記者会見要旨

三村会長記者会見要旨(第7回「選択する未来」委員会後)

  • 日時:平成26年5月13日(火曜日)11時09分~11時42分
  • 場所:中央合同庁舎第4号館 220会議室

1.発言要旨

 第7回「選択する未来」委員会が先ほど終了いたしまして、これまでの議論を踏まえて、中間整理を取りまとめましたので、その内容を中心に報告いたしたいと思います。
 まず、私の方から概括的に申し上げて、具体的内容については事務局のほうから説明させていただきます。
 「選択する未来」委員会では、本年の1月以降、委員会の下に設置した3つのワーキング・グループも含めまして、16回にわたる会合を開催し、極めて精力的に議論を進めてまいりました。
 今回取りまとめました中間整理は、これまでの議論をもとに、中長期的な課題とその克服に向けた方向性について、基本的な考え方を整理したものでございます。
 本報告のメッセージ、我々として訴えたい点は、1つは、現状のまま何もしない場合には、極めて困難な未来が待ち受けているという危機意識をできるだけみんなで共有するということであります。2つ目は、しかし、制度、政策や人々の意識が速やかに変わるならば、このような未来は変えることができる、すなわち、我々は危機感を持って、然るべき選択を行い、直ちに実行に移せば、明るい未来を描くことができるの2つでございます。
 繰り返しますけれども、現状に対する危機感の共有化と然るべき選択をすることでの明るい未来への確信、今回、この2つを強く発信したいと思っております。
 今後50年、確実に人口減少社会が続くことになります。現状の出生率が続いた場合には、人口減少はさらに加速し、足元では年16万人減でありますけれども、2020年頃には50万人から60万人減、2040年代初頭には年100万人減という、我々が経験したことのない速さ及び規模での人口急減に直面いたします。また、50年後には人口の約4割が65歳以上という超高齢社会となります。
 このような「人口急減・超高齢社会」に直面する中で、有効な手を打たなければ日本経済はプラス成長を続けることは困難になり、国民生活の質や水準も低下いたします。また、格差の固定化・再生産、地方圏を中心とした多くの地方自治体の消滅可能性、東京の超高齢化、財政破たんリスク、結果として、国際的地位の低下など、厳しく困難な未来を招くことになります。
 私たちはこのような未来を選択したくありません。強い意思を持ってこのような未来を変えていかなければならないと思っております。本委員会としては、制度、政策、人々の意識が速やかに変われば、「人口急減・超高齢社会」をより緩やかなものにし、経済の縮小スパイラルへの流れを変えることができると考えております。その際に重要なことは、若い世代やさらに次の世代が、結婚し、子どもを産み育てることができる環境をつくり上げるよう、集中して改革・変革を進めていくことだと思います。
 また、同時に高い国民生活の質・水準を維持するためにも、我が国の成長と発展は不可欠でございます。人口減少社会においても、付加価値生産性の向上、労働参加率の上昇、国内資本蓄積の増による成長を実現することは可能であり、諸外国の好事例等を積極的に導入するなど、これまでの考え方や慣習にとらわれることなく、ありとあらゆる施策を総動員する必要があると思います。
 具体的には、まず、1番目、若者が安心して結婚し、子どもを産み育てられる環境をつくり、50年後に1億人程度の安定した人口構造を保持する。これを1つの目標とはっきり定めることが必要だと思っております。
 2番目、国を成長するためには、「ダイナミズム」と「オープン」を軸とした取組によってイノベーションを加速化し、経済を世界に開き、「創意工夫による新たな価値の創造」を行うこと。
 3番目、女性、若者、高齢者が意欲、個性や能力に応じて活躍できるよう、年齢、性別にかかわらず働ける制度を構築する。例えば生産年齢人口をこれまでの15歳以上65歳未満から20歳以上70歳未満に変更する等の措置を講じる。あるいはまず、地域の活性化のために、地方に存在する資源、例えば農林水産業や観光等を再認識し、それを活用すること。地域ブランド、個性を活かした地域戦略を進め、それぞれの地域で若者が働ける場をつくり上げること。
 これらの対策により、日本の世界に対する発信力、貢献力を保持する。こうした方向性を提言しております。私たちに残された時間は余り多くはありません。明確な時間軸の下で、スピード感のある取組を行っていく必要があると思っております。
 中間整理については、今後、私から経済財政諮問会議に報告することにいたしておりますが、政府においても、危機意識と選択すべき未来をしっかりと受けとめてもらえることを期待いたしております。また、本委員会では、今後、年後半に、重点課題と中長期的な政策枠組みのあり方について、さらに掘り下げた議論を進め、年内を目途に最終報告を取りまとめていきたいと思っております。
 以上が私からのお話でございます。
 
(事務方) 若干補足をさせていただきます。お手元に「未来への選択」という1枚紙がございますので、ご覧ください。
 今、会長のほうから概要のお話がございましたが、まず、副題ですけれども、後で副題を入れたものをお配りしますが、先ほどの委員会で「人口急減・超高齢社会を超えて、日本発成長・発展モデルを構築」という副題になっております。
 今、会長からお話がありましたように、何もしないとそこにあるような急激な人口減少と超高齢社会、これは高齢化率が40%になることを意味していますけれども、そういう社会が到来する。
 その場合には、右側にあるように、マイナス成長、「人口オーナス」と「縮小スパイラル」の双方が作用して、国民生活の低下のおそれ、労働市場の二極化、格差の固定化・再生産、あるいは地方の4分の1以上の自治体が消滅する可能性。これはこの間、増田委員が日本創成会議で発表されましたいろいろなデータがありますが、本委員会においても、同じような試算を提出されまして、それに基づいてこういうことが言えるということでございます。医療・介護の増加によって財政破たんリスクといった問題もあります。
 そこで、時間軸として、まず、危機意識を共有した上で、成長・発展については、アベノミクスを機に、今、もう成長軌道に入ってきているわけですから、これを契機にして成長経路へ早期に持っていく。次に、人口とか地域の問題はなかなか急には変えられないので、でも、そうはいっても、先は余り待てませんので、2020年度目途に人口減少が加速する前にトレンドを変えていく。したがって、2020年までにしかるべき政策を打っていって、2020年あたりから出生率2.0に向けての道筋が見えるようにしていくということ。2020年の先、オリンピック・パラリンピックがあるわけですけれども、その先もたゆまぬ改革努力を続けていくという時間軸になっております。
 その上で、未来への選択は、そこに書いてあるようなことでございまして、人口につきましては、50年後に1億人を目指す。そのために、国民の希望どおり子どもを産み育てられる環境。これは結婚している人の場合、2.4人が希望子ども数となっていますので、その2.4人が実現されればおのずから出生率が2.07に近づいていくのではないか。もう一つは、そのために資源配分を高齢者から子どもへシフトして、子育て支援を倍増するということを書いております。ただ、その費用は現役世代で負担する。子どものためのさまざまな政策を見直すということです。
 成長・発展につきましては、イノベーション、これは「創意工夫による新たな価値の創造」ということですが、それが切り札であって、そのためにはダイナミズムとオープンがキーワードだということ。その基盤としていろいろな制度の安定が必須ですので、社会保障とか財政の制度の安定、債務残高の目標ということが必要ではないか。
 人の活躍につきましては、男女の働き方、特に男性の意識を変えることが大事だということでございまして、その機会を充実する。70歳までを働く人口と考える。格差の再生産を回避する一方で、世界一流のグローバル社会で生き残れるプレイヤーを育成していくということでございます。
 地域の未来につきましては、個性を活かした地域戦略、集約・活性化ということで、まず、働く場所をつくることが最重要でございまして、農業とか観光、その上で集約・活性化をしていくということ。
 信頼・規範につきましては、伝統、文化とか、そういうものをグローバルで国を開いていく一方で、日本の固有のもの、伝統とか文化をきちんと継承していく。あるいは国際貢献、世界に発信し続けることが大事だとしております。
 以上です。

2.質疑応答

(問)50年後に1億人を保持するという目標を達成するために具体策というのは、今後より具体的にしていくというイメージでしょうか。現時点で三村さんとして特にこういうところというところがもし具体的にあれば教えていただけますでしょうか。
(答)具体策はまさにこれからです。これから詰めていきたいと思っていますけれども、今、事務局のほうから話もありましたように、やはり日本の少子化対応は、例えば待機児童を解消するとか、そういう個々ばらばらになっていると思います。そうではなくて、結婚から始まって、結婚、出産、子どもの教育等、一連の切れ目のない対策を集中的にとる必要があると思います。
 2番目には、3人程度産まないと、なかなか出生率が2.幾つにはなってこないのですけれども、そのためには、やはり男性の協力が必要なのです。もう一つは、とりわけ3人目の子どもに対しては、夫婦の子どもであると同時に、社会全体としての宝であるという形で、非常に重点的に優遇策をつけるとか、やり方としてはいろいろあると思います。
 日本の社会保障の資源配分が高齢者に非常に偏っていること、これは事実です。諸外国に比べても明らかに高齢者に偏っている。これをより若者に対する配分を高める。こういうことを我々としては提案するつもりなのですけれども、そうしたら財源をどうするのだという問題が非常に難しい問題として出てくるわけであります。前々から高齢者の対策については重点化・効率化ということが言われておりましたし、70歳まで働けることができれば、高齢者の健康もよりよくなるのではないかと思いますし、いろいろな意味で、高齢者向けの費用の効率化はできるのではないか。これをやはり少子化対策という形で大胆に振り向ける。こういうことなしには恐らくなかなか難しいと思います。私としては、その線に沿ってこれから年末までにいろいろ議論していきたいと思っております。
(問)今の質問に関連なのですが、やや細かくなるかもしれませんが、50年後に1億人というシナリオのイメージなのですが、2月に内閣府から出されたシミュレーションでは、2030年までに合計特殊出生率2.07まで上昇し、それ以降、同水準が維持されると2060年には9,894万人というシナリオが出ているのですが、この出生率のレベルをイメージされて目指していこうという話なのかということが1点。
 同じシミュレーションには、出生回復、移民受け入れケースというものが出ていて、移民を20万人ずつ受け入れたらもっと人口がふえるというシナリオが出ているのですが、これは今回の資料では落ちている。この会議としてはこういうシナリオは考えないのか。考えないとしたらなぜなのか。例えば政治家の方の御意向も配慮されたのか。その辺、移民受け入れのシナリオはどういうことになるのか。
(答)まず、1億人という数値目標の意味合いですが、1億人はきりがいいからということが1つあると思います。非常にわかりやすい。しかも、1億人を達成するのは非常に困難ではありますが、しかし、不可能ではない。今、言われたように出生率がすぐ上がれば、例えば2.07なのか、2.0なのか、その辺はありますけれども、すぐ上がれば何とか到達できるぎりぎりの線が1億人ということから、今回提示しました。目標とすることについては一部異論もありましたけれども、これは私としては、やはり国の目標としてはっきり定めることがみんなを動かすことに必要だと思いまして、1億人という目標をここで発表させていただいております。
 2番目の問題、移民については、全部資料が公開してありますように、確かに我々のシミュレーションの中では、一度、20万人を移民として受け入れた場合にはどういう労働力人口になるのだろうかをシミュレーションとして計算したことはありますけれども、例えばただ単に労働力の増加ということではなくて、社会的に与える影響も総合的に考えなければいけないという委員からの意見もありましたし、私自身も、例えば日本の人口減を移民でカバーしようとすると、大変な量の移民を入れないといけないという計算になります。そうしたことよりも何はともあれ、まず、日本の中で出生率を高めるということでこの問題をまず解決してみたいと考えております。
 しかし、外国人に関しましては、例えば高度技能労働者をたくさん使う。これは全世界で今、争奪戦になっておりますから、そういうことを進めることはぜひとも進めたいと思っておりますし、研修労働者等々の年限をのばす、あるいは一度経験した人については再度入国を認める等々のことも議論されておりますけれども、こういうものについても、私としては積極的に検討すべきだと思っております。つまり、移民問題とは独立した形で外国人労働者を積極的に活用することについては検討すべきだと思います。
 したがって、この中には移民の受け入れというのは具体的な数字では入れておりません。
(問)政治状況を考慮されたということはないのですか。
(答)政治状況というよりも、私どもの内容は、まず、委員会としての見解を出すことが先決でありまして、委員としての意見としてそういうことにまとまったということであります。
(問)今の質問に関連するのですけれども、そうしますと、1億人ということの前提に2030年までに出生率2.07程度回復というのは、いわば目標という形になるのでしょうか。
(答)2050年に出生率2.07ではとても1億人には到達しません。ですから、できるだけ早くこれはやらなければいけないということであります。私どものほうでは、今、言ったように、1億人ということをまず大事にして考えてみたいと思っております。したがって、出生率とダイレクトに結びついては考えておりません。しかし、当然1億人を維持するためにはどういう出生率でいかなければいけないかは今後の議論になると思います。
(問)違う質問ですが、社会保障制度の持続可能性について、この中では例えば医療とか、医療費の増大に歯どめをかける云々と書いてあるのですけれども、これから高齢者がふえる中でそれは非常に困難であることが予想されるのですが、社会保障制度の維持に関してどの程度議論が行われて、どういう立場であるかをもう一度お願いしたいのですが。
(答)これについては、まだ我々の結果を申し上げるのは時期尚早だと思っております。今も課題があるし、ここで少子化に対してさらに財源を持ってくることになると、さらに大きな議論が生じるでしょうから、今後、社会保障制度はけんけんがくがくの議論が必要だと認識しております。したがって、具体的な設計等々につきましては、これから年末までにかけて議論したいと思います。しかし、最終的には、私自身はこの大きな決断はやはり政治決断になるのではないかと思っております。我々としては、できるだけの検討はいたしますけれども、政治決断を必要とする内容だと思っております。
(問)かつて企画庁時代とか経済審議会で長期の経済計画とかが設計されていたと思うのですけれども、そういう意味で言うと、長期の経済のシミュレーションとか、課題の修正はかなり久しぶりの試みだと思うのですが、あえて今、こういうものに取り組む意義についてどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
(答)これは一番最初のこの会議の時に少しお話したと思いますけれども、本委員会に与えられた使命は、50年後の日本がどうあるべきだという命題だったわけです。これに対してどうアプローチしたらいいのか。こういうことで若干悩んだのですけれども、結局、50年後の状況、現在のベースをシミュレートして、それで持ってこようと思っても、例えば世界経済そのものが、アメリカが経済1位、中国がどうなのかみたいな話も含めて、あるいは地政学的なことも含めて、なかなか50年後の世界経済情勢をシミュレートすることは実はできないわけです。ただ、唯一確かなのは人口動態であります。恐らく50年後の人口動態についても、我々は何とかこれをより減少を緩めたものにしたいと思っておりますが、これについてはほとんど非常に正確にある範囲で想定することができるわけです。
 したがって、我々の結論は、人口動態という、これは誰でも予想が可能なある一定範囲にとどまる指標をベースとして、これが今のままいったらどういう日本になってしまうのか。いわゆるアズ・イット・イズ・プランというものをまずやって、その危機意識を持って、さて、その事態が生じないためにはどういうことをやったらいいのか。我々はそんな日本を選択するのではない、やはり我々はもう少し明るい未来を選択するのだということで、その概略を提示させていただいたということであります。
 したがって、バックキャストというアプローチを我々は使っているわけで、従来からの方法とは違います。ただ、私どもはやみくもに将来の状況を予想する、望ましい姿を予想するけれども、しかし、それが現実的に不可能な将来を予測してもしようがないわけで、そういう意味では、いろいろな指標を使って、これが本当に可能な領域なのかを後から検証することにいたしております。したがって、従来のやり方とは少しアプローチが違っていると思います。50年後となりますと、それでいいのだと思っています。
(問)中間取りまとめの内容を拝見すると、どうしても今後の人口減少に対する課題解決のアプローチの柱となっているのがイノベーションとか、女性活躍、地域のブランド化とか、どうしても既視感があるというか、この「選択する未来」委員会が目指すものが、何か今までの成長戦略とか骨太の方針の議論とどこが違うのかよくわからないので、その辺の御説明をいただきたい。
 あともう一つ、いわゆる国境措置的な移民とかで問題を解決しようというアプローチは全く後半はされないのかどうか。もしされないとしたら、先ほど三村さんのほうから社会的な影響がとあったのですけれども、もうちょっと具体的に判断に至った理由を教えていただきたいのですが。
(答)既視感があるというのはおっしゃるとおりです。ただ、我々としても、例えば成長戦略というのは我々が議論するのではなくて、基本的には、経済財政諮問会議及び競争力会議の議論を我々としては取り入れるということで、それと重なって並行的に議論するべき話ではないと思っています。
 ただ、我々の言いたいのは、日本は成長しなければいろいろな問題が起こってくる。例えば1つの議論として、人口が減るから、そうしたら全体の成長がとまっても、1人当たりの豊かさはむしろふえるのではないか。したがって、成長しなくてもいいのだという議論が一部あるわけです。しかし、我々はそれはとらない。成長がとまった途端に、逆に言えば、民間企業は国内に投資するのをやめ、外国企業は日本の国内に投資するのをやめ、したがって、それは成長率をさらに減退させることになる。
 いま一つ、大事なイノベーションの発揮についても、経済が下振れする中では新しいアイデアとか、いろいろな設備投資によるいろいろなイノベーションとか、そういうものを発揮しにくい。したがって、どうしても成長しなければいけない。このように思っております。それは従来と全く変わっておりません。
 しかし、成長するに当たって、厳然たる事実を見ていただきたいのですけれども、要素としては、国内の資本蓄積と労働力人口と、もう一つはトータル生産性と、この3つの要素で成長というものが決まってくるわけなのです。
 労働については、先ほど申し上げましたように、できるだけ減少はなだらかにしなければいけないけれども、これが増加するなどということは考えられないわけです。資本についても、恐らく資本蓄積については今、停滞していると思います。これを増加させることは絶対必要だと思いますし、そういうためには日本の成長戦略はやはりきちっとなされて、民間企業も日本の将来に対して確信を持たないと、これはなかなかできないということであります。
 そうなると、成長するという経済をつくり上げるためにどうしたらいいのかと言うと、やはり生産性の向上なのです。ドイツは日本と同じような出生率、あるいは人口減も同じようなことなのですけれども、ドイツの場合は生産性の向上で経済成長率を2%ぐらいにまで維持しているのです。そういう他の国の実例もあるということでありまして、既視感があるとおっしゃったけれども、やはりこれはオーソドックスに物事をアプローチしなければいけないと私は思っています。
 その意味では、イノベーションという言葉は使い古されて、余り使うのは嫌なのですけれども、しかし、厳然として、いろいろな意味でのイノベーションによる資本生産性、労働生産性の向上というものしか恐らく日本の成長率を高めるものはあり得ない。そういう意味では、規制緩和だとか、こういうものについては非常に期待しているわけであります。厳然たる事実としてこういうものについては直視しなければいけないと思っています。成長に奇手はないと思っております。
 もう一つ、移民については先ほどお答えしたとおりでありまして、それ以上でも以下でもありません。私どもとしては、私どもの委員の意見もそうですし、まだ日本全体として、移民については、これを是とするという合意はなされていないと思っております。まず、自らの出生率を高めることによってできるだけの努力をしてみる。これが2020年までにトレンドを変えることの中身でありまして、これで減少するカーブを少しでも上に向けられることが具体的な政策をとることによってできれば、我々としてはもう少し自信を持って将来に対していろいろワークしてみたいと思っております。
(問)国民が受け入れる土壌にまだないと。
(答)まだないと思います。委員の間でもそれはそういう意見が一致していない。まだ土壌にないと思っております。
(問)後半の議論もそれは落とすと。
(答)これは議論いたしません。委員の中でも議論があったのですが、私としては、移民とは独立した外国人の活用ということは議論するけれども、移民自体はここでは取り扱わないとお話いたしました。
(問)最初のお答えの中で、人口の1億人を目標とするところに一部、委員の方の中から異論があったというのはどういったことですか。
(答)議論の過程は申し上げません。全体としては、ほかのことだって議論はいろいろあるのです。しかし、委員会としてやはりこれを1つの目標として掲げようという結果になったわけですので、それをそのまま受け取っていただきたいと思っています。
(問)人口を1億程度保持するというところで打ち出されているかなめは、資源配分を出産、子育てのほうに倍増させるところにあると思います。これはOECD各国がとっているようなGDP比で、例えば日本は今、1%程度ですけれども、これを2%程度にするという意味でお使いなのでしょうか。
(答)いや、GDP比でやりますと、日本の税金、税収がOECD諸国に関しては非常に少ないのです。だから、GDP比というよりも、今、申し上げているのは、社会保障の使途の中で、高齢者向けのものと、少子化対策に向けている比率が他の国に比べて非常に少子化対策は少ない。したがって、このバランスを変えるということを申し上げているわけで、GDP比云々の話はここでは取り上げておりません。
 私としては、国民がこの意識を共有するところが非常に大事だと思いますので、是非とも悲観的にならずに、危機意識を共有する方向で取り扱っていただければ非常に幸いでございます。
 どうもありがとうございました。

(以上)