記者会見要旨

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨(今後の経済財政動向等についての点検会合について)

  • 日時:平成26年11月17日(月曜日)16時01分~16時22分
  • 場所:合同庁舎8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

 第4回「今後の経済財政動向等についての点検会合」の出席者の主な意見を申し上げます。
 まず、足下の景気の現状と見通しについてでありますが、本年4月の消費税率引上げに伴う反動減からの回復に遅れはあるが、トレンドに戻りつつあるという評価をされた方は、稲野さん、江夏さん、西岡さん、平野さん、深尾さんであります。消費を中心として厳しい状況であるとされた方は、上野さん、片岡さん、末澤さん、若田部さんです。グローバル経済圏の企業は上昇トレンドであるが、ローカル経済圏の企業はまだら模様であるとされたのが、冨山さんです。懸念材料としては、末澤さんから、地政学的リスクの拡大や、昨年の株高との比較で資産効果の剥落による反動減等が生じていることが挙げられていました。
 それから、消費税率引上げについてであります。来年10月に予定されている8%から10%への引上げについて、予定どおり引き上げるべきだとおっしゃったのが、上野さん、西岡さん、深尾さんであります。引き上げるべきではあるが、足下の景気対策等が必要であるとおっしゃったのが、稲野さん、江夏さん、平野さんであります。引き上げるべきだが、それに伴う低所得層対策等が必要であるとおっしゃったのが、稲野さん、末澤さん、冨山さんです。稲野さんは景気対策とあわせておっしゃっています。引上げを見送るべきであるとおっしゃったのが、片岡さんです。それから、そもそも引上げを行うべきではないとおっしゃったのが、若田部さんであります。
 対策の中身についてですが、先ほど申し上げた中で、景気対策等を行うべき、とされた方の御主張をもう少し細かく紹介をしますと、少子化対策や低所得者等への対応が重要であるとおっしゃったのが、稲野さん、末澤さん、冨山さんです。それから、産業競争力強化や女性の活躍推進など成長戦略の実行が重要だとおっしゃったのが、深尾さん、稲野さん、江夏さんであります。地方、中小企業等弱者対策や、現役世代を元気にする対策が重要であるとおっしゃったのが、末澤さんであります。それから、災害復旧、防災対策が重要とおっしゃったのが、これも末澤さんでありました。
 その他の意見でありますが、稲野さんが、投資家の反応は前回の消費税率引上げ時と異なり、一様に支持とは言えない。それから上野さんが、景気刺激と増税を組み合わせる「セット論」には、具体策に手詰まり感があるので賛成できない。経済の短期的な痛みにもかかわらず増税が必要だということを政府が国民に十分説明できることが必要だ。さらに上野さんが、増税を延期するのであるならば、今回一回だけということを確定させることが必要だ。江夏さんが、財政再建のためには税収確保が不可欠であり、引上げを延期した場合、国債などの格付に下押し圧力がかかる可能性がある。同じく江夏さんが、人口流出・少子高齢化等の課題に地方公共団体が対処するためには、地方消費税率の引上げが鍵となる。片岡さんから、再増税を延期した上で、定額給付金等による3兆円規模の追加経済対策や金融緩和の着実な実行を行うべきだ。更に片岡さんから、景気は腰折れしてしまった。消費税増税を延期し、延期期限の目安を示すとしても、景気条項を残すことが必要である。末澤さんが、社会保障給付を賄うため、税負担増は不可避であり、少子高齢化の進展は、構造改革をより困難にする。同じく末澤さんから、世代間格差の是正や日本国債の信認維持のためにも、再増税を実施すべきだ。冨山さんから、ローカル経済圏の企業は回復がまだら模様だが、人手不足であり、新陳代謝による生産性向上のチャンスである。もし引上げを先送りする時には、引上げ時期の明確化が必要だ。西岡さんから、財政再建には名目成長の底上げ、増税、歳出削減の全てが必要である。同じく西岡さんから、雇用・所得環境の改善、良好な金融環境は継続している。平野さんから、政権の政策実行力への信認を確保するためにも、仮に延期する場合には、次の引上げ時期を確定させるべきである。深尾さんから、第三の矢を強化する政策として、日本語能力を重視をした移民政策への転換を打ち出すべきである。若田部さんから、政策の優先順位は、デフレ脱却が最重要であり、財政再建を可能にするのは経済成長である。同じく若田部さんから、最善なのは5%への消費税減税だが、次善の策として、再増税を延期した上で、低所得者層等への追加経済対策を行うべきである。日銀の追加緩和も重要だ、ということです。
 その後、出席者間の意見交換を行いました。主な論点を数点御紹介します。上野さん、長期金利は下がっているものの、これは日銀の大規模な買入れにより市場の価格形成機能の低下によるものであり、財政を見た上でのことではない。冨山さんから、雇用の80%がローカル経済圏であり、ローカル経済では人手不足が続いており、最低賃金を引き上げるべきだ。それから江夏さん、若田部さん、冨山さんから、政府の信認は、成長戦略が着実に成功するかどうかに懸っている。
 以上です。

2.質疑応答

(問)今日の会合でも経済対策について議論があったようですが、今回のマイナス成長を受けて、大臣はかねてより、弱いところを見極めてピンポイントでの対策が必要だとおっしゃっておられましたが、今回の成長率を踏まえて具体的にどういったところに対策が必要と考えていらっしゃいますでしょうか。
(答)今夕、総理が帰国されます。明日いろいろ総理の発言の場があるのではないかと思います。そこでどういう判断をされるか。こういう景気状況では、経済対策が必要というふうになる可能性が高いのだと思います。その際は、対策の効果を上げるためには、どこに問題があり、どこに対策が必要かということを、フォーカスを絞ってやるべきであるという話をかねてからされておられました。というのは、先の消費税率引上げの反動減に対する対策を打ったにもかかわらず、かなり厳しい状況が続いている。一体あの対策はどう効果があったのかという検証の中で、きちんとピンポイントで効果が図れるような、フォーカスをしっかり絞るべきだというような発言はかねて総理からありますから、仮に対策を打つ場合には、そういうところにフォーカスを合わせて、より効果的な経済対策を指示されるのではないかと思います。
(問)今日は経済対策の関係で、片岡さんが「3兆円」という数字を挙げましたが、明日、規模感みたいなものはある程度示されるのでしょうか。
(答)どうでしょう。仮に対策が必要という場合には、とにかくばらまきにならないように焦点をしっかり絞って効果的にということが、その点は柱になるのだと思いますが、同時に、総理は財政の健全化への強い意思もかねてから示しておられますので、対策規模が大きくなればなるほどそれは効果が上がるでしょうけれども、そうすると、財政再建への政府の意思が薄れていくという危険性があります。政府の財政再建の意思をきちっと示しながら、効果的にということで、ばらまきではない、ピンポイント、フォーカスを絞るというような議論がかねてからあるのだと思います。総理がどういう指示をされるかは御帰国以降の話でありますけれども、いわゆる経済効果と財政再建という、相反するものの整合性をとるような、いわゆる最大公約数がどのへんにあるかということだと思います。いずれにしても、総理が経済対策を必要とし、指示されるのか。された場合には、財政再建と経済効果との両立どう図るのか、どの時点で図っていかれるのか、詳細な指示が、対策を打つ場合にはなされると思います。
(問)その意味するところは、2015年度のプライマリーバランスの半減目標を維持すると総理は言うということしょうか。
(答)半減目標を安易に放棄するような指示ではないのではないかと思います。これはわかりません。まだ総理の指示を受けておりませんから。ただ、総理は財政健全化については、きちんと政府としてはコミットしていくべきだということをかねてからおっしゃっています。それから、ばらまきはだめということをおっしゃっています。そうすると、規模感は、そんなにべらぼうな規模というのは難しいと思いますが、しかし、今回の数字を見てどういう判断をされるかはわかりません。
(問)先程、効果が図れるようなフォーカスをという発言を、総理がされていたということをおっしゃっていますが、甘利大臣は、経済再生担当大臣として、具体的にどういったフォーカスが必要だと考えていますでしょうか。
(答)消費、特に低所得者層の消費がかなり落ち込んでいます。この年齢層、それは所得階層とも連動してきますけれども、比較的所得層が高くない、しかも、子育て中のところが、財布のひもが非常に固くなっているということですから、消費の下支えとすると、そういうところにある程度フォーカスを絞るのかと思いますが、いずれにしても、総理指示を待ちたいと思います。
(問)去年の点検会合と比べて今回の点検会合、特に今日ですと、GDPの発表があったり、解散風等があったりして、特に今日の点検会合の雰囲気は去年と比べて変化があったのかなかったのか教えてください。
(答)前回の点検会合と比べれば、慎重な物の言い方の方が増えてきたと思います。ただ、予定通りやるべきという方もかなりいらっしゃったわけですが、それはアベノミクスのトレンド自身は崩れてはいないということで、基調自身が大きく外れてしまうことはないのだということでした。ですから、しっかり足下の対策を打っていく中で、予定どおりやるべきだというような話でありまして、今回の数字の上でも、基調は外れてはいない。ただ、部分的な影響について慎重な対応をしつつ予定どおりやるべきだというような発言の方ですから、今回の7-9月期の一次QEを受けて、それでもなおやるべきだという方は、そういう説明をされている方が多かったように思います。つまり、基本トレンド自身が失われてしまっているわけではないのだからということでした。

(以上)