サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する専門調査会 第1回 議事要旨

第1回 議事要旨

開催要領

  • 開催日時:2001年3月15日(木曜日)13時30分~15時00分
  • 場所:内閣府542特別会議室
  • 出席委員
    会長:牛尾 治朗 ウシオ電機(株)代表取締役会長
    専門委員:大田 弘子 政策研究大学院大学助教授
    同(会長代理):島田 晴雄 慶應義塾大学経済学部教授
    同:樋口 美雄 慶應義塾大学商学部教授

(議事次第)

  • 開会
  • 牛尾会長説明等
  • 事務局資料説明
    (ア)米国におけるサービス部門での雇用創出
    (イ)米国サービス産業における雇用状況
  • フリーディスカッション
  • 第2回会合等について

配布資料

  • 資料1 専門調査会委員名簿
  • 資料2 専門調査会運営規則(案)
  • 資料3 サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化について
  • 資料4 米国のサービス部門における雇用拡大の実態調査の進め方について(案)
  • 資料5 米国サービス産業における雇用状況

概要

事務局よる開会の挨拶の後、会長による本調査会の趣旨説明等(別紙1)が行われた。

専門調査会運営規則について

専門調査会の運営に関して議論が行われ、原案のとおり決定された。これに基づき、島田委員が会長代理に指名された。

専門調査会の今後の審議方針について

(牛尾会長)5月末ぐらいまでには大体の第1回目の中間報告的な素案を出したい。現実的にどうすれば、年間100万人程度の雇用が見込まれるかということを具体的に考えて提案をしたい。
現在の経済の諸事情は非常に厳しい状態であるが、アメリカの成功例を見ても、雇用者数の増加は間違いなく経済の好転につながる。この専門調査会の提言で、14年度予算から改革が始まれば、日本経済の新しい足取りができることを確信しており、ぜひ大胆かつ洞察力ある発言をお願いしたい。

(大田委員)雇用拡大はもちろん重要だが、サービス業の生産性を高めるということを伴わないといけない。そのために、特に医療、教育というような聖域といわれる分野において競争制限的なものを取り除く必要がある。

(樋口委員)生産性の向上は重要だが、生産性の向上だけでは必要とする労働者数は減ってしまうから、それを需要の拡大とどうつなげていくかという問題がある。
その際、雇用創出をある程度長期的な視点から見ることが必要になるが、この調査会は戦略的に、ということであるから短期的に雇用をどう作るかということが問題。
また、雇用を創出する主体として、アメリカの例の紹介があったが、サービス業においては自営業が重要な役割を果たすのではないか。分析によれば、社齢が若い企業が雇用を創出しているというデータもあり、開業問題と絡めてサービス業の雇用問題を考えていかなければならない。
さらに、雇用について、東京と地方の格差が広がっているような感じがしており、IT産業も地域問題と絡めてどう考えていくのかというのがポイントではないか。

(牛尾会長)雇用の構造について、地域、ジェンダー、男女、世代、職種、収入のレベル、キャリアのレベル、そうしたものをマトリックスで見て、他国の例も比べながらやっていくのが1つのポイント。
もう一点、サービス業に関していえば、規制や制度、慣習が供給を制約しており、それが需要の伸びを妨げている感じがある。そこのところの投資を拡大し、参入を増やし、競争条件をどうやって作るかというところが、構造的に見て一番の問題。
また、保育や女性活用の問題も非常に関連が深いので、そういう部分の検討もお願いしたい。

(島田会長代理)日本の現在の産業構造は、人口構造の変化や社会の成熟化がもたらすメガトレンドに対応できておらず、その結果、国民の需要に合ったサービス、商品の提供がなされていないため、潜在的な需要に応えることができず、結果として貯蓄が増えつづけるという現象が起きている。
住宅における持ち家政策が典型的で、戦後、政府、消費者、建設業界が三者三様の思惑ながら「持ち家」で走ってきたのがこれまでの仕掛けだったが、消費者の側で、高齢化などの生活環境の変化に伴い住宅環境を変えるというニーズに変化してきており、それに対応していない仕掛けが続いている。
こうした過去の時代に合わせて作られた産業構造を、これからの時代のニーズに合わせてトータルに組み替えるということをしないと、本当の需要が出てこないし、本当の供給にならない。そういう仕組みの転換を仕込んでいきたい。

(牛尾会長)女性は原則専業主婦、高齢者は基本的には介護や保護の対象、という今までの制度ではなく、女性は基本的には働く、高齢者も75歳までは基本的に働く、というように考え方を変えて制度を作らないといけない。それは例えば、専業主婦手当てがなくなって、働いている女性のための費用は経費控除になるというように税制を変えることを意味する。
また、男女同じ税制にして、子供は控除してもいいけれど、主婦は控除しないというようにすれば、財源もいっぱい出てくるわけで、効果としても一番大きい。

(島田会長代理)一番良いのは、配偶者特別控除をなくして全部基礎控除にし、後は男女関係なしというようにすれば非常に明確である。

(牛尾会長)子供についても、控除よりも児童手当を出すほうが分かりやすいのではないかという気もする。

(樋口委員)住宅政策についていえば、OECDの各国で、持ち家優遇政策を取っている国がおしなべて失業率が上がっているという調査がある。これは持ち家による土地への定着によりミスマッチが拡大しているということで、こうした点を考えるべき時ではないか。

(島田会長代理)教育が自由に選べるようになり、住宅が変えられるようになれば、単身赴任もなくなる。

(大田委員)枠組みについてであるが、雇用という点で考えれば、(1)地域が公共事業で賄っている雇用を何とか別のかたちに代えていかなければならない、(2)過剰債務を抱えた建設、流通、不動産業の処理がここ1、2年で本格的に行われたときに、生産性が高いところに雇用が入れ替わっていかなければならない、の2点が非常に大きい。
その時に(1)高齢者のケア、育児、ホームヘルプなどの生活直結型産業、(2)司法サービスや中古住宅の評価などのインフラとなるようなサービス、(3)行政のアウトソーシング、という3つが雇用の受け皿となるサービスとして考えられるのではないか。

(牛尾会長)アメリカの例を見ると、マイクロビジネスといわれている企業のヘッドクオーターのアウトソーシングが進んでいる。

(大田委員)まとめ方としては、(1)規制、補助金、関税の仕組みといった生産性の向上を阻んでいるものはきっちり押さえる、(2)官と民、住まい方、ライフスタイルなどの変化に合わせて仕組みを転換する仕掛けを作る、(3)短期的に雇用を増やす仕掛けも必要かもしれない。例えば、平成の検地、土地の地籍調査をここ数年でどっとやる、など。

(牛尾会長)雇用の流動性をサニーサイド・ストリートにしないといけない。アメリカやヨーロッパは雇用の流動性というのは非常に自由な見地だが、日本では何か日陰を歩くような暗い感じがある。若い人たちの感覚は変わってきており、そのための情報化など環境の整備が必要。

(大田委員)人材派遣制度なども流動化を阻んでおり、そうしたところも仕組みの転換が必要。

(島田会長代理)今の企業社会では、雇用の流動化はやはり怖い。流動化のため、社会的な制度と企業内の制度の整備が必要であるが、社会的な制度としては、まず、失業保険の中年者への手当てが弱く、そうした部分の手当てが必要。そして、雇用情報と雇用紹介と訓練を一緒にできるような規制緩和も必要。
また、ホワイトカラーの再訓練を進めるため、自己投資の優遇税制もあったほうがよい。
一方、企業内の制度としては、退職金の税制優遇や、財形の優遇制度をニュートラルにしてやるなど、企業年金のポータブル制と併せ、外に出ることが恐怖ではない社会を作ってやることが必要。

(牛尾会長)松下では退職金のある給与制度とない給与制度を導入したが、最近は50%の従業員が退職金のない給与制度を選択しており、その結果若い人の賃金が1割くらい上がっている。

(樋口委員)もう一つ重要なのは、専門職の転職コストは低く、日本のようなジェネラリストの転職コストは高くつくということ。このため、サービス化、アウトソーシングによって専門職化をどのように進めていくかという問題も非常に重要であり、それは結局パイとかシェアを拡大していくということが転職コストを下げていくことにつながっていくのではないか。

(島田会長代理)履歴書の改善など割と具体的なこともやらなければいけないのではないか。それと同時に、厚生労働省が職種認定している220職種と、例えば日産自動車の分類にある2500職種の間の分類に属するものについて、中間技能として職種認定してやり、社会標準を作れば、労働者が動きやすいのではないか。

(牛尾会長)一番転職しにくいのはホワイトカラーである。上場していない中小企業などの雇用の実態について、統計が十分でなく、よく分からないが、大企業はこれだけ業績が悪くてもベースアップしているのに対し、中小企業では明らかに賃金は下がっているのではないか。また、終身雇用というのは上場企業や官公庁に勤める一部のサラリーマンであって、日本のサラリーマンのかなりの部分は終身雇用ではないのではないか。

(島田会長代理)まず雇用の実態の数字をしっかり押さえることが必要。それと、流動化しても怖くない市場を作るという仕掛けを作るということ。

(牛尾会長)もう一つ、エステ、ネイルなど業規制のないサービス業では、過当競争で淘汰されて質が高いところが残り、結果的に業全体として顕著な伸びを示している。そういう点でサービス業は非常にグローイング・インダストリーであり、需要があるのに供給が制約されているために需要が満たされていない分野を探す必要がある。

(島田会長代理)非常に典型的な例に宅急便がある。顕在した需要はないが、社会が変化するから非常に強いウォンツは鬱積しているという分野はある。

(牛尾会長)サービス業は、現在タダで使われているところがたくさんあり、みんながタダで利用しているものを、サービスとして、ビジネスとして、ちゃんと形作ることが一つの新しい産業の流れを作る方法である。

(島田会長代理)子育てのサービスのような分野でも、質のいいサービスであれば消費者はお金を出すかもしれない。しかし日本はこの手の産業に公的部門がお金を出しすぎるために、産業が芽を出す余地がないというのが随分ある。

(牛尾会長)やはり民ができることはみな民に任したらいい。

(島田会長代理)長い間、国民はこうしたものはタダなんだ、つまり税金が無限にあるかのような錯覚になっていて、これを何とかしなければならない。

(牛尾会長)過渡期は、民に対しても若干の補助をしないといけない。公設公営より、ある程度の補助をして公設民営にしたほうが、はるかに安くコストが上がる。その場合も、別の民間に内容をきちんと監察させる仕組みを作り、補助を受けて安いサービスを提供するのをいいことに、サービスの質を落として、悪いサービスを提供しているところは廃業させるといったことが必要。

(島田会長代理)サービスに対する評価の仕組みと情報公開は絶対必要。

(島田会長代理)マッキンゼーの研究も参考になる。同社のレポートでは、流通、食品、医療、建設の4分野を取り上げて、税制改正や情報公開、標準化などについて提言をしている。

(牛尾会長)e-Japan構想が示すように、e-コマースやe-ガバメント、e-ラーニングを始めとしたe-システム化が進めば、情報の閉鎖性が存在しにくくなり、結果として情報の透明化と行政のアカウンタビリティーが高まっていくのではないか。情報開示することが民主主義の基本である。

(島田会長代理)情報開示に付随して、ノンアクションレターも要所要所で必要。他に、税制や規制の改革が必要。

(牛尾会長)それらをみな分かりやすい分類にして、問題をオープンにして皆が理解することが必要。本調査会の報告で時代の流れを作ることが最大の目的。これまでのことを否定する必要はなく、時代の変化によって活性化するサービスは変わる。サービス分野における労働の流動化を認めた上で、どういうところが魅力あるサービス分野なのか、その魅力あるサービス分野になっていないのは何が原因なのか、というのを順番に記していく。
これからサービス業に転業したいと思う人に読ませる文章、転職の手引きになるようなものを作りたい。

(島田会長代理)例えば社会福祉の分野で、軽費老人ホームについては、行政指導により民間の参入が制限され、手厚い補助を受けた社会福祉法人が運営している。こうした分野では、参入規制をなくすことにより、様々な民間のベスト・プラクティスを引き出したい。そういうことも、報告に盛り込んでいきたい。

(牛尾会長)社会福祉の分野で、行政の規制と民間の接点のところに多くの潜在的なサービス業があることはよく分かる。サービス業には大きく分けて(1)行政の規制と関係なく供給を自由に増やせば需要が増える分野、(2)行政の規制との接点があって、それをクリアすれば供給が増え、需要が増える分野、の2つがある。

(島田会長代理)我々が本調査会の報告で力を入れるのはそのうち(2)の分野ということ。

(大田委員)必要なのは転職の手引きではなくて、制度改革だと思うがどうか。制度改革にどのくらい踏み込むかというのがカギだ。

(牛尾会長)制度改革を伴わないということではなく、転職したい人の力を借りて制度を変えないといけないということだ。

(大田委員)今の制度に守られている人たちに、制度改革すれば今よりもっとよくなる、ということを言いながら、制度改革を行う。

(牛尾会長)制度を変えるということが、いかに皆の生活を良くするか、ということ書くためには、サービス業に対する転職の流れが必要だということ。

(樋口委員)地方の男性は公共事業によって雇用が守られており、その人たちの受け皿となる雇用が必要。サービス業は大別して対事業所サービスと対個人サービスがあるが、対個人サービスは地方のサービスとして需要が出てくる。その時に、介護は対個人サービスで、地方の雇用を作り出すから、やらなければならない。しかし、残念ながら、現在建設業で働いている人たちの受け皿になるかというと、建設業で働いているのは男、介護で必要とされるのは女という問題があって、そのまま受け皿にならない難しさがある。

(牛尾会長)だから、いわゆるバンピングであるが、建設で働いている男性が、地方の女性が働いている職場に行き、女性が介護に行くというように、間にワンクッション入れる。

(樋口委員)改革案を提示される住民としては、自分たちを直に受け入れる雇用はどうなるんだ、という意識がある。

(島田会長代理)彼らには、経済全体の組換えなんだというのを受け入れてもらう必要がある。

(牛尾会長)戦略的には、アメリカに比べて現在10%程度足りない女性の就業率を高めることがファーストステップ。その次は、外人にも職場を与えるということをやりたい。外人の就業者が増えれば、税収も家計も増える。

(島田会長代理)国民への提起の仕方としては、(1)日本経済の閉塞状態を突き破るには、サービス産業を活性化するということ、(2)そのために、女性や高齢者が参加してくるようにしたい、(3)そのために、経済全体の組換えをやる、(4)その際、失業しても怖くない制度を全部整備するから、恐れずにチャレンジしてください、というのを書いて、制度改革などに踏み込んでいく。

(樋口委員)その際、女性の働く場を作ることが、実は雇用不安を和らげることにつながる、今までのような夫だけが働いて所得を稼ぐということが、いかにリスクの高い働き方であるか、暮らしであるかということを理解した上で、税制などの制度を変えるという話が出てくる流れにすることが必要。

(牛尾会長)男女共同参画というのは基本的に共稼ぎで、育児休暇も男女平等に取れる、というところから議論に入る必要がある。

(島田会長代理)その他、関連でどんどん出てくる新しい産業についても、評価を加えたい。

事務局資料説明について

事務局より、資料4、資料5に沿って、米国のサービス部門における雇用拡大の実態調査の進め方及び米国サービス産業における雇用状況について説明がなされた。

次回の会合について

  • マッキンゼーの了解が得られた場合、同社から参考としてヒアリングを行うこととされた。
  • 野村総研から米国のサービス部門における雇用拡大の実態について、ヒアリングを行うこととされた。
  • 職員の米国調査の結果について、報告を聴取することとされた。
  • 次回日程は4月2日(月曜日)10時00分~11時30分、内閣府542特別会議室にて行うこととされた。

(別紙1) 牛尾会長趣旨説明要旨

「サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する専門調査会」が発足する運びとなり、会長を拝命した。
本調査会においては、主に我が国経済を活性化させ、雇用を拡大させるために、サービス部門の供給不足を解消し、潜在的なサービス需要の顕在化、拡大を図ることが重要であるという問題意識に基づいて、調査を行い、現状を把握した上で、関連制度、施策等の在り方についてご検討をいただきたい。
この成果については、本会議に報告を行い、5月末、6月を目途に取りまとめたい。具体的には、14年度の予算編成における骨太の方針に反映させたい。
我が国ではアメリカ、カナダ、イギリス、フランスといった欧米諸国に比し、サービス分野で働く者の割合が10%程度低くなっている。
アメリカでは、90年から99年までの間に、第一次、第二次産業で20万人程度雇用が減少したにもかかわらず、第三次産業で1,490万人の雇用が創出されたというのが示されている。
また、手元の資料によれば、就業人口についてみると、1980年に9,700万人であったものが、1999年には1億3,400万人になっているが、このうち第一次産業の雇用はほぼプラスマイナスゼロで、第二次産業の雇用は100万人減であるから、ほぼ3,800万人がサービス業によってもたらされた雇用である。
サービス業の中でも、金融業と大型の流通業は雇用がほぼ横ばいとなっているため、いわゆる狭義のサービス業で大幅に雇用が増えている。
データによれば、アメリカで20年間に増えた3,800万人の雇用のうち、2,000万は従業員の規模が20人以下の事業体である。
また、日本とアメリカでサービス業の業種別分類に違いが見られるが、そういうものを抽出していくことが、国際対比における問題点の発掘に非常に役立つため、各所の協力を得て、こういうものを明確にしていきたい。
女性の就業率についてみても、アメリカのほうが我が国に比して11%程度高くなっている。
今後検討すべき課題としては、アメリカ等の急速なサービス業の進展をもたらした要因を調査・分析し、我が国の施策を横断的に検討していきたい。
具体的には、成長の著しい分野の企業の特徴や、成長の著しい分野における雇用者の特徴、著しい成長を可能にした経済的・社会的な環境・政策、円滑な労働移動を可能にしている要因、女性の高い就業率を実現している要因、雇用の実態を把握するための統計の在り方等である。
また、収入面についても調査し、魅力あるサービス業の雇用について考えていきたい。
そして、これを阻んでいるものは何かというところに、日本独自の規制、諸法則、また社会環境、税制等の諸制度等があるかと思われるため、これらについて議論を行っていきたい。