第9回記者会見要旨:令和7年 会議結果

赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨

1.発言要旨

 経済財政諮問会議の概要についてご報告を申し上げます。本日付けで、経済財政諮問会議の有識者議員として、筒井議員が就任されました。今回初めてご参加いただいたわけでございます。前任の十倉議員には、4年2か月にわたり議員を務めていただきました。積極的なご提言を数々いただいたことに心から感謝を申し上げる次第でございます。
 本日の議題は2つで、「今後の検討課題」、そして「予算の全体像に向けて」ということで、その2つについて議論を行いました。
 1つ目の議題についてでありますが、「今後の検討課題」では、民間議員から「米国の関税措置に関する日米協議では粘り強い交渉の結果、合意に至ったことを評価する」、「今回の合意内容に含まれる日米が共に利益を得られる強靱なサプライチェーンの構築に向けた連携を通じ、経済安全保障上の自律性と不可欠性を高め、日本経済の新たな成長の源となるように取り組むべし」と、それからもう一つ、「持続的・安定的な物価上昇の下、経済全体で1%程度の実質賃金上昇を定着させるため、賃上げ政策、地方創生2.0の推進、GX・DXやイノベーションの推進、労働市場改革など、骨太方針2025で決定した重要な取組を総合的に推進すべし」などのご提案がありました。
 2つ目の議題「予算の全体像に向けて」では、民間議員から「国債の需給悪化等による長期金利の急上昇を招くことのないように、潜在成長率の引上げに重点を置いた政策運営を行うとともに、歳出・歳入両面の改革を継続し、我が国の経済財政に対する市場からの信認を確実なものとすべき」ということであります。
 「経済あっての財政」ということで、マクロ経済政策の選択肢を狭めてはならないけれども、財政規律もしっかり追求していくということでございます。
 それから、「令和8年度予算は、骨太方針2025に沿ってメリハリの利いた編成を行い、成長型経済の実現に着実に結びつく中身とすべし」と、「諮問会議で決定した『進捗管理・点検・評価表』及び『EBPMアクションプラン』の活用等を通じ、PDCAを強化し、ワイズスペンディングを徹底すべし」などのご提案がございました。
 石破総理からは、「今回の合意が我が国の経済安全保障の確保、そして2040年の名目GDP1,000兆円の実現を含め、今後の日本経済が飛躍する新たな礎となるよう、私とトランプ大統領との間でその実現に全力を尽くす」、それから「変化する国際市場に対応して我が国が取るべき中長期的な戦略について、今回の合意を活用して我が国の国益を最大化するという観点から、諮問会議で精力的に議論していく」、「令和8年度予算は、物価上昇を上回る賃金上昇の普及・定着、地方創生2.0の推進など、重要政策課題に必要な予算を講ずるとともに、歳出改革努力を継続し、メリハリの効いた編成を行う。そして、その際、物価上昇に合わせた公的制度の点検・見直しを踏まえ、経済物価動向等を適切に反映する」などのご発言がございました。
 諮問会議の詳細については、後ほど事務方から説明させていただきます。

2.質疑応答

(問)2つございまして、日米合意の車の関税の15%までの引下げの時期について、これをはっきりしてほしいという声、業界、野党いろいろあると思いますが、現時点で言える範囲でお願いします。
 2つ目は、5,500億ドルの投融資計画で、JBIC(国際協力銀行)など日本の政策金融機関が使われるということですが、JBICなどの経営安定に影響は出ないのか懸念する声も出ていると思います。この辺のご説明をお願いいたします。


(答)まず今後重要なのは、日米双方が合意の着実な履行に努めることです。相手に求めるものが実現するなら自分はこうするというのをお互いに負っていますので、双方が合意の着実な履行に努めることが大事であります。特に米側の関税引下げのために必要なのは、大統領令の発出など、米側の国内措置ということであります。
 したがって、まずは米側に対し、こうした措置が速やかに取られるよう求めていくことが重要であり、既に米側に働きかけを行っているところであります。今後とも、我が国として米側としっかり意思疎通を続け、米側に必要な措置を取るよう求めてまいりたいというふうに思っております。
 それから、米国との間では、米国への投資を通じて医薬品や半導体等、経済安全保障上重要な分野について日米が利益を得られる強靱なサプライチェーン、これを米国内に構築していくために、JBIC、NEXI(日本貿易保険)といった政府系金融機関が、最大5,500億ドル規模の出資、融資、融資保証を提供可能にすることで合意しております。
 お尋ねの国際協力銀行は、ご案内のとおり出融資の業務に当たり、法律の求めに従って十分な審査を行っていると承知しております。申し上げられることは以上でございます。


(問)最低賃金の関係でお伺いいたします。現在、厚生労働省の中央審議会で、公労使による議論が行われています。賃金向上担当大臣として、政府目標の実現に向けた引上げを求める要請など、何らかの働きかけを行う予定はありますでしょうか。また、政府目標の実現に向けてどのような目安額を期待していますか。


(答)「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」において、最低賃金については「2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向け、たゆまぬ努力を継続する」、「法定3要素のデータに基づき、中央最低賃金審議会において議論いただく」としているところであります。
 私は本年1月の経済演説において、地元鳥取県の若者やシングルマザーの方々からの差し迫った要望をご紹介した上で、本当に暮らしていけるようにしてくださいと手を握って言われたんですよ。そうしたことがあるので、最低賃金が低い多くの地域はもとより、全都道府県の水準を引き上げ、全ての働く国民の皆様が明日の心配のない生活を営めるようにしたいということを申し上げました。
 EU指令においては、賃金の中央値の60%や平均値の50%が相対的貧困の基準になっておりまして、最低賃金設定に当たっての参考指標として加盟国に示されております。これに対し、各国で最低賃金の適用対象は異なるため、単純比較は困難とはいえ、我が国の直近の水準は、中央値の47%、平均値の41%となっているものと認識しております。
 昨年の最低賃金の審議時以降も物価上昇は継続しています。例えば「持ち家の帰属家賃を除く総合」は、2023年10月から2024年6月まで平均3.2%、今年の同期間では平均3.9%ということを踏まえると、働く人々が安心して暮らすことができるよう、昨年度を上回る水準の引上げが必要と考えております。
 加えて、相対的に最低賃金の高い都市部においても、最低賃金近傍で働く人々の暮らしが苦しい現状を踏まえて、都市部における最低賃金の引上げについても力を入れること、また、人手不足の中で、最低賃金の高い地域に労働力が流出していくことを勘案し、地域間格差の縮小を図ることも重要だと考えております。
 中央最低賃金審議会において閣議決定にご配意いただき、真摯な議論が行われて、良い結論が出ることを期待したいと考えております。


(問)今の関連ですけれども、今のご質問の後段にあった、大臣としてはこの程度の水準は必要だと。今、昨年を上回るとおっしゃられましたけれども、単純平均だと5年で1,500円にするにはあとどれくらい必要かということもありますが、そういう水準はやはり目標にすべきなのかというあたりについて、お考えがあれば教えてください。
 あともう一点、物価高対策は、今日の諮問会議でも言及されていましたけれども、与党が選挙で掲げられた給付金について、現時点でどのようにお考えかお聞かせください。


(答)まず、最低賃金についていえば、今、中央審議会でご審議いただいているところなので、私の立場で何かこの額であるべしというようなことを申し上げることは差し控えたいというふうに思います。しっかり法令にのっとって3者間で協議していただいて、いい結論を出していただきたいというのが現時点で私が申し上げられること、あるいは申し上げたいと思うことであります。
 その上で給付金については、それを含めた足元の物価高対策について、石破総理が7月21日の記者会見で、「成長への投資を加速し、賃上げを進めていくことがまず基本だ」と。そして、「物価上昇を上回る賃上げが実現できるまでの間の対応として、今回の選挙戦での議論を踏まえ、財政に対する責任も考えながら、党派を超えた協議を呼びかけ、結論を得たい」というふうに述べられたというふうに承知しております。
 私としてはこうした点を踏まえ、検討を進めてまいりたいと思っておりまして、本日の諮問会議では、民間議員から、今後議論すべき課題として、「物価上昇を上回る賃上げが実現できるまでの間の物価高対応」が提案されております。また、「物価高対策は、その必要性や効果を十分に検討すべき」とのご指摘もいただいておりまして、「給付金を行う場合には、給付対象を物価高の影響が強い低所得者層に絞るべき」とのご意見もいただいたところでございます。
 今後、こうしたご提案やご意見も踏まえ、諮問会議においても必要となる物価高対策について議論してまいりたいと考えてございます。


(問)今後の経済財政諮問会議の重点課題についてお伺いします。今日の民間議員のペーパーでも、持続可能な全世代型社会保障制度の構築の中で、OTC類似薬の給付見直しが例示に挙げられているかと思います。維新の会との3党合意もありますし、今回の参院選でも他党が公約に掲げていたような案件なのですけれども、今回このOTC類似薬の給付見直しに関して、政府としての重点、重要性というか優先度はどの程度なのかお聞かせください。


(答)ご案内のとおり、私は全世代型社会保障構築担当でございますが、数百項目に及ぶような改革工程をつくり、それについて進捗管理をしながら取り組んでいるところでありまして、そういった全体の議論とのバランスも考えながら、そしてまた、この諮問会議でご議論いただく内容も踏まえながら、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。


(問)諮問会議からは離れるのですけれども、先ほど自民党の両院議員懇談会がありまして、その中でどのようなご意見が出て、それを石破総理の側近でもある大臣がどのように止められたのか、また、その中で大臣ご自身もどのような発言をされたのか、よろしくお願いします。


(答)これについては、私はこの場に閣僚として立たせていただいておりますので、党所属議員でありますので、会議には出席いたしましたが、その内容について触れることは差し控えたいと思います。

3.堤内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 令和7年第9回経済財政諮問会議です。
 今回の議題は2つです。議題1は「今後の検討課題」です。筒井議員から資料1に基づき民間議員からの提案をご説明いただいた後、意見交換を行いました。議題2は「予算の全体像に向けて」です。内閣府から資料3を説明し、柳川議員から資料4に基づき民間議員からの提案をご説明いただいた後、意見交換を行いました。
 それぞれの議題について主な意見をご紹介します。
 1つ目の議題です。
 1人目の民間議員です。
 日本経済はかなり大きな転換期に入っており、物価高や景気対策という声が上がっているが、大きな変化の中で、どういう方向性を経済として持っていくのか。中長期の視点というのは経済財政諮問会議の検討課題として非常に重要。ポイントは、世界経済が新たな緊張の時代に入る中で、日本経済がどうやっていくのか。日本経済自身も中長期的な大きな成長経路にどうやって乗せていくか。
 日米協議で合意に至ったことは非常に評価する。経済安全保障上重要な9つの分野での投資というものを、単に交渉の結果として捉えるのではなく、前向きに日本経済の成長にどういう形で具体的に生かしていくかというところが、我々として検討すべきポイントの一つではないかと考えている。
 民間議員からの意見として、諮問会議で議論すべき重点課題をまとめている。その中でも、新たな国際秩序への対応について、国際秩序の変化を踏まえた我が国の中長期的な戦略を立てることが重要と考えている。貿易構造の多角化やサプライチェーンの強靱化、将来に向けたエネルギー事業構造の転換は、今日明日にできるものではないが、今やらなければ、日本が世界から後れを取る、喫緊の課題でもある。これを実現するためには、成長型経済への実現ということで、省力化投資の促進や労働市場改革をしっかりやって、一人一人がよりよい形で働いて、よい形で豊かになっていくこと。実現に向けたプランをつくっていき、賃金を上げて、成長経済を実現させていくことが重要。
 もう一つのポイントは、財政健全化目標を達成していく、財政の信認を確保していくこと。マーケットの信頼を失うことが、今、日本経済にとって大きなリスク。しっかりと日本が財政健全化の道筋を実現させていけることを見せていくことが何よりも重要。それにより、金利の急上昇を避けることが大事。
 その点では、持続可能な全世代型社会保障制度の構築は待ったなしの課題。応能負担の徹底、ワイズスペンディングの徹底、データ連携などのDX活用などをしなければ、日本の社会保障は持続性がなくなってしまう。その結果として財政の信認を失うことは絶対避けなければいけない。
 災害や有事での財政支出の可能性に対して余力を残していくためにも、財政健全化目標と整合的な財政運営というのは重要。
 2人目の民間議員です。
 日米協議により関税が15%となったことは大きい。25%と15%では全然違う。CPIを超える賃上げのノルムをつくっていくことが大事だが、企業としても15%であれば賃金を上げる余力ができる。改めて政府関係者のご努力に感謝申し上げる。
 一方で、引き続き労働分配率が上がらない。1人当たりの所得は1995年から2024年の間でむしろ下がっており、賃金を上げる仕組みをつくっていく必要がある。人が減少していく令和の時代において、人的投資を行っていくとともに、実質賃金の関連指標を用いてPDCAを通じて進捗を確認していくべき。
 社会保障については、必要な際には低所得者層には現金給付などを行うことも必要だが、給付に当たってはマイナンバーを活用していくべき。また、OTC、セルフメディケーションなどを利用して現役世代の負担軽減を行うべき。加えて、マイナンバーによる所得把握を通じた応能負担の原則が大事。年金制度についても議論を行い、現役世代の将来の安心を確保していくことも必要。
 労働市場については、人口減少の中で人への投資としてリカレント教育なども充実させるとともに、賃金が上昇する成長産業への労働移動を起こすことも大事。働き方改革の成果もあり、働き控えもあると聞いているが、働き方改革で実質賃金が上がる仕組みにすることが大事。何事もバランスであるが、外国人との共生も大事。いずれにしても、エッセンシャルワーカーの賃上げ、そして、早期に最低賃金の1,500円以上の実現をお願いしたい。
 国内投資については、米国との関税交渉を踏まえて、米国に投資することはよいが、日本への国内投資も進めるべき。日本企業の余剰資金350兆円はある。もっと日本に投資できると考えている。よく言われることだが、富士山から八ヶ岳にしていかなければならない。自動車産業の一本足打法はリスクであるので、ほかの産業にもしっかりと投資していくべき。
 イノベーションを通じてエッセンシャルワーカー、例えば介護、医療におけるロボットやアシストスーツの活用などで労働力不足に対応すべきであり、関連の税制優遇なども推進すべき。このほか、エネルギーについては地産地消なども大事。
 最後に、財政についてはペイ・アズ・ユー・ゴー原則を守るべき。最近の長期金利の上昇は市場からのメッセージ。
 3人目の民間議員です。
 前回の諮問会議から今日に至るまで、参院選、関税交渉など大きな出来事があった。選挙結果は与党には残念な結果であったが、少数与党は世界を見渡しても避けられない情勢。政治空白のコストは国民が払うことになるので、脱デフレの最も重要な局面にあることに鑑み、国民の予見可能性を高める政治を引き続きお願いしたい。
 関税交渉については、関係各位のご尽力に敬意を表する。交渉の成果については、日経平均株価が一時4万2000円台に近づくまで大きく上がるなど、株式市場は高く評価している。市場関係者は25%になるのではないかと半ば諦めていたが、相当よくなった。今後もこの状態を維持・継続できるか、よりよい条件に変わっていかないか、日本の国益に資するように引き続き頑張ってほしい。
 資料1に記載した今後の検討課題は全て大事であるが、最も強調したいことは、働きに見合う報酬制度の徹底、物価高に負けない賃金上昇。物価高による生活へのネガティブな影響をどう排除するか。消費減税を行うのであれば、どの財源から対策を行うかはっきりさせることが重要。給付金は物価高の影響を特に受ける低所得者層にターゲットを絞るべき。マイナンバーを活用して、本当に困っている人がどこにいるのかを適切に分かる措置が必要であり、そのためにはデータ基盤の構築が何より大事。こうした取組が市場からの信認にも資することになるので、ぜひともお願いしたい。
 4人目の民間議員です。
 先月、閣議決定した骨太方針の各種施策について具体化の道筋をしっかり描くことが不可欠。この観点から2点申し上げる。
 第1に、成長と分配の好循環は緒に就き始めており、着実な実現が必要。政府は潜在成長力の引上げ、生産性の向上につながるGX・DXなどの官民連携による国内投資の拡大、円滑な労働移動の推進による労働市場改革の実行など、日本経済の構造的な課題の解決に取り組むことが不可欠。
 政府が掲げる1%程度の実質賃金上昇の定着に向け、生産性向上を通じた賃金引上げ原資の安定的な確保を図るとともに、政府、日銀が目標とする2%程度の持続的・安定的な物価上昇を実現できるよう経済運営に取り組んでいただきたい。
 先般、米国の関税措置をめぐって日米間の合意がなされた。高く評価するが、関税の影響はもちろん軽視すべきでなく、自動車をはじめ、国内産業や中小企業層のサプライチェーンに対して必要な措置を速やかに講じるべき。
 第2に、健全な経済財政運営について、今回の選挙結果を受けて市場では歳出拡大圧力がより一層強まるのではないかという懸念がある。足元の物価高対策や社会保障の見直しを検討する際は、給付面だけに偏ることなく、各施策の負担面や財源の在り方を併せて示すことで持続可能な経済財政運営に取り組んでいる姿勢を明確にすべき。
 次に閣僚からの発言です。
 加藤財務大臣です。
 民間議員からのご指摘があったとおり、米国の関税措置に関する日米協議についての合意内容を踏まえ、我が国経済、産業や雇用に与える影響を丁寧に分析した上で、それを踏まえた対応を検討していくことが重要。また、物価上昇を上回る賃上げが実現できるまでの間の必要な対応を引き続き講じていく。
 他方、足元では様々な要因を背景として長期金利が上昇傾向にあり、市場参加者の間では今後の我が国の財政運営に対する懸念が金融市場の動きに反映されているのではないかとの指摘もあると承知している。こうした中、今後の経済財政運営に当たっては、我が国財政に対する市場からの信認を失わないことが重要であり、力強く経済再生を進める中で財政健全化にも取り組み、経済再生と財政健全化の両立を図っていく。
 2つ目の議題です。
 1人目の民間議員です。
 成長志向の予算編成、メリハリの効いた予算配分の実行の2点について申し上げる。いずれも成長と分配の好循環の実現を図る上で重視すべき点。
 第1に、成長志向の予算編成に向けて国内の供給力強化、生産性向上、イノベーションの推進に重点的に取り組むことが重要。これらは、日本経済の抱える構造的な課題である潜在成長力の引上げの対応に直接つながる施策。そのためには、省力化投資の促進をはじめ、DXを幅広く社会実装させることで労働供給制約の克服に取り組むとともに、産業競争力を左右する基礎研究力の強化に向けて科研費を増額し、政府の投資を呼び水として官民連携による国内投資の拡大を図ることが極めて重要。
 第2に、メリハリの効いた予算配分の実行について、我が国の財政に対する市場の見方がより一層厳しさを増している。財源の裏づけのない歳出拡大は厳に慎むべきであり、財政規律の維持が不可欠。各分野における歳出改革努力を継続し、ワイズスペンディングを徹底することが不可欠。特に骨太方針においては歳出の目安に関して経済・物価動向を適切に反映することとしている。社会保障分野では処遇改善等に向けた公定価格の引上げが焦点の一つになっているが、社会保障制度の財源の多くは保険料や公費で賄っている。今後の具体化に当たっては、国民負担の軽減を重視しつつ、一方で給付の適正化、効率的な提供体制の確保につながる歳出改革と併せた実行力を担保すべき。
 2人目の民間議員です。
 骨太2025を総合的に推進していくことが何より大事であり、どう具体化、実現していくかが肝要。その上で3点重要な点を申し上げる。
 1点目、賃金上昇のモメンタムを壊さないこと。長期金利の急騰は懸念事項だが、金利が上昇すること自体は自然であり、今後も継続して上がっていくものと考える。金利が適切に上がることを是とするためにも、賃金がその分きちんと上昇していくことが大事。特に中小企業の賃金をどう上げるか具体策が必要。
 2点目はGX。成長型経済への移行のため日本の勝ち筋をはっきり示す必要がある。GXというと毎回お決まりの項目が並べられている印象だが、日本は本当に強い点を具体化し、実感を持って見ていくべき。官民連携での資金投下ができる仕組みの整備に加え、より具体的な項目を示していただきたい。
 3点目、財政のバランスについて。マーケットの信認が決して揺るがないよう日本の財政のバランスを取っていただくことが重要。教育無償化や所得税の基礎控除の特例措置など、決まったことについても聖域なく見直していくと同時に、方針が決まったものについては財源をどう持ってくるか検討していただきたい。安定財源があってこその財政のバランスである。これから、世界中、アメリカも欧州の財政が緩和していく中、日本も同じだと思われないようきちんと対応していただきたい。
 3人目の民間議員です。
 財政について申し上げる。プライマリーバランス目標は単年度で達成するという目標に関して、構造的な問題は単年度では解決できない。予算編成については、単年度でなく、複数年度で見てもよいのではないか。令和の時代では、単年度では解決できない問題も増えている。複数年度で予算を編成して、その上でその効果を見るためにPDCAをしっかりと回していくという形を考えるべき。
 医療費であっても、年齢構成などを踏まえれば、カットすることは到底できないが、効果的に支出することはできる。また、防衛費についても国際的に上昇していて、そのような中で、日本だけ増やさなくてよいのかという問題もある。こうした課題に対応するため予算の全体像は複数年度で議論すべき。
 ワイズスペンディングは、スペンディングであり、カットではない。民間企業であれば、儲かるものは予算をつける。投資については乗数効果が大事。例えば内閣府のエコノミストを増やして、どこに投資すればよいか、税収を上げるためにはどのようにすればよいかを検討すべき。税制についても、基礎年金などの充実を踏まえれば、歳入増が必要。課税ベースの考え方、NISA以外の金融所得課税の在り方などを議論すべき。
 4人目の民間議員です。
 財政規律を確保しながら成長経済に持っていくのはたやすいことではなく、知恵が必要。骨太でも盛り込んでいるため、しっかりやっていくことが大事。
 「経済・財政新生計画」の中では、詳細な実行計画を書いている。強調すると、政策効果に乏しい既存事業を大胆に見直すことが必要。増やすことだけでなく、歳出削減、効果のないところは大胆に見直すことが大きなポイントになる。
 その上で、縮小均衡だけでなく、大胆に成長させていくための投資をしていく。成長に結びつく、将来の歳入増に結びつく、将来の賃金増に結びつくためにどこまでどう投資するべきなのか。国も単年度ではなく、長い目で見て、どこにどれだけの成果を出せる投資なのかを考えたプランの下で見ていくことが大事。
 単にどこにお金を使えばいいだけでなく、経済構造を変えていく、仕組みを変え、プレーヤーを変えていく。令和の時代の成長を実現させる経済構造をつくることを一緒にしなければ、成長率も賃金も伸びない。そこを諮問会議としても考えていくべき。足元のところで考えると、供給不足を解消するための成長投資ができるかを考えていく必要がある。
 最後に、技術革新が非常に重要であるが、必ずしも技術革新が全ての人を豊かにするわけではない。AIで考えると、優秀な開発者は多額の報酬を得られるが、単純作業をしていたプログラマーは要らなくなる。格差を生みやすい構造であるため、格差を低くして、技術革新をすると同時に、皆が豊かになる必要がある。そのためのリスキリングであり、必要な再分配政策を考える必要がある。
 次に、閣僚からの発言です。
 村上総務大臣です。
 資料4「予算の全体像に向けて」について総務省の取組を申し上げる。
 地方創生2.0の実現に向けて、ふるさと住民登録制度の創設については、6月末に関係府省庁から成る連絡会議を設置し、具体的な制度設計に向けた検討を進めている。この枠組みの下で、行政手続をはじめとするサービス提供の在り方や様々な分野における民間サービスとの連携の在り方について検討を加速し、国民がメリットを感じられる制度になるよう取り組んでいく。
 加えて、「DX・イノベーション加速化プラン2030」に基づき、オール光ネットワークを中心とする新たなデジタルインフラの実現を通じ、地方創生にも取り組んでいく。
 また、資料では、国・地方のプライマリーバランス黒字化など、財政健全化についての言及がある。現在、様々な減税の主張がある中で、特に消費税については約4割が自治体の財源となっており、先日の全国知事会議で決議されたように、必要な住民サービスを十分かつ安定的に提供するためには恒久的な財源の確保が必要。そのため、物価高対策に消費税率の引下げを行うことは適当ではないと考えている。将来世代に負担を先送りしないよう、財政健全化について強い危機感を持って取り組まねばならないと考えている。
 加藤財務大臣です。
 令和6年度決算は、資料5の1ページ目のとおり、対令和6年度補正予算比で、歳入面では税収が1.8兆円の増加、税外収入が1.6兆円の増加、他方、歳出面では4.3兆円の不用が見込まれ、特例公債の5兆円の発行抑制にも努めた結果として、地方交付税交付金等財源の増を控除すると、最終的には2.3兆円の決算剰余金が発生する見込み。
 令和6年度決算税収の詳細については資料2ページをご覧いただきたい。
 武藤経済産業大臣です。
 米国時間7月22日に米国の関税措置に関する日米間の合意が発表された。今般の合意は守るべきものを守った上で、両国の国益に一致する形で合意されたものと考えている。
 他方で、自動車及び自動車部品などの分野別関税や相互関税に一定の税率が残っている。引き続き国内産業や地域への影響を見極め、追加的な対応をちゅうちょなく行うべく、最優先かつ全力での対応を行っていく。
 関税措置がある中でも、中小企業を含め賃上げや国内投資が進む環境をしっかりつくっていく必要がある。2040年に200兆円という国内投資の目標達成に向けて、今後も官民を挙げて投資拡大を継続していくことが重要であり、今がまさに賃上げと投資が牽引する成長型経済の実現に向けた正念場となる。そのため、不確実性が高まる中にあっても、高付加価値化に資する成長投資をちゅうちょすることがないよう、政府としても投資拡大に向けた姿勢をより強く打ち出していくことが必要。
 加えて、官公需の価格転嫁を含め、近年の力強い賃上げの動きが地域の中堅・中小企業に波及するよう積極的な産業政策に取り組んでいく。
 最後に、総理からの締めくくりのご発言がありましたが、皆様にお聞きいただいたとおりですので、割愛いたします。