記者会見要旨

三村会長記者会見要旨(第13回「選択する未来」委員会後)

  • 日時:平成26年11月14日(金曜日)11時08分~11時45分
  • 場所:中央合同庁舎第8号館 S101会見室

1.発言要旨

 「選択する未来」委員会は、本年の1月以降、委員会の下に設置した3つのワーキング・グループとあわせまして、計34回にわたる会合を開催し、極めて熱心に、みんな喜々として議論を進めてまいりました。先ほど委員会の最終回が終了し、取りまとめの報告を行いましたので、その内容を御紹介します。お手元に配付したA4のカラー資料「報告概要」と「選択する未来」委員会参考資料集に基づいてお話しますけれども、今回の報告は非常に大部にわたっておりますので、内容を具体的に知っていただいたほうがいいと思いますので、後ほど事務方のほうから中身を報告書に基づきまして説明させていただきたいと思います。
 本報告のメッセージは極めてシンプルであります。現状のまま何もしない場合、厳しく困難な未来が待ち受けている。資料「報告概要」の一番左の上のところに「現状のままの未来」と書いてありますけれども、これは前回の中間整理でもお話いたしましたが、50年後、現在の3分の2、8,700万人程度の人口に減ってしまい、その中で高齢化率は40%。高齢化率が40%ということは、1人の生産年齢人口が1人の高齢者を養うことで、事実上これは持続不可能でございます。地域が疲弊化し、日本全体の多様さが消失してしまうことになると予想いたしました。
 しかし、ここで、未来は選択できます。未来への選択は、いつか先、将来起こるべきことではなく、現在、我々がいろいろな政策を講じることによってこういう未来は変えて、より好ましい未来を我々としてはつくり上げることができるというメッセージが、我々のメッセージでございます。
 しかも、デフレ脱却が射程に入りつつある、今のタイミングこそ、人口、経済、地域社会はお互いに相互連関しておりますので、そういう課題に一体的に取り組み、その相乗効果を生み出すことによって歯車の好転を狙うべきだということでございます。
 キーコンセプトでありますけれども、資料右下に記載している3つのコンセプトのうち、先頭の「未来」を「人口」に結び付けて描くことが我々の全体の動きでありました。すなわち人口という課題に向き合うことで、次の世代が暮らす未来を描いていくという視点でございます。
 我々としては、資料右上のほうに書いてありますように、いろいろなことをやれば、「改革・変革を経た未来」としましては、50年後に1億人程度の安定した人口構造を持ち得る。しかも、そのときには実質GDP成長率は1.5~2%という先進国の中でもごく当たり前の成長率を維持でき、東京の一極集中の反転、地域の特色を活かした豊かな成長・発展を狙うことができる。これを何とか目指したいということであります。
 しかし、その道は平坦ではございません。資料左下で、慢性的なデフレ及び30年来の少子化、地域の疲弊というところにずっと日本経済は沈んでおりました。しかし、アベノミクスにもより、脱デフレ・経済再生という道が今、開かれつつあるわけであります。したがって、この時期にこそ、先ほど申し上げました改革・変革を経て新しい未来をつくり上げるということが必要だと思います。
 しかし、トレンドに書いてありますように、50年先の未来をつくるのに我々として一番大切なのは、これから2020年までの5、6年の時期だと思っております。この時期に、1つは少子化対策を倍増する。予算を倍増させる。イノベーションによる生産性の向上を何とか図る。日本の生産性はこの10年間、例えばアメリカに比べて大幅に劣後しているわけであります。劣後しているということは、そういうものに近づける可能性が十分ある。キャッチアップが十分できる。この辺は後でもう少し御説明したいと思います。それから地方創生。今、増田レポートをきっかけとしていろいろな検討が進んでおりますけれども、そういうものをぜひともやりたいと思っております。
 もう一度繰り返しますが、数値的な目安としましては、2020年頃を目途に少子化対策の費用、支出を倍増させる。もう一つ大切なことは、何はともあれ、14歳以下の年少人口減少を2020年までにとめて、かつ2040年ごろには全人口の減少幅の拡大をとめ、人口減少を収束させる。これについてももう少し数字とグラフで御説明したほうがいいと思いますので、後で事務方から説明します。それで、先ほど申し上げましたように、50年後には1.5~2%を維持するということであります。
 キーワードはしたがって、将来は今、変えることができる。予算を倍増させなければいけない。これから20年までのジャンプ・スタートが必要である。そのためには、みんなが危機感を持って、これに対して相当思い切った手だてもやらなければいけない。とりわけ地方においては、各地方の都市、1,800の市町村の一つ一つが危機感を持って、自分みずからでいろいろな再生案を考えなければいけないということだと思っております。
 1つだけ申し上げたいのは、この資料の3ページ目に書いてあります「総人口の増減の推移」と「実質GDP成長率の推移」というところであります。
 左上の「総人口の増減の推移」は、対前年増減数を言っているわけですけれども、例えば足もとでは22万人減っております。これが2030年頃は85万人減り、2060年には105万人減るということであります。これが経済成長には、とりわけ2040年から2050、2060年までは大きなマイナスインパクトを与えます。したがって、いろいろなことをやっても、なおかつ日本の経済成長率はそこで下押し圧力を受けるということであります。それを何とか解決するためには、先ほど申し上げましたジャンプ・スタートが絶対必要である。したがって、この5、6年の施策が極めて大事になってくるということでございます。
 右上に「実質GDP成長率の推移」と書いてありますが、一番下の「生産性停滞・人口減少」シナリオの場合、生産性が停滞し、人口が8,700万人になった場合の2050、2060年頃の成長率はマイナスになるということであります。「生産性向上・人口安定」シナリオの場合、プラス1.5~2.0%になるということですが、人口減少対策と同時に、ここで非常に必要なのはイノベーションによる生産性の向上であります。この重要性をもう一度強調しておきたいと思っております。
 もう一つ御注目いただきたいのは、先ほどの急速な人口減少によって、2031年から2040年ぐらいはどうしても成長率の大幅な下押し圧力がかかるということであります。これに備える意味でも、2020年までに我々としてはいろいろな対策をジャンプ・スタートしなければ、日本は大変なことになる。こういうことで、ジャンプ・スタートということを強調したいと思います。
 
(事務方) それでは「未来への選択」という報告の本文と概要をごらんいただいて、まず、本文1ページをごらんいただきますと「はじめに」ということで、メッセージは、極めてシンプル。明確な選択は今から行う必要がある。デフレ脱却が視野に入ってきた今こそ、人口、経済、地域社会の課題に一体的に取り組むということでございます。これはある意味、まち・ひと・しごとの好循環ということと対応していることにもなります。
 2ページがこれまでの概観ということで、出生率の状況、人口の状況、経済の状況を書いております。
 3ページの上から2行目ですけれども、市区町村単位で経済状況と出生動向の関係を調べると、30年ほど前は両者の間にほとんど関係性は見られなかったが、近年はプラスの相関がある。
 参考資料集の8ページをごらんいただきたいのですが、今回、我々は1,800の市町村について、1980年、1990年、2000年、2010年と10年刻みで経済指標と人口指標をつくって分析をしました。左側に「普通出生率と経済指標」というものがありますが、これは1,800の市町村の2010年の姿をプロットしたものであります。そうしますと、出生率が高いところは経済指標も高いという相関があるということです。つまり、経済がそれなりに活性化していないと人口も増えないということであります。昔は、この直線の傾きがもっと横になっていたのです。つまり、人口と経済は余り関係がなかったが、近年、相関関係が出ている。逆に言うと、人口を増やすようなことをしないと活性化もしないことになります。
 ただ一方で、右側をごらんいただくと、人口密度については、経済が活性化しても、東京のように人口密度が高くなると負の相関があるので、ほどよい人口の集まりというのが経済の活性化につながっていく。したがって、そういうことも踏まえると、人口の問題、経済の問題、地域の問題は一体的にやらなければいけないことになるということでございます。それが3ページの真ん中に書いてあるということです。
 そのために、3つのコンセプトということで、「未来」を「人口」に結びつけて描く。この人口というのは、考えてみると、自分自身と家族、地域あるいは過去、未来、そういうものを時間的、空間的に結びつける概念である。したがって、ある地域を選んで働いて、結婚していくことは個人の選択ですけれども、「人口」を政策として取り上げる際にはその点を念頭に置きながら、つまり、強制ではなくて、個人の選択であるということも頭に置きながら「未来」を考えていく中でいろいろな政策も皆さんに考えてもらいたい。そういうことが必要ではないかというのが、3ページから4ページの頭にかけて書いてあります。
 4ページ、次は「つなぐ力」と「開くこと」。今回、抽象的ですけれども、メッセージということで、キーコンセプトとして並べています。
 改革するには「人」が基盤ですが、そのときに「つなぐ力」を伸ばすことが必要であるというのが4ページの真ん中です。日本には優れた人材、技術、資源や手法などがあるが、それらがばらばらになっていて、つながっていないということであります。例えばビジネスを見ても、要素技術があるけれども、それが活かされないので、そこをつないでいって、ブランド化やマーケティングをしていく、あるいは教育についても個々の分野での素養、基礎学力をいろいろつないでいく。お互いにつながることに刺激し合うことが必要であるとか、そういうことで、これが1つのコンセプトであるということが書いてあります。そのときに開くことも、つながるためには開かないといろいろな人が入ってきませんから、開いていろいろな人とつながることによってイノベーションも起こるし、地域も活性化していくこととなります。
 4ページの下、「『選択肢』を広げる、『多様さ』を活かす」ということで、我々は、変わらない制度、仕組み、慣行や意識の中で、無意識的に窮屈な生き方を選択しているのではないか。したがって、もっと「選択肢」を広げ、「多様さ」を活かすべきであるということです。
 5ページ、例えば高校を卒業してすぐ働き始めて、後で学び直しをする、違う分野で学ぶ、地方で仕事をする、子育てを終えて学び直しをする。いろいろなライフスタイルがあるので、そういうものを選べる世の中にしていくことが必要。学びの機会と働く機会の多様化ということです。
 2番目が数値的な目標、目安ということで、最初に人口について書いてあります。本文5ページの真ん中、参考資料の1ページをごらんいただきまして、中間整理時に我々は人口の全体について1億人になるにはどういうラインかというのをお示ししたのですけれども、これをもう少しブレイクダウンしたものであります。出生率が上がっていくと何が起こるかというと、まずは、年少人口である0~14歳人口の減少がとまって増えていく。その次に2040年頃には、高齢化率の上昇がピークアウトしていく。さらにうまくいけば、生産年齢人口が2050年ぐらいからは減少がとまって、上昇していく。こういうタイムスパンでいろいろな指標が動いていくイメージになるということであります。それが5ページから6ページにまとめて書いてあります。
 次に、少子化対策の倍増について、これは6ページの真ん中ですが、2020年頃を目途に倍増を目指す。家族関係支出というのはOECDの統計でありまして、日本は大体GDPの1%程度ですが、スウェーデン・フランスは3%、OECD平均で2%ということから、まず倍増ということであります。そのため、子育て支援は未来への投資ということなので、次世代につけ回しせず、現世代で負担していく。社会保障の柱としてしっかりと位置づけて、その上で、医療、介護を初めとする効率化・重点化、資源配分のシフト、社会保障全体として受益と負担の均衡のとれた制度に再構築するための骨太な検討などによって、財源を確保していくとしています。その際に、広がりのある切れ目ない支援への拡張や保育サービスのメニュー拡大などの現物給付の重視や教育支援などが大事であるということです。
 次に、イノベーション創出による成長力強化ということで、50年後も実質GDP成長率1.5~2%を目指す。その場合には2030年代、2040年代に今の下押し圧力に耐えていかなければいけないということが7ページにつながっております。
 7ページの2段落目について、年齢、性別にとらわれず、女性の活躍あるいは高齢者の活躍ということで、女性はM字カーブを解消する取組を進め、30代~40代の女性の就業率を5%程度引き上げる。65歳以上の就業率を3%引き上げることが目安となるということでございます。
 イノベーションのイメージのところは、参考資料集の20ページをごらんいただきますと「新たな経路への移行(イメージ)」があります。
 右側は、生産性がこのように上がっていく。現在、生産性は0.6%程度ですが、2020年代初頭までに、ジャンプ・スタートの期間に1.8%程度まで上げていって、そこから先は1.4%程度になるイメージでございます。
 左側のグラフをごらんいただくと、これは1つの例でありますが、主要34カ国について、1人当たりGDPの初期水準を横軸にとり、10年間の成長率を縦軸にとっています。当然、成熟国になって、1人当たりGDPの初期水準が高くなると、そこから10年間伸びる場合の成長率が低くなるわけですけれども、それをプロットしていくと、赤い傾向線を描くことができます。1970年代、1980年代は、日本はこの傾向線より上にあったのですが、今は下になっています。ということは、世界的に見て、本来伸びるべき水準まで成長率が伸びていないということですので、逆に言うと、それだけまだ伸びる余地があるのではないか。それは日本の産業構造であったり、経済の状況であったりが、少し停滞しているので、そこをより活性化していけば増やせるのではないかということの1つの例として、ここに挙げています。これは成長・発展ワーキング・グループのほうで具体的に分析をしていますので、御関心のある方はそのレポートをごらんいただきたいと思います。
 本文に戻って、7ページから8ページにかけて、ジャンプ・スタートの後、30年代、40年代は厳しい状況をしのいでブレないということで、経済への下押し圧力に耐えつつ、取組を継続し、進化させていくということが書いてあります。
 次に、いくつかの具体的な取組について、「15の先進的取組」という概要に記載しているものでございます。人口については、「地域の実情に応じた対応強化」、「妊娠、出産に関する知識普及」、やはり女性も男性も、妊娠ということについての医学的知識が足りなくて、そういうことをもう少し勉強してもらったほうがいいのではないかという議論がありました。「企業による子育て支援、若者支援の促進」、これは2015年4月に改正次世代育成支援対策推進法の施行がありますので、この中で企業の取組をしっかりとしていただくことが重要ではないか。
 9ページで、「教育への社会的支援」について、2015年末に教育関連贈与の非課税措置が終わってしまいますので、その延長・拡充が必要ではないかという提案。
 経済については、「学びの機会の多様化」、「異能・異才の発掘、育成」、「個性的な研究開発やビジネス化の促進」、「女性、高齢者の活躍促進」が重要となります。10ページでは、個人年金的な仕組み作りなど高齢者についての提案などもあります。
 10ページ、地域社会については、「従来の姿にこだわらない取組推進」、公的資産のマネジメント、地域おこしのノウハウの共有、思い切った集約・活性化などです。「『新しい絆』を起点とした取組推進」について、地域金融や寄附による社会的投資あるいは営利・非営利を越えた法人、事業のあり方の検討。「ICTを利活用したブレイクスルー」などでございます。
 その後、「政策の検証や評価」が10、11ページでございます。
 11ページから後は、各ワーキング・グループの要約ですので、ここは説明を省略させていただきます。あとでワーキング・グループの報告書をごらんいただきたいと思います。
 20ページで、「世界に向かう姿勢、新しい官民の関係等」について、世界のGDPに占める日本の割合あるいは世界の人口に占める日本の割合が、日本はこのままだと小さくなっていくということなので、そうならないように予測を変えていく必要がある。世界の中で一流国としてのプレゼンスを保持していく取組が望まれる。あるいは国際金融面で積極的に役割を果たしていく。まさに人口減少や高齢化はこれから世界が直面する課題ですので、それを乗り越えたモデルを日本が自らつくっていくということ。
 「日本・日本人らしさ」を大事にしていくことや、オリンピックへの対応ということで、これは3点挙げていまして、21ページですが、1つは東京一極集中の更なる加速を招かないこと。2つ目が、2020年を境にして大きな経済のアップダウンを生じないようにすること。2020年が終わったら、経済が大きく失速するというのではなく、そこは維持していく努力。3つ目が、新たな社会資本整備についての将来的な維持、利用を考慮して進めていくということでございます。
 「社会保障・財政の持続可能性の確保」について、これは特に東京がこれから大変になっていくので、今から準備をしていく必要がある。受益と負担のバランスの見直しを含め、再構築に向けた骨太な取組が必要です。先ほどもお話があったように、目安に近いところまで人口が回復していけば、そうでない場合に比べてかなり状況が変わってくるので、社会保障とか財政を考えても人口急減・超高齢化の克服が大事であるということであります。
 22ページ、「結び」で世論調査なども紹介していまして、参考資料集の12ページをごらんいただきたいのですが、1つは若い世代の考え方ということで取り上げています。50年後の未来は明るいと思いますかと聞くと、全体としては「暗いと思う」が6割であるが、若い世代、20代は「明るいと思う」が両方合わせると4割程度であり、若い世代のほうが未来はまだ明るいと思っているということです。右側は、これからの政策を若い人向けに重点的にやるのか、高齢者に向けて重点的にやるのかという問いをしたときに、若い世代ほど、高齢者が大事だという結果になっていて、逆に高齢者のほうは若い人が大事だという答えになっていまして、ここはよく世代の対立みたいなことが言われるのですが、このアンケートを見ると、むしろ支え合いとか、ほかの世代を思いやる傾向も見られる。そういうところに、我々は日本人らしさのようなことを感じたということが書いてあります。
 23ページの最後から2つ目の段落、大事なことは、改革・変革に向けた取組に今すぐとりかかることであります。今のタイミングが、歯車の好転を図り得る好機であります。これを逃すと遅延させるコストは非常に大きくなるということなので、今から始めなければならないということで結んでいるということでございます。

2.質疑応答

(問)まず、確認の意味も込めてなのですけれども、少子化関係の人口減少のところで2点伺います。1点目は、事務方からも説明がありましたが、少子化対策予算の倍増というのは、あくまで対GDP比で考えている。金額ベースではなくて、GDP比で伸ばすということでよろしいのかというのがまず1点で、念のための確認です。
(事務方)そこは明確に、何をベースにするかというところまでは今回は決まっていない。GDP比も1つの参考ということで、そこは1つの概念として倍増ということを書いてあるということで、それはいろいろな考え方があるとは思います。
(答)余り違いはないです。GDPで倍増しようが、全体額を倍増しようが、GDPがそこまで短期に変動することはないと思います。
(問)もう一つは、三村会長のほうから御説明がありましたけれども、年少人口を2020年までにとめるという話があったではないですか。参考資料のほうで、人口減少をとめる場合の2030年までに合計特殊出生率が2.07までに回復する場合というただし書きがあるのですけれども、2020年代初めまでに、今、1.4ぐらいですね。それを2020年までにとめるというのは、2.07という15年先の数字はあるのですが、途中経過として、例えばこの辺まで、地方創生の総合戦略で1.8程度を目指すとかとあったではないですか。そういうものが今回入っていないというのは何かあるのでしょうか。
(答)我々は直近の出生率については検討していないが、増田氏や「まち・ひと・しごと創生本部」で示している内容については、我々の検討と非常に即したものであると思っております。内容は非常によく連関されていると思っております。
(問)2点あるのですが、まず、事務的な話なのですが、これは18日の経済財政諮問会議に提出ということでよろしいでしょうか。
(事務方)日付までは言えません。
(問)三村会長のほうからジャンプ・スタートと何度もおっしゃいましたけれども、ジャンプ・スタートの原資になる消費税について、先送りという話が既成事実化しつつありますが、その辺を改めてお考えをお願いします。
(答)延期するかどうかは、私自身は是非ともやってもらいたい、すぐ予定どおり、来年の10月から10%を引上げてもらいたいという考え方には一切変わりがありません。
 ただ、客観的に、何か変わった場合ですけれども、それでも2020年度を目途でしたら、今の消費税については、それは何らか成立するでしょう。ですから、そういう意味での、消費税増税分で少子化対策は7,000億円程度を考えていたと思いますが、そういうものは何らかの形で担保されると思います。
 問題はそれを超えるものをどう調達するのかというところに、非常に大きな階段があると思っています。我々は先の世代にはツケを残さない。したがって、現世代でこれを解決しなければいけない。そうなると、現在の社会保障全体の中をもう一度いろいろ考えた上で、例えば高齢者向けより、少子化対策のほうに振り向けるとか、社会保障の内容をいろいろ合理化するとか、重点化・効率化するとか、こういうことも含めて何らかの手段はあるはずです。私のほうでは、そういう整理をしております。
 したがって、政府のほうには、今日、倍増という話を可能にするためには、こうしたことが絶対必要であるというのが委員全員の一致した見解でございましたので、それは御紹介したいと思います。
(問)会長にお尋ねします。今回のメッセージで、2020年までにジャンプ・スタートをするというテーマとなっておるのですけれども、少子化を解決するためには、少子化対策予算を倍増するという策があるのですが、TFPをどう上げるのかが非常に重要なテーマだと思っておりまして、恐らくこれを直接上げるよい政策は恐らくなかなか難しいと思うのですが、会長として特に重点的に、具体的にどういったものがジャンプ・スタートを実現するために必要だと考えていらっしゃるのでしょうか。
(答)TFPを上げるというのは、社会全体の構造を変えることです。例えば個々の産業でいえば、より生産性の低い産業からより生産性の高い産業に労働をシフトする。あるいは効率性の悪い産業は、やはりマーケットから退陣する。そういうことも含めて考えなければいけないですし、例えば合併を推進するとか、ただ単にいろいろな新商品を出し、あるいはICTを投入し、よく言われているいろいろなイノベーションの種はありますけれども、もう少し広い意味としてこのTFPの改善を取り上げるべきだと思っております。
 これについては、参考資料の18、19ページに書いてありますけれども、イノベーションによる生産性の飛躍的向上ができなければ、やはりジャンプ・スタートはできないということで、項目としては、ここに書いてありますように、知識資本投資を、例えば日本の場合は、ハードの投資対知識資本投資が2対1ですけれども、アメリカの場合はこれが1対2であるとか、オープン・イノベーションをやるということについて、OECDの中では日本は18位でなかなか遅れています。大学における人材育成、イノベーション機能の強化ということですが、とりわけ委員のほうからは地方大学の奮起を望むということ。あるいは不採算事業を移転し事業を再編するなど、いろいろな項目がこれについてはあるわけです。これ自体は恐らく成長戦略そのものになってくるのではないか。あるいは無駄な、不要な社会の制約を取り除くとか、いろいろなものがこの中に入ってくるわけです。
 したがって、今回の人口減対策あるいは日本全体として実質GDP成長率1.5~2.0%を達成するというのは、実は、ただ単に人口だとか個別の問題ではなくて、例えば人についていえば、労働者が最大の能力を発揮できる仕組みをつくり上げるとか、そういうことも入ってくるわけで、人口に対しては費用を増やせば何とかなるかもしれないけれども、TFPについては全日本的な取組をやらなければいけない。
 これについては企業も責任があると思います。これまでやはり収益をお金としてためて、投資主体にならずに貯蓄主体になっていたこともいま一つの事実ですから、これをより前向きなところに使うことも企業としては責任があると思います。ですから、TFPの引き上げにつきましては、非常に幅の広い、それだけに扱いがなかなか難しいことだと思います。
 ただ、日本人がみんなこのような問題意識を持てば、しかも先行事例はあるわけですから、キャッチアップすることは十分可能ですから、これは何とか可能なのではないだろうかと思っています。
(問)中間報告のときには50年後に1億人の人口を維持するために出生率2.07という数字も資料のほうには出ていたかと思うのですけれども、今回は、9割の若者が結婚して、2人超の子供を生み育てる環境が実現したとすればと書かれているのですが、さすがに現状ですと、政府も1.8までしか目標として打ち出せていない状況で、実感としては厳しいのかなとも印象を受けるのですけれども、実現可能性についてはどうお考えでしょうか。
(答)中間整理のときは、目標として2.07というのは出していない。参考資料には試算結果を入れておりましたけれども、我々はそのときいろいろ考えまして、出生率をターゲットとしてやるのがいいのか、それとも人口の絶対レベル、しかもこれは1億人程度ということですから、いろいろ悩んだのですが、そのときはしかし、1億人というほうがメッセージ性としても、わかりやすさからしても、そちらのほうがいいのではないかという形で、出生率は我々のターゲットとしては出していないと思います。
 したがって、計算すれば2.07程度になるということですが、しかし、それはすぐに到達するのは難しい。このため、先ほど申し上げました増田氏や「まち・ひと・しごと創生本部」で1.8というのを発表したということは、我々の将来的な方向に対して整合的になっているということで、これは我々の内容と一致していると理解していると申し上げたわけで、確かに2020年までにいきなりというのは、実現はなかなか難しいと思います。
 ただ、できるだけ努力して、我々は2020年までにトレンドを変えることができれば、モメンタムはつくのではないだろうかと思っています。ですから、こだわらず、今の出生率をある程度引き上げる。そのことがみんなに見えることが絶対に必要なのではないかと思っています。
(問)少子化対策の規模の倍増とともに、支出の改善を重視すべきだということも含まれているのですけれども、今の取り組まれていることの変えるべき課題というか、改善点はどのような問題意識をお持ちでしょうか。
(答)これは「選択する未来」委員会ではいろいろな議論がありましたけれども、一致したものとして、こういうものを要するにアピールしようではないかということには至っておりません。ただ、支出するほうもいろいろなことがあるので、これを重点化・効率化すれば何とかできるのではないかという話は、今日出ておりました。
 したがって、項目としては、個人的には例えばこの間の「今後の経済財政動向等についての点検会合」において申し上げた話は、例えば年金の支給年齢などであり、個人的にはそういう考え方を持っておりますけれども、しかし、「選択する未来」委員会として何を引き下げるとかということまでは議論していないことは御理解いただきたいと思います。

(以上)