サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する専門調査会 第2回 議事要旨

第2回 議事要旨

開催要領

  • 開催日時:2001年4月2日(木曜日)10時00分~11時30分
  • 場所:内閣府542特別会議室
  • 出席委員
    会長:牛尾 治朗 ウシオ電機(株)代表取締役会長
    専門委員:大田 弘子 政策研究大学院大学助教授
    同(会長代理):島田 晴雄 慶應義塾大学経済学部教授
    同:樋口 美雄 慶應義塾大学商学部教授

(議事次第)

  • 開会
  • (株)野村総合研究所によるブリーフィング
  • 事務局の米国現地調査の結果報告
  • フリーディスカッション
  • 第3回会合等について

配布資料

  • 資料1 サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する専門調査会(第1回)議事要旨(案)
  • 資料2 アメリカのサービス産業における雇用について

概要

会長による開会の挨拶の後、島田会長代理に議事進行が引き継がれた。

島田会長代理より議事の説明があった後、専門調査会(第1回)議事要旨が諮られ、公表されることとなった。

(株)野村総合研究所によるブリーフィングについて

(野村総合研究所池田上級エコノミストより、米国のサービス業における雇用創出についてブリーフィング。過去20年間程度の特にサービス産業に焦点を当てた米国における雇用の動向を説明。)

(1)サービス化:80年代以降、米国では、製造業で雇用者数の減少が見られた一方、サービス業等で大幅な雇用の拡大が見られた。これらは、ITなど高度化した技術を利用したソフトウェア開発・データ処理やエンジニアリング、高齢化などを背景としたヘルスケア、アウトソーシングを背景としたビジネス向けサービスなどの分野で特に目立つ。
(2)未熟練低賃金労働と熟練高賃金労働への二極化:
サービス業は、広範な業態を含んでおり、生産性も賃金も大きくばらついている。雇用が拡大したサービス業においても、未熟練低賃金労働と熟練高賃金労働への二極化が進展した。
(3)人件費の変動費化:
パートやアウトソーシング活用による人件費の変動費化や、ベネフィット面でのHMOなどマネッジドケア導入、確定拠出型年金の導入などで、企業は雇用コストを抑制した。こうした動きは人材派遣等ビジネス向けサービス、ヘルスケア産業での雇用拡大の背景ともなった。一方、家計から見ると、パートなど多様な就労形態が選択可能となったほか、「年金のポータブル化」は転職の不利益を軽減することにより労働市場の流動化に寄与した側面もある。
(4)女性の社会進出:
一貫して女性の労働力率は趨勢的に上昇し、雇用は女性の方が早いペースで拡大してきた。これは女性の生き方の多様化という側面に加えて、夫の所得が実質ベースで低迷し、妻が働きに出る必要が高まったことも指摘できる。
(5)創業とリスクマネー:
雇用拡大の背景には、小売業、サービス業などでの旺盛な新規事業所開業も指摘できる。規制緩和やリスクマネーの円滑な供給も、こうした動きを助けたと見られる。

(樋口委員)大変面白く聞かせていただいたが、今回の報告では学歴というポイントが抜けていると思う。アメリカでは熟練(スキルドワーカー)か未熟練(アンスキルドワーカー)かという分け方が、明らかに学歴によって規定されている。所得格差も学歴によって分かれるのではないかと思う。その視点でみれば女性の社会進出が進んで共稼ぎ世帯の所得が高まったという指摘についても、むしろ高学歴の女性が社会進出してきたことにより高所得層に加わって所得格差を生んでいるのではないか。日本では高学歴女性が社会進出しても、年齢別にみた労働力率は独身の頃は高いがその後はM字を描くか下がったままになってしまう。アメリカでは女性の労働力率は学歴別にまったく違ったM字型を描く。
逆に、日本ではなぜ学歴間の所得格差が90年代になっても小さいままなのかということもポイント。
アメリカにおいて賃金の二極化がおきつつ未熟練低賃金労働についても所得が伸びたということは、レーガン政権のもとで学校以外での職業訓練を充実させてきた、その効果が表れているのではないか。これは日本にとってのインプリケーションが大きい。

(島田会長代理)アメリカでは、開放経済の下、低賃金国で作られた安い製品が国内に入ってきたため国内労働者の賃金が上がらなかった。そのため経済成長が資本増強につながり株価を刺激してダイナミズムがつき、そこから雇用が生まれてきたというメカニズム。しかし、日本では社会福祉などの分野で公的部門のウェイトが高いことと、輸出志向できているため、アメリカで実現したようなメカニズムがそのまま働くとは考え難い。
それから、アメリカでは例えばヘルスケア産業などで、医療費抑制のための規制強化が新たな安価なサービスを誘発し雇用が生み出されているという話があったが、それは健康投資が医療費を下げるという考え方が企業に浸透したためであり、その背景にあったのは情報公開。日本では医療に関する情報公開とトリアージュというガイダンスができない。企業や大学で実験や研究をしても医師会の反対に遇うために公開できない。日本ではヘルスケア産業などの発展のためにはやはりこうした規制撤廃が必要。

(牛尾会長)今回の報告は非常に参考になった。学歴の問題や、都市部と地方の格差など、いくつかの視点を追加してまたご報告をお願いしたい。

事務局による米国出張報告について

(内閣府政策統括官(経済社会システム担当)白川企画官より、米国での現地調査について報告)

  • 90年代におけるサービス産業の雇用増加
    特にポイントをしぼると以下の4つの産業。(1)健康医療産業(2)育児サービス業(3)コンピュータ・データ処理産業(4)人材派遣業
  • 主要サービス産業について雇用の特徴
  • 産業集積と雇用創出
    (1)ピッツバーグ大学メディカルセンターヘルスシステム(UPMC)
    (2)バイオテクノロジー産業(メリーランド州)
    (3)シリコンアレー
  • アメリカの労働市場について
    (1)最近の動き(2)女性の雇用(3)非自発的離職者の労働異動の状況(4)雇用不安と格差

(島田会長代理)短時間でありがとうございました。育児サービス産業の雇用の話があったが、アメリカではこの10年間で約5割くらい育児関連サービスワーカーが増えている。もともと保育所とベビーシッターという形態だったが保育ママという形態が大幅に増えた。日本では政府の規制が厳しいためこれほど簡単には増えない。日本の高学歴女性が社会で活躍できないのはそういったこともネックになっていると思う。

(牛尾会長)アメリカでも都市部での集中的な現象と考えられる。実態を調べないといけない。

(樋口委員)非自発的離職者の労働移動というのは、アメリカでも研究が盛んな分野である。若い労働者層はセニオリティ・ルールによって転職せざるを得ないことも多いが、中には再就職によって賃金が増える場合もある。中高年層は会社が倒産したらもうどうにもならないということがあり、賃金が下がる。また、92年か94年頃に解雇に関する法律が改正され、従業員50人以上をレイオフする、または工場を閉鎖する際には事前通告の期間を長くし、あらかじめ従業員に自分で再就職の準備をさせることになった。そういった問題がアメリカでは起こっている。

今後の進め方について

(牛尾会長)今後の方向として、骨格は出すが当面はどこかに焦点を絞るといったものと、制度的なものとの2つに分かれると思う。具体的には国民にインパクトを与えるような密度の高い提案をアメリカなどの報告の中からどうやって選び抜くか議論が必要である。日米の違いにも切り込まなければならない。この違いは国民性の違いではなく制度の違いである。

(島田会長代理)各国の歴史的、構造的、制度的条件を踏まえた上で、日本との差異に考慮して注意深い吟味が必要だ。今日の報告を意味あるものにするためには我々が精密な比較作業を行う必要がある。

(牛尾会長)アメリカでは就業の二重構造という問題があるが、レーガン政権の下で「強いものはますます強く」といいながらも、弱い方も強い方と同じパーセンテージで上がってきた。また、アジアを中心とした安い商品を積極的に国内に入れる事で物価を下げ、月2万くらいで4人家族が生活できるようにした上で貧富の差を広げ、二極化させるといったようなポジティブなポリシーをとってきた。日本では二極化が進まないようにすべきだという考え方が一般的だが、これでは経済は成長しない。

(島田会長代理)二極化がいいということよりは、アメリカでは過去10年間ハイテク、ナレッジ、マネー分野での輸出強化を戦略としてきた。その裏で徹底的に安い商品を輸入した。そのために低賃金労働者の賃金は伸びないけれども輸出の盛んなナレッジ産業などは高賃金になった。その結果、アメリカでは所得分布が広がった。

(牛尾会長)サービス産業には基本的に低賃金でなければ成り立たないブロックがある。そのためアメリカではどんどん移民を増やしている。そうした点でも二重構造をはっきりと認めている。

(島田会長代理)アメリカ像はよくわかったが、そうしたアメリカの経験から日本に活力を引き出すためにどこを学ぶべきか。日本では格差が広がることについて容認されにくい。

(牛尾会長)現実には日本にも格差は存在している。中小企業は大企業とは賃金体系が全然違うし、終身雇用もない。日本型経営というのは一部のことだけを言っている。

(樋口委員)日本でも格差は二極化していると思う。大企業と中小企業もそうだし、同じ企業内でも特定の男性正社員同期入社組の中では所得格差は小さいが、属性が違うとものすごい格差ができる。パートタイマーと正社員とか、男性と女性とか。いいか悪いかは別として、「名前が違えば格差があっても仕方ない」という発想は日本にも既にある。

(牛尾会長)建前は均一化し、実態は均一でない。二重構造があって、上に上がっていくというのがダイナミズムを生む。今の日本は女性が男性に追いつき超えようというエネルギーと外人が日本人に追いつこうというエネルギーにより、ダイナミズムがかろうじて保たれている。

(島田会長代理)大局観から言うと、アメリカは過去10年輸出入ともに増えて貿易依存度が高まった。日本の場合は短期・中期的に輸出をどう考えるかが重要である。

(牛尾会長)日本では最近エネルギー以外の二次商品(加工品)の輸入が増えている。

(岩田政策統括官)98年暮れから製品輸入比率は62%くらいであり、為替レートや国内の景気に影響されないため、構造変化によるもの。

(牛尾会長)経産省や農水省がセーフガードだ、輸入制限だと言ったところでこの流れは止まらない。輸出は競争力がなくなってきて、ソフトや知識労働分野での輸出ができるようになるまでにはまだまだ時間がかかる。さらに、92年から95年頃に投資した海外の生産基地がいよいよ日本にも輸出を始めた。円安になっても輸入はさらに増える。だから、日本の貿易は将来赤字になる可能性も高い。

(岩田政策統括官)放置すれば、そうなるという議論もある。アメリカのドルの強さがいつまで続くか、アメリカのバイタリティが今後どうなるかにもかかっている。加工品の輸入が円安を超えて増えるかどうかという点についてはかなり不確定である。

(牛尾会長)アメリカの輸出の半分くらいは食料品と軍事力で、両方とも為替の変動に強い。高くても買わざるを得ないものだから。日本は、円安を緩やかにやらないと、金利が上がり始めたら国債が大暴落するなどの危機が起こる可能性がある。そうした場合に個人の家計支出がGDPを支え、個人の資産が株式相場を支えるようにするためには、雇用を増やすしかない。

(樋口委員)対内直接投資、外資系の企業の日本への投資は、雇用を作るものとして期待できるか。

(牛尾会長)海外からの投資は雇用を作る上で大変重要である。そのためには、ノン・レジデントを優遇しないとだめ。対外投資:対内投資比率をせめて2対1にしないといけない。海外から優秀な人材を伴う投資をしてもらうためには、物価と税金、規制、情報の流動化が重要なポイントとなる。

(島田会長代理)政府の対日投資委員会でも問題になったのは、日本国内における外国人子弟の教育である。優秀な人材を日本に呼ぶためにはかなり問題だ。

(樋口委員)日本への海外投資はやはり金融部門が多い。雇用の面からみれば高学歴で少数だ。生産現場などでの雇用をどうするか、どう期待できるかということが問題となる。

(牛尾会長)生産現場はアジアからの外国人だろう。製造業といっても、生産現場にいるのは3分の1程度で、残りは職種でいえば財務、セールスなどのサービス業である。けれども製造業はこの部分へのマネジメントの伝統があり、効率が高い。ここが外国人を採ろうとしている。

とりまとめ方針について

(島田会長代理)今日に至る前に数回かなり集中的な議論をしたが、それについてご説明したい。
構造を変えていく一番基本的なポイントは生活重視、ストックを生かす時代ではないかということである。人的資産、物的資産、その他もろもろの社会的資産の価値を持続的に最大化していく。住宅などが一番よい例である。
具体的には、「『創造的好循環』を実現する」。つまり、ウォンツに答えるサービスを提供してサービス産業の生産性を向上させる⇒コストが低下する⇒消費余力が生まれる⇒新しいウォンツに答えるサービスに消費される⇒消費の増大⇒需要創出⇒雇用の増加⇒経済の活性化、という好循環になるように再構築することである。それを支えるのは雇用構造の転換。需要構造の変化にどうやって供給構造を対応させていくか。既に5~6つの重要なアイテムについて樋口先生と議論している。
それから、市場がこういった転換を支えていく上で、情報の開示、流通、評価と監視、自由な競争、不当な規制や保護の排除、法律や制度の更正な適用、参入の自由と容易さなどが必要。これらを担保する制度とは何か。これについては大田先生にお願いしたい。

(大田委員)基本理念として、好循環のプラス面だけではなく、アメリカの例に見るように所得の格差、雇用の不安定性などは避けられない。それに合わせた構造にしなければならないということをはっきり出していただきたい。セーフティネットの整備ははっきり書いてほしい。ただ、流動すること自体がセーフティネットにもなる面もある。

(牛尾会長)雇用の流動化というのは、現在と比べて雇用が不安定になることを意味する。セーフティネットは、実際の求職活動に必要な期間の60%しかカバーしていないことを認識しなければならない。流動できない競争条件の悪い人のためには手厚いセーフティネットが必要。

(島田会長代理)次に先進諸国との比較による推察についてだが、計量モデルは昔の情報がインプットされているだけであるから先が読めない。やはりシナリオ・ライティングが必要。その場合思いつきでは書けないのでアメリカやいくつかの国と比較しながら行う必要がある。構造、制度などいろいろな違いをよく踏まえて分析し、重要な手掛かりとなるものと思う。

(牛尾会長)日本の行政では、「日本はアメリカと違うんだ」という感情を持つ人が多いので、アメリカ以外にもう1カ国比較対象があった方がよい。ライン型資本主義が一番日本に近いと思われるドイツなどがよいと思う。

(島田会長代理)ドイツ、それにEUがよいと思う。
それから、計量分析による整合性のチェックも必要である。
具体的なシナリオについては、まだまだ議論しなければならないが、これまでの議論で出ているのは、(1)個人・家庭向けコンシェルジェ・サービス。伝統的な子育てや高齢者ケアなどの周辺に莫大なサービス需要があり、これを時間と場所と人材を組み合わせて需要と供給をマッチングさせる。(2)企業向けサービス。情報化の進展につれて中小企業などから外注のサービス需要が生まれるはずであり、これをどう見込むか。(3)住宅関連。社会資本として住宅を流通させる。そのためにはメンテナンスやインテリアなどサービスの需要が見込める。(4)健康増進。先ほども言ったが日本の最大のポイントは、適切な情報の公開と提供がネックになっているということである。(5)生活空間移動。高齢化、成熟化、個計化、都市集中化してくるなかで、移動サービスがもっと個人のニーズに合ったものになるべきだ。ITを利用すれば可能になる。(6)地方の特色を生かし大都市人口を誘引する総合サービス。補助金に頼るというメンタリティから、地方の特色を生かして、旅行、定住、教育、住宅、情報、楽しみ、雇用、社会貢献、ケアなどが相乗効果を持つような産業構築を地方がやらないと格差は広がるばかりだ。(7)高齢者ケアサービス、(8)子育てサービス、(9)教育サービス、(10)医療サービス、(11)環境関連サービス、については、規制が非常に強い。大変重要な分野であり、どこまで切り込めるか内閣府の力量が試されるところだ。
まとめを申し上げたい。次回の専門調査会では参考人としてマッキンゼーを招いて報告をしていただく予定。

以上