サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する専門調査会 第3回 議事要旨

第3回 議事要旨

開催要領

  1. 開催日時:2001年4月17日(木曜日)14時00分~16時00分
  2. 場所:内閣府542特別会議室
  3. 出席委員
    会長:牛尾 治朗 ウシオ電機(株)代表取締役会長
    専門委員:大田 弘子 政策研究大学院大学助教授
    同(会長代理):島田 晴雄 慶應義塾大学経済学部教授
    同:樋口 美雄 慶應義塾大学商学部教授

議事次第

  1. 開会
  2. マッキンゼ―・アンド・カンパニー・インク・ジャパンによる説明
    「サービス産業に焦点を当てた日本経済の成長戦略について」
  3. フリーディスカッション
  4. 第4回会合等について

配布資料

  • 資料1 サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する専門調査会(第2回)議事要旨(案)
  • 資料2 「特別レポートこれからの競争社会におけるセーフティ・ネットと人材の流動化政策」平成13年3月日本戦略研究所(参考資料)
  • 資料3 日本が海外から構造改革を求められた事例(事務局提出資料)

概要

会長による開会の挨拶の後、島田会長代理に議事進行が引き継がれた。

島田会長代理より議事の説明があった後、専門調査会(第2回)議事要旨が諮られ、公表されることとなった。

マッキンゼ―・アンド・カンパニー・インク・ジャパン(以下「マ」社)による説明

(島田会長代理)これまでの議論をまとめると、概要は以下の通りである。

  • 現在の構造改革は不良債権処理などやや後始末的なものが前面に出ている感じがあるが、本調査会においては、その次の段階として前向きの創造的な発展を支えるような構造改革を出したい。これは、戦後半世紀間キャッチアップをしてきた経済が、成熟段階に入るときの新しい構造を提案することでもある。
  • 基本理念としては、人材、住宅、技術、金融資産等の多様で豊富なストックを最大限に生かしていくために、多様で創造的なサービスが必要である。
  • そうしたサービスの提供により、需要が生まれ、消費が生まれ、雇用が生まれ、所得が生まれ、経済が活性化するという創造的な好循環が可能になる。
  • それを支えるために、規制改革と、雇用構造の柔軟な転換が必要である。
  • これにより、具体的には、個人向け、家庭向けコンシェルジェサービス、企業向けサービス、住宅関連サービス、健康増進サービス、生活空間移動サービス、地方の特色を生かし大都市人口を誘引する総合サービス、高齢者ケアサービス、子育てサービス、教育サービス、医療サービス、環境関連サービス、リーガルサービスなどの分野で、新たなサービス産業の創出や既存のサービス産業の拡充と、それに伴う雇用創出が見込まれる。
  • こうしたシナリオについて、国際比較や計量分析との整合性もきちんと取っていく。
    本日は、それの一つの重要なインプットとして、「マ」社より報告を受けたい。

(「マ」社)90年代の日本とアメリカの国民一人あたりの実質GDP成長率を比較すると、日本0.6%に対し、アメリカ1.7%であり、このギャップをどのように埋めればよいかというところを問題意識として、社内的な分析を行った。

  • 日本の一人あたりの実質GDPを労働生産性と労働投入量に分解すると、労働投入量はアメリカに比して高いが、労働生産性は著しく低くなっており、労働生産性を上げていかないといけない。
  • 労働生産性を更に資本生産性と資本集約度に分解すると、資本集約度はアメリカに比して高いが、資本生産性は著しく低くなっており、やはり生産性を高めないとGDPは上がらないという認識である。
  • 生産性の向上については、過去50年から100年のスパンで見ても変化に乏しく、これを高めるためには歴史的な構造転換が必要である。
  • きちっとした改革を実行すれば、今後10年間で労働投入量は年率0.5%減少するにもかかわらず、労働生産性が年率4.5%上昇するというシナリオで、ポテンシャルとして年率4%成長も可能と考えている。
  • 産業別に見ると、雇用構成比の7割5分を占める「国内市場向けのサービス」において、生産性がアメリカの6割しかないため、この分野の生産性の向上と需要の拡大が必要である。
  • この国内向け産業のうち、GDPと雇用のそれぞれ約2割を占める小売業、食品加工業、住宅建設業、医療を取り上げてみると、労働生産性がアメリカに比して非常に低くなっている。このうち医療の生産性はアメリカと遜色ないが、日本はサービス供給規制があるために、雇用やサービスが生まれる余地を阻んでいるという問題がある。また、医療については、日米の生活習慣や民族、社会の違いに起因するファクターに留意する必要がある。
  • これらの産業において生産性が低くなっている原因としては、(1)生産規模がアメリカに比して圧倒的に小さいこと、(2)消費者のウォンツを満たす商品が提供されていないこと、の2点が大きい。
  • 小売業について、労働時間ベースで見ると日本では家族経営商店が55%を占めており、アメリカの19%、ヨーロッパで多いといわれているフランスの26%を大きく上回っている。この業態での生産性がアメリカの19%しかないため、小売業全体の生産性もアメリカの5割程度にとどまっている。また、アメリカでは過去10年で非常にダイナミックに企業順位が入れ替わっているが、日本では過去15年でほとんど変化がなく、産業構造的にかなり硬直している。外資のインパクトを見ても、唯一トイザラスが10%のシェアを獲得しているだけで、他はほとんどインパクトがなく、放っておけば外資によって産業構造が変わるというようにも思えない。
  • 食品加工業についても、アメリカに比して事業規模が小さく、海外からのインパクトもほとんどない。
  • 住宅については、全体の40%弱を占める単世帯住宅の小規模開発の分野において、大工による施工が主な手段となっており、ここに大部分の雇用が張り付いている結果、この部分の生産性がアメリカの34%、住宅産業全体でみてもアメリカの45%に過ぎないという構造になっている。
  • 日本は注文住宅が8割を占めるのに対し、アメリカは建売りが7割と、完全に逆転している。
  • 日本の住宅販売においては販売コストが非常に高くなっているが、これは各社横並びで特注中心のプッシュ販売を行っているためで、産業が成熟化している中で各社とも営業経費をかけて売っているということである。この結果、価格競争が起きず、住宅産業のシェアはここ20年間上位7社で全く変化がない。
  • 日本では医療サービスに対する患者の満足度が非常に低く、医療技術についても、当局の認可が遅いため日本のメーカーが開発した技術にもかかわらず医療現場での利用、普及が遅れるなど、質の低い医療が行われている。入院日数も欧米に比して極端に長く、院内感染の危険も高い。薬についても、一人あたりの処方量は多いが、新薬の認可が遅れているため、最新レベルの処方が行われていない。
  • 上記のような現象が生じている原因としては、(1)参入障壁の存在、(2)価格・品質情報の欠如、(3)退出障壁の存在、によって、マーケットの歪みが継続していることが挙げられる。特に、医療や住宅の分野で、価格と品質の関係がきちんと提示されず、情報開示がなされていない。
  • 社会規制については、特に環境アセスメントの類は判断が難しく、運用に気を付けないと参入障壁となりうる。
  • 零細の小売店については、店舗が居住用を兼ねているため、土地を売却してその代金を相続する場合に比べ、土地を保有して相続する場合のほうが節税メリットが大きくなっており、こうした制度が退出障壁になっている。
  • 大手の小売店が抱える過剰債務については、バブルの影響のみでなく、90年代の更なる追い貸しによって問題が悪化している。これは、銀行融資が錯綜しており、銀行間でお互い引くに引けない状況になっているためである。しかし、多額の債務を抱えている大手小売店を全て清算したとしても、就労への影響は小売業全体の2%にとどまり、家族経営商店のところをいじらないと生産性はあまり変わらないということだ。
  • 食品について、輸入障壁の高い産業では生産性が低く、こうした保護は取り除いていかないといけない。
  • 住宅の価格競争を生むためには、中古住宅市場の整備が必要であるが、日本の中古住宅取引量は欧米に比して圧倒的に少ない。これは、品質情報、価格情報が欠如しているためである。アメリカでは新築住宅市場である1次市場と中古住宅市場である2次市場との間にプライスメカニズムが働くとともに、住宅の品質の査定基準も整備されており、年間500万戸の中古住宅が売買されている。日本は現状では十数万戸であるが、遅ればせながら品確法の制定や中古住宅の品質基準の策定に取り組んでいる。
  • 患者が寝ていれば1日5,000円程度の医療報酬が入ってくるというシステムにより、早期退院について病院側のインセンティブが働いていない。入院日数の短縮のためには、医療報酬の支払い形態を包括払いに変えていくなどの制度改革が必要。ドイツではこうした改革を5、6年前にやり、既に10~20%入院日数が減少している。
  • 実際には、現在の制度の制約の中でも、入院日数を減らしたほうがベッドの回転率がよくなり、手術などとのシステムバランスがよくなって経営は良くなるのだが、そうした動きは広まっていない。
  • 改革のための政府の役割としては、(1)参入障壁をなくすための規制緩和、(2)価格と品質に関する情報開示のための政府介入、(3)退出促進のため、税制の整備や失業保険等のセーフティネットの整備、が求められる。
  • セーフティネットの整備として、国際的に見て低い失業保険給付額の時限的な拡充等も考えられる。
  • 消費について見ると、価格弾性率は比較的高く、財別に見ても娯楽用品等でアメリカとの比較で消費量のギャップが大きいため、今後生産性の向上によりプライスが低下すれば、消費の拡大の余地は大きいものと考えられる。
  • 改革のインパクトとして、生産性の向上等により4産業で年率0.5%の雇用減少を生むが、生産年齢人口が年率0.5%で減少するため、実際の失業増加はネットではゼロである。
  • 雇用のインパクトは特に医療で大きく、サービスレベルの向上、新サービス・治療への需要の増加、高齢者介護の要員増強等により、113万人程度の雇用創出のポテンシャルがある。この雇用増に伴うコスト増を、アメリカに比べて3倍の薬の処方量、4倍の入院日数に要しているコストの削減で吸収すれば、国民にとって生産性が高く、医療の質も高く、かつおよそ100万人の雇用を生むという医療の姿があり、こうした方向に進めていくべき。
  • 日本においては、医療現場での看護婦への負担が重く、准看護士等に業務をアウトソーシングできるような体系は必要ではないか。

(島田会長代理)アメリカは分業体制がきちんとできているが、日本は例えば住宅でいうと大工さんが一人で何でもやってしまい、結果として生産性が低い。スキルにより、適当に専門化して分けていった方が生産性が高い。

(「マ」社)労働者の頭数が多いから生産性が低い、という考え方はまずい。例えば日本の銀行は、欧米の銀行に比して従業員数が非常に少なく、人員の生産性は高いが、アセットの生産性は世界最低である。

(牛尾会長)そのような視点も報告書に入れたい。

(樋口委員)サービス業の場合、規制緩和をやって料金が下がると、付加価値が下がってしまうため、結果として労働生産性が下がってしまうということがある。それは即ち、規制緩和後は従来と同じサービスではだめで、新しいサービスにより付加価値をどう生むか、ということがサービス業には重要だということである。

(島田会長代理)4月1日から始まった失業保険制度は、会社都合の失業者には手厚い給付がなされるが、リストラが想定された場合に新たな職にチャレンジして自発的に離職するような失業者には極めて冷たい仕組みである。

(樋口委員)日米の失業保険制度の大きな違いは、アメリカはレイオフの場合しか給付されない、ということである。このためアメリカでは前の仕事に就いているうちに次の仕事を決めている、というケースが圧倒的に多いが、日本では失業保険をもらうという前提に立っているため、前の仕事をやめてから次の仕事を探し始める。更に、日本でも非自発的失業者のほうが自発より所得ニーズが強いため、ある程度解雇されることを予測して、前の仕事に就いているうちに次の仕事を決めている。

(島田会長代理)給付に伴うモラルハザードの問題もあり、自分としては、30代、40代で家族を持っている人だけ給付を手厚くし、他は給付をカットすべきという主張をしている。

(樋口委員)そうした制度にする場合は、民間の能力開発も含めた能力開発期間中には雇用保険による給付を出すといった条件をつけないと難しいだろう。

(島田会長代理)チャレンジしようとしている人にはもうすこし手厚い給付が必要だと思うが、そこのところの制度設計はなかなか難しいようだ。

(「マ」社)組織としてパフォーマンスの悪いところには退出して頂き、そのために退出障壁もなくすが、個人としては弱者になるので、その保護はする。しかし、保護があまり長くなるとモラルハザードになるため、時限的な措置として行うということを提案したが、一旦始めたことを止めるのは非常に難しいという問題がある。

(「マ」社)フランス、イギリスが構造改革をスピーディに進めることができたのは、労働党のバックグラウンドがあって、セーフティネットに対する信用があったからだ。日本はそうした信用がなく、構造改革を進めることへの国民の不安がある。

(樋口委員)イギリスは96年に雇用保険制度を改正して、20代の失業給付について、(1)ボランティア活動をして失業給付を受ける、(2)レイティング(見習)をして給付を受ける、(3)就職して給付を受けない、の選択肢を一定期間経った段階で強制的に選ばせる、という制度にした。この効果は日本でも少し考える必要がある。

(「マ」社)医療について、日本の健康保険組合の権限のなさというのが問題として挙げられているが、これはアメリカではHMOがコスト面で一定のプレッシャーを働かせる、ドイツでもパフォーマンスが悪い病院に対して組合が積極的に効率化のための議論ができる場が設置されている等の仕組みが整備されているのに対し、日本はこうした機能がなく、自動的に金が流れていくシステムになっている、ということである。

(島田会長代理)ドイツは国民が健康保険組合を選択できる仕組みになっており、コストミニマムにしないと崩壊するというプレッシャーがある。

(「マ」社)ペイヤー側をどこまで自由化し権限を与えるかというところで、日本ではアメリカのHMOのようにすべきとは必ずしも思わないが、ペイヤーの自由度を増すとなると、健保組合に権限を与えるか、それとも別の形であるのか、いずれにしても何らかの措置が必要ではないか。

(大田委員)日本の規制の問題は、参入だけ厳しく制限して、情報開示や退出についてはノーチェック、というところにある。したがって、参入規制を緩和するということは、情報開示と退出ルールの確立とセットでやらなければならない。

(牛尾会長)退出障壁となっている補助金をやめることも規制改革の中に入れないといけない。

(「マ」社)既存の権益を持っている人が意思決定に参加しているという問題もある。

(島田会長代理)保育所を設置するときの認定委員会がそうで、既存の業者が認定委員会のメンバーになっているため、全く新規参入ができない。大店法も然り。

(「マ」社)情報開示など市場のルール作りに政府が介入しない限り、市場メカニズムはうまく動かないと思っている。

(島田会長代理)自由が市場だと思ったら間違いであり、情報、安全に係る規制強化がないと市場は動かないということを理解すべき。

フリーディスカッション

(牛尾会長)5月前半の経済財政諮問会議に報告するスケジュールで進めたい。報告に盛り込む事項については、政府だけでなく、経営者、労働者、消費者等、それぞれの主体の取り組みを具体的に推進する方法を考えないといけない。

(島田会長代理)今の会長の話を今日の議論で深めていきたい。例えば、住宅については、現状4400万世帯に対して5020万戸の住宅が存在しており、オーバーサプライになっているにもかかわらず、15万店の工務店を維持するために、アメリカ並みに毎年150万戸の住宅を作らなければならないというおかしな構造になっている。それを変えていくにはどうしたらいいか、ということを考えなければならない。

(牛尾会長)欧米と日本では消費のコンセプトも異なっている。例えば家具について、日本でも戦前は資産として代々使われていたが、今は引越しのときに捨ててしまう。家についても、ヨーロッパでは社会的資産として位置付けられており、保有している限り相続税もかからず、100年以上持っていると文化財産としてメンテナンスに国が資金を出してくれる。それに対し、日本では大体30年経つとスクラップしてしまう。

(島田会長代理)この点を整理すると、以下のようなものになるだろう。

  • 戦後マイホーム政策が推し進められ、1973年頃に世帯数と住宅数がほぼ均衡した後、オーバーサプライとなった。
  • これは、(1)家を持たせる税制が続いたこと、(2)注文住宅が中心となり、標準化がなされていない特殊な家が作られたこと、(3)特殊な家であるために単価が高く、建設業界にとって都合が良かったこと、という理由による。
  • この仕組みは、今までのような高度成長、平均寿命70歳という社会では持続可能だったが、高齢化、成熟化というメガトレンドの変化によって、方向転換を必要としている。
  • 現在、アメリカは中古市場を整備し、標準化、情報開示に政府が強く介入して、家は「売るために作る」という仕組みになっている。
  • 日本も昨年6月に住宅宅地審議会の答申を出し、住宅を社会資本とする方向に持っていこうという基本的な考え方はできている。今後、こうした動きを本当に推進することが必要。

(牛尾会長)日本の住宅ローンは住む「人」に貸す仕組み。アメリカは住む「家」に貸す仕組み。そのため、「家」に対する評価の仕組みがしっかりしており、不動産業も弁護士と公認会計士がセットになってリアルエステーターとしての役割を果たすなど、職業としての社会的地位も高い。

(島田会長代理)こうした仕組みの違いにより、アメリカは家に対するリスクを家にお金を貸す人が負う、つまりレンダーズ・リスクとなるが、日本は購入者がリスクを負うことになる。

(牛尾会長)すなわち、アメリカはお金を貸す方が家をチェックしてくれるから、購入者が素人でも安心して家を購入することができるということだ。

(島田会長代理)このあたりの仕組みは、ノンリコースローンとリコースローンの違いに過ぎない、という見解もあり、きちんとチェックする必要がある。

(牛尾会長)アメリカではローンを組んで家を購入しても、ローン付きの家を転売すれば借金関係がなくなる。そのため、生活の変化に合わせて一生のうち5回程度家を移り住むが、日本は30代で一生住む家を買ってしまうから、後が大変である。

(大田委員)不動産市場の情報面について、アメリカ政府の介入はあったのか。

(「マ」社)住宅金融公庫が、証券化のために購入する不動産は品質評価を経ているものしか購入しない、という姿勢を徹底したことによって、評価をしてないものが淘汰され、品質が向上した。

(牛尾会長)家の品質評価に関する金融機関のレベルが非常に高い。また、建設段階から、流通市場に出て金融機関の厳しい評価にさらされることが想定されているため、非常に良心的に作られる。

(島田会長代理)中古住宅の回転率を見ると、アメリカは日本の15倍程度である。欧米では中古であってもメンテナンスがよくなされており、その情報も開示されている。

(牛尾会長)アメリカでは、住宅は基本的に中古であり、新築物件は例外である。日本では中古市場は存在しないに等しい。

(樋口委員)中古市場だけでなく、賃貸についても当然扱っていくことが必要。

(島田会長代理)住宅ストックの品質を見ると、日本は大都市の1/3程度が崩れる危険性があるもの。これを欧米のように耐用期間の長期化を進めれば、住宅サービス産業は大変活性化する分野である。

(島田会長代理)専門家の研究によれば、5000万円のマンションを購入した場合、税金、水道代等すべて含めたライフサイクルマネジメントコストは2億円程度と試算されており、日本のサラリーマンの生涯賃金が4億円程度だとすると、ローンの返済も含め大体7割程度が住宅関連の支出になる。こうした状況では、たとえ貯金を持っていたとしても今の住宅にロックインされて動くに動けず、結果としてスラム化していくことになる。一方では、動けないから、新築も必要だと言われている。

(島田会長代理)税制についても、日本はローン減税や、遺産相続においても金融資産より住宅のほうがずっと評価が低いために相続税が安いなど、家を建て、それを保有していることについては優遇されているが、それを売買しようとした場合には譲渡所得税、取得税、登録免許税等がかかってしまい、とても売れない。

(大田委員)住宅については、例えば耐火用、耐震用とお金をかけると、固定資産税は上がってしまうが、そういう家はむしろ行政サービスを使わないから、税金は安くていいはずであり、受益と負担に逆転が起きている。住宅の固定資産税は行政サービスの対価という趣旨では説明できず、住宅税制は整理が必要だ。また、住宅への消費税をどうするかということもポイントである。

(樋口委員)現行の制度で、メンテナンスコストをかけた場合、所得税を払うときに控除を認める制度になっているのか。

(牛尾会長)メンテナンスコストは、事業用のセカンドハウスについては控除になるが、自分の持ち家に関して、アメリカは控除になるが、日本は控除にならない。
ただ、アメリカは固定資産税が地方の税源の基本になっているという事情がある。

(牛尾会長)転売するときに損をしないような税制にしないといけない。

(島田会長代理)具体的には買い換え税制と譲渡所得税などの検討が必要。

(牛尾会長)高齢者対策として、リバース・モーゲージをもっとやらないといけない。

(大田委員)住宅に対する評価がしっかりとしていれば、リバース・モーゲージも普及する。

(牛尾会長)市場システムを整備して、住宅に対する品質評価の仕組みをつくり、安心して購入でき、また簡単に転売できるシステムを作る。

(島田会長代理)その上で、豊かなストックを流通させながら大事に使っていくために、メンテ産業、管理産業などのサービス業を発展させることが必要だということだ。

(牛尾会長)大手住宅建築会社が、ホームインダストリーを総合的に手がける企業形態に転向したことは、ゼネコンの本格的な淘汰が予想される中で新たな産業形態として注目に値する。行政としては、このようなサービスを展開できるためのルール作りをしてやることが必要だ。

(島田会長代理)住宅設備会社が相互補完的に合併し、最大規模のメンテ会社を作った動きに見られるように、業界は既に動き出している。それが本当にやりやすくなるようにメリハリのある政策が必要だ。
また、社会資本として住宅を見た場合、都会では需給が逼迫しているが、地方では放棄されている住宅も多く、地域ミスマッチが生じており、国民の資産として無駄が生じている。このあたりの問題も、地域問題と絡めて考えていく必要がある。
次に、健康増進サービスの問題。

(大田委員)概念的には薬の販売等も含まれるだろうが、このあたりは規制が強い分野だ。

(島田会長代理)規制に加え、日本では健康相談にしても判断を要することは全て医師免許が必要になってしまうなど、医師の職域に関して医師会が強すぎる。

(島田会長代理)厚生労働省で「健康日本21運動」を推進しており、その一環として健康運動指導士という資格制度を設けている。現在全国で8000人程度いるので、これをさらにふくらませたい。

(大田委員)サムライビジネスは新たな参入障壁となるので、推進には慎重になるべきだ。

(牛尾会長)資格をもらったとたんに向上心がなくなってしまうという問題はある。

(島田会長代理)健康増進サービスは公的機関による提供がなされておらず、かつ、ニーズが非常にある分野である。

(島田会長代理)資格に関連して、リーガルサービスについても、資格による業務規制が厳しい。

(島田会長代理)生活空間移動サービスについては、高齢者の単身世帯等で新たなサービスに対する需要が出てくるのではないか。

(牛尾会長)現在でも個人タクシーなどでこのようなニーズに応えるサービスが提供されているのではないか。また、免許を持たないいわゆる白タクによるサービスの提供は、規制との関係で問題になる。

(島田会長代理)高齢者ケアサービスについては、プレイヤーが誰か、というのをきちんと書きたい。
介護については、公の施設は著しく不足している一方、民間の施設は料金が高くて一般の人には利用できない。家庭での介護についても、家族への負担が大きく、またヘルパーを雇うと高額になってしまうという問題がある。
そのため、現在ケアハウスの導入に活路を見出そうとしているが、憲法89条の制約で公設民営による施設整備はできない。現在、社会福祉法人によってサービスが提供されているが、既得権益化し、民間の営利主体の参入も阻まれている。ここを本調査会の議論によって前進させたい。
また、民間の施設の入所金が異常に高くなっているのは、民間は逃げる、という民間不信の発想が根底にあり、そのため何百億の施設の償却を3、4年でさせてしまうという行政指導が行われているためだ。こうした会計指導も変えていく必要がある。

(大田委員)経営主体に関係なく、機関補助を個人補助、バウチャー制に変えていくことがいいのではないか。その上で、役所の役割は情報開示と事後チェックに徹するということが必要だ。

(島田会長代理)施設費を含んだバウチャーが理論的に成立するかどうかはちょっと難しいかもしれない。

(樋口委員)地方の雇用創出についてももう少し考えていきたい。

(島田会長代理)現在の交付税制度と補助金の存在、年金と公共事業に依存した経済構造が、地方に新たな雇用を創出して経済面で独り立ちしようとするインセンティブを著しく減退させており、こうした制度の見直しが必要だ。

(樋口委員)産業構造の点から考えると、農業から製造業、製造業からサービスという流れであるから、まさに地方から都市という流れである。その流れの中で、地方をどうするかというのは大きな問題だ。

(大田委員)地方においても、サービスは公的にもらうものでなく、買うものであるという発想ができれば、需要はできるはずだ。

(島田会長代理)地方の事業家でもクリエイティブな人は出てきており、そういう人たちがインセンティブを持って努力すると利益が上がった、という絵を描くことが大切だ。

(坂統括官)経済財政諮問会議の「国と地方の関係」グループにおける交付税制度に関する議論の基本的な論点は、現在は地方間の経済力格差を調整するとともに財源保障をしているが、今後は地方の財源格差を全く調整しないというわけにはいかないだろうが、一部または全部の財源保障はやめたらどうか、ということだ。つまり、どれだけお金が入ってくるかは見て、多少の不足分は埋めるという格差是正を行うということ。ドイツは明確な基準によって埋めているが、アメリカは一切埋めない。

(大田委員)ドイツの格差是正のやり方は、基本的には人口基準で、最低限の歳入保障だけしている。歳出面でのナショナル・ミニマムという保障はない。

(牛尾会長)現行の交付税制度のまま、補助金のほうをなくせばよいということだ。
そのレベルをどの程度にするか、どれくらいのスピードでやるかというところが問題だ。

(大田委員)歳入保障なら歳入保障だけにしないといけない。最低限の義務づけが必要な分野は義務だけ課して、歳入保障の範囲内でやってもらう。そうすれば、義務のあり方についても議論が起こってくる。

(坂統括官)例えば40人学級を、50人学級でも良いというように義務の部分のレベルを少し下げないといけないだろう。

(島田会長代理)いずれにしても、歳入保障だけで、事業のほうはカットするという考え方だ。そうすれば、地方でも自ら産業を興すインセンティブになり、都会の人間や経営資源を全国各地から吸引するというクリエイティブな発想につながる。

今後の進め方について

(牛尾会長)前述のとおり、5月前半の経済財政諮問会議に報告するスケジュールで進めたい。

(島田会長代理)住宅関連サービス、子育てサービス、高齢者ケアサービス、個人向け、家庭向けコンシェルジェサービスというようなものをまず前面に出していく。

(牛尾会長)健康増進サービス、生活空間移動サービスについても具体的に取り上げたい。社会保障については、他の議論と整合性を取ることが必要。

(樋口委員)女性の就業促進というくくり方も必要。社会保険の関係では、第3号被保険者の問題も扱うべきではないか。

(大田委員)サービス業が増えると、賃金が2極化するため、共働きをきちんと位置付ける必要がある。

(牛尾会長)全ての女性は働き、全ての人は70歳まで働く、専業主婦は例外、という前提に立った制度設計が必要だ。

次回の会合等について

  • 次回は、関係省庁より参考人の出席を求めることとされた。
  • 次回会合は4月26日(木曜日)14時30分~17時30分に行うこととされた。