第8回事務方説明要旨:令和7年 会議結果

事務方説明要旨

1.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による説明

 本日は、第8回経済財政諮問会議と第36回新しい資本主義実現会議を合同で開催いたしました。「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」及び「経済財政運営と改革の基本方針2025」が取りまとまりました。
 本日この後、持ち回りの閣議において閣議決定する予定です。
 私からは、合同会議のうち、経済財政諮問会議の部分について概要をご報告いたします。
 まず、基本方針2025につきまして、瀬戸副大臣から前回の諮問会議でお示しした原案からの主な変更点についてのご説明があり、その後、民間議員からご発言をいただきました。
 主な内容をご紹介いたします。
 1人目の民間議員です。
 今回の骨太方針2025を通じ、持続的な経済成長と財政健全化の両立を図る経済財政運営を進めていただきたい。その上で2点申し上げる。
 1点目は実質賃金の上昇。生産性の向上と2%程度の適度な物価の上昇が大事。生産性の向上については、新資本実行計画改訂版の実行に総力を挙げてもらいたい。物価上昇については、近年では3%から4%台と高い状況が続いている。2%程度の適度な物価上昇の実現を図っていただきたい。
 2点目は税と社会保障の一体改革。公正・公平で持続可能な社会保障制度とする必要がある。歳出改革や個別の制度改正にとどまらず、中福祉・中負担な社会を目指し、税も含めた社会保障財源の在り方について検討を進めてもらいたい。
 2人目の民間議員です。
 4点のご発言がありました。
 1点目です。現在、長期の金利を中心に急騰している。日本の財政に対する懸念というものが指摘されないとも限らない。財政健全化をもう一度踏まえて、閣僚の皆様にはぜひ格上げを目指していただきたい。
 2点目は、安易なばらまきは避けていただきたい。高校の無償化や給付金、消費税減税、保険料の負担軽減等、多く議論されている中で、EBPMの徹底や恒久的な政策を取るのであれば安定的な財源を確保することが非常に重要。歳出改革のリーダーシップを発揮していただきたい。
 3点目は、ターゲットを絞った減税対策が取りにくいという現状について、日本にはあまりデータが存在しないということを考えると、データを共有化していくガバメント・データ・ハブのようなものをつくっていくことが必要。これからの課題として検討していただきたい。
 4点目は、競争力の強化について、2040年頃に名目GDP1,000兆円程度という目標が出された。大変な数字ではなく、達成できるのではないかと期待している。そのためには賃上げと成長が不可欠であり、成長するためには競争力の強化が何よりも重要。どの点を勝ち筋としていくのか、そういう点を明らかにした上で、メリハリのある財政運営をしていただきたい。
 3人目の民間議員です。
 賃金について、CPIプラスアルファが企業として当たり前だということを、社会通念として認識してもらうことが必要不可欠。少し円安が修正されても、CPIのある程度の上昇を想定して、その中でプラスアルファをしなければならない。そうしないと社員の生活が厳しくなる。CPIプラスアルファを予算の中に入れるということを、とりわけ大企業がしていかなければならない。そうしたことをしていかないと良い人材が取れないという認識を強くしていくべきではないか。
 日銀の良いレポートが出ている。4月の展望レポートの44ページに、既に、生産性が低い企業から生産性の高い企業へと人の移動が多くなっているということが書かれている。
 健康で働きたいと思っている人がより働きやすい環境をつくっていく必要があるのではないか。また、年収の壁についても大変重要だと思っている。今後考えていかなければいけないのは、第3号被保険者の段階的な廃止である。また、行き過ぎた働き方改革になっているのではないかと思う。これについても見直しが必要で、健康であれば働きたいと思う方が、労働契約に基づいて柔軟に働けるようにしていく、こういう雇用を検討していくべきではないか。
 第3に、今の状況は、最終的には米中のAI覇権争いになっているように思われる。その中で、AIを制することが世界を制する。そのような中で、経済安保の確保のためには日本はもっとAIをはじめとした技術革新を進めていく必要がある。サプライチェーンも同様だと考える。今後を考える上で、米国を見て、あのようになってはいけないと思う。米国の方々の目の前で言っていいのかどうか分からないのだが、資本主義をやり過ぎたと思う。そうした意味で、包摂的な経済社会をつくっていく必要がある。これは新しい資本主義の中でぜひ掲げていきたい。
 最後に、財政について、世界では何が起こるか分からない。ディシプリンを原則として責任ある政策を決定していくべきではないか。
 4人目の民間議員です。
 今後議論すべきことを中心にお話する。
 まず、国際的な経済環境が大きく変化する中で、骨太第1章を踏まえて、今後、経済政策として何をすべきか考えていく必要がある。経済財政諮問会議でしっかり議論していくことが重要。
 骨太方針の第2章では、賃上げを持続的なものにしていくことが大切だと考えている。そのためには生産性の向上やリ・スキリングを中心とした三位一体の労働市場改革が重要。方向性を定めるのは難しいが、働き方改革の見直しを進めていくことも必要。また、成長産業化の観点から世界的な食料品価格も高騰している中、農林水産業も重要。
 骨太第3章では、プライマリーバランスの黒字化目標を掲げているが、大変意義のあることであり、政府の姿勢をしっかりと示していくことが大切であると考える。一方で、目標も大切ではあるものの、そのプロセスを実現していくことが何よりも大切。そのためには税・社会保障の一体改革を抜本的に進めていく必要がある。
 最後に、総理から締めくくり発言がありましたが、皆様にお聞きいただいたとおりですので、割愛いたします。

2.坂本次長(内閣官房新しい資本主義実現本部事務局)による説明

 本日の合同会議におけます新しい資本主義実現会議の部分について御報告をさせていただきます。
 本日は、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版の案について、実現会議としての取りまとめをしていただきました。
 まず、シンクタンクの委員からの御発言でございます。
 今回の成長戦略の要は実質賃金1%上昇のノルムの定着である。これを実現するためには付加価値生産性の向上を図る必要があって、特に中小企業においては地域金融機関から働きかけを強め、全国規模での省力化投資や経営基盤を確保していくことが必要です。
 最低賃金については、生活賃金の約7割から9割の水準にあるということで、どの都道府県でも十分ではない。本日示された賃金向上推進5か年計画のスピード感のある展開が必要です。
 米国の変化、地政学リスクの拡大など不確実性が高まる中で、イノベーションの強化が不可欠であり、スタートアップや先端科学技術への支援が非常に重要です。EBPMを活用して効果の高い支援が展開されることを期待しています。
 続きまして、投資ファンドをやっておられる委員からでございます。
 世界情勢は混沌としており、分断している。新しい資本主義というのは包摂性のある、取り残していた外部経済の問題を取り込んでいくという考え方であるので、ぜひ日本国内だけでなく、世界に向けて発信をしていくことが重要です。
 続きまして、中小企業の経営者の委員からでございます。
 取りまとめありがとうございます。特に中小企業の知的財産の活用・保護の強化、また、事業承継税制の特例措置の恒久化について盛り込んでいただき感謝をしています。骨太方針においてもこれらについて盛り込まれたことを心強く感じていますということでした。
 続きまして、経済団体の代表の委員からでございます。
 政府は成長型経済の実現に向けてこの実行計画の中で象徴的な2つの数値目標を掲げたと受け止めています。1つが年1%程度の実質賃金上昇をノルムとして定着をさせていくこと。もう一つは、2040年度に国内投資200兆円を実現するというこの2つの目標であります。
 国際環境は構造的な変容に直面している中で、官民が連携をして我が国の強みを生かして、リスクに強い経済構造を構築し、科学技術立国と貿易投資立国を実現することが必須です。実行計画の早期実現に総力を挙げて取り組んでほしいということでございました。
 続きまして、事業再生の会社を経営されている委員からです。
 前回も申し上げましたが、デフレ、供給過剰、人手余りといった古い資本主義から、今は逆で、インフレ、供給制約、人手不足という、これが新しい資本主義であります。180度頭を切り換えて実行していくことが必要であります。不完全雇用を気にしないで成長できる、そういった意味での新しい資本主義のモデルを世界に見せるチャンスです。AIの出現も大きな追い風です。実行計画を迅速に具体的に展開してほしいという御発言でありました。
 続きまして、大学の研究者の委員からでございます。
 AIが進展する中で、その活用を進めていくこと、地方、企業、そして行政での活用を進めてほしい。そして、人材育成、スタートアップの育成が非常に重要である。特にAIに関しては高専発のスタートアップを全国でつくり、それが地方経済を強くしていくということが必要です。そのためにメンタリングのオンラインコミュニティーを整備することも重要である。こうしたAIのエコシステムを海外展開していくことも重要です。
 そして、今後数年でAGI、アーティフィシャル・ジェネラル・インテリジェンスと言われる人間の能力を超えるようなAIの出現が予言をされている。競争力に直結をし、社会システムなどにも影響が出てくるということなので、ぜひ国内でのAI開発を進めてほしいという御発言でした。
 続きまして、スタートアップへの投資ファンドをされている委員からでございます。
 今回の実行計画は網羅的な内容になっており、迅速に確実に実行をしてほしい。過去の政策の実効性を検証し、必要な改善策を講ずるということも必要です。
 その上で2点ということで、1点目は、スタートアップについて、スタートアップ政策に引き続き注力をするという方針が確認され、特に地方におけるスタートアップ促進の目標が明示された点がすばらしい。
 2点目として、外国人材の受入れ環境の整備ということで、米国から世界レベルの研究者が海外へ出ることを検討しているという報道がある中で、日本はこうした高度人材を受け入れるべく迅速にアクションを取っていくという意味で政府からの大きな後押しを期待していますということでございました。
 続きまして、スタートアップの経営者の委員からでございます。
 新しい資本主義実現会議を立ち上げたときの考え方について、新自由主義の様々な弊害を乗り越えること、外部性の大きい社会課題に対して官民連携で解決を目指していくということ、こうした理念に基づいてどれだけ実行できるかということが問われている非常に重要な局面だと思います。共同体の機能が弱まる中で、公共ということの在り方そのものを問い直す必要に迫られている。包摂性の高い社会の実現を目指していくことが不可欠であるということでございました。
 最後に労働組合の組織の代表の委員からでございます。
 労働者の立場から4点ということで、1点目、医療・介護・保育・福祉、こういった分野で働く方々の継続的な処遇改善について、全産業平均との賃金格差を是正し、人材確保につなげていく必要があります。
 2点目、年金積立金については、他の政策目的のためではなく、もっぱら被保険者の利益のために活用されるべきである。
 3点目、労働者が安心して活躍できる環境整備について、賃上げの定着を目指す労働市場改革においては、能力開発と処遇改善の好循環、セーフティネットの機能強化、取引の適正化などを進める必要があります。
 4点目、多様な人材の活躍促進について、労働時間法制の見直しや同一労働同一賃金の規定の見直しなど、労働者保護の強化に向けて今後検討をしていくべきということで4点ございました。