記者会見要旨

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨(今後の経済財政動向等についての点検会合について)

  • 日時:平成26年11月14日(金曜日)20時00分~20時20分
  • 場所:合同庁舎8号館1階S101・103会見室

1.発言要旨

 第3回「今後の経済財政動向等についての点検会合」について、概要をお伝えいたします。
 まず、足下の景気の現状と見通しについて伺いましたが、高知県知事の尾﨑さんからは、高知県では足下は厳しいが、中期的には力強さも見受けられるということでした。それから、土方さんからは、小売業から見ると、消費マインドは停滞し、厳しい状況である。景気の回復度合いについては、地方では実感として感じられないという状況だ。藤田さんからは、スーパーの売上げも足下は下降気味で厳しい状況である。それから、萬歳さんからですけれども、野菜や米は他の要因で価格の高騰や急落がある。税率引上げによる直接的な影響は見極め難いということでありました。岸さんからは、魚介類消費はプラス方向で推移しているということでありました。松下さんからでありますけれども、福岡市の建設業界では駆け込み需要で多少上向いているということであります。それから、青柳さんからでありますが、群馬県の建設業ではマイナス気味の見通し感を持っている。小田木さん、針谷さんからは、アベノミクスが地方まで波及しておらず、依然として厳しいというお話でありました。
 次に、質問の2点目、消費税率引上げについてであります。
 来年10月に予定されている消費税率の8%から10%への引上げについて、引き上げるべきだが、足下の景気対策等が必要であるとおっしゃったのが、青柳さん、針谷さん、松下さんであります。引き上げるべきだが、それに伴う低所得層対策、転嫁対策など、中小企業・小規模事業者対策等が必要であるとおっしゃったのが、尾﨑さん、小田木さん、岸さんであります。萬歳さんは、お立場を明らかにされておりません。それから、引上げはやむを得ないけれども、その時期は慎重に判断すべきだとおっしゃったのが、藤田さんと土方さんであります。
 それから、3点目が対策の中身についてであります。
 青柳さんは、地方建設業のお立場から、地方に配慮した景気対策と公共工事の納期の平準化が必要だ。針谷さんからは、旅館業のお立場でありますが、価格の総額表示義務の廃止や、訪日外国人の地方への分散等必要だ。松下さんでありますけれども、成長戦略を掲げる地方都市への資金の重点配分を。それから、尾﨑さんからは、足下の景気減速には個人消費を喚起する対策などをとのことで、そして、これに併せて構造的問題である少子化・人口減少対策を解決するための人材の地方への移住促進や林業等の育成支援などを。小田木さんでありますけれども、地方自治のお立場から、子ども・子育て支援が地方だけの負担とならないように手当てしてもらいたい。土方さんでありますけれども、国民の消費意欲を活性化するため、可処分所得の増加が見込める税額控除などの低所得者向けの配慮が必要である。それから、藤田さんからは、軽減税率の導入は対象品目の特定が難しく、拡大しやすくなることから、再増税の意味をなさなくなる恐れがあるという発言でありました。萬歳さんは、引上げの是非については言及されませんでしたが、仮に引き上げる場合には、農業の立場から、農産物の品目別の影響緩和策や価格転嫁対策の徹底・強化をしてもらいたいというお話です。
 その後に、出席者間の意見交換を行いました。
 主な論点ですが、尾﨑さんですけれども、引上げ時期を延ばすにしても、ずるずる延ばすのはやめてもらいたい。そして、高齢者に滞留している金融資産を若者層に移転させることが重要だ。それから、針谷さんでありますが、国内観光の振興のためには、マネジメントのできる人材が不足しており、その確保が必要である。市の観光課も、全く無関係の課にいた人が突然来て、経験値もなしに思いつきみたいな発言をする。それよりも、ちゃんとした専門家がそこについて適切なアドバイスができるということが大事だというようなお話でした。土方さん、藤田さんでありますが、社会保障制度が充実することで、国民が将来に安心が持てる。これにより国民の消費マインドも向上するものと考える。
 以上です。

2.質疑応答

(問)手続の話になりますけれど、これは18日まで会合を続けられて、甘利大臣が総理大臣にその日のうちにこの内容、結果を報告される予定なのでしょうか。
(答)そうですね、できるだけ迅速にお伝えしたいと思います。
(問)伝える際には、どんなことにポイントを置いてお伝えしようとお考えでしょうか。
(答)引き上げる場合、あるいはそうでない場合も、こういうリスクがあり、こういう対応が必要だということを、集約してお伝えすべきだと思います。
(問)数字の確認をしたいのですけれど、今のお話ですとまず、何らかの手当てはするけれど今の予定どおり、法律どおり上げるのに賛成が6で、はっきりしない人が1で、予定どおりではない人が2ということでいいのですか。
(答)お話を伺っていますと、途中まではこのままやるべきではないという説明があって、最後にそれでもやるべきだと、いろいろなニュアンスがまじっていますから明確にこっちが何人、あっちが何人という感じではないです。そういう質問も飛んでいました。お話を伺っていると、足下の状況を見て、この時点ではやるべきではないというように聞こえたけれども、最後の結論は、社会保障の充実のためには仕方がないとなり、「どっちなんですか」という質問が飛んでいましたので、明確にこっちが何人、あっちが何人とはなかなか言い切れないと思います。
 それから、こうだけれども延期する場合にはこうしてくれというような発言があったり、こうしたほうがいいというような発言があったり、人数を何対幾つと割ってしまっていいのかなという感じがしますけれども、明確にこの時点ではやるべきではない、つまり引き延ばすべきだとおっしゃった方がお二方。時期については慎重にということでした。引上げ自体に反対しているという発言はありませんでした。引上げについてコメントされた方もいましたけれども、明確に引上げそのものに反対だという方はいらっしゃいませんでした。時期については慎重に判断すべきだとおっしゃった方、あるいは引上げに賛成とおっしゃった方も、足下の状況はこうで、現状ではなかなか厳しいし、これに消費税率引上げが加わるとこう、という話がありながら、社会保障等を考えれば致し方ないという結論になって、微妙な発言が多かったです。
(問)民主党の野田佳彦元総理が、消費税率の来年10月の10%引き上げについて先送ってもよいという、容認の発言をされ、その理由としてアベノミクスの失敗だと、失敗したのだから引き上げられない状況になったということをおっしゃっているのですけれども、これについてどうお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
(答)アベノミクスが失敗、アベノミクスの基調が頓挫したということではありません。現実に企業収益は史上最高になっています。この冬の賞与についても一次回答がありました。昨年の冬と合わせて2期連続5%を一次回答で上回ったのは、バブルの崩壊前ですね。1990年前後、89年と90年でしょうか、そこが8%とか6%ということがあって、それ以降、5%を2期連続で上回ったという年がありません。だから、間違いなく、企業収益はたくましく改善している。名目賃金も上がっている。雇用情勢は過去に例がないくらいの好調である。今日は高知県知事が、高知県の状況について、有効求人倍率が0.86で、史上最高であるとのことでした。そして、過去は全国と比べても、有効求人倍率が上がっていなかったのが、このトレンドを見ると急激に上がってきていますとのことでした。こういう例は過去にありませんと県知事がおっしゃっていましたけれども、そういう状況、ベースは失われておりません。要は消費税を導入したことによって、消費の回復が遅れている。遅れている理由は、消費者が守りに入っているという点があります。それから、名目賃金は上がっているのに、実質賃金がついてきていない。つまり、企業収益が完全に好循環を回し切っていないというところです。トリクルダウンがまだ弱いということです。だから、トリクルダウンを強くする。あるいは「ないんだ」ではなくて、収益を上げたところから還元していかないと、儲かっている人がため込んでいるだけで、一切外に出しませんといったら、経済の回復などあり得ない。だから、トリクルダウンを速くするという課題や、実質賃金ができるだけ早くプラスになるようにしていくなど、そういう課題が残っている。
 だから、仮に消費税率引上げを延期するということになるならば、そういう本来の企業収益が賃金や下請け代金に跳ね返ってくる、これが一回は起きているわけですから、2巡目、3巡目を起こしていく、そういう時間的猶予が必要だという判断だと思います。アベノミクスが完全に失敗していたら、どこまで延ばそうと、デフレに戻ってしまいます。デフレに戻らないようにトリクルダウンをしっかりスピードを速める、実質賃金が上がっていくようにする、その時間的猶予をもらいたいということだと思います。
(問)別に財務省の言い分を言うわけではないのですが、1つだけ言えるのは、今のプラス成長のもとで消費税率引上げを延期するとなると、将来、また同じ判断を繰り返すのではないかという不安があると思うのですけれども、その辺はどう見ていらっしゃるのでしょうか。
(答)際限なく判断が先延ばしにされるということはあってはならないと思います。そこにどういう対応をするか、これは私がここでしゃべることではないと思います。総理ご自身が、仮に消費税率引上げを延期するとしたら、それに対して、日本国債への信認を失わせる、日本売りを起こさないような決意と手当をどうしていくかということだと思います。総理ご自身が財政再建について、かなりこだわっておられるのは、まさにそういう意思のあらわれであると思います。

(以上)