循環型経済社会に関する専門調査会 中間とりまとめ

「循環型経済社会に関する専門調査会」中間とりまとめ 
-ごみを資源・エネルギーに、環境にやさしく「美しい日本」を次世代へ-

平成13年11月22日

はじめに

循環型経済社会とは、あらゆる分野で環境保全への対応が組み込まれ、資源・エネルギーが無駄なく有効に活用される社会である。同時にそこでは、環境を指向した新たな制度やルールが市場に組み込まれ、活発な技術革新を伴い、広範な分野で市場と雇用の拡大が実現されていく社会である。21世紀を迎え、地球的規模の環境保全のあり方について国際的な対応が求められている今日、わが国においても「循環型社会形成推進基本法」をはじめ各種リサイクル法等に基づき循環型経済社会への取組が本格的に開始されている。また、8割近くの国民が循環型経済社会への移行の必要性を認識している等、国民レベルでの関心も高まっている。しかしながら、リサイクル等への取組が、国、地方公共団体、事業者、国民により広範かつ多様に行われ始め、新たな市場の形成や雇用拡大への動きが見られる中で、具体的施策や取組が必ずしも全体として合理的なものとなっていない等の問題も生じてきている。また、循環型経済社会への移行は現在の生活水準を落とすのではないか、経済成長への制約になるのではないか等の懸念が国民の間に残っている。さらに、依然として後を絶たない廃棄物の不法投棄、PCB処理やダイオキシン等の安全性をめぐる問題も各地で社会問題となっている。このような状況を踏まえ、本専門調査会では21世紀における循環型経済社会の実現に向けた課題についてできるだけ俯瞰的視点から検討を行い、国民が共有すべき基本的なビジョンとその実現に向けたシナリオを明確化するため、以下の中間とりまとめを行うものである。

1.循環型経済社会のビジョン

基本理念

現在、世界では年間約300億トンの天然資源が採取されている。このうち、化石資源の利用は約85億トンにも達し、その利用に伴う二酸化炭素の排出が地球温暖化問題として顕在化している。わが国においても、年間約18億トンの天然資源が利用されているが、このうち資源として再利用されているのは約2億トンにすぎず、約8億トンは廃棄物やエネルギー消費の結果である二酸化炭素等の形態で環境に排出されている。今後人類がめざすべき方向は、これまでのような天然資源に大きく依存して大量に生産・消費し、大量の廃棄物の発生と環境への負荷を容認してきた経済社会システムから、廃棄物の発生が抑制され、資源やエネルギーとしての循環的利用が大きく促進されることにより、環境に与える影響が最小化された経済社会システムへの転換である。
環境劣化は地球規模で進行している問題であるが、人口と経済活動が高度に集中したわが国は、それが最初に顕在化するという宿命を負っている。しかし、それを困難としてではなく、世界に先駆けてこの問題を解決することによって、21世紀の人類社会を先導するチャンスを与えられていると捉えるべきであろう。特に似通った制約条件・環境問題を抱えるアジア諸国に対しては、わが国が取組の過程で得られた技術・ノウハウ等を積極的な技術協力によって供与することにより、その解決に大きく貢献することができよう。具体的には、以下の3つの基本理念に基づき現在の経済社会システムの転換を進めていくことである。

(1)天然資源の採取量の抑制
【化石資源採取量の最少化】

エネルギー効率の向上等により、採取量を抑制する。また、品質の劣化した廃プラスチックや古紙などの可燃物は、化石資源に匹敵する高い効率で、発電燃料・高炉還元燃料などエネルギー資源として有効利用する。

【鉱物資源採取量の最少化】

製品生産に必要な金属、石灰石等の鉱物資源については、有効に循環利用し資源採取量を抑制する。

【バイオマス資源等の利用の拡大】

生ゴミや農林畜産廃棄物、未利用木質資源、下水汚泥等を肥飼料化やメタン発酵等によりバイオマス 資源として活用するとともに、農業・林業を自然環境保全とエネルギー資源生産の場としても展開する。

(2)環境への負荷の低減
【埋立処分量の最少化】

廃棄物の発生抑制と再利用を促進し、それらを資源・エネルギーとして活用し、埋立処分する量を最少化する。

【有害物質の抑制と厳格な管理】

安全安心な生活環境を維持する観点から、水、大気、土壌を汚染するNOx、ダイオキシン、PCB、重金属等の有害物質や二酸化炭素等の環境への排出を抑制する。

(3)持続可能な経済成長の実現

天然資源の採取量の抑制や環境の負荷の低減を達成しつつ、新たな成長分野を創出・拡大し、持続可能な経済成長を実現する。このため、各種制度やルールを体系化・合理化・明確化していくとともに、革新的な技術・製品の開発、ビジネスモデルの創出、社会的インフラ整備を促進し、「美しい日本」や新たな経済社会に対する潜在的なニーズを顕在化させ、産業構造の高度化を図る。環境は長期的には所得弾性値の高い成長性のある分野 であり、そこでの積極的な取組によるビジネスチャンスの開花は、雇用の拡大や持続可能な経済成長に大きく寄与する。また、環境問題は、いずれどの国においても深刻化する問題であり、取組の過程で得られた技術・製品・ノウハウ等は世界のモデルとなり、わが国産業の国際競争力の強化にもつながるものである。こうした持続可能な経済成長に結びつく取組を社会全体として展開することにより、生活水準の低下や経済成長の阻害要因となるのではないかという国民の懸念は払拭され、循環型経済社会への取組が着実に推進される。

21世紀にめざすべき日本の姿

(1)国民共有の目標の設定
【過去の経験】

わが国は過去において、1970年代の石油ショックと公害問題の深刻化を契機として、環境規制の強化や官民あげた技術開発への取組、関連設備投資の拡大等により、省エネルギー型の産業構造を実現し、当時の資源・環境制約を克服した。石油ショック直後の10年間においてわが国経済は、エネルギー消費水準を増加させることなく、平均GDP成長率約4%を達成し、自動車産業や半導体産業等の世界に冠たる国際競争力を有する産業を輩出した経験を持つ。

【循環型経済社会のビジョン】

今後の循環型経済社会に向けた取組にもこうした過去の経験を活かす必要があり、このためには国民が「環境」の価値を認識し、環境に配慮した経済活動が適切に評価されていくことが重要である。
そのためには、まず廃棄物の発生を抑制することが最も重要であり、廃棄物を「不要なもの」から「有用な物質資源・エネルギー資源」とするような認識を国民が共有する経済社会システムに転換することにより、資源の循環的利用や環境負荷の低減を自然な形で市場に組み入れていくことが必要である。
また、資源を循環的に利用する経済活動が経済社会システムとして円滑に機能していくためには、静脈産業の高度化・近代化を推進すると同時に、「ものづくり」を循環の視点から見直し、分離・選別が容易な製品設計や、廃棄物が発生しない生産工程、さらには多様な長寿命化製品の生産やメンテナンスサービスの提供等「動脈産業のグリーン化」を推進し、資源生産性の向上を図ることが重要である。「動脈産業のグリーン化」は、社会インフラ整備のためのニーズを増加させるとともに、そこでつくりだされた環境に配慮した多様な商品は国民のライフスタイルの変化と「環境」に対する価値認識の向上をもたらす。
こうした経済社会システムの転換を通じて、生態系の保全や安全・安心な国土、美しい住環境及び都市景観等の形成等に向けた活動が国民全体に普及され、活気に満ち持続可能な、魅力に溢れた次世代に誇りをもって継承し得る社会が実現される。
ひいてはわが国が循環型経済社会のモデルや「美しい日本」として海外から評価され、国際交流が活発に展開されることを通じて、循環型経済社会のビジョンの実現の過程で得られたわが国の技術や人的資本が国際社会をリードしていくことが期待される。

【長期的な目標の設定】

循環型経済社会のビジョンを実現するため、最終的に埋立てによって処分する量を最少化する究極的な「ゴミゼロ社会」を国民共有の目標とする。このため、2010年度までに一般廃棄物・産業廃棄物の埋立処分量を半分(約3,700万トン)に削減するとの本年5月に策定された目標を踏まえ、2050年度までにさらに10分の1(約730万トン)とする長期的な目標を掲げ、これを可能な限り早期に達成するための国民的な運動を展開する。

(2)目標達成に向けた基本的視点

上記の目標達成に向けて最も重要なことは、資源の循環的な利用が最大限に行われる資源循環システムの構築である。これにより、真に利用できない廃棄物のみが安定化され適正に処理・処分される。そのためには、リデュース(Reduce)=排出抑制、リユース(Reuse)=再使用、リサイクル(Recycle)=再生利用とエネルギー回収、という、いわゆる「3R原則」がいかに合理的な資源循環システムとして社会に定着するかが重要となる。
このような「3R原則」に基づき、これまで様々な取組が行われているが、現状の取組には次のような問題点も指摘できる。

  • ごみの分別やリサイクル活動を担う国民に対し、その目的や効果等の正しい情報が伝わっておらず、3R原則が国民に定着していない。
  • 不法投棄や埋立処分場からの有害物質の流出等が社会問題となっていることから、国民に廃棄物に対する根強い忌避感情がある。このことが資源の有効利用を図るリサイクル施設等の設置をも困難としている。
  • リサイクルが個々の製品ごと、業界ごとに行われているため、俯瞰的な全体像や長期的な視点が欠けており、産業間の競合によって供給過剰を招いているリサイクル品がある。
  • マテリアルリサイクルをサーマルリサイクルより優先するために、その向上が自己目的化し、合理的とは思われないコストとエネルギーをかけている分野や経済的価値が低い劣化品の生産が行われている場合がある。
  • 再生資源と海外等からの一次資源を比較した場合の相対的な価格差等競争条件によって、リサイクルの促進が困難となる面がある。
  • 廃棄物処理法による一般廃棄物・産業廃棄物の区分によって処理の責任主体が異なり、廃棄物を広域的に収集する際にそれぞれについて多数の地方公共団体の手続が必要なこと等から、その手続きの簡素化等合理化が求められている。
  • 不法投棄等廃棄物の不適正処理が社会問題となり、地域住民の根強い忌避感情を招いたことから、各地方公共団体が制度を上回って指導行政を強化した結果、廃棄物処理のリサイクルに関する許可手続が一層繁雑となっている側面があり、このことが広域的な収集・リサイクルを事実上困難とさせ、規模の効果による低コスト化を阻んでいる。

このような現状を踏まえ、今後、「3R原則」に基づき、いかに合理的な循環システムを社会に定着していくかが重要であり、その鍵となるのは「効率性」、「公平性」、「安全性」の視点である。

【効率性】

全国に分散して排出される産業廃棄物や、家庭やオフィスから分別して排出される均一性の高い廃棄物などを、同一の種類の資源に分別して広域的に収集し、大規模なリサイクルプラントに供給する等規模の効果を発揮する「効率性」の追求が重要である。さらに、製品設計・生産工程や選別・回収の物流システム等において再資源化が容易な技術開発が進展すれば一層のコスト削減をもたらす。
このような「効率性」の高いシステムとしては次の事例が考えられる。
年間約1,000万トン排出される廃プラスチック(図1)は、石油から生産されており、これを広域的に収集し大規模な高効率発電を行いエネルギー転換することは、単純焼却と安定化しない埋立処分の対象量や石油資源の採取量の減少にも大きく寄与する。この場合、廃プラスチックの投入量によって図2のように発電コストが大幅に削減される。

【公平性】

他方、わが国には多様な地域が存在し、人口分布や産業集積が異なる中で「地域間の公平性」という視点が重要である。
廃棄物については、地域住民の忌避感情が根強く存在しており、効率性のみで全国画一的な対応をとることは適切ではなく、安全が確保された上で合意形成を図る必要がある。特に広域リサイクルによる大規模プラントを設置する地域の選定については、基本的に排出量が多い地域を対象とし、合意形成の手続を透明にするとともに、周辺住民に一定の便益が提供される工夫等も必要となる。
廃棄物は排出者にとって不要なものであり、その処理に費用をかける動機付けは働かないという性質を有している。このため、不法投棄を発生させないように排出者責任を徹底し、廃棄物を排出する者が処理に必要な費用を適正に負担する「費用負担の公平性」という視点が欠かせない。
また、廃棄物の不法投棄問題等の環境破壊を先送りすることは、後世代に多大な負担を強いることとなるため、「世代間の公平性」も重要な視点である。こうした負の遺産を解消し、美しく自然に溢れた社会の建設を現世代で早期に実現し、次世代に引き継いでいくことが必要である。

【安全性】

また、有害物質等リスクの高い廃棄物の処理については、「安全性」を最重視し、関係者の合意形成の下で地域または広域圏で役割分担を行いつつ、適正な処理システムを選択することが望まれる。
さらに、国土が狭小で人口密度が高いわが国にとっては、自然環境を再生し、生態系を保全することや、都市景観や安全な住環境を保っていくことも重要である。

(3)実現に向けた基本的な手法
【素材ごとの循環的利用へ】

廃棄物を循環資源として最大限に活用するためには、現状のような製品別・産業別の取組だけではなく、廃棄物の分解・解体過程で発生する最終的な素材ごと(金属、ガラス類、建設系鉱物、可燃物、分解性有機物、汚泥、鉱さい等副産物)に効率的な利用を行うシステムが必要である。
このようなシステムの構築に当たっては、異分野の産業間の連携や横断的取組を促し、各種製品の寿命に基づく廃棄物の発生見通しや、素材別の経済的価値と需給構造等、循環資源の全体像を踏まえた取組が重要となる。
この循環資源の全体像を踏まえ、静脈産業の合理化とともに動脈産業についても、製品設計や生産工程において消費後廃棄物になった場合に再資源化が容易となるような生産構造の転換、いわゆる「動脈産業のグリーン化」を推進することが必要となる。
例えば、産業間の連携により再生した素材の経済的価値と需要を見極め、各種の再生品が競合して供給過剰となる事態を回避することも重要となる。
特に、建築解体廃棄物の排出量は、現在でも産業廃棄物の相当な部分を占めているが、このうち非木造建築物の解体に伴う排出量は1995年を基準とすると首都圏では2025年にはその8倍程度になると予想されており(図3)、最終埋立量を減少させる目標達成の大きなハードルになることが懸念される。このような状態を回避するには、例えば、解体ビルの鉄筋やコンクリート塊を新たなビルの鉄筋やコンクリート等に利用する、いわゆる水平リサイクルを推進する技術開発等、鉄鋼業等の素材産業における対応が重要となる。
また、リサイクル施設の規模の決定等にあたっては、各種の製品の寿命に基づく廃棄物の発生と製品のニーズの見通しとのバランスを考慮することが重要である。
主要な製品の平均寿命をみると大きく「単年」、「数年」、「数十年」の単位での分類となり、例えば「単年」の紙については、図4のようになる。「数年」は家電、自動車等で、図5のように近年保有台数が一定している。「数十年」のケースでは住宅、道路等で、図3で見たように数十年先の長期的な排出の見通しを持った対応が必要となる。

以上のような全体像を踏まえた素材ごとの循環的利用のあり方については、今後さらに検討を深める必要があるが、例えば表1のような素材ごとの特性に応じた利用が考えられる。

【地域の特性を踏まえた地域循環システムの構築】

わが国は、首都圏などの大都市地域や地方の中核都市、あるいは過疎化が進展している農山村地帯と人口分布が異なり、また産業立地や土地利用状況も多様であることから、廃棄物の種類やその発生規模、また再生資源の受け皿となる地域の状況の差異も大きい。
このため、地域の特性に応じ、住民の選択・参画の下で実施される地域循環システムの構築を推進することが必要である。
例えば、農村・中山間地域では、間伐材等をバイオマスエネルギーとして活用する施設を整備し、森林の保全対策を含め、地域の雇用創出にも資する循環システムを構築することが考えられる。
また、大量の廃棄物を排出する首都圏では埋立処分場が極めて残り少なくなっており、大規模な資源循環システムの構築が早急に迫られている。このため、本年6月に都市再生本部で決定された「大都市圏におけるゴミゼロ型都市への再構築」を東京圏において推進するため、関係各省と7都県市からなるゴミゼロ協議会を設置し、去る11月1日に中間とりまとめ、14年春の最終とりまとめをめざして検討が進められている。
このプロジェクトは、東京圏の産業廃棄物についての具体的な減量化目標を設け、大規模な廃棄物処理・リサイクル拠点の形成や水運等を用いた静脈物流システムの構築等、民間業者による創意的な取組を結集するものである。今後、民間団体、事業者、市民を含めて合意形成を行い、わが国のモデルプロジェクトとして早期にその実現を図るべきである。

【国民参加に基づく取組-脇役はいない-】

循環型経済社会の実現には、廃棄物を「不要なもの」とする国民意識を転換し、分別収集への協力等によって、資源循環への国民参加を求めていくことが必要である。同時に、再資源化が容易な製品設計や修理等のバックアップ部門の充実等動脈産業のグリーン化が進展すれば、国民のライフスタイルにも影響を及ぼし、循環型経済社会への国民参加を促す契機となる。
国民の意識転換を進めるためには、循環型経済社会の重要性に対する環境教育の充実や、回収された廃棄物がどのように資源やエネルギーとして有効利用されるのか等についてわかりやすく正確な情報の提供が重要である。
また、廃棄物処理・リサイクル施設も効率性と公平性、安全性という基本的視点の徹底によって、地域に不可欠なインフラストラクチャとして社会的に位置付けられることが極めて重要である。これを促進するためには、そうした施設の安全確保や周辺環境整備に万全を期すことが前提であり、その上でさらに円滑に合意形成を図るためには、例えば廃棄物発電により地域住民に対するエネルギー供給や、ホストコミュニティフィ制度の導入等地域への還元措置を講じる工夫が必要である。

【経済社会システムの改革の必要性】

以上のような取組を着実に展開していくためには、経済社会システムの改革を長期的戦略の下で迅速かつ確実に実施していく必要がある。
第一に、廃棄物を循環資源とすることが市場経済にビルトインされ埋立処分量が最少化される社会への誘導である。
第二に、廃棄物の資源・エネルギーとしての利用の促進と適正な処理の確保の観点にたって、廃棄物の定義や一般廃棄物・産業廃棄物との区分、広域的処理を阻む手続の見直しを図る。さらに、わが国の需要に適したエネルギーを高効率で生み出すサーマルリサイクルと、エネルギーを過度に消費しないマテリアルリサイクルの合理的な選択を可能とする政策等、制度的枠組みを確立する。
第三に、それぞれの関係者の責任と役割を明確にするための社会的ルールの確立と関係者間の連携体制の構築である。
第四に、循環型経済社会は、多数の利害関係者が関与し、それぞれの価値判断基準が異なる等問題が複雑であり、その解決方策も画一的なものにはなり得ない。このため、課題解決に向けて広範な関係者間の合意形成を促す仕組みが必要である。

2.ビジョン実現に向けたシナリオ

経済社会システムの改革

(1)責任と費用負担のルールの改革―市場経済へのビルトイン―

廃棄物の不適正処理をなくし、資源エネルギーとしての活用を促進するためには、産業廃棄物についての排出事業者責任を徹底することに加えて、次のような責任と費用負担のルールの改革を行い、循環型経済社会づくりへの取組を市場経済へビルトインしていく必要がある。

【製造・販売業者が回収する体制の確立】

廃棄物の回収・リサイクル体制については、個々の製品ごとの特性等を考慮しつつ、基本的には製造・販売業者が回収・リサイクルシステムを構築・運営する統括的な役割を担うことことが求められる。なぜなら、その製品の特性を熟知している製造・販売業者が使用済みとなった後の循環資源としての活用システムを構築することが最も合理的・効率的であり、生産からリサイクルまでの総コストが製品価格に適切に反映されるからである。このような、製造販売業者が自ら生産する製品等について、それが使用され、廃棄物となった後まで一定の責任を負う、いわゆる「拡大生産者責任」を普及することは、再資源化が容易な製品設計等の対応を促し製品のライフサイクル全体において最適化が図られることにもなる。また、その際デポジット制度の活用を検討することも必要である。こうした回収体制が様々な分野に波及することは、廃棄物発生抑制意識の向上にも寄与する。

【適正な費用負担方式の導入】

一般廃棄物の処理はほとんど税金で賄われていることから、排出者の負担意識が生まれにくく、そのために発生抑制やリサイクルへの動機づけが働きにくくなっている。排出量に応じた有料化も検討し、排出者が環境負荷低減の責任を負う「排出者責任」の徹底が重要である。この場合、発生抑制やリサイクルが進み不法投棄が起こらないような工夫をするとともに、「排出者責任」の重要性に理解を求めるため、市町村の処理コストの現状、リサイクルによるコスト削減効果、有料化によって得られた財源の使途等の情報開示等の措置をあわせて講じる必要がある。
また、事業系の一般廃棄物についても市町村が処理を行っているが、排出者たる事業者の負担は実質コストより少ない場合が多く、排出抑制やリサイクルの促進のためにも事業系の廃棄物の処理費用の負担についても排出事業者責任を徹底する必要がある。
さらに、本年4月に施行された家電リサイクル法では、廃棄物の排出時点で消費者が費用を負担することとされたが、他方、現在検討中の自動車リサイクルシステムでは販売時点で消費者が費用を負担することが検討されている。
今後のリサイクルの費用負担方法の検討に当たっては、資源の循環システムが市場経済に円滑に組み込まれるために消費後のリサイクルコストの内部化が重要であり、製品ごとにその実効性や効率性が異なるという事情を考慮しつつ、販売時点での消費者負担を行うことを検討すべきである。

【公的投資システムの改革】

現在、廃棄物処理は、産業廃棄物は排出事業者責任を基本としており、その徹底を図る必要がある。これに対し一般廃棄物は市町村の管理責任となっており、市町村の焼却施設・埋立処分場等の施設整備費に対し公的投資が行われている。循環資源としての利用拡大を図るためには、例えば、廃棄物処理施設整備への補助体系をリサイクルの向上を促す仕組みに変えるなど公的投資の体系を見直す必要がある。
さらに、今後3R原則の徹底等により一般廃棄物の排出量が抑制され、その結果市町村の焼却施設の能力に余裕が発生することが考えられることから、将来的に過剰設備にならないよう、産業廃棄物の受け入れや現在直接埋立している廃棄物を選別してエネルギー資源とするなど、多様な活用方策を検討するべきである。また同時に、既存の施設については、複数の市町村との連携の下で周辺施設との役割分担やリサイクル施設への改良を推進することや、民間に運営を委ねるPFIの導入も検討するなど運営の効率化を図ることが必要である。

【経済的手法による経済社会システムの改革】

環境保全が十分でない単純な焼却や埋立処分がリサイクルより相対的にコストが安い構造が、廃棄物を有用な資源として利用拡大を進める上でのネックとなっている面がある。また、再生資源と海外等からの一次資源を比較した場合の相対的な価格差等の競争条件によって、リサイクル製品が高くなる構造も是正する必要がある。
こうした中で、事業者に対するリサイクルの制度的義務付けや一部自治体では産業廃棄物税も導入されている。今後、廃棄物の排出が抑制され、リサイクルの促進やリサイクル品の価格競争力の向上を可能とする経済社会システムの改革に取り組むため、税や優遇措置等の経済的手法の導入やグリーン購入の一層の推進について幅広い検討を進める必要がある。

(2)合理的な循環システムの構築

○静脈物流システムの構築
合理的な循環システムを構築するには、循環資源を収集・運搬する静脈物流システムをいかに効率的なものにするかが重要であり、具体的には全国に分散している廃棄物をコンビニ等の小規模な収集地点から大規模なリサイクル拠点に至るまで大中小規模拠点間を効率的に結ぶ収集・輸送網の構築が必要である。このため、社会インフラの整備とこれを効果的に機能させる制度改革が不可欠である。

【廃棄物排出段階における分別の徹底】

分別・混合防止の徹底が効率的な循環システムの構築を行う上で鍵となる。例えば、マテリアルリサイクルでは塩素、合金等を分離した素材別の均質な資源が回収されると、天然資源からの製品と同品質の製品製造することが技術的に可能であり、サーマルリサイクルにおいても、水分や不燃物排除によりエネルギー効率の向上につながる。

【末端回収システム】

生ごみは、腐敗しやすく悪臭の原因となるため速やかに収集される必要がある。その処理は他の可燃物と合わせて焼却されているのが現状では一般的である。大規模な焼却施設では発電が行われているところもあるが、生ごみは水分を含みエネルギー効率を低下させている。エネルギー利用の観点からは、乾燥、コンポスト化、ディスポーザーの導入などによって他の可燃物質と分離して堆肥化やメタン発酵等の選択肢も模索するべきである。この検討に当たっては、地域の特性を十分考慮しつつ、地域住民の合意が得られる手法が適当である。
さらに、一般廃棄物の回収には、天然ガス自動車に加え電気自動車などエネルギー効率が高くクリーンな車両や空気輸送システムなどの導入等も検討の余地がある。

【広域的収集による集約化】

静脈物流は、動脈物流と異なり時間的拘束が小さく機動性を求められる必要は少ない。むしろ、たとえば素材に着目し一般廃棄物と産業廃棄物を一体的に扱う等により、広域的流通や規模の効果を発揮し、環境負荷と貨物の運賃負担を極力抑える物流体系が求められる。このためには、広域的流通を阻む市町村単位や都道府県単位での許可手続の見直しを図るとともに、環境負荷の少ない鉄道輸送や海上輸送も拡大することが可能な静脈物流システムを構築する必要がある。同時に、広域的な静脈物流システムが円滑に機能するには、末端段階の収集・回収システムの効率化も図る必要がある。
また、リサイクルプラント等の整備に当たっては、計画段階から環境への負荷等を考慮した輸送手段・物流体系を選択できる枠組みを作っていくことが必要である。

○産業横断的な連携の推進
資源循環システムの構築は、民間の主体的取組を基本とし、特に産業間の連携を視野に入れた取組が重要である。今後、例えば素材産業と部品産業、最終製品産業等の異分野間での再生資源の取引回収、新技術開発の協力を実現することが、投資コストの低減や新技術の早期開発をもたらすことになる。このため、循環資源の統一的な規格・基準を定めることが重要である。
また、これまで廃棄物の適正処理を担ってきた静脈産業においても、再生資源の効率的な回収に向けて動脈産業との連携や技術・ノウハウの開発等により、一層の高度化・近代化を図っていくことが必要である。
このような産業間の連携を通じて、産業界全体の取組が相互に整合性の取れた形で成熟し、さらに産業構造の転換、動脈産業のグリーン化や新たなビジネスモデルの創出も期待される。

○エネルギー活用を含めたリサイクルの推進
平成12年に制定された循環型社会形成推進基本法では、循環資源の利用及び処分の基本原則として、排出抑制、再使用、再生利用、熱回収、処分、の順で優先順位を設けている。
この優先順位は、立法時に、サーマルリサイクルを行うと再び繰り返して利用することができない一方でマテリアルリサイクルであれば繰り返した後でもサーマルリサイクルを行うことは可能であること、廃棄物焼却に対するダイオキシン等有害物質の発生への懸念等を考慮したことにある。
しかしながら、マテリアルリサイクルを常に優先することはコストやエネルギーの過度の増加を招き、むしろサーマルリサイクルが最終的には化石燃料資源の採取量の減少と環境負荷の低減をもたらす場合も多い。
このため、サーマルリサイクルをマテリアルリサイクルと同等に位置付け、LCA等の客観的な評価により、両者の合理的な選択が可能となるようにすべきである。この場合、サーマルリサイクルは単純焼却ではなく高効率のエネルギーを生み出すことが前提となる。例えば廃プラスチック等の可燃ごみを燃料として分別し、高効率ごみ発電施設の燃料として利用し、生ごみや家畜ふん尿等についてはメタンガスを発生させ高効率の発電を行う等により、大きな効果が上がるものと考えられる。その際、焼却が有害物質を発生させるとの懸念が依然として根強いことを踏まえ、安全性の確保を徹底するとともに情報開示などの措置を講じていくことが前提となる。

(3)経済成長と環境負荷の低減を両立する革新的な技術開発の促進

持続的な経済成長と環境負荷の低減を両立するためには、革新的な技術開発の促進が不可欠である。例えば環境負荷の少ない素材・製品の開発、有害物質の分解・除去・安全性評価技術、廃棄物の高度な選別・分離および再利用技術等があげられる。
技術開発には、ナノテクノロジーやバイオテクノロジー等の「基盤技術」と、これを応用した物質の分離や製品の分解、省エネルギー等の「要素技術」、さらに、これらを適切に組み合わせて課題を解決する「全体設計技術」が極めて重要である。また、技術の真の姿を共有し、多くの選択肢を議論し、合意して決定することを可能にするために、自然科学と社会科学の融合した新しい科学技術の創生が不可欠である。
このため、産・学・官連携や研究領域間の協調が必要であり、多くの関係者が協力して知識を構造化するとともに、知識を自由に引き出し、理解し、共有し、活用する仕組みを構築し運営するために、ITの活用とナレッジマネジメントが重要である。
こうした技術開発への投資は巨額となる可能性があり、また、このような仕組み作りは個別主体の取組だけでは困難であることから、大学等の研究機関や民間企業、国、地方公共団体、NPO等の連携・協力が必要である。

新たな成長分野の拡大

わが国は、1970年代の石油ショックと公害問題の深刻化を契機として、省エネルギー型の産業構造を実現し、当時の資源・環境制約を克服してきた経験を持つ。世界に先駆けて循環型経済社会を実現することは、当初はコストの増加をもたらす可能性もあるが、わが国の循環型経済社会への取組が国際的にもモデルとなることにより、石油ショックの例にみるように新たな成長のばねになると考えられる。ビジョンの実現は、後世代にすばらしい自然、安全で安心な国土、美しい住環境及び都市や田園の景観を残すだけでなく、われわれ現世代にもパイオニアとして以下のような効果をもたらすものと考えられる。

【広範な取組の始動】

企業の環境に対する取組が「社会貢献の一つ」から、「企業の業績を左右する重要な要素」又は「企業活動の最も重要な戦略の一つ」として企業活動の中に取り組んでいくという動きに変わろうとしている。すなわち、環境問題への取組が環境規制に対応する産業や一部の環境産業だけではなく企業全体に広がりつつある。廃棄物や廃水をいかに処理するかといった、いわゆるエンド・オブ・パイプから、企業間で協力した総合的な廃棄物削減・環境負荷低減を目標とする総合システムへと発展した取組となっている。例えば、都内の某ホテルでは、生ごみの堆肥化施設の導入を進め、できた堆肥を契約農家に納入し、そこから有機野菜を仕入れるといった循環の環を形成している。また、ロングライフ住宅や家電製品のリユース等の製品ライフサイクルを通じたサービス提供型ビジネスモデルも広がりをみせており、市場の拡大とともに雇用確保の効果も期待される。

【国際競争力の強化】

合理的で明確な規制や目標の下での資源循環の効率化に必要な技術や生産・流通プロセスの革新は、国際競争力の強化をもたらす。これまでも容器包装リサイクル法に対応したPETボトルをPETボトルに再生する技術や、ダイオキシン規制に対応したガス化溶融炉等の技術の開発が進められてきた。国際的に物質資源・エネルギー資源の制約が強まり、また、地球温暖化対策の推進が人類共通の喫緊の課題となっている状況下において、こうした革新的な技術は、直ちに国際競争力を持ちうるものであり、その開発を促進することは、先進国の一員であるわが国の責務と言える。

【新たな国内市場の拡大】

積極的なリサイクルの推進や循環を考慮した製品製造ラインの改造等は、装置、機材等の有効需要を生み、関連産業を育成し、マクロ経済への効果が大きい。例えば、レンズ付きフィルムは、部品のリユースや素材のリサイクルを進め、使い捨てのイメージを脱却することにより広く国民に受け入れられ、写真用フィルム全体の消費量の増大にも寄与した。その過程で生産装置と解体装置の一体化、いわゆる動脈と静脈が結合した新たな生産分野市場を作り出した。このようにビジョンを実現する上で、循環を支える装置製造業、流通システム、IT等の分野の成長が期待される。

【人的・知的交流基盤の形成】

IT化、グローバル化した時代における経済成長の源泉は「知識・知恵」であり、それを生み出すのは創造力豊かな人材である。革新的技術の開発や知識・学術の創造を担う国際的に優秀な人材との交流の活発化は、今後のわが国の成長力を高めるための重要な要素である。
循環型経済社会の構築等によりもたらされる田園から大都市にいたる美しく整備・維持された生活環境や景観は、そうした世界の一流の人材や情報をわが国に結集させるための大きな基盤となる。例えば、環境分野で、世界をリードしていくためには国際的な研究協力等が必要であり、その際国際会議等を容易に誘致・開催できるような基盤、あるいは優秀な研究者が率先して招聘を受け入れるような基盤の形成のためにも快適で魅力ある環境空間は重要である。

【産業・雇用の将来規模】

今後の循環型経済社会においては、静脈産業の高度化と動脈産業の循環機能の内部化が相まって経済規模が拡大し、新たな雇用を生み出していくことになろう。本専門調査会では、循環型経済社会の構築に関連する産業・雇用について限定的な将来推計を行った。1999年時点で約48兆円の市場規模が2010年には約70兆円になり、雇用規模については約128万人から約150万人に増加する。なお、この推計結果には、燃料電池自動車などの将来的に実現が期待される分野や動脈産業のグリーン化等の効果が加味されておらず、今後それら分野での一般企業の積極的な取組により、ビジョン実現に関連した市場の規模は上記推計よりさらに拡大すると考えられる。

このようにビジョンの実現は、経済、環境の両面から大きな効果をもたらすとともに、世界的に通用する革新的な技術開発やシステム開発を進めることにより、効果はさらに大きなものとなろう。

情報ヘッドクォーターの創設

循環型経済社会の実現には、多数の利害関係者が関わり、またコスト・エネルギー・環境負荷等の価値判断基準が多岐にわたり、極めて複雑で多様な問題の解決とその関係者間の合意形成が必要である。この受け皿として、知識の構造化やデータの共有化システムの構築を行い、技術開発の進歩・国際的取り決め等様々な状況変化に対応できる機能を持った「循環型経済社会推進のための情報ヘッドクォーター(仮称)」の創設を早急に行うことを提案する。
この情報ヘッドクォーターは、政府の主体的取組の下に、民間や学識経験者、特にIT及び廃棄物処理や循環資源に詳しい専門家が参画し、循環システムの情報や技術革新の進捗状況等を様々な分野から集積し、インターネット等で国民各層に活用されるシステムである。このシステムによって、わが国全体の循環型経済社会の進捗状況の把握が可能となり、整合性のとれた成熟した循環システムの形成に寄与する。
循環型経済社会に対する国民のイメージは一様ではなく、それぞれに多様な視点を持っていることから、あらゆる情報の公開を通じて知識の共有化を図り、国民の一人一人に責任ある行動を促すことが重要である。
この意味でも、「情報ヘッドクォーター」の役割は重要であり、とりわけ廃棄物に対し依然として根強く存在する国民の忌避感情を克服していくためにも、わかりやすい情報の積極的な発信が求められる。
同時に、地球規模で環境問題への対応が問われている現状において、わが国の各地域や産業分野で取り組まれている技術や社会システムに関し、世界に発信していくことは環境先進国としての重要な役割である。

具体的実験の開始 -民間主体の創意的取組を-

循環型経済社会の実現に向け、当面の取り組むべき課題に対し、市民参加に基づく「具体的実験」にチャレンジすることが重要であり、その成果をあらゆる角度から検証し、この検証結果を広く国民に情報公開していくことが必要である。その際、最も重要な視点は、民間主体の創意的取組を各地域から活発化させることである。そのために国は循環型経済社会全体の方向性や多様な取組の情報を示すこと等により民間が積極的に「具体的実験」に取り組むことができるよう先導的な役割を果たす必要がある。また民間や地域から提案された先駆的な取組については、国は関係府省間の連携を一層強め、地方公共団体とも協調して、立ち上がりのための支援に努める必要がある。
本専門調査会では、今後の効率的な循環システムの「具体的実験」として表2のような事例を提案するが、今後具体的実験の選択肢として地域における主体的な発想による多様な提案がなされることを期待する。
本専門調査会が提起した「循環型経済社会推進のための情報ヘッドクォーター」において、具体的実験の提案や成果が蓄積され、適切に評価していくことにより、「実験」がまさに「合理的なシステム」として成熟していくことが望まれる。

おわりに

今回の中間とりまとめは、わが国が21世紀中にめざすべき循環型経済社会の方向性とその諸方策について提言を行ったものである。本専門調査会としては、この提言が循環型経済社会の早期実現に向けた関係者の積極的な取組に資するものと考えている。
また、経済財政諮問会議において、中期経済財政計画、予算編成の基本方針について議論が行われる際に、本中間とりまとめが活用されることを期待する。