大田大臣 経済財政諮問会議後記者会見要旨
第5回会議(平成20年3月18日)
(1) 開かれた国づくりについて(経済連携等)
(2) 革新的技術特区(スーパー特区)について
大田弘子です。本日、今年第5回目の経済財政諮問会議が開催され、開かれた国づくり(経済連携等)、革新的技術特区(スーパー特区)について議論しました。
経済連携については、民間議員から提案がありました。EUとの経済連携に遅れをとらないようにというのが大きいポイントです。また、高村臨時議員、若林臨時議員、甘利議員から説明がありました。
高村臨時議員からは、EPA交渉の工程表が出されました。EUについては、昨年の基本方針の段階では「将来の課題として検討を進めていく」となっていましたが、この改訂版の中では「日米、日EU経済関係の更なる発展を促すような基盤を整えていく方策は何かについて、民間で行われている議論も踏まえつつ、引き続き真剣に検討を進め、可能なものから、米国・EUと共に、準備を進めていく」とあり、これは基本方針から気持ちとして前に進んでいるということでした。
若林臨時議員からは、民間議員の提案にある補償措置も含め、「全体パッケージを提示しながら」という点について、補償措置をあらかじめ示しながら交渉はできないという話がありました。また、日米、日EUのような大市場国とのEPAについては、今、WTO交渉が非常に重要な時期に差しかかっているので、日本としてそういうことを表明していくのは、WTO交渉に悪い影響を及ぼしかねないという懸念が表明されました。
民間議員からは、以下の発言がありました。
- スピードアップが必要。
- 農業の国際競争力を強化していくことが大事で、その強化策を具体的に考えていく必要がある。その部分を解決しないと、EPAの議論は進まない。一方で、農業は多面的な機能を持っており、自給率向上という重要な課題もある。そういうことを踏まえた上で、競争力の強化策を議論する必要がある。
- 現在の4省庁体制では、なかなか有効なEPAを進めていく対応策は出てこないので、ぜひトップダウンでやっていく必要がある。
- 今、日本経済の減速感が強い。日本経済のパイを拡大するには、成長力のある海外を取り込んでいくことが重要で、特にEUとのEPAは重要。政府一体となって進めてほしい。いつごろまでに何をするか、工程表をつくってほしい。また、スピード感を持って進めていくことが必要で、遅れないようにすることが必要。さらに、既に締結した後のフォローアップが必要。例えばフィリピンはまだ批准されていない。こういう合意されたものについてのフォローアップが必要。
民間議員の提案の中で、「基本方針2006」に2010年にEPA締結国との間で貿易額の25%以上にしていくという目安が書かれているが、これについての工程表を策定すべきという提案があります。今は15%ぐらいですが、これを25%にするかどうかは、日豪EPAが大きい鍵になってきます。高村臨時議員からは、今の時点で工程表を示しながらやっていくことは、オーストラリアとの交渉に影響を与えかねない。まだ工程表をつくる時期ではないのではないかという発言がありました。
若林臨時議員からは、オーストラリアとは米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの除外を粘り強く求めて交渉しているところ。今、交渉しているところなので、ここは非常にまだ難しい段階であるとの発言がありました。民間議員からも、ぜひとも粘り強くしっかり交渉を進めてほしいという発言がありました。
総理からは、EPAの推進は成長戦略の大きい柱だが、今日の議論にあったように、いろいろ難しい問題がある。難しい問題はあるが、関係大臣で一歩前に進めるように取り組んでほしいという発言がありました。
甘利議員からは、「アジア経済・環境共同体」について発表がありました。これについては格別な反論や意見はなく、これから進めていただくことになります。
農業の活性化については、民間議員から、雇用促進プログラムをつくり積極的に進めていく、後継者の育つ農業にしていく、特に若い人が入るために法人化を進めることが大事という趣旨の提言がありました。
若林臨時議員からは、農業の全体の構造改革プログラムというのをやっている。これを実現するためには、年間に1万2,000人ぐらい従事者を増やしていくことが必要で、今、それを着々と取り組んでいる。今日の民間議員の提案を受けて、さらに加速する努力をしたいという発言がありました。また、障害のある方の雇用の受け皿としての農業というのも、ぜひ進めていきたいという発言がありました。
民間議員からは、日本は国土の13%が農地、これは諸外国に比べて低い。その低い中で、耕作放棄地、土地持ちで非農家というのが増えている。これを例えば税制などを使ってストップさせていく必要がある。また、米についても、消費を増やす努力と併せて大型化・法人化を進めていくことが必要。農業の中に普通の株式会社がなかなか入っていく枠組みにないので、株式会社の特例をつくって農業に入りやすくすることを考えてはどうかという発言がありました。
総理からは、以下の発言がありました。
- 中・長期で考えると、世界的に人口増は続く。日本が自給率にどう取り組むかも大変難しい問題。
- その中で、EPAをどう進めていくかという難しい問題もある。つまり、国内も自給率を高める努力をしながら、なおかつEPAも進めていく。これは非常に難しい課題だが、その解く知恵を出していきたい。
- ぜひ、若林臨時議員を中心に積極的な提案をお願いしたい。
スーパー特区については、民間議員から提案があり、特にその第1弾として先端医療開発特区を創設すべき、先端医療開発特区については既に革新的創薬のための3大臣会合があるが、その枠を使って第1弾のスーパー特区を実現すべきというのが趣旨です。
これに対し、関係する舛添臨時議員、渡海臨時議員、甘利議員、岸田臨時議員の4大臣から、賛成であり、スーパー特区は革新的な技術を進めていくに当たって有効な枠組みであるという発言がありました。舛添臨時議員からは、スーパー特区をどう具体化していくのか、4大臣で連携をとって早急に検討して、諮問会議に報告したいという発言がありました。
町村議員からは、民間議員の提案の中のFDP(アメリカで90以上の大学と資金を配分する機関とが一緒になって、予算の執行の柔軟化など、幾つか研究者の立場に立って予算を使えるようにするという枠組み)は、研究者にとって大変有用なもの。ぜひ、額賀議員、岸田臨時議員も一緒になって、こういう枠組みを進めてほしいという発言がありました。額賀議員も了解したということでした。
民間議員からは、こういう革新的な技術をやっていくために、予算制度も特例などをつくって突破していくのは大変重要で、そのためにも対象を絞って突破していくことが有効だという発言がありました。
これは、ぜひ進めていきたいと思います。
総理からは、以下の発言がありました。
- 最先端の再生医療、バイオの医薬品・医療機器、こういう分野は世界が最も注目し、また世界中で激しい競争が展開されている分野。
- 4府省で連携して、先行プロジェクトを実施してほしい。その観点で、4月初旬に取りまとめる「成長力強化への早期実施策」にも盛り込んでほしい。
農業で雇用戦略を議論しているときに民間議員から、今日は農業の議論だが、農業を含めて雇用にとって、これから3年間が非常に大事という発言がありました。これから3年というのは、雇用戦略の中には、当然、子育てしながら働きやすい環境というのも含まれるわけですが、団塊ジュニアがまさに出産年齢である30代後半にあるということ、それから、これから3年間に団塊世代のリタイアが進むので、その技術の継承という意味で、雇用戦略にとって3年が非常に大事だという発言がありました。
それを受けて総理からは、以下の発言がありました。
- 民間議員から、この3年間が雇用戦略にとって重要という発言があったが、今、策定中の「新雇用戦略」についても、数値目標を掲げて、3年間の集中した取り組みを取りまとめてほしい。
- 舛添臨時議員には、案の提示をお願いする。諮問会議の場で、関係大臣とともに議論して、大田議員には早期の取りまとめをしてほしい。
最後に総理から、以下の指示がありました。
- このところ、世界の金融市場は不安定感を増しており、その影響が懸念されている。
- 経済財政政策担当大臣におかれては、今取りまとめている「成長力強化への早期実施策」に加えて、為替の変動や原油価格高騰などが日本経済に与える影響について点検し、中小企業に対する政府系金融機関による支援など必要となる措置について、関係閣僚と協力しつつ早急に検討し、迅速に対応されたい。
- それから、財務大臣におかれては、国際金融システム等の安定化のために、G7諸国とさらに連携を深めてほしい。
私も、為替の変動や原油価格が日本経済に与える影響には十分に注意していかなくてはいけませんので、その点検をして、中小企業に対する必要な支援措置など、検討していきたいと思います。
以上で議論は終わりですが、今日で福井議員が最後の出席ですので、最後に以下の発言をいただきました。
- この5年間で、ちょうど150回の出席だった。
- 会議に貢献できたかどうかわからないが、政府と日銀の大きな方向性をそろえるという役割は果たせたと思う。
- 総理以下、ありがとうございました。
(以 上)