令といった仕組みが必要であり、その時に学生が被害を受けない、つまり大学にもう一度入り直すといっても年齢が経ってしまっているため、そこの不可逆性をどうしていくかというルールを作らなければならない。
学校の経営主体の問題については、まだ他委員会等でも議論がこなれてないところがあるため中長期的な検討課題であると考えており、当面は設置の一段の自由化と情報開示及び退出のルールが、特に社会人教育ということになれば一段と必要ではないか。

(島田会長代理)規制改革委員会等の議論についても教えていただきたい。

(文部科学省)学科の設置の自由化については規制改革委員会において議論しており、また現在中央教育審議会にそのことも含めて諮問しており、議論を行っていくこととしている。

(大田委員)学科ではあまり意味がない。学部の設置の自由化が必要だ。

(文部科学省)そのあたりはまたいろいろ議論させていただきたい。また、退出のルールについては、大学の強制的な閉鎖、変更に問題があると申し上げた。

(大田委員)金融機関と同じく、一定基準を割り込んだら、当然早期是正措置が必要である。つまり、ここから先は学生を受け入れるな、ということは当然必要だ。

(樋口委員)社会人の再教育の取り組みが進展しているということだが、統計を見ても、自己啓発をしている人の比率は必ずしも上がっていない。特に、大学、大学院において再教育を受ける人数は、多少は増えているが急激には増えていない。一方で企業の方は経費削減で能力開発から手を引くということが起こっており、こうした再教育を阻害している要因についてどう考えるか。
例えば、入試制度の問題、魅力ある授業の欠如、あるいは本人の社会的、時間的な制約といったものが考えられるが、そうした阻害要因について、どこをどのように直したらよいかについても併せてご教示いただきたい。
特に、教育訓練給付金について、大学で利用しているケースはあまりなく、むしろ専門学校のほうがイニシアチブを取っているように思えるが、それはなぜか。
最後に、学童を学校に受け入れる、学童保育の問題について、どこにどういう形でアプローチすればよいか教えていただきたい。

(文部科学省)最後の問題については、補助金という形の学童保育は厚生労働省である。

(島田会長代理)補助金は自治体に出しているのだろうが、場所を貸しているのは学校ではないか。

(文部科学省)学校という形態も多い。

(島田会長代理)公民館もある。

(大田委員)5時とか6時とかで学童保育を打ち切るというのは、学校の使用上の規制はあるのか。

(文部科学省)一般的にそういうことはない。それぞれ個別のケースで見てどうか、ということだ。

(樋口委員)おそらく文部科学省にとっても今後非常に重要な問題になっていくと思うので、ぜひ考えを聞かせていただきたい。

(島田会長代理)本調査会の関心は、停滞している経済を中長期的に活性化するために、情報化の進展に伴う雇用吸収力の弱化を、トータルで雇用を増やすことにより吸収する、そのために我々の持っているストックの価値を最大限に生かせるような社会を作るということである。その際、特に重要なストックは人的ストックである。
そのため、高齢化、成熟化していく中で、国民の能力が、技術革新のペースが速くなっていくことにあわせて、常にアップデート出来ていくということが重要であり、基礎教育を受けた後で、社会のニーズに合わせた様々な役に立つ教育機会を自由に選択し、能力をリニューアルすることが必要である。その際、市場に任せるというのが基本的な方向であり、市場が適正に機能するために安全規制の導入、情報開示が必要である。この部分については行政が提供する仕組みの中でやるべきという行政側のスタンスとの間に多少のギャップが存在するものの、根本的には高齢化、成熟化している社会の中で、人材が最後まで活力を持って活躍できるようにするという意味では、教育機能が非常に重要であり、特に大学の果たす役割が重要である。
また、人材の長期的な活用の上での役割に加え、技術開発センターとして果たす役割も非常に重要であり、社会のブレインタンクとして、新規事業を起こしていくといった面でもどんどん活用されるべきであり、そういう場面で大学の教授の産業人としての活躍は十分あっていいのではないか。そういうところにも大きな関心があり、追って質問を出させていただきたい。

(大田委員)営利法人や株式会社の参入は中長期的な課題と申し上げたが、現在のスキームにおいても、例えばある大学が全国にチェーン展開して、放送大学のような通信講座と併せてセットで提供する、というようなことは当然ありうる。その時に資金調達を広くやって、株式会社として生涯教育、リカレント教育の分野に参入していくことができるようにする必要がある。

(島田会長代理)もう既にやっている例も見られる。

(大田委員)そうであれば、それをもっと大々的にできてもいいのではないかということだ。

(島田会長代理)大々的にできていいし、また、大学教授が会社経営を行うことももっと自由であってよいのではないか。ただし、一定水準に達したときは情報開示が必要だ。
いずれにしても、大学を始めとした教育機関の持っている能力をもっともっと人材育成や産業発達のために使う時代がきているのは事実だ。そういう観点から、追って質問を出させていただく。

(樋口委員)奨学金制度は貸与しかないが、給付制度の実現は問題なのか。

(文部科学省)給付制度の実現を考えたこともあるが、なかなか実現していない。

(樋口委員)資料があればいただきたい。

厚生労働省ヒアリング

(厚生労働省)介護、保育、雇用について説明させていただく。

  • 介護、保育については人が人に行うものであるので、非常にコミュニティー的な色彩が強く、ある面では、ある一定の範囲の中で自給自足していくという性格が非常に強い分野であると認識しており、一定の地域の中に小回りの利く形でサービスの供給主体が営まれていくのが重要だと思っている。また、これらのサービスを活用していただくためには、介護保険を始めとして、一定の社会的な支援、費用の面での支援が必要である部分が多く、そうしたことも踏まえて検討しているところ。
  • それを前提にした上で介護、保育を含む広い意味での保健福祉分野における雇用増を計算すると、これらの分野で現在策定されている政府プランに基づいて整備を進めた場合、それぞれの分野の雇用増を積み上げて、全体で毎年おおよそ10万人程度の雇用増が見込まれる。

(島田会長代理)現在の雇用者数はいくらか。

(厚生労働省)介護は52万人程度、保育は確認して回答する。

  • ベビーシッターや家事援助サービスなど、周辺分野での雇用については、現在広がりを見せているということを実感として感じているが、今後、世の中のトレンドの中でどう動いていくかという部分である。
  • 昨年5月に改正された社会福祉事業法では、利用者中心から、情報開示、苦情解決というシステムをビルトインさせた形にしたところである。また、一方において社会福祉法人についても、憲法89条との関係を踏まえつつも、かなり積極的なサービスが提供できるような体系にしたところである。
  • 雇用者数については、頭数を数えたものでなく、正規雇用ベースで予算上の整備目標に基づいて推計したものである。
  • 介護保険の実施状況について、介護保険を導入した結果、全体の7割程度のお年寄りでサービスが増加しており、残りのおよそ半分がサービス量はほぼ同じ、あとの残りでサービスが減少しているという状況になっている。
  • このうち訪問介護について見ると、介護サービスが充実しているところは非常に使っているが、もともとサービスがあまりないところは低調、という結果が出ており、自己負担が問題になっているのではなく、そもそもサービスに対する価値を認めているかどうかで大きな差が出てきていると言える。つまり、現在のサービス量というのは供給面が引っ張ってきている面がある。
  • その上で、介護等級別についてみると、訪問介護のサービス量は要支援者、要介護者1、要介護者2、要介護者3、要介護者4、要介護者5で並べると大きくV字を描く。これは、要支援者、要介護者1の層では調理、掃除等の家事援助を需要するが、要介護者3、4、5で次第に身体介護を需要するためである。つまり、訪問介護は、要介護の軽いケースと重いケースで大きく2つの市場があると思ってよい。
  • この軽いケースを一番担っているのがNPOや割と小さな事業者である。従って、民間企業と一口に言っても、大手は重いケース、身体介護の市場を中心にしているが、NPOや割と小さな事業者は軽いケース、つまり家事援助の市場で活躍しており、非常に成功してきている。
  • 従って、現段階で家事援助をシフトさせて身体介護をやるということは、ある面、NPOの雇用そのものを重大な危機にさらしてしまい、むしろ当局としては同じ訪問介護ではあるが2つのサービスとして伸ばしていきたいという認識をもっており、今やるべきことは負担論ではなく、もともとサービスに対する評価がないところについて、利用者の評価を高めることが緊急課題であると思っている。
  • 現在はヘルパーをどう使ってよいか分からない利用者もいるという現状であるため、「こういうサービスがある」という消費者への情報提供を行っていく市場形成期であり、それをやることが最終的には雇用を伸ばしていくということをご理解いただきたい。これをやれば、ある面、軽いケースと重いケースで住み分けもでき、いずれは、重いケースは重いケース専用の事業者が出てくることが予測されるため、そういう目で見ていただきたい。
  • 施設サービスについては、特別養護老人ホームとケアハウス、民間有料老人ホームの施設間で競争条件に格差があるというよりはむしろ、特別養護老人ホームと在宅サービスの負担の均衡という観点から問題となっている。
  • 現状は特別養護老人ホーム等の介護施設についてはホテルコストが介護報酬の対象とされており、在宅に比べて負担感が軽いというところが一つの課題である。
  • 現在、規制改革推進3か年計画にも盛り込まれている検討課題であり、入居者の居住性の向上や低所得者への対応に配慮しつつ、見直しを検討する必要があると考えている。
  • 介護職の人材育成については、今後とも積極的に努めていきたい。
  • 保育について、保育に欠ける要件には、母親の継続就労はもちろん、保護者の求職中の場合も、保護者の状況に応じて該当しうることとしているところである。また、サービスの供給面については、現在全体としての定員については余裕があるが、都市部で不足しているという認識はある。
  • 認可保育所の運営に必要な経費に係る補助については、社会福祉法人と同様に民間企業に対しても行っており、経営主体による別はない。従って、規制緩和による結果、民間企業のみならず、学校法人や個人等、社会福祉法人以外の経営主体による参入が急激に増えてきており、規制緩和の効果が徐々に、あるいは急激に出てきていると認識している。
  • 民間企業に対する整備費の補助については、憲法89条の問題があるため、慎重に考えなければならない。
  • しかし、この点については、公設民営型を何か別の方法で増やしていけないかについては検討していきたい。現在のところ、公設民営は公設をして委託するという形になっているが、公設をしたものを貸与する形等について、法制上の問題の隘路が取れれば、一つの起爆剤になるのではないかと考えている。
  • 認可基準については、規制緩和を進めている。短時間勤務保育士の比率を2割以下にするという要件については、基本的には1クラスに1人の保育士が、できるだけ朝から終了時間までいて欲しい、という趣旨の規制であり、子供が朝から夕方までいる間に保育士がころころ代わらないようにするための最低限の規制であるため、そうした趣旨をご理解いただきたい。
  • 定員についても、従来30人以上としていたところであるが、現在20人以上としているところであり、また、4、5人程度の小規模な分園も設置可能になるなど、大幅な規制緩和を進めている。
  • 調理師の必置義務については、調理室自体の必置義務は掛かっているが、外部の業者が入って調理をしてもらうことは可能になるような調理業務の委託に係る規制緩和は行ったところ。しかし、特に乳幼児を中心とする食事サービスについては、保育関係者からも、かなり綿密にやるべきサービスということを言われており、当局としても、調理室の必置義務、さらに、いろいろな食事を通じた子供のケアというのは大事にしていきたいと思っている。
  • 保育所の選択の仕組みについては、現在、事実上は直接自分の希望する保育所に入所することが可能になっている。ただし、需給が逼迫しているところは、優先順位をつけて入所させるというようにせざるを得ない。このような利用者の直接選択の仕組みについては、若干の弊害も見られており、例えば、第1希望の保育所が入所できない場合に第2希望の保育所を紹介した場合でも、第1希望の保育所が空くのを待つといったケースが出てきている。こうしたケースが現在の待機需要の中でも相当数あるのではないかという市町村の指摘も存在する。

(大田委員)入所希望については市町村に提出するのか。

(厚生労働省)保育所に提出する。複数提出する場合には、基本的に市町村に提出していただき、市町村が最終的に調整することになる。

  • 保育クーポンについては、具体的にどのように仕組むかということについて、導入に伴う行政コストや、クーポンで担保する範囲等、相当難しい問題があると認識している。また、利用者や市町村の具体的なニーズに欠けている面もある。
  • 保育所の民間委託については、既に行っており、周知徹底も図っているところ。
  • 根拠の乏しい規制については、今後とも規制緩和に取り組んでいきたい。
  • 放課後児童対策について、未就学児童と同じように、小学校低学年児童に対しどのようなサービスを提供していくかということが課題である。対策を本格的に行えば、予算措置は必要であるが、雇用に結びつく可能性もある。
  • 雇用分野について、現在厚生労働省としても、雇用構造の転換の支援と促進を図るため、女性の活用促進と高齢者の雇用・就業の場の確保に取り組んでいる。
  • 女性の活用促進を図り、M字カーブを解消していくために、就業希望をもちながら、非労働力人口にとどまっている女性の労働市場への参入支援を行うとともに、女性がいかなる働き方を選択したとしてもその働き方に応じた適正な処遇・労働条件を確保することが必要であるとの考え方の下、政策を進めている。
  • 高齢者については、当面65歳までの雇用の場を確保し、将来的には年齢にかかわりなく働ける社会を実現していくために、現在有識者会議を開催して議論を行っているところ。
  • 職務の明確化、標準化については、幅広い職種について、労働者の職業能力を適正に評価し、これを職業能力開発や雇用管理に的確に活用できるようにしていくことが必要であり、このため、生涯職業能力開発体系を活用した業界単位での職務の明確化や標準化を促進すること等が必要である。また、諸外国の先進的な事例を参考にして、エンプロイアビリティの評価基準の確立等、社会的な職業能力評価制度の整備を図ることが必要である。そして、職業を単位にその仕事内容、特徴、必要とされるスキル、能力、経験、就業実態、労働条件、労働力需給、従業者の特性など関連情報をデータベース化し、様々なニーズに応えることのできるシステムの構築を進めていく。
  • 自己責任による能力開発の本格的サポートとして、労働者の自発的な能力開発を促進するため、税制面を含め、総合的な支援の仕組みの充実に努力していくとともに、自発的な能力開発を促進するための労働市場のインフラ整備として、労働力需給調整機能の強化、キャリア形成の促進のための支援システムの整備、職業能力開発に関する情報収集・提供体制の充実強化、評価体制の整備、教育訓練機会の確保といった施策を進めている。
  • 育児等で退職した者の再就職について、再就職希望者に対する教育訓練、職業能力開発を積極的に支援していくことが必要であると考えている。
  • 職業情報の提供とカウンセリングの充実について、キャリア形成支援として、キャリア・コンサルティングが適切に行われるための人材育成も含めて整備を図っていく。ただし、キャリア・カウンセラー資格制度については、民間における資格制度の実態を踏まえ、普及促進を検討していくことが必要ではないかと考えている。
  • 転職に関する退職金税制、財形制度の中立化については、退職金税制については、国民の合意を得ながら、あるいは現在の税制を前提に生活設計を行っている中高年の長期勤続者に対する配慮といったことを行いながら検討していくことが必要である。
  • 財形制度については、転職先で財形制度を導入していれば、引き続き継続することができるというポータビリティを備えており、現状も中立的な制度となっていると考えている。
  • 労働者派遣の規制緩和については、これまで鋭意取り組んできており、規制緩和推進3か年計画に盛り込まれたスタンスに立ち、今後の実態把握、あるいは改正法の付帯決議等に基づき、所要の検討を行っていきたいと考えている。

(大田委員)高齢者ケアについて、ホテルコストについては在宅サービスと特別養護老人ホームの関係が論点になるとのことだが、我々の議論では、富裕層は民間有料老人ホームに入ることができる、貧困層は特別養護老人ホームに入ることができる、しかし、その中間層が施設サービスを受けたい場合には、受け皿となる施設がないということを問題視している。そういう意味では、在宅との関係ではなく、特にケアハウスを増やしていくということを中心的に議論している。

(島田会長代理)本調査会は、人々を幸せにするために、日本社会の持っている人材や貯蓄などの資源、ストックをフルに活用できる社会を作り、トータルとして雇用を増やすというのが趣旨である。
そこで、今大田委員が言われたように、所得の限られた人は特別養護老人ホーム、たくさんある人は民間有料老人ホームで、その他の人が行く施設がないというのは事実であり、それを政府が無限に予算があればケアハウスをたくさん作ることもできるが、財政との関係でそれはできず、やはり民間の資源を活用していかなければならない。そのときに、やはり憲法89条の問題等の法制的な問題があり、行政財産の使用の仕方に強烈な制約が掛かっているため、それを実際問題としてどうしていくかということを考えなければならない。
そのため、我々の報告は最終的にはそこに突破口を開けることを念頭においているが、民間の資源だけ、個人の負担だけで子育てサービス、介護サービスを賄うことはできず、公共の持っている様々な施設ストックを最大限に活用し、民間の効率のいい、自由な、きめの細かいサービスを最大限に活用し、そして中間所得者にはできるだけ自分の所得を使っていただく、この3者が日本の持っている資源であるから、それを最大限に活用して、人々が立ちすくむことのないようにしたい、そういう角度から報告を書いていきたいと思っている。
その際、厚生労働省にはいろいろな知恵をお借りしたい。

(大田委員)もう一点、先日、文部科学省が省内に保育所を作ったという新聞記事を拝見した。記事によれば、当該保育所の自己負担額は5万円で、東京都のあるところは21万円であり、著しい格差があるため、せいぜい7、8万円は徴収する必要があるのではないかということであった。また、この格差は保育士の給料が効いているとのことであった。

(厚生労働省)後ほど、記事内容を正確に把握した上でお答えする。
基本的には、子供の年齢によって、厚生労働省の基準でも4、5歳児はコストが4万円、0歳児は15万円、あるいは20万円に近いところがあるなど、年齢によってばらつきがあるので、5万円が高いか安いかという判断は、4、5歳児であれば高いということになる。

(樋口委員)現在、待機率は確かに下がっているが、その一方で早朝と夜の居残りについては、どう考えているか。
先ほど、非常勤保育士に係る認可基準で、最初から最後まで1人の保育士が面倒を見るというのが基本的な考え方と伺ったが、例えば朝の8時から夜の8時まで12時間労働を強いるというのは、とても無理であり、そういったことについて発想の転換はありうるのか。

(厚生労働省)なるべく7、8時間勤務する保育士が朝から夕方まで1クラスの平均的なところを見ていただく、その他のプラスアルファの部分については短時間労働の保育士が担当していただいても結構であると、こういう発想である。

(樋口委員)早朝と時間外保育について、現状ニーズが非常に強いにもかかわらず実現していないことについてどう考えているのか。

(厚生労働省)それについては、現在エンゼルプランで、時間外の一時保育や特別保育について、最大限資源を投入し、増やす方向でやっているところである。

(樋口委員)現実的に増えてきているのか。

(厚生労働省)民間も含めて、かなり増えてきている。

(島田会長代理)現状13,000箇所の公立の保育所では6%程度ではないか。この水準にとどまっている問題として、自治労の問題があげられるのではないか。

(樋口委員)第3号被保険者の問題についても書きたい。

(島田会長代理)病時保育について、民間のニーズが非常に強いが、責任の所在等、このあたりのシステムがまだ出来ていないなど、難しい問題がある。

(厚生労働省)いくつかモデルをやっているが、全部、全国に普及できるような体系になっているかというと、ケースバイケースになっているのが現状だ。

(島田会長代理)ものすごく難しいということ。何とかしないといけない。

(厚生労働省)医師会が結構力を入れており、例えば、最初にやったときは増え方が少なかったが、昨年は40箇所となっていて、個所部分で倍倍で増えてきている。

(島田会長代理)地域によっては医師会が熱心なところもある。このあたりはすごく重要だ。

(樋口委員)そうした動きをサポートする意味でも、報告に書くべきだ。
キャリア・カウンセラーについて、現状何人いるかということを教えていただきたい。

国土交通省ヒアリング

(国土交通省)国土交通省の所管行政の中から、新規サービス、新規雇用を創出する可能性のある分野として、本調査会で関心の高い住宅関連サービス、観光サービス、タクシーサービスの3分野についてご説明させていただく。

  • 日本の住宅事情については、1世帯あたりの戸数の潤沢度は大体ヨーロッパと同程度の水準にきているが、質の面ではまだ改善が必要。一方で、新規着工数は欧米に比して圧倒的に多い状態にある。しかし、今後とも世帯数の伸びや、耐震基準に満たない老朽住宅の建て替え需要等があり、今後とも新規ストックは必要。
  • 現在のストックの今後の活用については、(1)アメリカに比べて住宅ストックに占める中古住宅流通比が現状でおよそ10分の1であるため、中古住宅流通市場の拡大が必要、(2)住宅の平均耐用年数について、アメリカの6割程度、イギリスの3分の1程度にとどまっており、今後はリフォーム等をしながら耐用年数の延長を図ることが必要、である。
  • そういう中で、現状年間120万戸程度の住宅が建っており、この新規住宅が減っていけば、経済に大変大きなマイナスのインパクトがあるのではないかということが懸念されるところ。しかし、この点は、ヨーロッパ、例えばイギリス、フランスでは年間20~30万戸しか新規住宅が建っていないが、GDPに占める住宅投資は2~4%程度あることを考えると、新規ストックの形成から既存ストックの活用に円滑に交代を進めていけば、住宅ストックの維持管理等に相当の投資を必要としてくるため、住宅投資全体として急激な投資の減退を招くことはないと考えられる。
  • 政策面では、既存ストックの活用の方向に大きく転換してきており、昨年6月の住宅宅地審議会の答申で、新築については耐久性の高いいい住宅を作りなさい、中古市場やリフォーム市場、賃貸市場をうまく働くようにしなさいとの指摘を受け、この3月の第8期住宅建設5か年計画で、5年間で430万件の増改築を行うという政府目標につき閣議決定を行った。さらに、規制改革委員会からも、この面についてもっと積極的にやるようにというご指導をいただき、それに対応して現在「住宅市場整備行動計画(仮称)」を策定しているところであり、6月を目途に取りまとめたいと考えている。
  • これまでの具体的なストック活用のための施策として、(1)マンション管理の適正化の推進に関する法律の制定、(2)住宅の品質確保の促進に関する法律の制定、(3)中古住宅保証制度の創設、(4)中古住宅に係る融資・税制の整備、(5)建築物の耐震改修の促進に関する法律の制定、(6)住宅のバリアフリー化の推進、(7)長期耐用型住宅の開発、を行っている。
  • 今後、中古住宅市場の活性化にむけて取り組むべき早急な課題として、(1)ライフスタイルに応じて自由に住み替えができる、例えば高齢の老夫婦世帯が望めば一戸建てからの住み替えが可能になるということの実現、(2)統計的に見ると、現在、高齢者が広い家に老夫婦2人で住み、ファミリー家族は4人で小さなマンションに住むという世帯と住宅とのミスマッチがあるため、流通の改善による居住水準の向上の可能性、(3)流通により中古等の市場の安定化を図り、資産デフレの防止、あるいは高齢者が老後を暮らすための資金を生み出すことの実現、が挙げられる。
  • 具体的な政策課題としては、以下の4つが挙げられる。
  • (1)中古住宅の検査制度を、アメリカで制度化されている、買主に代わって住宅を検査する「ホームインスペクション」という制度に倣い、可能ならば来年から試行的に導入したい。それにより中古住宅の流通量が増え、これら検査制度にかかわる雇用創出が見込まれる。
  • (2)現在の築年数重視の住宅評価から、質を重視した住宅の価格査定システムを構築する。
  • (3)住宅流通に必要な市況情報の充実に努める。
  • (4)リフォーム推進のため、信頼できるリフォーム事業者情報の提供、標準契約の作成・普及、リフォームしやすい住宅部品の開発を積極的に進める。

(島田会長代理)雇用効果の数字については、現実を良く知った人のシナリオでしか描けない数字だ。今後、数字の見積もりを行っていきたいので、ご協力をお願いしたい。

(国土交通省)次は観光産業についてご説明する。

  • 人間の基本的な欲求が満たされた後は、ゆとり、潤い、自己実現といった、生活にプラスアルファをもたらすような産業が需要を拡大していくと考えている。現状は、平成7年に実施した調査において、旅行産業の経済波及効果は生産波及効果48兆円、所得効果25兆円、雇用効果410万人という数字が出ている。欧米において、旅行の所得効果がGDPに占める割合を見ると、平均10%程度であり、今後その水準に近づいていけるのであれば、さらに200万人程度の雇用が創出されるのではないかと考えている。そういう意味で、10%まで高めていくのはなかなか大変なことではあるが、21世紀において、観光産業を一つのリーディング産業に育て上げていく必要があるのではないかという認識を持っている。
  • 旅行については、健康に非常にプラスの効果があるということも言われており、当局としても、今年から所管団体の日本旅行業協会を通じ、「『旅と健康』に関する調査研究プロジェクト」を立ち上げたところである。これは、実際にモニター旅行を一般から応募し、例えば九州の温泉に行っていただいて、その旅の前後で血液や脳波の状況について科学的に調査を行うものである。初期的な調査の結果によれば、明らかに脳波や脳内分泌物資等にプラスの効果があるという報告が出ている。また、最近言われているエコノミークラス症候群といったマイナス面もあるところであるが、こうしたものを総合的に調査を行いつつ、広く一般に情報提供を行い、旅行需要の喚起を行っていきたいと考えている。
  • また、旅行に対する需要の拡大は、日本の中だけでなく、グローバルな規模で予想されている。世界観光機関の推計によれば、1999年には世界中で6億6000万人の人が国際的な旅行をしているが、これが2010年には10億人を超え、2020年には16億人に達すると見込まれている。特にアジア地域の伸びが期待されており、20年後には現在の4.5倍の規模に達すると見込まれている。こうしたことから、日本の旅行産業ということを考えると、途上国を始めとする旅行市場の拡大部分をどうやってビジネスチャンスに結び付けていくかというところが極めて重要だと考えている。
  • 現在、日韓の観光当局同士で、日韓両国間の交流を促進し、また日韓を例えばロンドンとパリのように一つの地域としてセットとして売り込んでいき、第3国の需要を喚起していくため、「東アジア広域観光交流圏構想(EAST(EastAsiaSphereforTourism)Plan)」を推進していこうとしているところ。現在、日本の外客を誘致するための受け入れ体制は遅れているため、その過程ではインフラ等ハード面も含めた総合的な施策を講じていかなければならないと考えている。

(島田会長代理)外客の誘致は現状ではどのくらいか。

(国土交通省)昨年の統計でも、日本人は1780万人海外に行っているが、日本に来た外客は470万人程度である。

(島田会長代理)外客は極端に少なく、少なくとも、現状の倍程度にはなっていいのではないか。

(国土交通省)続いてタクシーサービス、特に高齢者向けの新しいサービスの状況についてご説明申し上げる。

  • タクシーについては、運輸事業全体の規制の見直しの中で、需給調整規制を廃止するという規制緩和を行うための法改正を行い、現在、来年の2月から新制度に移行するための準備を進めているところ。
  • 今までは需給調整規制を行っていたため、需要と供給のバランスが取れていれば新規参入を認めなかったわけであるが、近年は需要が不景気により落ちているため、常に供給過剰の状態にあり、新規参入する余地がなかったという状況であった。今回の措置により新規参入についても許可制になったことで、資格要件さえクリアすれば新しい事業者が入ってくるという状況になる。
  • ただ、そういう中で、既に現在でも、特に地方において、新しいニーズ開拓のために「福祉タクシー」や「便利屋タクシー」といった新しいサービスの提供に前向きに取り組んでいるタクシー事業者も出てきている。
  • 「福祉タクシー」とは、車椅子の方、あるいは寝たきりの方をそのまま収容できるような大きさで、リフトやストレッチャーといった装置がついている特別な仕様のワゴン車で運送するものであり、全国的に展開されているサービスである。これは、まさにタクシーの本業である運送事業の中でそういう対応をしているという部分である。
  • 「介護タクシー」とは、タクシーのドライバーがホームヘルパー2級の資格を取り、運送だけでなく、外出着への着せ替えや乗車、下車時のサポートなど、前後の介護サービスも行うものであり、こうした資格を積極的に取得させている事業者も存在するところ。
  • 更に、事業者の中には介護保険の認定事業者になり、介護保険の報酬を受けてサービスを提供するような事業者も出てきた。その中で、地方の事業者であったが、介護保険の報酬がかなり高額なものであったため、乗車の対価としての運賃を取らないものも出てきた。これについて、介護保険を所掌する厚生労働省が、提供するサービスのうち、乗車時、下車時のサポート等は介護にあたるが、運転中は運転に専念しており、乗客を介護しているわけではないので、運送部分については介護にあたらないという解釈をしたため、運送部分については運賃を取っていないということになり、道路運送法の認可運賃違反になるのではないかという懸念が生じた。ただし、最終的には国土交通省が運用上柔軟解釈を行い、事業者が運賃を介護報酬から受けていると認識しているのであれば、認可運賃違反とはみなさない、ただし、認可運賃に不足する部分や、介護サービスに余計に掛かった部分については、介護報酬とは別に徴収する旨の指導を内容とする通達を発出したところ。したがって、前後の介護サービスの部分については運送サービスではなく、あくまで附帯サービスということになる。

(島田会長代理)附帯サービスについては、タクシー事業者は自由にやってよいのか。

(国土交通省)本業に支障がない限りにおいては、自由にしてかまわない。

  • 「便利屋タクシー」は、完全に附帯サービスであるが、病院に薬を受け取りに行ったり、あるいはバッテリーが上がればバッテリーをチャージしてあげる等、タクシーの持つ機動性を生かしてサービスを提供するものである。

(島田会長代理)このサービスについては、いつからやっているのか。また、道路運送法の規制緩和によって可能になったのか。

(国土交通省)事実としてはかなり前からやっているものと思われるが、国土交通省がタクシー事業者から実態把握のため報告を取るようになったのは10年ほど前からである。

(島田会長代理)本業に支障があるか否かの判断基準はどのようなものか。

(国土交通省)現状はタクシーの運送サービスについては免許制で供給に制限がある上、タクシー事業者は運送引き受け義務があり、ドライバーを皆附帯サービスにかかりきりにさせて、運送サービスを提供できないような状態になっては困るということだ。

(島田会長代理)それは現場の地方運輸局の指導で行っているのか。

(国土交通省)現在は報告をとってもそれほどの量をやっているわけではなく、全く問題ないと判断している。

(大田委員)本業をやれなくなると支障があるというのは、現状まだ需給調整を行っているからなのか。

(国土交通省)タクシー事業者には、運送引き受け義務があるので、運送を申し込まれたら拒否できない。

(大田委員)来年2月以降需給調整規制を廃止した後は、運送引き受け義務はどうなるのか。

(国土交通省)運送引き受け義務は残る。

(大田委員)運送引き受け義務はあるが、国土交通省として、供給の総量を把握するということは依然として残るのか。

(国土交通省)それは把握していく。

  • 「緊急支援サービス」については、高齢者が一人暮らしをしているようなケースで、急に具合が悪くなった場合、ボタンを押せば直ちにタクシー会社の無線センターの方に連絡が行き、一番近くにいる車を急行させることで対応するといったサービスであり、親族が遠くに住んでいる場合でも、このサービスを依頼しておけば安心して生活できるメリットがある。これも、タクシーが持っている機動性や無線で直ちに連絡ができるという緊急性を利用して行っているサービスであるが、もし、これだけを本業としてやるとすれば、ものすごくコストがかかってしまい経営として成り立たなくなり、あくまでも附帯サービスとして副業でやれるから非常にうまくいくサービスだということだ。

(島田会長代理)ある会社で、どこで倒れていてもすぐに分かるサービスというのが開始された。倒れた場所がわかれば、次に必要なのはこうした救急サービスであり、警察や警備会社、こうしたサービスを提供するタクシー会社などが連動してサービスを提供していくということだろう。

(国土交通省)あまり多くない例であるが、名古屋のタクシー会社で、徘徊老人にポケベルを持たせ、居なくなった場合の捜索を行うというサービスを提供しているところがある。

(島田会長代理)先ほど紹介したサービスというのもまさにそれである。携帯電話の通じるところ、移動体が個人セキュリティーになっている。これは名古屋といった地域的なものでなく、全国レベルでどんな状態かもすべて把握してしまう。個人が忙しく、多様な生活パターンが存在する中で、そういうサービスが求められる世の中になった。
であるから、おそらく我々が、高齢世帯で単身者が増える中で運送サービスに非常に期待しているのは、不特定の多数のお客を相手にする一般旅客運送業でなく、コンシェルジェサービスの一環として、自分が良く知っている運転手にサービスを提供してもらうような、特定の者を相手にしたサービスだと考えるがどうか。

(国土交通省)現行の制度の下では、そのサービスの仕組み方によって難しい部分もあるのではないか。

(島田会長代理)富裕な人であれば自家用運転手を雇えばよいが、なかなかそうはいかない。しかし、高齢者であれば、稼働率はそれほど高くならないので、ある程度の複数にすれば負担をシェアできるため、自家用運転手ではあるが、年金の範囲内で雇うことが可能になる。その部分については、現在の法律が想定していないところではないか。そういうサービスが想定できるような法体系を作るべきと思うがどうか。

(国土交通省)要は仕組み方の問題だと思うが、例えばレンタカー会社がドライバーも一緒に付けて貸し渡しをするようなケースは道路運送法違反になる。

(島田会長代理)現行の制度だと違反になってしまうケースが多いのではないか。

(国土交通省)サービスの提供の組み方で、違反にならないような場合もあるかもしれない。

(島田会長代理)我々の社会は急速に高齢化し、成熟化しており、以前とは異なり、セキュリティーニーズなどのサービスに対する満足のニーズが非常に高くなっている。分かりやすく言えば、タクシー産業についても然りで、40年前にはお金持ちしか使わなかったサービスが、産業社会の変化によって大衆の産業に発展した。今度は、さらにそれと全く違った社会に入っていく。個人はそれなりの蓄積を持ってはいるが、非常にハザードに弱い。こういう人たちが安心してケアを受けるために、IT技術を利用して、時間と人間と場所を非常にきめ細かく組み合わせることが可能になり、そういう状況の中で、個人が自家用運転手を持てるような姿というのができる。この人が先ほど紹介のあった附帯サービスを全てやれるようなことになれば、生活者から見れば非常に快適である。そうしたサービスを供給したい事業者もいると思うが、現在の法体系はそれを想定していない。

(国土交通省)タクシーの場合は、かなりの台数のタクシーがあちこちに散らばっているため、緊急な場合でも一番近くにいる車がすぐ駆けつけられるが、個人規模ではなかなかそこまで大規模にはできないのではないか。

(島田会長代理)大規模にする必要はない。基本は自家用運転手であり、老人の移動パターンはそれほど大きくなく、せいぜい町中である。その範囲内でそうしたサービスを提供できればいいのであり、大規模にする必要は全くない。

(大田委員)個人タクシーを使ってできないのか。たとえば、10人程度で1人の個人タクシーと契約してしまうというのはどうか。

(島田会長代理)現在、個人タクシーがゴルフ客を10人程度まとめて、あたかも自家用運転手のように運送サービスを提供している例はあるのではないか。

(大田委員)お客のニーズが別の日、時間に完全にばらけるかどうかというのが問題ではないか。

(島田会長代理)才能のある個人タクシー事業者は、自らうまくニーズをばらけさせてサービスを提供している。しかし、重要なのは、そうしたサービスを社会システムとしてできるようにすることだ。つまり、これは国土交通省の認識の問題であるが、成熟した高齢社会は、元気な中年社会とは全く異なっており、そこで暮らす人たちの消費を促し、生活ニーズに合わせたサービスの提供ということを考えると、自家用運転手の概念を基本においたほうがいいのではないかと考えている。そうであれば、今の法体系では必ずしも十分でない。強いて言えば、特定旅客運送業に近いのではないか。

(国土交通省)特定旅客運送業は、工場の従業員を相手にするなど、まさに特定の需要を想定しているものである。

(島田会長代理)そうであれば、法体系上位置付けられないということであり、自由にやってもいいのではないか。

(国土交通省)タクシーには運送引き受け義務があり、その義務がある以上、特定の人からの需要だけに応じてサービスを提供するとなると道路運送法違反になってしまうため、タクシーとしてサービスを提供することはできない。

(島田会長代理)タクシーは社会的な産業であるためだ。

(国土交通省)公共交通機関という位置付けである。

(島田会長代理)私が言っているのは、公共ではない。

(国土交通省)そういった、個人運転手がハイヤーのような態様で雇われるというような運送サービスを、公共交通機関としてではなく、どうやってシステム化するかという議論になる。

(島田会長代理)ユーザーから見れば、そういった運送サービスに対するニーズの方が大きくなるのではないか。

(国土交通省)運送サービスに使用する車は誰が持つのか。

(島田会長代理)想定しているのは、運転手側である。つまり、そうであれば、今の法体系では事業免許を持たないいわゆる白タクになってしまう。しかし、お客からすれば、運転手は気心も知れており、自分が雇っているのと同じである。従って、国土交通省には、(1)タクシーサービスは社会的な公共機関としてのサービスであるから、運送引き受け義務がある、(2)クラブ制による運送サービスについては、運送サービスは雇用関係に基づいて提供されており、引き受け義務はクラブであるから当然満たしている、という考え方で整理していただきたい。普通のサラリーマンが会社で働いているときは自家用運転手は持てないが、退職して、プール制にすれば持てる、という社会を本当は作れるはずだ。

(国土交通省)クラブ制の場合、不特定多数からの運送申し込みは受け付けないのか。

(島田会長代理)クラブ制であり、資金をプールするという仕組みであるから、不特定多数からの運送申し込みは受け付けない。だから、こうした仕組みについては、現在法体系はないはずだ。

(樋口委員)サービス業の需要拡大において、我々が考えなければならないのは、サービス業は非常に時間を消費する業であるという特徴があるということだ。その特徴が表れているのが旅行産業の例で、旅行のGDPへのインパクトが欧米で10%程度の水準であるのに対し、日本では5%程度という数字である。この5%を10%にするためには、旅行料金の問題と、余暇時間の問題があると考えられる。それについて、例えば余暇時間がこれぐらい伸びれば、旅行需要がこれだけ増えるというような相関について調査したものがあればご教示いただきたい。

(国土交通省)ハッピーマンデーを導入するときに、4つのハッピーマンデーを導入した場合、およそ1兆7000億円から2億円の経済効果があるという調査を行った結果がある。現在2つのハッピーマンデーが導入されているが、今国会に議員立法でさらに海の日と敬老の日を追加するという法案が出されているところ。

(樋口委員)そこで問題になるのは、需要が特定の時間帯、曜日に集中するということであり、これをどうやってばらすかということを考えないと、どうしても料金が高くなってしまうということになる。これは、やはり一方でワークシェアリングの理論とも関連してくる話で、雇用が作り出せる日というようなことを何か考えないといけない。

(島田会長代理)休日や時間配分と経済の循環、というのは非常に重要な観点であり、いろいろ考えてみたい。繰り返すが、我々は、我々が持っている人的ストック、社会的ストック、物的ストック、そういったものがトータルでサービス価値を最大化する社会を目指しており、企業向けサービスや個人向けサービスなど、様々なサービスを通じてそれを実現していくことを考えている。現在の宅急便のサービスにしても、かつては想定されなかったところに出てきており、今後、メガトレンドが変化し、10年ほど後には我々の考えるような社会になるのではないかと考えている。それを、どのくらい先見性、フレキシビリティーをもって政府が対応できるかというのが問われる。そのあたりについては、今後議論していきたいので、よろしくお願いしたい。

法務省ヒアリング

(法務省)リーガルサービスについての司法制度改革審議会の審議状況とサービサー業について簡単にご説明申し上げる。

  • 審議会の審議において、人的基盤の拡充について改革の方向が示されており、新しい法曹の養成制度として、法科大学院を創設し、そこで職業人として必要な高度な教育をしようということと、そこを卒業した人たちを司法試験で大幅に増やしていくことが示されている。また、現在の司法試験合格者は年間1000人程度であるが、これをできるだけ早期に3000人程度まで拡充しようということも示されている。これについては2010年から2015年の間に達成しようということで議論が進められているが、そうなれば弁護士はもちろん、裁判官、検察官も増やしていくということになる。
  • 制度的基盤の整備についても示されており、具体的には弁護士費用の透明化等弁護士へのアクセスの拡充、法律事務所の共同化、法人化の推進等が示されている。また、弁護士以外の司法書士、弁理士といった隣接法律専門職種について、従来の職域を越えて、訴訟や法律相談等、新たな職域範囲を積極的に認め、法律サービスの充実を図っていくということが議論されている。それに伴い、隣接法律専門職種の増員についても検討されることになるものと思われる。現に、弁理士については、現在4500人程度であるが、大幅な増員が検討されていると聞いている。

(島田会長代理)隣接職種については、実質上広い意味で見れば、アメリカのローヤーに類するような仕事をしている人は大勢いる。私の推測では、いわゆるサムライ職業で10万人強、企業や官庁の法務関係者を含めれば現状で20万人を超えるのではないか。そういう類の事実上のリーガルサービスに従事している者はどの程度かということについて、把握したり、議論したりしているか。

(法務省)専門職種、いわゆる士業の方々については把握しているが、企業や自治体の法務関係者については把握していない。企業法務の関係では、経営法友会等の持っているデータをもらうなどはしている。

(島田会長代理)我々が描いているのは近未来像である。今までは行政が経済社会をかなり見事に緻密にコントロールして、争いが生じれば処理をするという役割を行政が果たしていた。それが、グローバル化によって、特に経済関係で行政がそこまで仕切れない、といった問題が出てきた。大蔵省でもそういう問題が生じたように記憶しているが、それは大蔵省に問題があるというよりは、グローバル化した経済で、あそこまで金融システムのコントロールは本来的に出来ないということである。その後、経済は更に自由化し、相互浸透が起きる一方で、国内でも都市化にとどまらず、社会的な家族の考え方、コミュニティーの考え方が変化し、一人暮らしが増え、家族やコミュニティーが従来有していた紛争処理機能がなくなってしまった。その結果、市民生活の面から見ても、ありとあらゆるところに法律問題が出てきてしまう。産業活動が然りで、行政がかつてのようにコントロールできない。農村社会や、社会のエートスもコントロールできない。そうすると、結局全部司法基盤がこれを引き受けなければならない。そうした状況になると、リーガルサービスは一体どのくらい必要になるのか、そうした想定は行っていないのか。

(法務省)数字的に示すのは難しい。定性的には、従来のコミュニティーなり、行政なりがやっていた役割を司法機能が果たさなければならないことが想定されるが、その場合も、その司法機能は、役所としての裁判所だけで賄うことができるものではなく、いわゆる周りのADRや、企業なり行政なりに入っていった法律に詳しい人たちもその機能を担っていくということだ。
当局としても、これからの法曹養成というのは今までのような狭義の法廷活動に専念する法律家ではなく、もっと幅広く社会のいろいろなところに出てくる法律問題を適切に解決する、そうした能力を身につけた人を養成することが必要だと認識しており、そういう意味でも、司法試験合格者の数以上に、法科大学院でより法的な思考力、解決能力を身につけた人を大勢養成していただくということを考えているが、あまりにも対象が広く、また定性的な部分が大きいため、具体的に数字までお示しすることは難しい。

(島田会長代理)本調査会における目的は、近未来のメガトレンドを踏まえて、成熟社会において我々の持っている人的ストック、知識、金融資産、住宅、そうしたものの使用価値を最大限に高めることであり、そうすると、行政の果たしてきた役割、あるいは家族機能を果たしてきた役割に代わって法的基盤が必要になるというのは明白である。我々は、そういうインフラが整って初めて、あらゆる資産の価値を最大化する社会が描ける、というイメージで近未来を描くため、法務省には、ADR、企業法務、その他をいろいろ含め、どの程度になるのかについてご教示いただきたい。私は個人的に現在20万人程度だと認識しているが、これが将来的にはどの程度になるか。

(法務省)将来的な数字については、実際にどの程度まで期待していくかということである。現在、法学部の卒業生が年間およそ4万7000人から5万人程度であり、そのうち相当数は教養としての法律ということであろうが、しかしかなりの人間はそれなりの法律知識を持って企業や行政に入り、その知識を活用していると思われる。これからはそういう企業や行政といった部分が今まで以上に専門性を持ち、将来的にはアメリカのローヤーのように、法律資格を持った人がそういう企業や行政に入っていく、ということになるのかもしれない。

(島田会長代理)なる可能性はある。今後の法科大学院と司法試験の関係次第だ。

(法務省)そういう意味では、法科大学院が充実したものになれば、そういうところを卒業し、社会のいろいろな部門に入っていく、ということは十分考えられる。

(島田会長代理)そうすると、制度がどこまで活用されるのかということについて、いくつかのシナリオがあるのではないか。

(法務省)そのシナリオとして、果たして数字がどの程度になるかということをお示しするのは難しい。実際に今まで我々がやっていたのは、まさにコアとなる法曹3者の部分だけであり、その周りに広がっているところというのは、法務省の視野に入ってきていない。現在司法制度改革を進めている中で、コア以外に非常に幅の広い分野があるということを勉強している最中であり、なかなかその部分についてコメントするのは難しい。

(島田会長代理)司法書士は法務省の所管ではないか。

(法務省)そうである。現状は1万7000人程度いる。

(島田会長代理)税理士はどこか。

(法務省)国税庁の所管であり、およそ6万5000人程度いる。

(島田会長代理)公認会計士は金融庁だ。実際、公認会計士の業務は税法など基本的に準法律業務だということだ。

(法務省)隣接職種については、法律と関連する分野ということで「隣接」と呼んでいるところ。

(島田会長代理)弁護士は、隣接した、本来的に知識をもたない分野で、OJTで学んでいくということだ。

(法務省)そういう意味では、弁護士がこれだけ少なくても、現在それなりに法律を生かした社会になっているのは、まさに専門士業の方、民間企業の方等の存在によるものだ。

(島田会長代理)弁護士事務所でも、事実上、ルーチンワークについては秘書がパートナーの仕事をしているのではないか。しかし、そういう方々が市民権を持っていない。本当は、そういう方々も、やはりある種のリーガルジョブであり、認めていくことが必要だ。

(法務省)そういう意味では、本当にパラリーガルについていい位置付けが与えられればそれもいいとは思うが、なかなか難しい。

(島田会長代理)今回の審議会の議論では、そこまでならなかったのか。

(法務省)弁護士事務所も様々であり、パラリーガルについて、どういう具合に統一的な評価ができるかというのは、非常に難しいことだ。

(島田会長代理)考え方としては、現状の20万人が、10年間で3倍程度というのはあり得るか。

(法務省)目指すというのはいろいろあるかと思うが、具体的な数字については難しい。方向性はそうだろうとは思っている。

(島田会長代理)我々のミッションは、そこのところを説得的に書きたいということだ。またコメント等いただきたいので、よろしくお願いする。