第13回記者会見要旨:令和7年 会議結果

城内内閣府特命担当大臣記者会見要旨

1.発言要旨

 経済財政諮問会議の概要についてご報告いたします。
 本日の経済財政諮問会議の議題が2つございまして、1つは「令和8年度予算編成の基本方針」の原案、そして「来年度予算に向けた課題」、この2つについて議論を行いました。
 「令和8年度予算編成の基本方針」につきましては、今後、与党との調整も踏まえ、次回の経済財政諮問会議において取りまとめたいと考えております。
 2つ目の議題であります「来年度予算に向けた課題」におきましては、民間議員の方から「来年度予算から『物価を映す予算』とし、反映状況を国民に分かりやすく示すべき」、「スタートアップからの公共調達拡大など、先端技術を開花させる取組を促進すべき」、「租税特別措置・補助金見直し担当室やEBPMの活用を通じて、歳出の質を向上させるべき」、「『社会保障改革元年』として、給付と負担のバランス確保、現役世代の負担軽減といった全世代型社会保障の構築を実現すべき」というご意見、更には「AI・半導体等の先行事例を参考にした官民の予見性を高める観点からの中長期の予算枠組みを構築すべき」、このような意見がございました。
 高市総理からは、「令和8年度予算編成は、『責任ある積極財政』の考え方の下、物価上昇を適切に反映するとともに、国民生活の下支えや経済成長に資すると期待される施策は大胆に重点化し、そうでない場合は見直すこと、また近年、大規模な補正予算が常態化している中、必要な予算は当初予算で措置することが重要であり、今後こうした予算の在り方についても議論を行っていくが、令和8年度予算編成でも予算全体のめりはりづけを行う中で、こうした取組を進めること」などの発言がございました。
 本日の経済財政諮問会議の詳細な中身につきましては、後ほど事務方からご説明させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

2.質疑応答

(問)今回の政府の基本方針案には、重要施策に予算や税制を重点化すると記されています。ただ、成長分野などへの重点投資、予算の重点配分というのは、過去いずれの政権でも少なからず取り組まれてきたことかと思います。ただ、それがどれだけの結果を残したのか、結果は必ずしも芳しいものと思えなかったと思います。
 高市政権では、「危機管理投資」・「成長投資」の成果を着実にあげ最大化するために、どのような工夫・取組をなさるお考えでしょうか。この成長分野への重点投資という枠、あるいはその建て付けの中で、高市政権ならではのカラーをどうお示しになるかお聞かせください。


(答)リスクや社会課題に対して、まずは先手を打って供給力を抜本的に強化する、そういった「危機管理投資」、これは現在のリスクを最小化し、未来への備えを行うことでありまして、これは当然、国民の安全、生活、そして雇用を守るための戦略的な支出であります。
 この世界共通の課題という需要に対しまして、その解決に資するより質の高い製品・サービス、あるいはインフラ、これを国内のみならず国外にも提供することができると、それは当然、更なる成長につながることになります。
 このように、新たな需要に着目して、同時に供給力、ものをつくる力、これを強化することで、経済成長を目指していくという点が、これまでの成長戦略と異なる点ではないかと思います。
 今月4日の日本成長戦略本部におきまして、17の各戦略分野の関係大臣に対しまして、例えば民間企業の投資の予見可能性向上につながる、複数年度にわたる予算措置のコミットメントなど、供給サイドに直接働きかける措置のみならず、官公庁による調達という形で、需要サイドからの政策支援を含め、総合的な対策を取りまとめること、そしてまた、日本成長戦略担当大臣であります私に対し、全体を取りまとめることについて、それぞれ総理から指示があったところです。
 17もたくさんあるのではないかと言いますけれども、ほかの分野は多分何百もあるのではないでしょうか。その中で17、戦略分野として絞って、今申し上げた総合的な対策を、需要サイドと供給サイド両方で取り組んでいくということであります。
 今月10日には日本成長戦略会議を開催し、民間有識者の方々にも参加いただきまして、総合経済対策に盛り込むべき重点施策、これを取りまとめるなど、スピード感を持って検討をスタートしたというふうに考えております。
 また、21日(金)ですけれども、閣議決定されました総合経済対策では、「危機管理投資」・「成長投資」による「強い経済」の実現のため、複数年度にわたる事業を推進することといたしまして、先ほど申しました17の戦略分野、これについて頭出しとなる予算を措置したところであります。
 いずれにしましても、成長戦略の策定、そして実行を通じて、経済の新たな成長を切り拓いて、国民各層の皆様に対して、体感温度としての経済成長あるいは経済回復の果実を実感していただけるよう取り組んでまいりたいと考えております。


(問)7-9月期の需給ギャップ、GDPに関する質問です。明日、経済産業省が公表される商業動態統計の小売を見ますと、ずっとこのところ前年比でプラスが続いているのですが、レクの解説で、数量ベースではやはり値上げが響いてちょっと弱いというようなヒアリングが、スーパー、飲食系からは多いらしいのですけれども、消費の実態について、大臣として今どうご覧になっているんでしょうか。スタグフレーションではないかと心配する方もいるのですけれども、ご見解をお伺いします。


(答)個人消費についてはご指摘のとおり、小売販売額は前年比で小幅な増加にとどまる一方で、雇用・所得環境が改善しておりまして、また、消費者マインドも持ち直している中において、外食売上高は緩やかに増加するなど、全体としては持ち直しの動きが見られると考えております。
 そしてまた、ご指摘のいわゆるスタグフレーションでありますが、これは物価上昇と景気停滞又は景気後退が同時に進行するものというふうに認識しておりますけれども、消費に持ち直しの動きが見られる中で、我が国の景気は緩やかな回復が続いており、先行きについても雇用あるいは所得環境の改善が、各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されておりまして、スタグフレーションということではないというふうに考えております。
 もっとも、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響につきましては、景気の下押しリスクになっておりまして、安定的な物価上昇と持続的な賃金上昇を両立させること、これが重要な課題だというふうに考えております。
 そのため、物価上昇を上回る賃上げの実現に向けまして、一時的ではなくて継続的に賃上げできる環境を整えることこそが政府の役割と考えております。
 いずれにしましても、「強い経済」実現に向けまして、日本成長戦略本部を立ち上げ、来年夏までには賃上げ環境整備に向けた戦略を含む成長戦略を策定することとなっておりますので、その中で施策を更に充実・強化することについて、具体的にこれから検討を進めてまいります。

3.堤内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 本日の経済財政諮問会議について概要をご報告します。
 今回の議題は2つです。まず1つ目が「令和8年度予算編成の基本方針」について、内閣府から資料1に沿って説明しました。続いて、「来年度予算に向けた課題」について、若田部議員から資料2、永濱議員から資料3のご説明がありました。その後、議題1と2まとめて意見交換を行いました。
 主な発言をご紹介いたします。
 1人目の民間議員です。
 予算改革について、今後、重点分野における官民連携での国内投資の拡大に当たり、単年度の事業の例外を設け、本予算の下で中期的な歳出フレームを設定することは、民間が予見可能性を持って投資を行うという点からも非常に重要。まず歳出面の重点化と効率化に取り組み、かつ歳入面でも物価や賃金の状況を踏まえた科学的・客観的な分析に基づく歳入の見積りを提示する必要がある。こうして歳出・歳入両面で規律ある財政運営を継続的に発信していくことが重要。
 今回提案した予算改革を通じて、「責任ある積極財政」の下で債務残高対GDP比の引下げを実現し、財政の持続性を確保し、市場からの信認を維持し続けることが肝要。
 次に、非社会保障歳出の重点化について、高市内閣に必要なことは供給力の強化。供給力の強化は潜在成長率の引上げに資するものであり、1つは資本投入の増大、もう一つは労働生産性の向上、これらが鍵を握る。
 1つ目の資本投入については、官民連携での国内投資の拡大が最重要課題。国による環境整備が行われること、経営者がマインドセットを確固として設備投資、研究開発投資、人的投資に積極的に取り組むこと、これらを両輪で進めていかなければならない。政府には、戦略17分野の重点投資とともに、企業経営者が中長期視点で自律的に成長投資に取り組むことが市場で評価されるようなコーポレートガバナンス改革にも取り組んでいただきたい。
 次に、労働生産性の向上について、高市内閣が実現するマクロ政策とともに、円滑な労働移動の推進・定着に資するミクロベースでの企業の取組や関連制度の改正も重要。政府には、労働移動促進型の雇用セーフティネットへの移行とマッチング機能の強化、働き方や職業選択に中立的な税制の構築、リ・スキリングを促すリカレント教育支援の拡充に注力してもらいたい。
 2人目の民間議員です。
 「物価を映す予算」への転換に際して、名目予算額の膨張に対して懸念が出てくる可能性もあるところ、予算にかかる物価要因の見える化が重要。例えば債務残高対GDP比の関係のように、予算額を名目GDP比で表すことや予算額をデフレートとして実質化した形で示す方法も考えられる。
 予算編成において、現在は税収見積りは過少、利払い費は過大になっている傾向。補正予算で継続的に計上されている経費を当初予算に計上していくことを考えるのであれば、税収見積りや利払い費の精度を向上することが必要。財政運営の点検に際して格付機関が注目している利払い費対GDP比に着目することも重要。利払い費について米国では月次でデータが把握できるようになっているが、日本は年次データのみ。月次・四半期データも公表されるべき。
 危機管理投資・成長投資について、サナエノミクスは、米国のイエレン氏が提唱したモダン・サプライサイド・エコノミクスなど、世界の経済政策の潮流に沿ったもの。経産省において2021年頃から新機軸部会を開いて検討してきた内容と似ており、今後、経産省と連携していくのもよいのではないか。
 3人目の民間議員です。
 「強い経済」にはイノベーションが必要。私たちの生活に大きな影響を与えたイノベーションは、ほぼスタートアップから起こっており、それは必然。創業と廃業のダイナミズムが必要。同じ100万ドルを投下しても、スタートアップに投下したほうが9倍効果があるというリサーチもある。
 17分野の成長戦略と6つの国家戦略技術分野を掲げてもらっているが、それぞれの分野にスタートアップを入れてぜひ優遇してほしい。例えば公共調達は政府次第でできること。経産省の調査によると、日本のGDPに占めるスタートアップ創出の比率が1.85%。政府調達におけるスタートアップ比率の目標は3%だが、現在は1.4%。強い意志で取り組んでほしい。補助金はありがたいが、スタートアップは市場に育てられるもの。政府に市場として育成してほしい。
 スタートアップ・エコシステムについて、エンジェル投資やディープテック分野で資金量が足りていない。アメリカのエンジェル税制では、投資額の10倍を上限に売却時のキャピタルゲインが控除される。英国でもすばらしい制度が導入された。日本は欧米に比べて遅れているので、追い越せるように制度面からも支援してほしい。学生からも、北米の研究者と自分たち日本の研究者のギャップがあると聞いている。
 一方でよい面もあり、日本の技術シーズのグローバル展開を支援したいという海外の投資家も現れてきている。教育について、日本の資産は人材と総理も言っている。グローバル人材を率いる人材がいないので、短期的には留学の増加、中長期的には教育改革も行わなければならない。
 財政については、補助金見直しやEBPMなど、量・質を見直す取組を進めてほしい。政府には規律ある財政運営に努め、市場の信認に基づいてマクロ経済政策を進めてほしい。
 4人目の民間議員です。
 今回の補正予算について、規模は適切で、内容についても家計への支援が十分なものであり、配慮されておりよい。コミュニケーションについても債務残高対GDP比が下がる姿が示されており、その点もよかった。ただし、税収見通しが過去最高となるなど、実際には今後の実績値とずれが生じるのではないか。今後示される中長期試算などでも税収弾性値についてはよく点検していきたい。
 本予算の編成において、「租税特別措置・補助金見直し担当室」による総点検はサナエノミクスの重要なパート。その点検に当たっては、投資を殺さないことが大事。無駄をカットする方針は大事だが、かつての事業仕分けのようなメディアサーカスはやめてほしい。
 「責任ある積極財政」に関連し、批判は謙虚に受け止めなくてはならない。今言われている批判は大きく分けて3つ。1つ目、ばらまきではないかという批判。これに対しては、債務残高対GDP比が安定的に低下する姿が示されていることから、ばらまき批判は当たらないと考える。また、投資の質を見ることは重要であり、真に必要な投資に限定していくことが重要。2つ目、これまでの歳出と今回は一体何が違うのかという批判がある。これに対しては、成長力を伸ばし供給力を強化する分野へは支出しつつ、効果の低い事業についてはやめるなど、新陳代謝を意識していただきたい。3つ目、人手不足の状況の中、投資の効果は本当に発現するのか、供給制約があるのではないかという批判。これに対しては、確かに需要だけが増えると物価を押し上げることになるが、労働力人口は毎年微増しているのが現状。そうした中では、スタートアップやリ・スキリング、女性や高齢者の就労支援など、供給力を引き上げ、成長力を増していくことが重要。
 続いて、閣僚からの発言です。
 片山財務大臣です。
 財政制度審議会においては、「令和8年度予算の編成等に関する建議」に向けた審議が進められている。
 資料の説明になるが、1ページの総論において、人口減少・供給制約の下、持続的な経済成長を実現するためには、イノベーション、資本、労働を強化し、供給力の強化に取り組み、「強い経済」を構築することが重要。また、戦略的な財政運営を行うと同時に、財政に対する市場からの信認を確実なものとすることが重要。今後の想定外の有事に備えるためにも、債務残高対GDP比を安定的に引き下げ、財政余力を確保することが重要などのご指摘がなされる方向。
 2ページ目の各論においても、特に社会保障については、保険料負担の抑制努力の継続と経済・物価動向等への的確な対応を両立させる必要がある。診療報酬改定では、経営の改善や処遇改善につながる的確な対応を行いつつ、保険料負担軽減のため診療処分や調剤報酬の適正化、医療保険制度改革を進めることが不可欠などのご指摘がなされる方向。
 加えて、民間議員のご提言についても併せてコメントする。
 まず、「社会保障改革元年」にふさわしい予算になるよう、給付と負担のバランス確保、現役世代の負担軽減といった課題に厚生労働大臣とともに取り組んでいく。また、投資の予見可能性を高めるための中長期的なフレームについて、AI・半導体等の先行事例を参考にしながら、今後、新たな財源確保の枠組みを検討し、市場からの信認を確保していく。
 租税特別措置、補助金、基金については、これまでも適正化の観点から点検・見直しを行ってきたところだが、こうした取組は総論賛成、各論反対になりがち。効果的な取組を行うためには、要求官庁にご尽力いただき、要求段階から効果検証を進めていくことや民間議員からご指摘いただいた経済・財政一体改革推進委員会の取組、行政事業レビュー等の既存の取組も活用していくことが重要。先日発足した「租税特別措置・補助金見直し担当室」において関係府省と連携して、全力でご指摘を踏まえて取り組んでいく。
 林総務大臣です。
 総務省においては、地方自治体が、防災・減災対策やDX・GXの推進、こども・子育て政策の強化等、重要政策に取り組み、持続可能で活力ある地域社会を実現できるよう、これまでもしっかりと地方財政措置を講じてきたところ。引き続き地方自治体がこうした重要課題に的確に対応できるよう取り組んでまいる。
 赤澤経済産業大臣です。
 「強い経済」の実現のためには、日本経済の供給構造を危機管理投資・成長投資によって強化し、日本企業の稼ぐ力を高め、物価上昇を上回る賃上げ実現につなげることが重要。
 危機管理投資・成長投資については、先日閣議決定された総合経済対策において、民間企業による投資を引き出すべく、複数年度の予算措置を用いることや税制を含む財政支出の将来の増減収効果を織り込む分析を導入することとされている。
 経済産業省としては、AI・半導体やGXに続き、「新技術立国・競争力強化」の担当大臣として、造船、量子、重要鉱物など、経済安全保障上重要な分野における危機管理投資に関する新たな財源確保の枠組みについても検討に着手する。その上で、現在要求中の研究開発税制の強化、大胆な設備投資促進税制の創設なども通じて官民の積極的な投資を引き出していく。
 さらに、成長投資を通じて中長期的な企業価値を高めるための方針を取りまとめるとともに、先端技術の支援や社会実装の担い手であるスタートアップ支援に取り組み、稼ぐ力を強化していく。その上で、現状維持ではなく、稼ぐ力強化と賃上げの好循環を実現していくために、官公需も含めた価格転嫁・取引適正化を徹底するとともに、労働供給制約社会の中堅・中小企業の稼ぐ力強化戦略の検討に着手する。
 民間議員からご指摘のあった新機軸部会は大事なものなので、しっかり取り組みたい。張り切って挑戦する人が報われる経済構造への転換が重要。賃上げをしても可処分所得が増えない、あるいは、稼ぐ力を強化しても収益が圧迫されることがないよう、社会保障改革についても中小企業を所管する経産大臣として努力していきたい。
 先般閣議決定された総合経済対策を着実に実行しながら、日本を新たな成長型経済へと移行させることを通じ、「強い経済」を実現させていく。
 最後に、総理から締めくくりのご発言がありましたが、皆様にお聞きいただいたとおりですので、割愛いたします。