記者会見要旨

甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨(今後の経済財政動向等についての集中点検会合後)

  • 日時:平成25年8月31日(土)19:01~19:28
  • 場所:内閣府本府仮設庁舎講堂

1.発言要旨

第7回目の集中点検会合、先ほど終わりました。今日が最終日でございます。
まず、景気の現状と見通しについてどう考えて、捉えておられるのかということに関してです。
予定通りの消費税率の引上げに照らして、景気がいいとおっしゃったのは、菅野さん、高田さん、西岡さん、國部さんであります。
菅野さんは、消費税引上げは景気回復の初期の方がよく、消費税率引上げの機は熟しているとおっしゃっていました。國部さんは、銀行の営業の現場を見ると、企業のマインドは着実に改善をしており、設備投資の環境は整っているというお話でした。
景気の懸念材料としては以下のような指摘がありました。デフレからの脱却が道半ばであること、そして、QE3の縮小に伴う米国金利上昇や新興国からの資金流出など海外リスク要因があるということ。一方、本田さんでありますけれども、アベノミクス効果によって足元の成長率はいいけれども、センチメントは脆弱であって、3%の消費税増税は経済への悪影響を与えることを懸念されていました。
なお、吉川さんでありますけれども、景気の拡張局面において、瞬間風速としての短期的な経済動向に拘泥すべきではないという考えであります。
それから、消費税率引上げについてであります。
予定通り引き上げるべきだとおっしゃったのは、菅野さん、國部さん、高田さん、土居さん、西岡さん、吉川さんであります。
引上げの理由については、財政に対する信用を維持することによって、株安、円高、長期金利の上昇等の市場リスクを回避すること、それから、現在のビッグリスクである財政赤字は速やかに取り除いておくべきこと、それから、社会保障制度の維持こそ所得分配上、最も重要であること、それから、家計の消費意欲はそれほど長くは落ち込まないことが挙げられていました。
その際、経済対策として以下のような対応が必要との意見がありました。第一に、補正予算による下振れリスクへの対応、第二に、低所得者対策、第三に、規制緩和、法人税減税など成長戦略による成長力の押上げ、第四に、機動的な金融政策による対応、これらが挙げられていました。
他方、予定を変更すべきであるとおっしゃったのは、本田さんであります。本田さんは、消費税増税は必要だけれども、来年の4月というのはクリティカルであって、インフレ期待形成に失敗する可能性があり、デフレ脱却途上では増税の刻みを小さくすべきであるということをおっしゃっていました。また、一度に3%の引上げが経済に悪影響を与えるリスクが高いということで、1%ずつ、あるいは初めに2%、その後1%とすべきだともおっしゃっていました。また、永濱さんは、小刻みの引上げが望ましいが、物理的に困難であるならば、予定通りの引上げに加えて、景気対策を行うことが現実的ということをおっしゃっていました。
一方、代替案や予定変更に対して、反対ないし慎重な理由として、菅野さんは、成長戦略に悪影響を与えて政府に対する信認を低下させるということ、高田さんは、今後の財政再建に大きな支障が生じる可能性があるということ、土居さんは、税収弾性値は高くなくて、経済成長だけに依存しても財政収支は改善しないということ、西岡さんは、増税回避により市場が混乱するおそれがあるということ、吉川さんは、政府への信認が低下し、成長戦略も信用されなくなるということを挙げておられました。
その他でありますが、以下のような意見であります。
まず、本田さんが、5年間1%ずつの増税について、事務コストはそれほどかからないはずで、税率変更に伴う事務コスト増とデフレ脱却のバランスが問題だとおっしゃっていました。また、1997年の教訓について、吉川さんが、景気の落ち込みは金融危機が主因であり、公共投資も大きく削減をされたとおっしゃっていました。高田さんも、当時はバランスシート調整のピークだったことが要因であると指摘されました。
それから、菅野さんが、ポリシーミックスの観点から補正予算や成長戦略による景気対策、日銀との共同声明で示された政府と日銀の連携を再確認すべきだとおっしゃっていました。それから、植田さんが、消費税引上げを巡る論点を両面から明らかにされていました。そして、日本の財政状況は危機的であり、消費税率をある程度引き上げなければ財政破綻のリスクが大きいという御指摘がありました。それから、國部さんが、アベノミクスの進展及び消費税率引上げに対する海外の機関投資家の関心は高いと指摘されておられました。
その後、意見交換を行いました。
佐々木議員から、「今までのヒアリングの中で、1%ずつの引上げは実務上コストがかかるし、転嫁が難しいという現場当事者からの御意見が多かったけれども、どう思うか。」という質問に対して、本田さんからは、1%刻みによる実務的コストについては、どれくらいのコストがかかるのか様々な人に聞いてみたけれども、そんなにかからない、対応ソフトの活用で対処できるのではないかという話がありました。
高橋議員から本田さんに対して、「1年先送りはどうか。また、3%上げつつ、そのうちの1~2%分を減税するという案についてはどう思うか。」という質問があり、本田さんは、「浜田先生のおっしゃっている1年延期論については、もしそれが可能ならば理想的でベストと言えるだろう。しかし、来年また同じ議論が起きるし、結局3%引き上げるのであれば、ショックが大きいのは同じだ。」という趣旨のことをおっしゃっていました。それから、3%上げて、そのうちの1~2%分を減税に回すというのはどうかというのは、それについては一案だと思うという回答がありました。
それから、消費税の引上げのコストについて、吉川さんから、増税による景気の押し下げ効果に比して、予定通りに実施しないことによるマイナスの効果の方がはるかに大きく、社会保障の議論が振り出しに戻ってしまうとの趣旨の発言がありました。社会保障の将来像を確かなものにする必要があるとのお話もありました。
以上です。


2.質疑応答

(問)合計すると大体8割近い方が予定通りの消費増税に賛成という意見を述べられたと思うのですけれども、これについての受止めと、予定通りの消費税増税に国民的な理解が得られつつあるというふうに見ていらっしゃるか聞かせてください。
(答)結果として予定通り引き上げるべきだとおっしゃる方の方が多かったということは、その通りであります。その際には、予定通りやることのリスクと予定通りやらないことのリスクを比べてみれば、やらないことのリスクの方がはるかに大きいという御意見であります。
それから、やる場合でも対策をきちんとすべきだと。つまり駆込み需要の反動減対策はしっかりやるべきだということ、それから、成長力を強化することにしっかり気配りをする政策対応をすべきだというお話もありました。つまり、穴埋めをするだけではだめだという話だと思います。
全般的に見て、やはり予定通りできないということは、経済的なリスク以外にも多岐にわたるリスクがあるという御指摘です。政治的なリスク、それから社会保障プランが白紙に戻ってしまう等々いろいろなリスクが挙げられていました。私自身がこれをもってどうすべきだという判断をするというべきではないと思っておりますが、今週1週間、7回、60人の有識者・専門家の方々からの御意見をしっかり簡潔にわかりやすくまとめて総理に御報告をします。それでもって総理、つまり政府が適切な判断ができるよう、その材料の一つとするということでございます。
(問)植田さんは、引上げに関しては特に方向感は示されなかったという理解でいいのでしょうか。あと、全体が終わってみて、賛成が確かに7割から8割だと思うのですけれども、もし取りまとめてどれぐらいというイメージで数字がまとまっていて、言える部分があれば教えていただければと思います。
(答)何人とか何割ということは、それはあまり予断を与えてもいけないので、予定通りやるべきという人がかなり比率でいえば多かったというふうに思います。総理には、より正確な報告をさせていただきたいと思っております。
(問)植田さんに関しては、特にどちらでもない……
(答)総理は最初と最後だけ出ていただこうと思います。あとは関係大臣で言うと、私、経済産業大臣、厚生労働大臣、官房長官あるいは財務大臣も若干入るかなという感じです。
(事務方)植田さんは、特段明確に方向はなかったです。
おっしゃっていませんでした。
(問)2点ございまして、先ほど、予定通り3%上げる場合の対策として挙げられた中に、「機動的な金融政策」というふうに大臣おっしゃいました。これは何人ぐらいの方が提唱されたのか教えてください。
(答)それに言及されたのは、たしかお一人でした。
(問)昨日の総理の首相動静を見ていますと、お昼に浜田先生と本田先生と会食されているようですが、両先生からもそれなりにこの1週間の何か報告みたいなものを既にされているのかどうか、もし御存知であれば教えていただけますでしょうか。
(答)特にどういう報告を両先生がされたか、そして、何のためにお会いになったかということについては承知いたしておりません。
総理がこの会に出席されるという予定はありません。
(問)総理は来週外遊があるのですけれども、総理への報告はいつされるのか教えていただければと思います。
(答)9月上旬にでもしたいと思います。
(問)外国から戻られてからになりますか。
(答)外国に行っている間にというわけにはいかないですから。
(問)総理の指示でということで今回のヒアリングを行いましたけれども、大臣としては、やってよかったなと思えるような点があったか、その点どうでしょうか。
(答)毎回2時間お話を伺いまして、大体知識としては、「予定通りやるべき」や「そうでない方がいい」とおっしゃる方の御主張については、ある程度予測はできたし、把握していたつもりですけれども、よりビビッドな専門的見地からの懸念、あるいは理由など、いろいろなことがわかって良かったと思います。
(問)タイミング的にも、この時期で良かったなというふうに思われますか。
(答)そうですね、秋の判断の材料として、定性的に言われていること以外に具体的に各界の識者、あるいは各界を代表される方から、現場の実態に即したお話、御意見が出たというのは、いいタイミングだったというふうに思っております。
(問)先ほど、3%上げた場合の経済対策として、4点対策が必要だというお話が出たということだったのですけれども、これは、それぞれどなたが御主張されたのかということをお伺いしたいのと、4点目の機動的な金融政策というのは、景気が下振れた場合に追加の金融緩和をするということでいいのでしょうか。
(事務方)先ほど、最後の機動的な金融政策で対応というような御指摘をされたのは1名だけですが、そのほかの御指摘は、複数の方にまたがっていて、資料で御確認いただければと思います。
(問)明示されていない方もいらっしゃったので、例えば植田さんなどですけれども、そういった場合はどうやって確認すればよろしいですか。
(事務方)植田さんは両面のリスクを口頭で御説明されて、特段の対策には言及はなかったと承知しております。
(問)今回このようなヒアリングをやられまして、いろいろと見えてきたものというのもあったと思うのですけれども、政府としては、最終的な判断は総理が秋にされるということですが、基本的には増税を前提に、増税した場合でも景気が落ち込まないような形の対策というのを去年の税制改正も含めてずっとやってこられたと思うのですが、今回ヒアリングをして、軽減税率だけではなくて低所得者対策とかいろいろな議論が出ましたけれども、改めてその増税の判断までの間に、こういった検討が必要だというふうにお考えになったものとか、あるいは具体的に今後作業としてどういうことをお考えになっているのか教えていただきたいのですが。
(答)これは、まだ最終的な判断は総理がなされていません。その判断をされる時に、仮に予定通りやる場合に、どういうリスクがあり、どういう対応策が必要で、それで、そのリスクが乗り越えられるかどうかということをしっかり検証しなければいけないと私自身も思っておりました。識者によって対策の質量的に全く同じという感じではありませんでしたけれども、しかし、やはり増税によるリスクに対する危機意識はきちんと持っておくべき、何もしなくても乗り越えられるとおっしゃった方は一人もいらっしゃらなかったはずです。そこは、この危機を乗り越える対策というのは、足らずに失敗することはあっても、やり過ぎて失敗することはないのだと思いますから、しっかりとした、仮に予定通りという判断になるのであるならば、十二分な対応をすべきという御意見が大勢だったというふうに思っております。
(問)先ほど大臣は、総理への報告について、総理が外遊から帰られてからというふうにおっしゃっていたかと思うのですが。
(答)総理はどういう御日程だったか、とにかく総理の外遊中に御報告するつもりはありませんから、日本にいらっしゃる日程を見ながら、この報告がしっかりまとまり次第、なるべく早い時期に報告をしようと思っています。
(問)来週月曜か火曜ではないのかなということが知りたいのですけれども。
(答)まとまり具合と相談して、なるべく早くにしたいと思います。
(問)その後、「骨太の方針」に従うと、経済財政諮問会議でやっていくということになるのですけれども、その辺の段取り、いつ頃次の諮問会議を開いて、どういう議題でやりたいか、何か方向に関しては……。
(答)総理への報告と経済財政諮問会議は、遅滞なく、あまり間を置かないでしっかりやっていきたいと思っています。
(問)それは、例えば1回で終わるのか、それとも2、3回とやっていくようなイメージなのか……
(答)基本的にはそう何回もやることではないと思います。
(問)総理が外遊なさるし、大臣も外遊なさり、2次QEの日にやるということがないと思うと、もう来週早々としか考えられないんですけれども……
(答)だんだんいい読みになってきましたね。

(以上)