第7回事務方説明要旨:令和7年 会議結果

事務方説明要旨

1.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による説明

 第7回経済財政諮問会議です。
 「骨太方針の原案」について、内閣府から資料1に沿ってご説明させていただきました後、意見交換を行いました。
 主なご意見をご紹介いたします。
 1人目の民間議員です。
 大きく経済社会が変化してきている。不透明性が大きい今の経済情勢の中で、日本経済として安定性、健全性を示すことが重要。今回の骨太原案でも記載されているが、財政健全化、安定的な財政運営を行うと示していくことが世界からも求められている。財政健全化の道筋を示し、マーケットの信頼を受けて安定を取り戻すことが重要。
 そのためにも、第3章に書かれている全世代型社会保障や持続的な社会インフラの整備は重要。社会インフラは過疎化が進む中で重要であって、やや逆説的になるかもしれないが、都市機能の高度化も重要。さらに、ハードインフラだけではなく、人手不足になっている地方で資金が確保できなかったりすることも踏まえ、地方公共団体同士で人材の連携をすること、公共施設の集約化をすることにより自治体サービスの質を落とさないようにすることも重要。
 もう一つのポイントは、しっかり賃上げをして物価を適切に上げていくこと。公的な制度の基準値の見直しが重要。30年近く基準が変わらず、当たり前になっていたものが実は足かせになっていたということもあるのではないか。
 また、人材戦略を高度化し、人手不足の中でも生産性を上げていくことが必要。そのためにも三位一体の労働市場改革がポイントになる。また、より幅広い底上げとして公教育をどう再生していくか。AI教育をどうしていくかなども重要。最先端企業が求めている人材と公教育の内容には乖離があるという点について、今すぐでなくてもいいが、考えていく必要があるのではないか。さらに、女性や高齢者の活躍促進として、体力勝負のようなところでシニアが働くことになっているが、それぞれの方の実情に応じて活躍できる環境をつくっていくことが重要。
 最後に、農林水産業の強化について、新しく項目として立ててもらった「農林水産業の構造転換による成長産業化及び食料安全保障の確保」だが、これは足元の問題だけではなく、今後、第一次産業である農林水産業をどれだけ高度化して、稼げるものにしていくかということが重要。これは大きなチャンスでもあり、また課題でもある。サプライチェーン全体を高度化することが大事。産業全体を大きくバージョンアップしていく必要があるのではないか。
 2人目の民間議員です。
 米国は金利上昇の中で財政悪化の懸念がある。これはベースラインケースの下振れにつながっており、先行きに悲観的な見方が世界的にも広がっている。また、中国もデフレの中でもがいている。この2つのロコモティブがある中で日本経済をどうレジリエントにしていくかが大事。マザーカントリーとしての日本がしっかりしていないといけない。
 GDPのうち消費はかつて6割を占めていたが、今は5割超となっている。この消費が大事。最近、コンビニ数社を実際に回ってみたところ、おにぎりの価格が安いもので150円、高いもので280円程度となっている。かつては100円から160円程度の幅だったところ、まさにデフレからインフレに変わってきている。消費者に対する心理的影響も大きいものとなっている。価格の上昇は米の問題だけが原因ではないと思うが、こうした状況の中でどのように消費をしてもらうのか。例えば土日だけでも高くておいしいものを食べようと思ってもらうにはどうしたらよいかを考えていかないといけない。
 まずは財政をしっかりし、国民に安心感を与えることが大事。これまでは国内の資産である国債に信頼があり、安心感があったのだと思うが、これが財政の甘さにつながっていたのではないか。国民の資産を国が代わって使うということなのであれば、しっかりと財政政策に乗数効果があったのかどうかを含め予算の使い方を検証するべきだし、それを怠ると甘さにつながる。財政の効果をしっかりと見るべき。また、これまで現金も多く出してきていたが、それが消費につながっていない。政策の乗数効果を検証していくべき。
 可処分所得を増やして消費に回してもらう必要がある。今、労働者が高い賃金を払う企業に集まっているという傾向があり、その傾向について社会でしっかりと認知してもらいたい。企業はAIやDXに投資すべき。中堅企業・中小企業についてもそうした取組をしてほしい。
 社会保障改革について、基礎年金の底上げを行うとともに現役世代に対する過度な負担については見直すべき。払える世代が払うように制度を転換してほしい。EBPMに従って払うということなら喜んで社会保障費を支払いたいが、そのためには制度がしっかりとしていることが条件。応能負担に向けて制度の転換を図る。現役世代に過度な負担を強いず、可処分所得を増やすよう議論をしてほしい。そうでなければ、賃上げをいくら行ったとしても経済のダイナミズムは戻らない。日本においても社会の分断が進んでいる。払える人を定義し、金融資産の把握を社会保障制度に組み込むことも含めて議論をしていくべき。後期高齢者支援負担金についても見直すよう議論を始めるべき。
 3人目の民間議員です。
 今回の骨太について、世界の情勢が劇的に変化している点を強く認識した上で「地方創生2.0」、「賃上げを起点とした経済成長」などの方向性を示されている点は非常に評価できる。特に、国際秩序がどう変化しようとも政府はいかなる状況下にあっても国益を守り抜くということが書かれており、大変よいと思った。
 その上で改善点を4点申し上げる。
 1つ目として、人へのやさしさなど配慮にあふれているが、競争力に対する情熱が足りない記述となっている点は残念に思う。例えば、「競争力」という言葉の登場回数を数えると、昨年は10回であったが、今年は6回。石破内閣として競争力を重要視していることを強調するために第1章で競争力の強化についてしっかり記載するべきではないか。分野別の投資戦略についてGX投資推進を発信する際には金額・分野を明確に打ち出すべき。
 2点目として、財政状況は大幅に悪化しており、少なくともコロナ前の水準に戻すという基準値を設けたことはよいことであるが、これだけでは不十分と考える。日本国債の長期金利が上昇する中、市場の見方が変わってきていると考える。市場への説明のためにも、2030年にGDPの成長率を何%まで引き上げる必要があるのか、中長期財政運営マークを考えていく必要がある。また、将来的には独立財政機関の創設も検討するべき。補正予算が大きく緩んでいる中では、財政規律を守っていくといっても言葉だけに見えてしまう。責任ある予算編成をお願いする。
 3つ目として、データ連携の必要性について、データがあっても紙ベース、ばらばらで使えるようなものがないのが現状。例えば物価上昇による診療報酬改定を検討するにしても、医療機関の事業報告書をデータベースで見ることもセットで行う必要がある。また、各種政策を図る際に一律にばらまくことにならないよう対象者を絞る必要があるが、各種データが共有化、連携されていないため誰が困っているかが分からないという問題もある。こうした問題を解決するためにもガバメント・データ・ハブなどデータの連携を進め、プッシュ型の給付に利用できるよう国民のデータ基盤構築をさらに進める必要があると考える。それこそが応能負担を確立することにもつながると思う。
 4点目として、日本の創薬力・医薬品費用対効果評価など、薬価制度について申し上げる。日本の競争力を高めるためには投資拡大が不可欠であり、そのためには予見可能性の高さが重要。現在の評価は基準が不明瞭であったり、基準を定めた後の改定の不透明性が高く、日本メーカーの投資が二の足を踏みかねない状況にある。この分野は専門性が高く分かりにくい。関係者が非常に多いということもあるため、一堂に会して意見を述べる場を設けることも重要だと考える。フェアで予見性が高い費用対効果評価が行われ、我が国において画期的な新薬の研究開発が進むような方向性を打ち出していただきたい。
 4人目の民間議員です。
 成長と分配の好循環を実現し、人口減少下でも持続可能な社会システムを構築する上で、重要と思う点が3点ある。
 1つ目が、持続的な経済成長に向けたダイナミックな経済運営である。持続的な経済成長に向けてGX・DXスタートアップ支援、研究力の抜本的強化など官民連携で国内投資を拡大することが必要。2040年で1,000兆円のGDPを目指すためには200兆円の投資が必要。政府は民間だけでは対応が困難な分野に対し先行投資を行い、企業の予見可能性を高め、民間投資を促進する。いわゆるダイナミックな経済財政運営に取り組むべきと考える。財源についても、単年度ではなく中長期でバランスを取る必要がある。日本が貿易投資立国であるためには、研究力の抜本的な強化に向けて科研費の倍増など大胆な措置を講ずることが重要であると考える。
 次に、「税と社会保障の一体改革」について、「成長と分配の好循環の実現」のための最後のピースと考える。個人消費の拡大に向けて賃金引上げが貯蓄ではなく消費に向かうためには若年世代を中心とする国民の抜本的な将来不安の解消が必要。そのためには、公正・公平で持続可能な全世代型社会保障の構築が不可欠。
 理由は3点あり、1つ目として、社会保障改革は主に世代間格差を解消する分配政策であること。2つ目として、こども・子育て支援などの少子化対策でもあるということ。3つ目として、第3号被保険者の問題など年収の壁への対応も含んだ労働参加を促す政策でもあるということ。全体を俯瞰した全世代型社会保障の具体的なレベルとして、中福祉・中負担を目指すこととし、将来に責任ある意思を示すことが重要。
 3点目、財政健全化について、債務残高GDPが250%を超える日本財政は主要国の中でも最も厳しい状況にある。今後起こり得る有事に対して十分な対応が可能となる財政余力の確保が求められる。「経済あっての財政」との基本的な考え方の下、まずは足元の2025年度から2026年度のプライマリーバランス黒字化を実現し、その後も2030年度まで債務残高対GDP比をコロナ渦前の水準にまで安定的な引下げを目指していくことが必要。
 次に、閣僚からの発言です。
 村上総務大臣です。
 総務省として本日の原案に記載があるふるさと住民登録制度の創設、広域リージョン連携、先日公表した「DXイノベーション加速プラン2030」に基づくワット・ビット連携などによるデジタル基盤の整備、中核となる技術の開発及び海外展開、女性・若者をはじめとする地域の担い手の確保に対する支援、大規模な林野火災を踏まえた予防・消火体制の強化、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築、国・都道府県・市町村の役割の見直しなどを推進していく。
 また、自治体が住民に身近な行政サービスを安定的に提供できるよう、物価動向等を踏まえ、地方一般財源総額を確保し、「地方創生2.0」の推進と持続可能な地方行財政基盤の確立に向けて全力で取り組んでいく。
 加藤財務大臣です。
 生産年齢人口の減少が本格化し、国際情勢、また世界経済における不確実性が高まる中において、我が国の経済財政、社会保障の持続可能性を確保するためには、本日示された原案にあるような様々な取組をさらに加速し、物価上昇を安定的に上回る賃上げを実現することが重要であると考える。
 また、本日示された原案において、財政との関係では、プライマリーバランスの黒字化や債務残高対GDP比の引下げについて、財政健全化目標に関する考え方、予算編成において骨太方針2024で示された歳出改革努力を継続しつつ、日本経済が新たなステージに移行しつつあることが明確になる中で、経済・物価動向等を踏まえ、各年度の予算編成において適切に反映することが明記されているところ。
 引き続き「経済あっての財政」との考え方の下、力強く経済再生を進める中で、財政健全化も実現し、経済再生と財政健全化の両立を図っていく。
 武藤経済産業大臣です。
 「経済あっての財政」の考え方の下で経済財政運営を進めていくことが重要。米国による関税措置の影響は不透明だが、財政健全化目標によって状況に応じた政策の選択肢が歪められてはならず、関税措置の影響をしっかりと見極めた上で追加的な対応を躊躇なく行っていく。
 国際秩序の構造的な変化や不確実性が高まる中でも、将来の経済成長につながる積極的な国内投資を継続する中で経済成長と財政健全化の両立を実現していくべき。
 経済産業省としても、2040年度に200兆円という国内投資の目標の達成に向けて今後も官民で国内投資の拡大を継続していくとともに、近年の力強い賃上げの動きが地域の中堅・中小企業にも波及するよう積極的な産業政策に取り組んでいく。
 最後に総理から締めくくりのご発言がありましたが、皆様にお聞きいただいたとおりですので、割愛いたします。