第3回記者会見要旨:令和8年 会議結果

城内内閣府特命担当大臣記者会見要旨

1.発言要旨

 それでは、冒頭1点、ご報告申し上げます。
 令和8年度経済財政諮問会議についてであります。
 本日、「特別セッション」を開催いたしまして、マサチューセッツ工科大学名誉教授のオリヴィエ・ブランシャール教授、そしてハーバード大学教授のケネス・ロゴフ教授、こちらのお2人の海外有識者にご参加いただきまして、国際的な視点から我が国の経済財政運営について議論を行いました。
 お2人は、経済学者として高名であるだけでなく、お2人ともIMFのチーフエコノミストを務められたご経験もございまして、高市内閣が進めます「責任ある積極財政」の在り方の議論においてふさわしい方々と考えております。
 ブランシャール教授からは、資料に沿って、財政運営について、経済の不確実性や債務残高対GDP比を踏まえつつ、モデル試算を活用し、年々の機械的調整を避け、信頼に足る中期の道筋を示すことが重要であるということ、そして、公共投資について、歳出と想定される歳入の関係性を透明化し、投資予算を別枠管理することが重要などのご説明がございました。
 また、ロゴフ教授からは、資料に沿って、補正予算への依存度低減は予見可能性を高めること、日本が強みを発揮できる分野への取組から着手することに対する評価などをいただいたところであります。
 また、お2人から、世界的に金利が高まり不安定化が進む中で、金利上昇に備えたリスク管理が大切などのご示唆もありました。
 その後、有識者のご説明を踏まえ、意見交換を行いました。本日の議論も踏まえまして、「責任ある積極財政」の具体化に向けた検討などを加速してまいりたいと考えております。
 なお、諮問会議の詳細につきましては、後ほど事務方から説明をすることになっておりますので、そちらでよろしくお願いいたします。

2.質疑応答

(問)今お話があったとおり、本日、海外の有識者お2人、ブランシャール、ロゴフ両氏から、高市早苗政権の掲げる危機管理・成長投資ですとか、新たな財政指標として導入を目指す政府債務残高対GDP比、あと、実施の検討を進める消費税減税のお話もあったかと思いますが、こういったことのお考えが示されました。これについてどう受け止められて、それぞれの政策にどのように反映していくおつもりか、お考えをお聞かせください。


(答)本日の経済財政諮問会議では、ブランシャール教授、ロゴフ教授から日本の経済財政運営につきまして、非常に貴重なご助言を賜って活発な議論を行うことができたと考えております。
 ご質問いただきました成長投資、債務残高対GDP比、そして消費税などについても重要なご示唆をいただいたということでありますが、いずれにしましても、本日の議論を踏まえまして、危機管理投資・成長投資の促進につきましては、高市内閣の成長戦略の肝として、世界共通の課題解決に資するような製品・サービス・インフラを開発し、国内外に提供することで、日本の成長につなげていく考えであります。
 また、その財政運営につきましては、「責任ある積極財政」の具体化に向けた検討を加速してまいります。
 そしてまた、社会保障国民会議において、ご案内のとおり、給付付き税額控除や食料品の消費税ゼロを含めた「社会保障と税の一体改革」について、当然、丁寧かつスピード感を持って議論が進められるよう、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。


(問)冒頭だけマスコミが入れたのですけれども、ロゴフ先生の発言で紙資料と違ったようなところが気になって、スタグフレーションのお話をされていましたけれども、世界的に成長率が低下して金利が上がってしまうということを相当ロゴフ先生はご心配されていたのか、その関連のやり取りで今お話しできることがあればお願いします。


(答)そういったご発言があったと承知していますが、いずれにしましても、金利等の話について、政府の立場でいろいろと影響がございますので、この場で私からお話しすることは差し控えさせていただきますが、今日のやり取りについては、これは記録をつくりますので、またそれをご覧になっていただければ幸いでございます。

3.堤内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 会議後の概要報告を始めます。
 今日は「特別セッション」ということで、ブランシャール教授から既に配付済みの資料1、ロゴフ教授から資料2のご説明を、資料の内容の話を聞いた上で意見交換を行いました。やり取りをご紹介します。それから、冒頭はカメラ入りだったので、私のところにはメモがありませんが、皆さんがお聞きになったとおりです。
 会議でプレゼンがあった後に、最初に総理から海外有識者に質問がありました。
 ロゴフ先生への質問ということで、高市政権としては、財政の持続可能性と必要な投資を含めた財政の機動性を両立させるための取組に着手している。その際、経済財政運営を行う我々政策当局者が財政の持続可能性に関するシグナルとしてあらかじめ留意しておくべき、マーケットが意識するメルクマールとは何だとお考えか。
 また、ブランシャール先生に質問させていただく。いろいろとご提案をいただいたが、ブランシャールさんの提案した取組を進める際に、マーケットの対話を通じ、市場関係者にその趣旨を正しく理解してもらうために気をつけるべき点があればアドバイスいただきたい、そういう問いです。
 次は、民間議員の質問です。
 ブランシャール先生にということで、最低限の目標として名目債務の伸びを名目GDPの伸びと同程度として複数年計画、中期のプライマリーバランス経路を重視する点につき伺う。財政状況が悪化していることが確認できたような場合、同時に民間部門の状況が厳しいことと重なることが多いと思う。その場合に備え市場の信認を維持するためにどのような経済財政運営のルールが望ましいと考えるか。
 ロゴフ教授への質問。金利が高い世界における日本への示唆として、債務残高対GDP比の低下に向けてプライマリーバランス赤字を徐々に均衡に近い水準に保つことが求められるとのご指摘。他方、先生がご指摘のとおり、日本は防衛関係の能力も一層重要性を増す状況となりつつある。こうした状況に対応し、金利上昇に備えるため、成長促進投資はもちろん国民の反発も予想される。既存の歳出の見直しも避けられない局面もあると思われる。各国での議論、取組、参考になる事例があったらご教示していただきたい。
 2人目の民間議員の質問です。
 ブランシャール先生へ、日本では補正予算への依存を減らしていくということであれば、自動安定化装置の役割がこれまで以上に重要になると考えられる。先生はこれまで消費税を自動安定化の仕組みの一部として活用する可能性についても論じておられる。こうした文脈において自動安定化装置の意義をどのようにお考えか。また、財政を考える際には、純債務で見るべきか総債務で見るべきかは大きな論点だと思うが、日本のような国では財政の持続可能性や信認を判断する上でどういった範囲でどういった指標を軸に据えるべきとお考えか。加えて、日銀の当座預金への利払いまで含めて統合政府として捉える見方もあるが、その考え方を強く取り過ぎると中央銀行の独立性との関係が曖昧になるとの向きもある。統合政府の見方はどこまで有効で、どこに限界があるとお考えか。
 ロゴフ教授への質問。日本では国債が金融システムに深く組み込まれているので、金利上昇は財政と金融の両面に影響することになる。ということは、他方で、平時から信認を確保できれば、危機対応や必要な投資に使える余力も確保しやすくなるように思う。こうした状況を踏まえて、日本が高金利時代になる中でも、危機対応や投資を強化し、潜在成長率を高める上で財政も含めてどのような取組を重視すべきだとお考えか。
 3人目の民間議員です。
 ブランシャール先生へということです。危機の引き金は市場がコントロールを失ったと受け止めたときで、そこに明確な境界線はないとの指摘は重要。市場の信認は政策当局の意図どおりに得られるものではない。そういった観点で債務残高対GDP比、プライマリーバランス、国債発行額など重要指標についてこれまでの取組や成果を後戻りさせず、トレンドの変化や不連続性を生じさせない積み重ねが重要と考える。こうした財政運営の履歴を積み重ねていくことの重要性についての見解はあるか。
 ブランシャール先生とロゴフ先生ともにということで、今は成長率が金利を上回る状況にあるが、今後その関係が変化していく可能性と不確実性に言及されている。このような転換期における経済財政運営について日本が10年後に振り返ったときに、これだけは注意すべきだったと言われないためにリスク管理の点で最も重要なことは何か。
 4人目の民間議員の質問です。
 ブランシャール先生へですけれども、投資の別枠についての話があったが、投資を通じたGDPの成長や税収増への寄与など定量的なインパクトを経済試算、つまり、教授の言葉で言えば、SDSAに取り込み、歳出・歳入を明示し、透明化させるという革新的なことに取り組む方向で日本政府が考えている、こうしたセパレート・インベストメント・アカウントの具体化についてどう考えるか。
 ロゴフ先生へ、ドル中心秩序は通貨・金融の仕組みにとどまらず、安全保障や海上秩序とも結びついてきた。その安定性が弱まるとすれば、日本のようにエネルギー輸入と海上輸送への依存度が大きい国にとって経済面でなく、安全保障面でも重要な含意を持つのではないか。日本にとって最大の脆弱性をどこに見ているか。また、どのような備えが必要とお考えか。
 今までの総理と民間議員の質問をまとめてということで、ブランシャール教授の回答です。
 投資家の説得についてというかたまりですけれども、投資家をどう説得するべきかという点について、投資家が懸念しているのは、事実上のコントロールが失われていくということ、コミットメントがないこと、それに対処するため、信頼できる複数年の計画を持つことが重要。そのためのツールとして説明でも申し上げたとおり、計画は進んでいく、成功するという認識を持たせられるようにするべき。また、その計画の評価は独立性を保った組織において行われることも重要。ただし、年々状況が変わっていく中、環境が変われば計画も変えるべき。毎年こういった作業を行う必要がある。ここは日本でできていないと思う。議論をオープンで、信頼に足る専門的、独立した形で行えば、投資家に受け入れられるだろうと考える。
 財政ルールについてです。財政ルールという話もあった。EU等の財政ルールの仕組みに携わった人間としては、次善の策であろうと思っていた。重要なことは、何をやるかより、オープンに話をするということ。機械的なルールは時にはコストが高くつくことを理解すること。政府はごまかすと思われてしまう。私は財政ルールがあまり好きではない。経済学者の間でも結論は出ていない問題である。
 補正予算について、追加的に必要になるということもある。毎年はできれば避けるべきだと思うが、いろいろな不確実性を勘案して統合的にもっと支出を必要なら組むべきである。
 債務について、このくらいの水準がよいといったレベルを示す数字はない。債務の水準で低いと見られているが、日本は年金制度と暗黙の負債が多くある。これは将来支払い義務があるという意味での負債です。そういう国としては、債務の数字は示しながら、SDSAを用いて特定の目的があればこれだけ伸びても構わないと伝えることが必要。政府、中央銀行の負債を統合するアプローチも有用だが、一つの数字にはならないと思う。
 次は、ビルトイン・スタビライザー、自動安定化装置の話です。
我々は既存のものを受け入れている。リセッションが起きると失業率は当然上がるわけであります。受入代金は下がっていく。これは、そう設計されたわけではなく、たまたまそうなってしまう。もちろんより良いやり方はあるのかもしれません。
 例えば、より有益なVAT、付加価値税を操作するとか、使えるような、方向性を持てるような政策は使うべきだと思っています。投資家にとっては、恐らく状況が良いときに設計されたものであるということですからこそ、債務が上がってしまったときにはなかなか難しい面があります。
 日本は構造調整をしなければならない。最優先の課題は構造調整だと思っております。単に、例えば1年、2年、VATを下げる、消費税を下げるということよりも、構造調整をまず進めるべきだろうと思っております。
 ロゴフ先生の回答です。
 まず、総理のマーケットが信頼を持たれなくなったときにどういうシグナルがあるかという問いについて、金利は明らかなシグナルだが、いまだに日本国債は世界の中では最も安全、資産の中では最も安全国債であるというふうに思われている。それは価値が高いということ。日本政府の債務レベルが高いので、信認を失うと痛みは大きくなるだろう。金利の1%上昇でも、国債に対して信用が失われたとすると、大きなことになる。私は長年危機を研究してきたけれども、残念ながら前倒しで市場はシグナルを教えてくれない。振り返ると、あれをやっていればよかったなということが多い。それは政府が情報を隠そうとしたり、あるいは市場から見えなくなるように情報を隠すからである。
 アメリカ、フランス、日本のような国にとって世界の金利が上昇するということは自分自身の国も痛みを伴う。しかし、必ずしもその国が間違ったことをやっているということではない。なので、少しリスクを取ってもいいと思う。それは日本政府もやるつもりだと思う。成長を活性化させる。今までと違った方向を取るということで日本は安定した業績を上げてきた。
 しかし、本来だったら過去30年、日本経済はよい業績を上げてこられたはずだ。投資家が何を見るかということが基本原則だが、ブランシャール先生が言ったとおり、やはりプライマリーバランス、それを回復するプランを持つということではないか。ちょっと反論があるとするならば、今から5年でやるよというのは、それでいいのでしょうかということにもなる。政治家が結局5年と言うと、それはプランがないということを意味するのではないか。
 今、プランがないから、誰かほかの人に心配してもらうみたいなふうに捉えられてしまうのではないか。世界はボラティリティーが上がっている。そのことを強調したいと思っている。ブランシャール教授は金利と成長率を比較するということをおっしゃったが、それが重要なのは、プライマリーバランスがゼロになったら債務がどうなるかということが分かるから。でも、ボラティリティーが高い世界に我々が住んでいて、成長率や金利だってすぐ変わるようなものである。金利はそれを抑圧して操作することも可能かもしれないが、簡単ではない。
 歳出について、つまりどこに投資するかについてはロボット分野が挙げられる。明らかに日本が卓越している分野で、ますます成長する分野だと思う。また軍事の研究も重要。アメリカのパトリオットミサイルを分解すると日本製の部品がたくさん入っていて、いまだにそういう製品がほかにもある。でも、それは需要がただあるからということではなく、イノベーションのきっかけになる。軍事支出は多くのイノベーションを牽引してきた。アメリカにおいてもそう。産業政策、アメリカにおいてあえてそれを刺激してきた。日本政府が今、イノベーションを牽引しようとしている施策はそれに代わるようなものである。
 最後にドルに関する質問への回答です。ドルの支配力が少しずつ弱体化してきている世界、日本の将来は、多くのことがそうであるように、どういう基準を導入するのか、インターネットとか電子部品とかを考えなければならないということと同じように、ドルの水準はどの辺が適正かということを考えなければいけないのだと思います。
 円は安全資産と思われていて、それを日本政府は享受している。日本のバンキングシステムを向上させる。これは有望分野。
 その後、時間が押したので、ブランシャール先生とロゴフ先生に引き続きそれぞれにまとめの発言を求めて、その発言です。
 ブランシャール先生の最後のまとめの発言。
 念頭に置いているのは、やはりワーカブルかどうかということ。日本政府が今、政策として提案していることと私がこれをやるべきだと提案したことの間にはあまり差がないと思うので、ぜひやってほしい、実行してほしい。一方で、やはり信用というものは独立性を持った組織から生まれる。投資家が信頼してくれるということ、どういう数字が出てくるのか、そのための制度、組織をつくるということが信頼を生むのだと思う。プラン、計画はお持ちだと思うので、お祝いを申し上げたいと思う。日本政府がやろうと思っていることをまずはやったらいい。
 ロゴフ先生です。
 日本政府はすばらしいアイデアを打ち出しているので、あとは実行することではないか。日本経済における高市総理の施策を称賛する。ただ、一つ申し上げるならば、中央銀行の独立性を確保することは大切。様々な不確実性のリスクがあるが、投資家に聞くと、アメリカの話ですが、FRBの独立性が保たれているかどうかのみを気にしている。日本も同様なのではないかとは思う。投資家がこれ以上に気にすることはないのではないか。投資家は総理が中央銀行の独立性を守る姿勢を見せたら安心するのではないか。
 最後、総理が2人に対してお礼を申し上げたところがあります。
 本日は、ブランシャール教授、ロゴフ教授のお二人をお迎えし、活発な議論をいただきました。特にロゴフ教授におかれては早朝にご参加いただき感謝しています。
 お二人からは、債務残高対GDP比の安定化が欠かせないこと、また、プライマリーバランスについて均衡させる期間で意見の違いはあったが、中期的に均衡させることが重要とのご意見を伺った。
 また、公的投資の予算は別枠管理していくことの重要性、独立した予測を出す財政機関に関するご提言、日本の強みを生かす分野への取組に着手することに対する評価、ドル中心の秩序からの変化の見通し、そして、2人が共通しているが、金利上昇のリスクに備えたリスク管理の重要性などなど、たくさんのご意見、ご示唆をいただいた。
 本日の議論を踏まえ、責任ある積極財政の具体化に向けた検討を加速したいと思います。先日10日の日本成長戦略会議でも申し上げたとおり、成長戦略と経済財政運営を一体で進める必要があり、経済財政諮問会議においてもその実現に向けた議論を深めていただきたいと思う。海外から本会合に参加し、貴重なご助言をいただいたお二人に改めて感謝申し上げる、というような内容でございました。