第2回会議(平成19年5月8日)伊藤グローバル化改革専門調査会会長、浦田EPA・農業ワーキンググループ主査 記者会見要旨

第2回会議(平成19年5月8日)

15:30~16:30 於:記者会見室

1.浦田EPA・農業ワーキンググループ主査発言要旨

 私は主査を務めさせていただいたのですけれども、3つのことを強調したいと思います。
まず、報告書を書いた背景には、日本の現状に対する強い危機感があります。
このワーキンググループには、8名がメンバーとして加わったわけですが、日本の将来に対する強い危機感が共有されていたと思います。世界を見ますと、FTA、EPAが非常に多く締結されるようになっております。そうした協定を通じて、世界各国は深い経済関係を築きつつあるわけです。
しかし、日本を見てみますと、他の国と比べて、どうもEPA交渉が遅れていると言わざるを得ないと思います。従って、世界でのグローバリゼーションから日本は取り残されつつあるという危機感であります。
EPA、FTAが進まない一つの大きな原因は、農業分野における市場開放が難しいということであります。なぜそれが難しいかというのは、1つには、やはり農業改革が進んでいないということがあります。
急速な高齢化が進んでおり、今や農業従事者の6割は65 歳以上ということですし、耕作放棄地も増えております。ここでかなり思い切った構造改革をしなければ、農業の未来もありませんし、先ほど言いましたように、日本のEPAも進まないという現状であります。
こういった状況を、我々は非常に危機感を持って見ているということ。それがこの報告書のバックボーンになっているわけです。これが第1点目に強調したいところです。
第2点目に強調したいところは、今後のEPA戦略の内容についてであります。我々はEPAの対象国、EPAの質の2つの面で提言を行っております。対象国については、アジアとのEPAの重要性、これは繰り返すまでもないのですが、その他に日米のEPAを早く検討すべきだと。
具体的には、産官学による共同研究を開始すべきことを、アメリカに働きかけることが重要である、と指摘しています。特に日米のEPAに関しましては、関係省庁の幹部に、二度にわたってワーキンググループに来ていただいて、議論をしました。
そういう中で、日本とアメリカ、この世界の二大経済大国のGDPを合わせると、世界のGDPの4割ぐらいになるわけですね。そういった世界で重要な位置を占める2つの国がEPAを結ぶということは、世界の貿易体制、つまりWTO体制ですが、WTO体制にマイナスの影響を与えるのではないかという意見がありました。
しかし我々は、そうではなくて、大きな国が自由化を進めるということが、かえってそれ以外の国にとっても自由化をしなければいけないというプレッシャーになり、その結果、世界の自由化も進むだろうという意見を持ちました。全てのワーキンググループメンバーの意見は、今、私がお話ししたようなことです。
なお、これは余談になりますが、今お話ししましたように、EPAに関しては、各省庁の幹部の方に来ていただいて、国際経済という観点、また農業という観点、さまざまな観点から非常に活発な議論を行いました。
私は政府の内部にいませんので、この辺は推測でしかないのですが、多分こういった活発な議論が関係省庁の幹部の間で、また我々のような外部者も含めて行われた経験はないのではないかという気がします。
もし私の見方が正しければ、こういった場を経済財政諮問会議が提供したということは、非常に重要な貢献だったのではないかと思いました。
EPAの質についても活発な議論を行いました。具体的には、これまで日本が締結してきたEPAは、自由化率で言うと90%台前半です。要は日本の輸入品のうちの9割ぐらいを自由化するというFTA、EPAなわけです。
一方、日本のFTA、EPAの相手国は、現在のところ、シンガポール、メキシコ、マレーシア、この3つがあるわけですが、彼らは日本よりもっと高い自由化率を実現させています。シンガポールに至っては100%であります。
私がここで強調したいのは、世界に貢献する日本であってほしいということです。それはやはり、世界の輸出を促進するということです。これはまさに先進国の役割ですし、貿易から利益を得ている日本の役割だと思います。
ただ、FTAに関して言えば、今のような現状であります。先進国である日本がFTAの相手国である途上国と比べて、自由化率が劣っている、これは恥ずべき状況だと思います。
我々はそのような認識の下に、これから日本がFTAをつくっていく場合に、90%台後半の自由化率を実現させなければいけないのではないかということで、提案をいたしました。
FTA、EPAの下での関税撤廃により、では、どういうメリットがあるかということですが、消費者に関して言えば、安くてバラエティーに富んだ商品を買うことができます。
勿論それ以外にも幾つかメリットがありますが、時間がありませんので、一応、消費者のメリットを強調したいと思います。EPAだけではなくて、他の自由化に関しても同じですが、関税率削減の提案をしています。現在、変動為替相場制ですので、1年ぐらいのタームで見ると、為替レートはかなり変動するわけです。その変動率というのは、最近では、今お話した関税率10%を超えるようなものであるわけです。ですから、そういった点を考えてみるならば、10%以下の関税を一律に撤廃するというような選択肢を持って、FTA交渉あるいはWTO交渉に臨めば、日本はそれらの交渉で主導権を握れるのではないか。従って、10%以下の関税率については、撤廃を考えてはどうかというような提言をしております。
第3に強調したい点は農業の構造改革であります。
ワーキンググループには、東京大学の本間先生、宮城大学の大泉先生、農林漁業金融公庫の高木総裁という3人の農業の専門家が参加してくださいました。
更にワーキンググループの会合には、農業生産者の方々を招いて議論を行い、また、我々ワーキンググループメンバーが3回に分けて農業視察にまいりました。その視察においては、農業の現場の方々と、文字どおりひざを交えて、農業政策や農業の将来、あるべき姿について、お考えを伺いました。
農林水産省の幹部の方々にも、具体的には2回、会合に来ていただきまして、忌憚のない議論をさせていただきました。
そこで感じたことですが、農業は確かに難しい問題を抱えています。ただ、農業には潜在的に競争力があるというのが我々の認識です。農業の経営者の中には、さまざまな障害を乗り越えて、創意工夫を発揚しながら、将来を切り開いていこうと努力されている方がたくさんいます。
ただ、こういった方々の努力がさまざまな規制、制度等によって妨げられているという実情があります。そこで我々の今回の報告書では、こうした日本の農業の将来を担う農業経営者が市場のシグナルを受け止めて、創意工夫によって、より自由に多様な経営展開をしていくことができるような環境をつくることが重要であり、そのためにはどうしたらいいのかということで、さまざまな提言を行っております。
土地、農地に対する提言、農業を担う人々に対する支援に関する提言、農業を産業あるいは経営という視点から捉えた提言などがあります。
その提言の根底には、繰り返しますが、いかにすれば日本の農業を強化できるかという視点があるということを強調しておきたいと思います。
長くなりましたが、以上、3点が強調したい点であります。今後、私としては、これをいかに実行していただくかということが重要だと考えますが、グローバル化が急速に進み、また日本国内では少子高齢化が急速に進んでいる実態を見ますと、日本に残された時間は非常に少ないと言わざるを得ないと思います。
そこで我々の行った提言を実際に実行していただくためには、政治の強いリーダーシップが必要だということを、最後に強調させていただきたいと思います。
以上です。

2.伊藤グローバル化改革専門調査会会長発言要旨

 「グローバル化改革専門調査会」は、ただいま説明のありました「EPA・農業ワーキンググループ」と、4月20日にとりまとめられました「金融・資本市場ワーキンググループ」の2つのワーキンググループを抱えて発足しました。
EPA・農業ワーキンググループは計9回、金融・資本市場ワーキンググループは計8回の会合を重ね、更に農業視察あるいは報告書づくりに向けた作業など、非常に精力的に議論が行われ、本日とりまとめに至ることができました。委員、メンバー、御協力いただいた関係者の方々に御礼申し上げたいと思います。
このグローバル化改革専門調査会第一次報告は、2つのワーキンググループの第一次報告を束ねた報告になったわけですが、グローバル化改革は、安倍政権の改革の基本であるオープン・アンド・イノベーションの中核をなすものです。
グローバルな市場の活力を日本の成長に取り込んでいくことが非常に重要な課題であると位置づけられており、そのために国内体制の改革も必要になるということであります。
取り組むべき改革課題は数多くあるわけですが、今回は特に緊急に行うべき改革課題として、EPAの加速、農業改革の強化、金融・資本市場の競争力の強化を取り上げたわけです。
このEPA、対外経済戦略、あるいは農業といった課題は、小泉政権でも取り上げることがありませんでした。1~2回はやっているわけですが、ほとんど深掘りすることのなかった課題であると、私は認識しております。
従って、これは安倍政権の経済政策の方向を見る上では、非常に重要な問題であると考えております。明日9日の経済財政諮問会議の場で、この報告の要旨を議論していただく予定です。関係各省にとっては、これまで余り触れられたくなかった分野に踏み込んでいる点もあると思いますので、どのような議論になるか、予想は付きませんけれども、そこでの議論を踏まえて、骨太の方針にきちんと反映させるように努力していきたいと思っております。
金融・資本市場改革については、4月17日に既に一度諮問会議で議論しましたので、明日の経済財政諮問会議では、特にEPA・農業を取り上げて議論することになっております。麻生外務大臣、松岡農林水産大臣も臨時議員として議論に参加する予定であります。是非、今回の専門調査会第一次報告を踏まえて、実りある議論にしたいと思っております。
特に外務大臣におかれては、先ほど浦田主査からお話のあった点ですけれども、日米EPA、あるいはEPAの貿易自由化率について具体的な議論に踏み込んでいただきたいと考えておりますし、農林水産大臣におかれては国境措置のあり方、あるいは農業改革のスピード等について、深い議論をしていただきたいと考えております。
先ほどの浦田主査のお話の繰り返しになりますけれども、我々はこれが非常に緊急の課題である、このチャンスを逃すと非常に大きな遅れを取ることになると考えております。
金融・資本市場で言えば、東京がニューヨーク、ロンドンに並ぶ、競争力のある金融・資本市場になること、EPA・農業については、日本がWTOあるいは急速に広がりつつあるFTAのネットワークから落ちこぼれないようにすることが非常に重要なのであり、その意味でスピードが是非必要だと考えています。同じ方向を向いていても、スピードが遅ければ、他の国に遅れを取って、主要なマーケットという地位を奪われてしまうのでないか。こういった危機感から、我々の報告書が書かれています。その点について、是非、御理解をいただきたいと思っています。
私からは、以上です。

(問)本文の7ページのところに、EUとのEPA、FTAについて早急に準備を進める必要があると書かれています。これは具体的に国内で何をするということですか。

(答:伊藤会長)これは書き方が短いので、詳しく説明すべきだったわけですが、EUが積極的にFTAをアジアに広げようとしている、具体的にはEU・ASEAN、EU韓国のFTA交渉が進みそうだということで、もし、これが日EUに先んじてまとまりますと、先ほど言った、遅れることの不利益が非常に顕在化するおそれがあります。こういったことを考えつつ、日本とEUの間でFTAを結ぶことにどういう意義があるのか、どういったスピード感を持ってやらなくてはいけないのか、具体的に障害があるとしたら、どういった障害があるのかということを早急に勉強しましょう、ということがそこに込められています。
項目として立っていないのは、我々もそこは勉強不足でしたので、きちんと書き込んでいないということであります。これは第二次報告の方に回したいと思います。

(問)その前段のところに、韓国という記述が出ているのですが、先ほど、浦田主査も現状への危機感と言われましたが、隣国である韓国のFTAやEPAの展開というのを、今回のワーキンググループの議論の中で、どのように危機感として認識して議論なさったかを説明して下さい。

(答:伊藤会長)危機感から言いますと、米韓よりは韓EUの方が日本に与える影響は大きいと考えられます。これはEUの関税率がアメリカよりも高い品目に、日本の競争優位のある品目が多く含まれているということでして、韓米ができて、次は韓EUということで、予想よりも早く展開していることが危機感につながったということであります。

(問)伊藤会長は明日の諮問会議では、民間議員としてどの部分を訴えたいかという柱を2~3言っていただけますか。

(答:伊藤会長)それは明日のお楽しみに取っておきたいと思いますが、先ほど、浦田主査が強調された辺りは当然入るとお考えください。

(問)この提言にあるように、質の高いEPAがどんどん加速した場合に、食料自給率が間違いなく下がっていくと思うのですが、食料自給率についてはどのようにお考えでしょうか。

(答:浦田主査)食料自給というよりは、食料の安定供給確保という視点が重要だというのが1つです。
ただ、その前に自給率に関してお話したいと思います。日本は農業については、保護政策をずっと続けてきているわけです。それによってある程度の自給率の水準が維持されてきたかというと、下がってきているというのが事実です。
ですから、自給率の水準を維持する、あるいは、できれば高めたいということであれば、これは保護を続けるというのは間違いだというのが、私個人の認識です。
何が必要かと言えば、日本の農業を強くするということであって、これは私の発言で冒頭に強調したと思うのですが、日本の農業は潜在的にはまだまだ強くなる可能性を秘めていると思います。なぜそうなっていないかと言えば、やる気のある人々がその能力を発揮できるような環境に農業がないということです。これが非常に重要なポイントだと思います。ですから、そこを改善できれば、日本の農業が強くなり、そして自給率が上がる可能性もあります。
ただ、今世界の中で中国やインドが急速に成長しており、食料に対する需要が伸びているわけです。食料供給確保は非常に重要な課題になりつつあります。
そういう中で国内生産による安定供給という見方は、はっきり言って好ましくない。そうではなくて、輸入も含めた安定供給を考えるべきではないかと思うわけです。その場合に重要になってくるのが、やはりEPA、FTAという枠組みです。
EPA、FTAという枠組みの中で、きちんと食料供給を確保するということが、日本にとって安定供給を確保する非常に有効な、また重要な手段だと思います。
ですから、自給率ではなく食料安定供給という見方をしなければいけないのではないかというのが1点です。
もう一点は、日本の農業を強くすれば、以前から使われている自給率という指標を使っても、日本の自給率は下がらない可能性もあるのではないかということです。

(答:伊藤会長) 1点補足しますけれども、これは今日の専門調査会の議論の中にも出てきたことで、新聞にも書かれていますが、現在、海外で買付けを行う日本の企業が、中国企業に買い負けることが起きているといわれています。魚あるいは豪州の小麦等でも、日本が提示する値段よりも高い値段で中国が買っていってしまう。そうすると輸入できないわけですから、自給率はその分だけポイントが上がります。
しかし、それは本当に食料安全保障になっているのかといったら、そうではないわけです。従って、自給率が安定供給の指標であるという考え方は少し違うのではないか。これは今、浦田主査がおっしゃったことだと思います。
ではどうしたらいいのかということですが、これはエネルギー資源にも関係してきますけれども、やはり1つはEPA等を使って、日本にとって重要な資源を安定的に購入できる仕組みをつくっていく。
もう一つは、やはり国内農業の体質の強化、生産性の向上を図っていくということで、その辺も我々は農地制度の改革等も含めて、総合的に提言しているつもりです。

(問)そうすると、自給率向上よりは、安定調達の方が大事であって、そちらに力を入れていった方がいいということですか。

(答:伊藤会長)安定調達及び国内の生産性の向上です。

(問)先ほど伊藤会長がおっしゃった、米韓よりEUと韓国の方が影響が大きいであろうという見方に関してですが、特に品目で言えば、我が国の重要な輸出品目に対して高関税を課しているというのは、具体的にはどれくらいですか。

(答:伊藤会長)乗用車10%、薄型テレビ14%、複合機スキャナー等が6%、ビデオカメラが4.9%などです。電子機器、乗用車といった日本の最も得意とする分野かつ韓国企業が激しく追い上げている分野で、EUの方がアメリカよりも高い関税を課しています。

(問)関税割当の一次税率と二次税率を見直して、またミニマムアクセスも見直した方がいいという記述がありますけれども、これはどういう見直しのことを指しているのでしょうか。

(答:伊藤会長)関税割当制度というのは、WTOで認められた制度である等々の説明がよくなされるわけですが、事実上、低関税枠というのは、そこを獲得した輸入企業が安い価格で売っているかといったら、そうではなくて、マークアップを非常に高く取って売っているので、消費者にその部分が還元されているとは必ずしも言えないわけです。
しかも、低関税の後に高関税になると、事実上輸入ができないような高関税が課されているとすると、事実上の数量割当に近いものとして機能しているものが見受けられるということで、結局そのマーケットの中で需要が高くなれば、供給も付いてきて輸入が増える、あるいは国内が頑張れば、それが減っていくといったような形でのシグナル効果が出ないような仕組みになっています。それも、通常の関税に移行した方がいいのではないかということが含意です。
ミニマムアクセスについては、これは特にコメの場合ですけれども、ウルグアイ・ラウンドの最終局面で関税化を拒否したために、高いミニマムアクセスを受け入れることになって、時間の経過とともにそれがどんどん上がっていった。
そして、今度は倉庫費用がかさむようになった。これが関税化された。最初から関税化していれば、もっと少ないミニマムアクセスで済んだということで、今度の農業交渉の中では、むしろミニマムアクセスは減らす。
減らすためには当然、関税率の方で何らかの情報が必要でしょうから、そういったことを総合的に考えて、何が我が国にとってベストなのかということを考えたらいかがかということです。

(問)工業品などを大量に輸出して、工業、電子産業がもうかる。一方で、農家がダメージを受ける。そうした利益の再配分のようなことは考えないのでしょうか。

(答:伊藤会長)我々は国境措置の削減を提言していますけれども、それに応じて、必要になる産業調整のコストについては配慮をするということを明示的に書いています。
つまり国境措置を撤廃することで、当然、輸入品に押されて売れなくなる作物が出てくるでしょうから、そこについては恐らく時限措置と位置づけるのがいいと思いますが、直接所得保障のようなことも考えていいだろうと思います。
ただし、長期的には、当然そういった資源がほかの作物、あるいはほかの用途に転用されていくでしょうから、それを支援した上で、いつまでも保障が続くわけではないということです。従って、調整が必要になるというのは十分承知はしています。
農地を集約することによって、当然、生産性が上がり、生産コストが下がっていくはずですから、農業の強化等の時間は考えましょうということです。農業というものを強くする余裕を与えつつ、しかし、国境措置は下げていくということです。
もう少し別の言い方をすれば、国境措置は農業に対する保護としては、非常に効率の悪い保護の仕方である。もう少し効率的な農業の振興策に切り替えていきましょうということです。

(答:浦田主査) 今の点ですけれども、将来の日本の経済成長という観点から見た場合、少子高齢化が進んで、人口がもう減少しだしている。それとの関連で、資金も少なくなっていく可能性があります。
そういう中で日本の経済成長を実現させるためには、限られた資源を効率的に使うということ、もう少し違った言い方をすれば、生産性を上げるということかもしれませんが、これが必要なわけです。
そのためには、非効率的な分野で使われている資源をいかに効率的な分野で使うようにするか。つまりシフトさせるかというのが重要であるわけです。そういった観点から、やはり自由化が必要になってくる。
ただ、今、伊藤会長がおっしゃったように、自由化を実現させるにあたっては、調整コスト、つまり一時的な生産減少、あるいは雇用減少ということがあり得るわけです。そういう調整に対しては、政府は適切な措置を適用しなければいけない。そのような措置を時間を区切って行わないと、資源を非効率的な部分から効率的な部分にシフトさせることができないという見方です。
ですから、産業調整は必要になってくる可能性は高いと思います。ただ、それにはきちんと対応することが必要です。

(問)たしか農林水産省は何兆円とかいう数字を、皆さんのリクエストに従って出してきたと思います。それに対して、政府としてどうするべきかという、そこの提言がないのではないでしょうか。

(答:伊藤会長)恐らく言われているのは、国境措置を全廃した場合に幾ら、という損害額を出したものについてでしょう。ただ、これには幾つか過程があって、1つは直ちに国境措置をやめて、輸入品がどんどん入ってくることを前提としています。そこで計算された額というのが生産額の減少です。
生産額というのは、それを生産するのにかかっているコスト、プラス何らかの利潤の部分ですから、生産をやめれば当然コストもかからないわけです。だから、ネットで見ると、それほど大きな金額であるはずはないわけです。従って生産者が利益として獲得している部分というのは、それよりははるかに小さな部分なわけです。
消費者が当然輸入品を代替的に購入することによって、価格が下がるわけですが、そうした消費者のメリットというのはそこでは計算されていない。従って、国民経済的なコスト・ベネフィットという計算では、そうはなっていないという点があります。
そういう意味では、我々はいわゆる「損害額」というのは、かなり誇張された数字であると考えております。消費者のメリットというものも考えるべきです。
先ほど、1点お答えしなかった点ですけれども、電子産業、自動車産業というのは、もうかっているのではないか。例えば日EUでFTAをやることで、日本から輸出が増えてもうかるのではないかという御指摘ですが、彼らはどちらにしてももうかるのです。日EU・EPAをやらなければ、彼らはEUの中に工場をつくるだけの話です。つまり日本から工場が逃げていく。EUの中に工場をつくって、彼らはそこで韓国からの輸出に対抗して闘うことになる。
つまり日EUをやらなければ、日本から工場がEUに逃げていってしまい、それだけ課税ベースがなくなる、雇用がなくなるということなのです。
従って、彼らがもうかるわけではなくて、我々、つまり日本の国土に住んでいる国民と税収を期待している政府が損をするという話だと思います。

(問)農地制度に関連してですが、農地が農地として有効に利用されるべきということで、今は一般企業の農地取得も含めて規制があるわけですけれども、ここに書いてあるように、利用についての経営形態は原則自由だとか、所有権の移動は自由とすることで、農地が農地として利用されるという担保がされるのでしょうか。

(答:浦田主査)それは勿論やってみなければわからないところがありますけれども、現実に耕作放棄地が増えているという実態があります。
そこから始まって、どのようにしたら農地を農地として活用することができるかと考えると、今まさに御指摘していただいたような手段を使いながら、政策や制度を変えていくことが必要なのです。

(問)書いていないけれども、当然、一般企業も農地を取得できるようにすべきだということが前提ですか。

(答:浦田主査)株式会社制度という話もしていますので、それも一つの選択肢として考えております。

(問)関連してなんですが、所有権を移転しやすい仕組みの総説の中では、農地を株式会社に現物出資して、株式を取得する仕組みということが書かれていますけれども、これも当然、一般企業との株式等の自由交換のようなものを念頭に置いているということですか。

(答:浦田主査)一般企業とおっしゃるのは。

(問)株式会社です。

(答:伊藤会長)今、農業法人とか、いろいろな形態の会社経営が行われている。恐らく御質問の趣旨というのは、そういう農業法人ではなくて、例えば製造業の会社が入ってきたりしてもいいのかということかと思いますけれども、それは視野に入っていますが、直ちにそうしろというところまで書き込んではおりません。
ただ、何らかの形で産業として経営するような、経営の実態がある会社が、そういった農業生産に関わることが重要です。つまりどんどん規模が大きくならなくてはいけないということにしているわけですから、個人でやるには限りがあるかもしれない。
そうすると、やはり何らかの株式会社形態をとらざるを得ない。それが農業法人という名前なのか、あるいは食品会社なのか。川下が川上にのぼってくるのはいいのか。その辺はいろいろと議論があると思います。だから、そこまで細かい話を今回はしていません。
ただ、きちんとした形態として、経営ができるような会社が登場して、そこに農地を集約していく。その集約する一つの手段として、農地の現物出資の株式交換という形態があり得るだろうということ。しかも、どうしてそういう所有権が移転しないのか、どうして農地を売らないのかというと、相続税対策ですといったことがよく聞かれる。
私は一代限りと言っているのですが、その一定期間は株券であっても、これは農地の現物出資の株券であれば、それに関わる相続税は農地として持っていた場合と皆同じにしましょう、というぐらいの特典を付けてもいいのではないかと考えております。

(答:浦田主査)この報告書の15 ページをご覧になっていただくと、持続的農業形態という概念を導入して対応すべきであるということを明示的にうたっています。
ですから、こういったような組織をつくることによって、より競争力のある農業を進めていくということであります。

(問)今、農林水産省がやっている国内の農業政策によって、現場はこの春からコメ制度も変わり、品目横断制度も取り入れ、実行しなければいけないと言われてやろうとしているのですが、ここでは新たに持続的農業経営体というものを取り入れ、5年間程度を視野に入れた工程表をつくり、実行せよと言っておられる。これは新たなものを可及的速やかに作れとおっしゃっているのですか。

(答:伊藤会長)今の農林水産省の政策は、この認定農業者、つまり担い手を育てていきましょうということで、この担い手に何とか生産が集中するように、あるいは土地の利用が集中するようにということで努力されているわけです。
我々は、その方向は間違っていないと思っています。ただし、それを実行する過程で、例えば認定農業者になるためには生産調整を受け入れなくてはいけないということがある。これは我々は、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなもので、適切でないと思うのですが、それ以外にも認定農業者の資格等、幾つか提言があって、もう少しいろいろな人が担い手になってもいいのではないか。その担い手がどんどん規模を大きくしてける。そういった仕組みを導入しようということで、それが持続的農業経営体というものであります。

(問)この報告は自由化率を90%台後半を目指せと、難しい高度な質の高いものを目指せとしています。そうすると、逆に高度なものを目指すがゆえに、それがブレーキになってしまって、交渉が加速しないということにはならないでしょうか。

(答:浦田主査)必ずしも二律背反というわけではないと思うのですが、もしどちらかと言えば、それはハイレベル、つまり高度なものを目指すというのが第一の目的であって、交渉を早く終わらせるために低いレベルのFTAで合意しろというわけではありません。ですから、順序としてはハイレベルであることが第一です。
ただ、そうは言っても、先ほどから何回も言っていますように、韓国を始め、周りではFTA締結の動きは非常に早いわけです。ですから、そういうことも当然、頭に入れなければいけないので、はっきり言いますとこれは両方、つまり迅速かつハイレベルなFTAを目指すということが重要だと私は思います。

(答:伊藤会長)だから、これまで日本のEPA交渉の体制というのが、4省が相談しながら決めていくということで、そこで意見対立があった場合に、それを解決するメカニズムというか、場がなかった。これが遅れてきた理由だと思います。
国民の利益、国益とは何なのかということを総合的に考える場がこれまでなかったのではないか。確かに小泉政権のときには、小泉首相が、私がFTAの最終的な判断をする人だと宣言されたわけですけれども、それでもなかなか進まなかったわけですね。あの改革論者の 小泉政権にしてもそうだったということで、我々はもっとこれを加速しなければいけない。
だから、そのためにはもっと経済財政諮問会議がこれを議論していかなくてはいけないと考えて、この経済財政諮問会議の民間議員の間でこれを取り上げることにして、専門調査会まで作って、一生懸命勉強してきたわけです。そういう意味では早くするということと、質を高くするということは両立する概念、あるいは両立させないといけない概念であると思っています。

(以上)