第6回記者会見要旨:令和7年 会議結果

赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨

1.発言要旨

 経済財政諮問会議の内容についてご報告を申し上げます。
 本日の議題は3つございました。「少子化、社会保障、教育の重要課題」が1つ。それから、「マクロ経済運営」が1つ。そして、「骨太方針2025の骨子案」というのが3つ目でございます。その3つについて議論を行いました。
 1つ目の議題であります「少子化、社会保障、教育の重要課題」については、3つほど民間議員からのご提案を紹介すると、「少子化対策は効果検証や費用負担の見える化等を徹底して、政策に対する国民の共感が得られる形で推進すべき」、2つ目は「その際に実質的な負担増が生じないよう、医療・介護の歳出改革が一層重要との考え方の下、これまでの健康寿命の延伸に伴う高齢者医療費の変化に着目した医療保険制度の見直しや、将来の介護需要の変化に着目した介護サービス供給体制の在り方等を検討すべき」、3点目に「教育については、学びの充実や教職員の働き方改革などの公教育の再生・強化や、教育無償化の在り方の検討、人口や産業構造の変化を捉えた高等教育機関の機能強化、海外高度人材の獲得に取り組むべき」といったご提案がございました。
 また、「経済・財政新生計画」の「進捗管理・点検・評価表2025」を決定いたしました。これは中長期の改革項目について着実にPDCAを回すため、経済・財政一体改革推進委員会において取りまとめたものでございます。
 2つ目の議題「マクロ経済運営」では、民間議員から3つご提案いただいたものを紹介いたします。
 1つ目が「米国の関税措置によって経済の先行きの不透明感が高まる中にあっても、賃上げや投資拡大の流れを継続すべき」、2つ目に「変化しつつある国際秩序の下での我が国の経済構造の在り方や取るべき戦略を検討すべき」、3つ目が「人手不足傾向が続く中、生産性を向上させ、雇用の質を高めることが重要」といったご提案がございました。
 これらの議題について、総理からは2点ですけれども、「少子化、社会保障、教育の重要課題については、本日の議論を踏まえ、関係省庁で議論を進め、必要な改革を本年の骨太方針に位置づけ、着実に推進していく」、2点目が「我が国経済の下振れリスクを注視し、経済財政運営に万全を期すとともに、「賃上げこそ成長戦略の要」であり、持続的・安定的な物価上昇の下、日本経済全体で年1%程度の実質賃金の上昇を社会的なノルムとして定着させていく」といった趣旨のご発言がありました。
 3つ目の議題では、お手元に配付されている「骨太方針の骨子案」をお示ししました。今年の骨太方針では、経済全体のパイを拡大する中で、力強い賃上げモメンタムを定着させ、全ての世代の現在及び将来の賃金・所得が継続的に増加する「賃上げを起点とした成長型経済」の実現に向けた取組の方向性を明らかにしていきたいと考えております。
 総理から私に対し、本日の議論も踏まえた上で、6月の骨太方針の取りまとめに向け、関係府省や与党との調整を進めるようご指示がございました。次回の会議で原案を提示させていただく予定でございます。
 諮問会議の詳細については、後ほど事務方から説明させていただきます。
 

2.質疑応答

(問)本日の諮問会議で、「骨太方針の骨子案」が示されましたが、今後、方針全体の策定に向けて強調されたいポイントだったり、今後のスケジュールについて、教えていただけますでしょうか。


(答)本年の骨太方針では、経済全体のパイを拡大する中で、力強い賃上げモメンタムを定着させ、全ての世代の現在及び将来の賃金・所得が継続的に増加する「賃上げを起点とした成長型経済」の実現に向けた取組の方向性を明らかにしていくということでございます。「賃上げこそが成長戦略の要」ということを意識しております。
 また、地政学リスクの高まり、保護主義や権威主義国の台頭など、我が国を取り巻く国際秩序は変化しつつあります。こうした新たな国際秩序に対する認識と備えについても示していきたいと考えております。
 6月の取りまとめに向けて、次回の経済財政諮問会議において原案を提示させていただく予定であります。政策の大方針を国民の皆様に分かりやすく示せるよう、しっかりと議論を進めてまいります。


(問)日米交渉に関連して、アメリカとの造船分野での協力について伺います。先日行われました3回目の日米交渉で、造船分野での協力について、どのような議論が行われたか伺います。
 また、石破総理大臣は、昨日25日に、アメリカ軍の艦船の日本での修理や、砕氷船に関する協力の推進を検討していく考えを明らかにしましたが、赤澤大臣は造船分野でのアメリカとの協力の在り方や必要性についてどのように考えているかお願いします。


(答)今般の協議の内容の詳細については外交上のやり取りなので、つまびらかにすることは差し控えたいと思いますが、今回の訪米においても、米国による一連の関税措置の見直しを改めて強く申し入れるとともに、貿易の拡大、非関税措置、経済安全保障面での協力などについて議論したところでございます。
 ご指摘の、米軍艦船の日本での修理とか砕氷船に関する協力についての石破総理のご発言については承知しております。
 ただ、米国の関税措置に関する日米協議の今後の対応についても、具体的な検討状況をつまびらかにすることは差し控えますが、引き続き何が日本の国益に資するのか、あらゆる選択肢の中で何が最も効果的なのかを考えて、政府一丸となって最優先かつ全力で取り組んでまいりたいと思っております。
 その上で、一般論として申し上げれば、総理もおっしゃっているとおり、我が国の米軍艦船の日本における修理の能力とか、あるいは日本の砕氷船の技術といったものには優位性があるということで、日米協力のポイントの一つになり得るものであると考えております。


(問)トランプ大統領が25日、USスチールの買収計画について、「アメリカによって支配されることになるだろう」とした上で、「日本製鉄は部分的な所有権を持つことになる」と発言されました。完全子会社化を認めない姿勢を示唆したと見られますが、この完全子会社化が難しかった場合に、関税交渉にとってどのような影響があるのか、大臣のお考えを聞かせてください。


(答)ご指摘のトランプ大統領の発言などについては承知しておりますが、ご指摘の点を含め、予断を持ってお答えすることは差し控えます。
 いずれにせよ、日米協議において、自動車、自動車部品、あるいは鉄鋼・アルミ、そして、相互関税を含め、米国の一連の関税措置の見直し、すなわち撤廃を強く求めていくという立場に変わりはないものと考えております。可能な限り早期に日米双方にとって利益となるような合意を実現できるよう、政府一丸となって最優先かつ全力で取り組んでいきます。
 ご指摘のトランプ大統領の発言などについては、繰り返しになりますが、承知しておりますが、総理も官房長官もおっしゃっていると思いますけれども、米国政府による正式な発表を待ちたいというふうに思います。


(問)日米関税交渉に関連して、事務方協議についてお伺いできればと思います。先週19日から22日まで、ワシントンで連日行われていたと承知していますが、先週で一定の役割を果たしたのか、それとも3回目の協議終了後も、4回目に向けて継続的に行われているのか、今後の方針についてお伺いできればと思います。


(答)今回の閣僚級協議において、日米間で可能な限り早期に日米双方にとって利益となるような合意を実現できるよう、双方の立場の一致に向けて、更に調整していくことを確認したところでございます。
 ご質問の事務レベル協議でありますが、今後の日米間の協議の進め方の更なる詳細については、現時点で予断を持ってお答えすることは差し控えますし、必ずしも決まっているわけではありません。引き続き政府一丸となって最優先かつ全力で取り組んでいく中で、どうしていくかといったようなことは今後決まってくるということだと思います。


(問)関税交渉について、次回、今回3回目の協議で会談ができなかったベッセントさんとの会談に向けて、4回目の協議をすると思
うのですけれども、その際、今回協議できた2人に関しては、また同席するというような見通しなのかどうか、お願いします。


(答)次回の閣僚級協議の具体的な日程等の詳細については、現在、調整中でございます。2回目の閣僚級協議において、5月中旬以降、協議を集中的に実施すべく日程調整していくことで一致しておりますので、そういった方向でしっかり調整するということだと思います。
 今回の閣僚級協議において、日米間で可能な限り早期に日米双方にとって利益となるような合意を実現できるよう、双方の立場の一致に向けて、更に調整を加速していくことを確認したところであり、今後、6月のG7サミットの機会のあり得べき日米首脳間の接点も視野に、閣僚間で緊密に協議していきたいというふうに思っております。
 ご質問のあった1回目、それから2回目の閣僚級協議で、ベッセント、グリア、ラトニック、3閣僚がそろってくださったわけです。3回目の今回、ベッセント財務長官はご都合によりお会いできませんでしたが、私自身はその3名が協議の相手であると認識しておりますので、引き続き可能な限り早期の合意の実現に向けて、米側の3名の閣僚と緊密に協議していきたい。特に、3回目でお目にかかれなかったベッセント財務長官は、トランプ大統領からSNSで担当交渉者として直接指名のあった人物でありますので、必ず次回はお目にかかりたいものだなというふうに思っております。


(問)先週行われました日米首脳電話会談についてですが、石破総理に対してトランプ大統領が、次世代の戦闘機F47を披露していたという一部の報道がありました。まずは電話会談の事実関係と、大臣ご自身が先週出席されました第3回の関税協議において、購入してはいかがですかみたいな打診を受けたかどうかについてお伺いしたいのが1点目です。
 2点目、政府はこれまで関税交渉と安全保障問題は別々で話し合うべきという態度を示してきましたが、そのスタンスに今も変わりはないか、改めて確認させてください。


(答)まず、総理とトランプ大統領の電話会談の内容でありますが、プレスに向けて、あるいは対外的に総理が公表されたご発言の内容について私は承知しておりますが、それ以上に何か承知しているわけではございませんし、それ以上に何かこの場でお話しすることがあるというわけではありません。今後も私が進めていく交渉の中で、今ご指摘のあったような点も含めて、どのような話をしていくのかということについては差し控えさえていただきたいと思います。
 その上でですけれども、安全保障についての考え方についてお尋ねがありました。その点は、結論から申し上げれば、変わりはありません。関税交渉や通商政策といったものと、いわゆる安全保障の基本的な考え方については、理屈や物差しが全く違っておりますので、これを混ぜて交渉することというのは、私から見ると、そうはならないという理解をしております。


(問)ワシントンでのぶら下がりをモニターさせていただいたのですけれども、そのときに、期限というのを区切ったほうが負けであるということをおっしゃっていて、そのとおりかと思うのですが、あえてあの場でそういう発言をされたのは、今回の2閣僚との交渉では、更にこれは難しいなというような感触、長期化不可避と思われるような何かがあったと理解してもよろしいでしょうか。向こう方の関税への頑なさがすごいと、あとは新たな要求も出てきたとか、その辺、お話しできる限りでお願いします。


(答)よろしいのかというご質問だったので、答えから申し上げれば、よろしくないというふうに思います。いつも基本的に申し上げていること、私のスタンスは変わっていないとご理解いただくのがよろしくて、何を申し上げたかといえば、皆様が非常に6月中旬のサミットについてご関心が高いので、それについて何か念頭に置いているかと言われれば、これも繰り返していますが、電話会談で石破総理とトランプ大統領は「G7サミットの機会に会えるのが楽しみだね」ということで意見の一致を見ているわけです。総理が「楽しみにしております」と言ったら、「そうだね。楽しみだね」と大統領が応じていると。両首脳が会うことが決まっているのに、その節目のタイミングを全く念頭に置かずに交渉するということは、米国側の交渉官にとっても私にとってもあり得ないことであります。
 ただ一方で、では、そこを目がけてまとめるのだなという理解をされると、交渉事というのはそういうものではないと。むしろ、期限を切ってそこまでにまとめなければいけなければ、最後は相手が納得しなければこちらが下りなければいけなくなるので、期限を念頭に置いて交渉すると、私が負けるという表現をしたのが適当だったか、国益を損なうことになりかねないということであります。
 最後まで大事なのは「ゆっくり急ぐ」と申し上げたことに尽きておりまして、国益を毀損するような交渉をする気はないが、しかしながら、いろいろな節目の機会があるので、それを念頭に置きながら、最大限の努力、最優先かつ全力の取組を続けていくということを申し上げたものでございます。

3.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 第6回経済財政諮問会議です。今回の議題は3つです。まず、議題1の、「少子化、社会保障、教育の重要課題」について、柳川議員から資料1に基づいて民間議員からのご提案をご説明いただき、三原内閣府特命担当大臣から資料3、福岡厚生労働大臣から資料4、あべ文部科学大臣から資料5に沿ってご説明をいただいた後、意見交換を行いました。
 議題2の「マクロ経済運営(金融政策、物価等に関する集中審議)」については、植田日本銀行総裁から資料8に沿ってご説明をいただいた後、新浪議員から資料10に基づき民間議員からのご提案をご説明いただきました。
 議題3の「経済財政運営と改革の基本方針(骨子案)について」は、内閣府から資料11を説明いたしました後、議題2とまとめて意見交換を行いました。
 それぞれの議題について主なご意見をご紹介いたします。
 1つ目の議題におけるご意見です。
 1人目の民間議員です。
 2点申し上げるということで、1つ目に、全世代型社会保障改革が大事。我が国経済の持続的成長のためには、国内投資と個人消費の拡大が必要だが、消費の拡大は賃上げのみではなし得ない。若年世代の方の将来不安の解消も必要。そのためには、公平・公正で持続可能な全世代型社会保障の構築が必要。社会保障制度改革は世代間格差を中心とする分配政策であって、少子化政策でもある。労働参加を促す政策でもある。また、我が国の財政赤字の大半を占める財政問題そのものであるとも言えることから、広範な議論が必要。
 2点目は、研究力の抜本強化。貿易投資立国として我が国が生き残っていくためには、科学技術力の強化が必要。貿易投資立国と科学技術立国は車の両輪である。担い手である博士人材は、諸外国では20年前に比べて2倍となっているものの、我が国では低水準かつ横ばいで推移している。
 トップ校の支援の加速という、いわゆる高さの引上げと並んで、科研費の倍増や基礎的経費の拡充といった幅の拡大の両方を実施すべき。特に2,500億円の科研費を倍増する大胆な措置を講ずるべき。厳しい状況に置かれている若い研究者の方々にお金と時間を言い訳にさせないような研究環境の整備が必要。米国を離れる研究者の受入れに我が国も他国に劣後せず、そういった優秀な研究者の受入れに向けた環境整備を進めるべき。
 次に、2人目の民間議員です。
 人口減少問題はすぐに取りかからないといけない問題。国債の格付を守るためにも人口維持は重要。三原大臣が述べられたように、施策の実施状況や効果等を検証し、適切に実施していただきたい。施策としては、教育コストの低下のために塾に行かなくても高校や大学に行けるようにすることや、空き家を活用して子育て世帯に提供するなど、できることは多々あるのではないか。
 提案の1点目として、ガバメント・データ・ハブの構築が重要。高校無償化等の教育の施策も一律ではなく、本当に困っている人々にターゲットを絞って展開すべきであり、その精査に当たってはガバメント・データ・ハブで対応できると考えている。コロナ禍でも10万円給付の際には莫大な事務手数料が必要になったと記憶しているが、このような施策の実施においても役立つものと考えている。
 2点目として、一律化し過ぎた弊害の解消が重要。競争力が生まれず、弊害として処遇に現れている現状がある。生産性に大きな差がある中で報酬が一律であるということはいかがなものか。報酬制度の見直しを今一度行っていただきたい。また、高齢者の報酬についても、シニアだから報酬はこれまでの半額というのはおかしい。実態に沿った報酬体系の見直しをすることが必要。
 3点目として、実態に合わせた制度・定義の見直しが重要と考える。厚生労働省の調査でも伝えられているように、高齢者の若返りが取り沙汰されている中、制度の抜本的な見直しに取り組む必要がある。
 3人目の民間議員です。
 社会保障制度について、働く人にご負担を求めていくことには限界が来ている。財政需要を踏まえれば、高齢者のうち多くの資産を持っている人に応能負担していただくべき。後期高齢者支援金の廃止などの抜本的な改革が必要ではないか。
 昭和や平成の時代は、取れるところから取る発想だったのだが、令和はそのような時代ではない。今や金融資産を含む資産の保有状況を加味して負担を決めることが公平である。マイナンバー制度を活用し資産情報を確認できるようにすべき。ただ、この点は昔から提言しているが、いまだに実現されていない。与野党誰もが賛成であると思うので、ぜひ進めてほしい。
 小さな健康リスクにはセルフメディケーションでの対応も必要。スイッチOTC化を進めるべき。この点も昔から提言しているが、実現していない。スイッチOTC薬は通常の薬と比べて効能が劣るとの誤解もある。正確な知識の周知・普及が必要。OTC類似薬の自己負担や保険外診療の併用も進めるべき。本気で取組を進めていただきたい。
 ビジネスケアラーへの支援や介護保険の見直しも必要。自治体と民間企業が連携してビジネスケアラーを支える先進モデルをつくることで介護による離職を防止すべき。これは人手不足対策としても有意義なこと。さらに、予防健康づくりは大事であり、特別調整交付金制度をうまく活用して健康診断を推進し、健康な人が働けるうちは存分に働けるようにすべき。
 閣僚からの発言です。今、申し上げた3人の民間議員の発言に先立つ形で行われました。
 三原内閣府特命担当大臣です。
 こども家庭庁が創設以来、「こどもまんなか社会」の実現を掲げて目指してきたものは、若い世代がそれぞれの希望に応じて結婚し、こどもを産み育てることができる社会。そして、今を生きるこども・若者が身体的・精神的・社会的にウェルビーイングで生活を送ることができる社会。その結果として少子化、人口減少の流れを変え、未来を担う人材を育み、社会経済の持続可能性を高めることにつなげていきたいと考えている。
 こうした考え方の下、こども大綱に基づき、資料1ページ目のような体系でこども施策を進めてきている。毎年、少子化対策も含め、こども施策を一元的にまとめた「こどもまんなか実行計画」を骨太の方針までに策定している。本年は小・中・高生の自殺者数、いじめ重大事案の発生件数等の増加、少子化に歯止めがかかっていない現状等も踏まえた内容とすべく策定作業を進めている。
 その中で、2ページにあるような本年度から本格実施する加速化プランに基づく施策も着実に実施する。児童手当の抜本的拡充、こども誰でも通園制度の開始、共働き・共育ての推進などに全力を挙げる。
 同時に、3ページにありますように、少子化対策を含むこども施策については数値目標を含めた指標を活用してPDCAを推進し、施策の点検と見直しを図る。また、新しい支援施策等を知ってもらい、利用していただくため、積極的な周知・広報とともに国民の共感が得られるよう施策を推進する。
 なお、民間議員ペーパーにおいて、こども未来戦略に基づく少子化対策について2つの観点からチェックすべきとされている。少子化対策である以上、何らかの形で出生率や出生数を通じた検証が必要であると考える。それだけでなく、少子化対策の多くは、こども・子育て、若者施策でもあり、今を生きるこどもが健やかに育まれるようこども・若者のウェルビーイングという観点からもチェックしていくことが必要であると考えている。大きな予算が投じられている以上、国民の皆様にもこうした2つの観点から丁寧に説明していくことが重要。諮問会議の各先生方ともよく議論しながら進めていきたい。
 福岡厚生労働大臣です。
 本格的な少子高齢化、人口減少が進む中で社会保障制度を持続可能なものとすることは重要な課題。
 1ページ目について、負担能力に応じて皆が支え合う、全世代型社会保障の構築に向けて、改革工程に基づき引き続き取組を進めていく。足元で賃金・物価が上昇し、医療・介護分野では人材確保をはじめ経営を取り巻く環境は大変厳しい状況となっている。次期報酬改定等においては、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう従来以上の対応を行うことが必要。あわせて、それまでの間においても必要な対応を行っていく。
 2ページ目で、2040年に向けて、質の高い医療・介護を効果的・効率的に提供できる体制を構築していくことが必要。このため、将来の医療提供体制全般の課題解決を図る新たな地域医療構想、実効性のある医師偏在対策、小児・周産期医療体制の確保、処遇・改善人材確保等による生産性向上、省力化を推進していく。また、介護サービス提供体制については、人口減少・サービス需要の変化に応じて、地域包括ケアシステムを深化し、全ての地域で利用者等が自立して日常生活を営めるよう体制整備を進める。加えて、引き続き医療・介護DXを着実に推進していく。
 最後、3ページ目、5月14日に成立した薬機法等改正において革新的新薬を生み出すスタートアップや後発医薬品の品目統合等を支援するための新たな基金を設置することとしたところであり、引き続き創薬力の強化と後発医薬品産業の構造改革に取り組んでいく。
 あべ文部科学大臣です。
 人づくりは国づくり、地域産業を担う人づくりと地域の誇りを支え、投資を呼び込むのは、教育、科学技術、文化、スポーツである。
 1ページ目に関して、産学協働の産業界伴走型人材育成機能の強化については、総理からのご指示を踏まえ、経済産業省と連携し、産業人材教育のためのプランを策定している。まずは、高校無償化と公教育で重要であるのは、専門学校である。実践的なAI・デジタルを活用した工業高校やスマート農業高校等の専門学校の運営モデルの開発等や、産業界から教師を呼び込む広域教師等人材バンクの構築支援。大学・高専段階では、企業オンサイト型での共同研究・寄附講座、成長分野への学部・学科の再編等による大学・高専の研究機能の強化の推進に加え、社会人の教育や工学、AI等のリカレント教育や小学生からのアントレプレナーシップ教育にも取り組む。
 2ページ目に関して、地方で活躍する人材の育成とそれを支える基盤の整備として郷土に関する教育の観点を含めた次期学習指導要領の検討や探究学習の充実、AI活用による英語での地域の魅力発信、高等教育全体の規模の適正化と再編・統合促進と理工農系学部重点化、アクセスの確保、資質の向上、運営費交付金、私学助成、施設整備費等の基盤的経費の確保、大学病院の教育・研究・診療の質確保と経営改善、地方における総合的な診療能力を有する医師等の地域医療を担う人材育成と派遣の推進、科研費等の競争的研究費を通じた研究力強化や重点分野の研究開発の加速、研究者・研究開発マネジメント人材・技術者への支援、地域における大学発スタートアップの創出に取り組む。
 我が国への投資促進に関する研究力強化と国際頭脳循環の推進として、先端研究設備等の整備・供用、AI for Scienceや情報基盤の強化、優れた研究者が世界から日本に集う国際的な頭脳循環の確立、大型研究施設等の高度化に取り組む。
 文化芸術・スポーツの振興は人を楽しく豊かにし、日本、そして地域の生きる力と誇りを支える。「NEXT日本博」創設、コンテンツ産業の海外市場規模20兆円に向け、クリエイター支援基金を活用した技術継承や新技術の習得の支援、地域スポーツ資源の活用や部活動の地域展開等の支援による地方創生への伴走支援にも取り組む。
 3ページ目、教育は人なり。人材育成の根幹を担うのはやはり人。学校教育の充実・発展等を通じた公教育の再生として教師を取り巻く環境整備、GIGAスクール構想のさらなる推進、不登校、いじめ対策、未然防止、学校施設の老朽化対策と防災機能強化の一体的な充実も引き続き強力に推進していく。
 最後に、いわゆる高校無償化等は低中所得層への支援や専門高校を含む公立学校への支援の充実の具体化を含め、3党の検討状況等を踏まえて対応する。
 3人の民間議員からそれぞれご発言があった後、財務大臣からご発言がありました。
 社会保障分野においては、全世代型社会保障の構築に向け、引き続き改革工程に基づき取組を進めていかなければならない。さらに、民間議員からは所得資産に即した応能負担の強化や小さなリスクへの保険給付の在り方の検討、生涯活躍社会にふさわしい高齢者医療制度の在り方の検討などのご提案をいただいた。社会の変化に応じて必要なサービスが必要な方に提供され、保険料を抑制せず、公平な負担となるように保険制度を不断に見直し、給付と負担のバランスを確保していくことは大変重要な課題であり、関係省庁と議論を深めていきたい。
 教育分野について、人口減少が進む中、質の高い教育を持続的に提供し、個々人の能力を向上していくことがより求められている。そのため、いわゆる教育無償化についても先般の3党合意において論点とされているとおり、教育の質の確保という方策と、そして恒久的な措置にするための安定財源をしっかり確保していくことが重要だと考えている。
 海外からの研究者の呼び込みについては、昨今の国際情勢の変化も踏まえれば、海外の大学が夏休みに入っている期間に早急に取り組むべき課題である。そのため、既存の予算や基金を柔軟に活用してトップ大学やトップ研究機関に絞って重点的かつ迅速に対応すべきと考えている。
 議題2及び議題3におけるご意見です。
 1人目の民間議員です。
 一番申し上げたいところが、今、大きなパラダイムシフトが起こっているということ。不確実性というと、目の前に霧があって霧が晴れるまで待っているイメージがあるが、実は、左か右かではなく、ゴールは全然あさっての方向になっており、世界の方向に向けてどうやって国を動かしていけばいいのか、どういう方向に持っていったらいいのかということを今の段階からしっかり議論しないといけない。
 赤澤大臣が交渉に当たられている中で実感されていると思うが、国際的な貿易秩序は変わってきている。権威主義的な国も現れ、グローバルサウスも大きく発展してきている。生成AIも発展している。生成AIは我々がどう活用すべきかを検討しているところであるが、グローバルサウスなどの発展途上国にとっても大きな武器となっている。そういった国が一気にジャンプアップする上での力になり得る。そういった可能性を考えたときに、何を日本の強みとして、どういう構造をつくっていかなければいけないのか議論する必要がある。ヨーロッパなどではそういった議論を始めている。日本が遅れてしまうのを防ぐためにも、諮問会議の場でどういった未来を考えるべきか、どういう産業構造に変えていくかを考えていきたい。
 社会保障や労働生産性の問題も未来像を抜きには語れない。日本の構造として進められる改革を粛々と進め、過去からの延長線上でできることを考えてきたが、進んでこなかった。世界、未来は大きく変わり、未来が違う方向にある。未来の方向にできるだけ早く持っていくことが、今、問われている時代である。そういった方向で政策を考える必要がある。
 今現在の政策はネガティブなものではなく、賃金も上がり、世の中の明るい構造も見えてきている。これから骨太の方針においても賃上げの普及・定着は明るい未来の話であるが、国民はこれだけ見ても明るい方向性を実感できていない。もう少し明るい方向性を骨太の方針の中で示していくべき。例えば第1章でこういうことをすれば一人一人のウェルビーイングの高まりや明るい未来をつくり出せるといったようなことを打ち出していくべきではないか。細かい政策の積み重ねではあるが、それで何ができるのかをもう少し強く打ち出していければよいと考えている。
 2人目の民間議員です。
 米国の関税政策は世界中の国々が大きなリスクと捉えている。赤澤大臣や武藤大臣に懸命に交渉していただいているおかげで石破政権として成果を得られるのではないかという期待感が金融市場にはある。また、USスチールの件については、詳細はこれからだと思うが、よい形になっていきそうという印象がある。引き続き全力を挙げて取り組んでいただきたい。
 「成長と分配の好循環」の徹底のためには、物価と賃金の上昇は必ずやっていただく必要がある。労働生産性を高めるためのデジタル化は言うまでもないが、能力に見合う報酬というのもきちんとやっていく必要がある。
 米の価格について値上がりばかりが話題になっているが、まずは5キロ幾らが正当なのかということを示すべきではないか。需要の高い製品の価格が上がることは当然のことであり、ただ下げるのではなく、価格はどれぐらいであるべきかということを分かっていただくことも重要。
 消費税減税について財源なきままの減税は無責任。専門家と一般の国民の方の考えには差があり、この差については財源なきままの減税がいかに無責任なのかという説明が足りていないと見ている。
 超長期国債の金利が急上昇している。米国の関税や米国債の格下げと先日の株価暴落も含め、いま一度リスクとして肝に銘じていただきたい。パラダイムシフトの話が上がる中で、米国株が上がってくる材料を市場は待っているともみられる。ピンチをチャンスに変えていくという心意気を骨太の方針においても示していただきたい
 3人目の民間議員です。
 足元で米国の関税措置をめぐり不透明感があるので、国内投資の拡大に向けて政府が企業と連携して取り組むことが必要。民間だけでは対応が困難な、例えば野心的でイノベーティブな技術開発とインフラ整備を行い、民間企業の予見可能性を高め、民間投資を促すダイナミックな経済財政運営が必要。
 クリーンエネルギーの安定供給、研究力を高めるということ、社会インフラの整備、AI・デジタル、バイオ、宇宙といった戦略分野への投資、スタートアップの振興についても骨太の方針に具体的なアクションを盛り込んでいただきたい。
 個人消費の拡大に向けて公平・公正で持続可能な全世代型社会保障改革が必要。現役世代の負担に偏ることなく、また不足分を財政赤字で捻出し続けることのないように税と社会保障を合わせた負担の在り方を議論する必要がある。よい先例として、2008年に官邸につくられた社会保障国民会議では、年金、医療、介護、少子化対策など、社会保障機能の強化と税をセットにして議論し、必要な財源の推計を行ったことがある。これを受けて政府では中期プログラムを確認・決定し、いわゆる中福祉中負担の社会保障を目指し、安定財源の確保として消費税を含む税制抜本改革の全体像を取りまとめ、それがその後の指針となった。この機会を逃さず、同じような官邸会議を立ち上げてはどうか。
 次に、閣僚からの発言です。
 村上総務大臣です。
 本日、骨太方針の骨子案が示されているが、新策定に向け2点申し上げる。
 人材不足が深刻化する今、自治体の行財政を持続可能なものとするためには、これまでとは異なる新たな視点で、小規模団体では件数が少なくノウハウが蓄積されない事務は広域で処理する。事務の内容が類似するものについては国、都道府県が市町村に代わって処理するなど、国、都道府県、市町村の役割の見直し等を進めていく必要がある。現在、総務省の研究会でこのような提言をまとめているところであり、今後、自治体や各府省の協力も得て取り組んでいく。
 次に、資料12として地方財政審議会の意見の概要を配付している。この中では、地方歳出について物価の上昇、人件費の増加、金利の上昇など歳出増加圧力が高まっており、経済・物価動向等を踏まえて一般財源総額を増額確保すべきであること、地方税について財源確保の観点から重要性等が示されるとともに、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に向けて取り組むべきであること、地方財政の健全化として臨時財政対策債の新規発行額ゼロを継続するよう努力すること等が示されている。このほかにも、地域医療供給体制の確保やガバメントクラウド利用料を含めたシステム運用経費の増加への対応など重要課題への対応についても意見が示されている。こうした研究会の議論や審議会の意見を十分に踏まえ、骨太方針の策定を行っていただきたいと考える。
 加藤財務大臣です。
 財政制度等審議会における議論の状況について資料13に基づき説明する。同審議会では、財政総論のほか、活力ある経済社会の実現、安心で豊かな地域社会の構築、持続可能な社会保障制度の構築といった我が国が抱える中長期の重要課題について大所高所からご議論をいただいた。
 主な内容としては、基本認識・財政総論の欄に記載のとおり、米国トランプ政権の政策は、自由貿易体制など戦後の国際秩序の根幹を揺るがしかねないものだが、背景にある所得格差・分断、社会の不安定化を構造的な変化と捉え、我が国も戦略的に対応する必要がある。人口減少・少子高齢化が不可避な中、これらに策を講じつつ、供給制約に対応した新しい経済社会モデルの設計が求められる。新たな経済ステージへの移行には成長と分配の好循環を実現し、物価上昇を上回る持続的な賃上げを実現・定着させることが鍵。世界最悪水準の債務残高対GDP比や利払い費の増加リスクを抱える中、有事にあって万全の対応を期すため、市場の信認を確実なものとすることが重要であるなどのご指摘がなされる方向。
 財政制度等審議会においては、近日、建議を取りまとめる予定と承知している。本日ご説明した考え方についても骨太方針に反映していただきたい。
 民間議員から国の財政についてご議論いただいた。引き続き市場の信認を確実なものとするよう検討していきたい。
 武藤経済産業大臣です。
 資料14のとおり、経済産業省では経済産業研究所と共同で官民目標のである2040年国内投資200兆円が達成されたときのマクロ経済、産業構造を推計した。また、そうした産業構造を実現するための就業構造についても推計した。この推計では、ここ数年と同水準の賃上げが継続するとともに、骨太方針2024でも示されている名目GDP約1,000兆円が達成される。この実現に向け必要な政策の方向性は3つ。
 第1に、新たな付加価値を生む成長投資促進のための構造改革を進める。研究開発・設備投資を後押しするインセンティブ措置や人的投資やM&Aの拡大、事業ポートフォリオの組替えに資する会社法改正、競争政策の深化等に取り組む。また、就業構造推計の結果も踏まえ、文部科学省と産業人材育成のためのプラン策定を進めるなど、関係省庁と連携した人材育成に取り組む。
 第2に、物価高、人手不足下でも持続的に成長できる地方経済・産業を実現する。省力化投資プランを実行するとともに、地方イノベーション創生構想にも貢献する。
 第3に、成長投資を実現する経済基盤を強化する。再エネ、原子力など脱炭素電源の最大限活用とそれに向けた事業環境等の整備や経済外交、経済安全保障の強化等に取り組む。
 こうした産業構造の実現に向けて官民でもこの将来像を共有しつつ、高付加価値化のための中長期的な成長投資を進めていくことは、米国の関税措置により不確実性が高まる中にあっても引き続き重要。今年の骨太方針でも、賃上げと投資が牽引する成長型経済へ転換するため、高付加価値化に資する成長投資を強力に進めていくという政府の強いメッセージが大切だと考えている。
 民間議員からの補足での追加発言です。
本来は3年連続で賃金が上がっており、ボーナスを見越して消費が拡大していってもおかしくない局面だが、実際は国際情勢も踏まえ減益見通しを出している大手企業もある中で、消費者心理は冷え込んでいる。企業にはぜひ社会的ノルムとして消費者物価以上の賃上げをするという姿勢を見せてほしい。人手不足は進んでおり、小売業で外国人材が多く働いている。日本の社会において外国人材との共生が実現するよう早急にご議論いただきたい。
 最後に、総理から締めくくりのご発言がありましたが、皆様にお聞きいただいたとおりですので、割愛いたします。