第5回記者会見要旨:令和7年 会議結果
赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:令和7年4月21日(月)19:49~20:25
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室
1.発言要旨
経済財政諮問会議の概要についてご報告を申し上げます。
本日の議題は2つで、「グローバル対応」、それから「地方創生2.0及び持続可能な地方行財政の重要課題」について議論を行いました。
1つ目の議題「グローバル対応」では、民間議員から「米国の関税措置の発動を受けて世界経済の不確実性が高まる中、安定的なマクロ経済環境を構築すべき」、「自由で開かれた貿易・投資体制の維持・強化に向け、CPTPPの更なる拡充など、我が国がリーダーシップを発揮すべき」、それから「外的ショックに強靱な経済構造を構築するため、国内投資や対内直接投資を促進すべき」といったご提案がありました。
2つ目の議題「地方創生2.0及び持続可能な地方行財政の重要課題」では、民間議員から「地域の人財形成や特色ある付加価値創出の取組について、適切なKPIの設定などその効果を的確に検証しつつ支援をすべき」、「国土強靱化実施中期計画の策定・実施に当たっては、緊急度や経済的・社会的影響を総合的に勘案し、優先度を踏まえて着実に推進すべき」、そして「持続可能な地方行財政に向けて、1%を上回る経済成長の実現や社会保障の給付と負担の改革の継続、長期的に偏在性の少ない税体系の構築が必要」といった提案がありました。
総理からは、「先週、米国との協議を開始したが、引き続き一連の関税措置の見直しを強く求めるとともに、資金繰り支援など必要な支援に万全を期していく」、「外的ショックに強靱な経済構造の構築に向け、国内投資の拡大、サプライチェーンの強靱化のほか、特区の活用・見直しを含め対内直接投資を促進していく」、それから「地方創生2.0の基本構想の取りまとめや、防災・減災、国土強靱化、持続可能な地方行財政に向けた取組を進め、『楽しい日本』、『楽しいふるさと』を創っていく、その際、地方においてもエビデンスに基づく政策立案を進め、高い効果を生み出していく」といった旨のご発言がありました。
諮問会議の詳細については、後ほど事務方から説明させていただきます。
2.質疑応答
(問)先ほどお話しいただいたように、本日の諮問会議で民間議員からグローバル対応についてご提言がありました。自由で開かれた貿易、投資体制の維持・強化に向けて国際社会においてリーダーシップを発揮すべきといったことが指摘されておりますが、そのためには具体的には何が必要か。あるいは、対米交渉においては繰り返し国益重視ということを掲げられていると思いますし、また、前回の諮問会議では、民間議員の方から損をしないようにというようなご発言もあったような気がしますが、リーダーシップと日本の国益というもの、矛盾はしないと思いますが、どのように両立を図っていくのかお考えをお聞かせください。
それと、提言の中にもう一つある、安定的なマクロ経済環境の構築について、具体的にどのような財政運営が求められているとお考えか、補正予算や経済対策の必要性についての考え方を含めてお聞かせください。
(答)まず、自由貿易や開かれた競争的市場、ルールに基づく貿易システム及び経済統合を進めていく上で、大きな意義を有するCPTPPなど様々な枠組みを活用し、自由で公正な経済市場の維持・拡大に向けイニシアチブを発揮していくということです。特に、CPTPPは、米国がTPP12から抜けたときに、その後日本が本当に頑張って維持をしたということがあります。最近でも、昨年英国が加わり、そして今コスタリカの新規加入とか、あるいは協定自体の見直し、更にグレードを上げていこうということでやっていますので、そういったようなものを積極的に活用していきたいと思っています。
それから、これまで申し上げてきたとおり、何が日本の国益に資するのか、あらゆる選択肢の中で何が最も効果的なのかを考えながら取り組んでまいります。現在、米国の関税措置に関する総合対策本部や、総合対策タスクフォースを中心に、各産業に及ぼす影響の精査し、それらの状況も踏まえて業界に特化した対応も含め、必要な対応を行っているところでございます。幅広い省庁が対米交渉及び国内対策の双方に深く関わる体制となっておりまして、政府内で適切かつ有機的に連携をして対処していこうと思っております。
それから、マクロ経済環境の構築ということですけれども、今般の米国の関税措置の発動を受け、世界経済の不確実性が高まる中でありますが、引き続き2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現と、物価上昇を上回る賃上げの普及・定着に取り組んでいくことが重要であるというふうに考えております。それから、米国の関税措置について、まずは影響を十分に分析することが重要であり、その上で資金繰り支援など必要な対策を講じていくこととしております。
令和6年度補正予算や令和7年度予算で盛り込んだ政策は、これからまさに執行するところであり、こうしたあらゆる政策を総動員し、最大限の効果を発揮させていく、国民の皆様のお手元に届けていくということが重要であると考えております。令和7年度予算も成立したばかりですので、補正予算、経済対策について現在検討しているという事実はございませんが、適切な対応を取ってまいりたいというふうに考えております。
(問)米国の関税措置関連でお伺いいたします。
トランプ大統領が20日、自身のSNSで非関税障壁について為替操作、付加価値税、あと特別に日本を例に挙げて、日本のボウリングテストと、これが非関税障壁の問題だとして取り上げる投稿を行いました。これについての大臣の受け止めと、あと、今後どのように対応していこうとお考えかお願いします。
(答)“Non-tariff cheating”といって投稿されているのですね。ご指摘のトランプ大統領のSNSにおける発信は承知をしておりますが、発信の逐一に政府としてコメントすることは差し控えたいと思います。
政府としては、先週の米国の関税措置に関する日米協議も踏まえつつ、次回の米国との協議に向けて、引き続き政府一丸となって最優先かつ全力で取り組んでまいりたいと思っています。
事実関係として申し上げると、日本が採用している国際基準において、歩行者の頭部を保護するための基準として頭部を模擬したダミーをボンネットにぶつける試験はございます。これにより、ボンネットを柔らかくして衝撃を吸収する性能を満たしているかどうかを確認しているわけです。このように、日本の自動車の基準・認証は国連で策定された基準や認証手続を採用しているものであります。そういったことも踏まえ、様々なレベルで米国と意思疎通をしていく中で、米側の問題意識を把握し、こちらの考え方も説明するなど、よく意思疎通していく必要があるというふうに考えております。
(問)2点伺います。1点目、今日、林官房長官からも発表がありましたが、日米関税交渉の事務局を10名拡充されたかと思います。今回専従の担当者が置かれるかと思うのですが、この意義について教えてください。
2点目、石破首相が昨日の日曜討論でEV(電気自動車)充電規格について対応が必要か精査をするとの発言がありました。USTR(米国通商代表部)が3月に公表した報告書では、CHAdeMOを批判していますが、こうした規格がアメリカの車が日本で売れない要因の一つなのか、また今後交渉の材料になり得るのかお考えをお聞かせください。
(答)まず、事務局でありますが、ご案内のとおり、まず総理ヘッドの、官房長官と私が副本部長をやっている「米国の関税措置に関する総合対策本部」がございます。その下に、官房長官と私が共同議長を務めております米国の関税措置に関する総合対策タスクフォースがあり、総理ヘッドの総合対策本部、それから長官と私が共同議長をやっているタスクフォースがあります。その両方の事務局として、内閣官房に米国の関税措置に関する総合対策本部事務局が置かれております。
それぞれ総合対策本部は4月8日、それからタスクフォースは11日に設置したということで、事務局は11日に内閣官房に設置されています。事務局は、佐藤内閣官房副長官を事務局長、それから内政担当、外政担当それぞれの副長官補を事務局長代理とし、まず次官級3名、局長級9名、審議官級6名など、外務省や経済産業省を中心に37名で発足いたしました。さらに、今お触れになった官房長官の会見については、本日付で体制を拡充し、農林水産省や国土交通省を含む各省の参事官及び参事官補佐等10名を加え、事務局の業務に専従してもらうことにしました。合計47名になります。
高度な調整協議を担うために、必要かつ有為な人材を関係府省から集めて緊密に連携し、省庁の枠を超えて、米国との交渉や国内産業に対する必要な対策にオールジャパンで最優先かつ全力で取り組んでいくために、このような新しい配置をしたところであります。
それから、EV充電についてですけれども、ご指摘のUSTRが3月に公表した報告書については承知をしております。CHAdeMOというのは、チャージでモビリティーということで、報告書に書いてあることについては承知しています。個別具体的な論点について、申し訳ないのですが、協議を担当している私の立場から、特に現時点でコメントすることは差し控えさせてください。いずれにせよ、米国と意思疎通する中で米側の問題意識を把握し、こちらの考え方も説明するなど、よく意思疎通していく必要があると考えております。
(問)これまでの質疑の関連で2問伺います。
まず、先ほどのボウリングテストの関連なのですが、アメリカのトランプ政権は、今回のボウリングテストの件に加えまして、コメの700%の関税についてもこれまで言及がありまして、事実と異なった主張を繰り返しています。こうした点について、改めて受け止めと、今後の政府対応をお願いします。
また、先ほどの事務局の10名の拡充なのですが、この中で国土交通省と農林水産省から新たに専従で職員を配置するということですが、こうした省庁から職員を配置するのは、やはり農産品や自動車への対応を行うためということなのでしょうか。
(答)ざくっと申し上げますが、米国の大統領、あるいは閣僚の方たちが事実関係を誤って認識しているのではないかという懸念があるときは、事務方を通じて何回か訂正の努力をいたします。にもかかわらず、あまり認識が改まらないということもなきにしもあらずでして、そういうことも含めながら折に触れて、また認識がなかなか改まらないようであれば、丹念に事実関係の指摘をするというようなことになると思います。
その辺は、今ありがたいことに閣僚間での協議ももちろんやります。また、私が今月中に訪米することになると思いますが、事務的な協議も続けるわけで、きちっと合意の中身を作るときには事務方も必ず加わりますので、最終的に誤った事実関係に基づいてものが決まるとか、そういうことはないだろうと期待はしているということになります。
それから、事務局の話ですね。事務局については、私自身が交渉に行ったときに、特定の問題が出たときに、それはおよそ答えられませんとか担当していませんというと交渉がなかなか進みづらいところがあるので、やはりどのような分野についてものを言われても、ひと通り私のほうで受け答えができるように、そういう意味で、本当に深く最終的に技術的なところも含めて細かい合意をしようと思えば、これは私だけで手に負えない場合もあります。けれども、ひと通りどのような分野についても、ざっと我が国の、日本側の考え方を説明できるように、そこはしっかり事務局の職員の方たちにサポートをしてもらおうということになります。
特に関税の世界は、譲許表を見られたら分かると思いますが、こんなに分かりづらいのです。卵一つとっても殻つきのものと、それから割った後の液卵とか、それを冷凍したものとか、とにかくそれぞれで関税が全部違ったりするので、そういうものも含めて、いざ何かが障害になっているという指摘があれば、相当丁寧に見ていかないといけません。全部が全部私の手に負えるわけではありませんので、農産物についてはそういうことです。
また、車についても、安全基準については、いろいろと国際基準に従っていろいろなものが多種多様にありますので、そういう意味で、きちっと一番分かっている事務職員にサポートしてもらいながら、間違いのない、誤りのない交渉をしていきたいという体制整備であります。
3.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明
令和7年第5回経済財政諮問会議です。今回の議題は2つです。議題1、「グローバル対応」について、十倉議員から資料2に基づき民間議員の提案をご説明いただいた後、意見交換を行いました。続きまして、議題2、「地方創生2.0及び持続可能な地方行財政の重要課題」について、柳川議員から資料5に基づき民間議員からの提案をご説明いただき、坂井防災・国土強靱化担当大臣から資料6、中野国土交通大臣から資料7、村上総務大臣から資料8に沿って、それぞれご説明をしていただきました後、意見交換を行いました。
1つ目の議題です。
1人目の民間議員です。
グローバルに強い日本経済を目指す観点から4点意見を申し上げる。
1点目は、多層的なサプライチェーンの強化が重要。これまでは欧米が中心であったが、こうした情勢を契機として、これからはアジア、アフリカ、インドなど、世界中と強靱なサプライチェーンをつくっていくことが大切。
2点目は、グローバルな連携強化が重要。CPTPPを中心とした経済連携協定で日本がリーダーシップを発揮していくとともに、対内直接投資をさらに増やしていくことで開かれた日本を目指すべき。
3点目は、言語の壁、制度の壁を見直すことで海外の人が活動しやすい環境をつくっていくことが重要。生成AIの活用が進み、観光地ではスマホの自動翻訳機能などによりインバウンドにうまく対応できている。これに加えて制度的な面でも活動しやすくしていくことが大事。
4点目は、こうした動きを地域活性化につなげていくことが大切。グローバル対応と地方を結びつけることでより地方が直接海外と結びつき、地域経済の活性化にもつながると考えている。
次に、2人目の民間議員です。
米国の関税措置によってアメリカの自国優先が明確になったのではないか。トランプショックを契機に国内の経済活性化をすべき。
この30年で規制緩和がなされなかった。ライドシェアや人材流動化といった規制緩和、規制改革を加速させ、民間投資を引き出して、新陳代謝を活性化させることで日本の経済をよくする仕組みづくりが重要。
トランプショックの中でも輸出で勝てる日本をつくることが必要。戦略的不可欠性がどこになるのかということを理解し、安いものではなく、付加価値の高いものを輸出するようにする。不可欠性というものを理解して、企業が持つ技術を俯瞰的に把握することを経産省、防衛省、国家安全保障局が協力して、官民合わせた対応を望みたい。
これまで対内投資を取り込むことについて本気で取り組めていなかったと感じている。シンガポールの取組を参考にしながら、エネルギーの調達や海外からの高度人材の生活環境の整備など、ワンストップソリューションについて経済産業省を中心に体制整備を行うべき。
インドは地政学的に重要。インドはデジタル人材がいる一方で、製造業の人材がいないとされている。その中で日本企業が大成功をおさめている例がある。
中国がデフレ輸出をすることで各国が保護主義的になる可能性がある。日本はグローバルサウスへの投資と付加価値のある製品をつくるとともに、それを日本のサプライチェーンの中に組み入れる仕組みをつくっていくことが重要。その際にはJBICの活用、JICAの協力をいただくということで、日本企業進出の後押しをしてくれることを期待したい。
併せて、財政力についても規律を持って対応すべき。
3人目の民間議員です。
トランプ関税が収束するまで市場のボラティリティーの高い状況が続くのではないかと思う。赤澤大臣がアルミ・鉄鋼、自動車・自動車部品等を全て交渉でテーブルの上に乗せたが、引き続き日本が有利になるように導いていただくことを強く希望する。関税が決まった場合の対策を取っている場合ではなく、日本全体が一丸となって日本にとって有益な結論を引っ張ってくることを優先すべき。
補助金や消費税減税、中小企業の資金繰りの支援はいざというときのセーフティネットとして大事であるため、頭の体操は必要だが、それにとどめ、むしろ、日本の立場をしっかりと表明していただきたい。アメリカ以外の国との連携をどうするかについてもリーダーシップを発揮していただきたい。
トランプ大統領が放棄している気候変動関連政策についても、地球上の気候変動リスクが高いので、地球上全員の問題として、どのようにトランプ大統領に改心していただくかも重要。例えば二酸化炭素の排出量にペナルティーをかけることを、米国を除く全ての国、当然中国を含めた世界全体で決められないか。そうした様々な点で戦略的リーダーシップを発揮していくことこそが日本にとって最も重要だと確信している。
実質GDP成長率1%を達成する目標に着々と向かうことは、外部環境がどうであれ重要。米国債購入を強いられる等といった話も浮上してきているが、一蹴すべきであり、ドルシステムに日本がどれだけ貢献してきたかを強調すべき。
次に、閣僚からの発言です。
武藤経済産業大臣です。
米国の関税措置に対しては我が国産業に与える影響を精査しつつ、支援に万全を期すことが重要。これまで全国に設置した相談窓口やプッシュ型での調査により影響の精査を集中的に進めてきた。本日午後に省内で第3回米国関税対策本部を開催し、その結果を中間的にまとめ、公表した。引き続き現場の声を踏まえながら積極的に情報発信しつつ、実態に即した形での追加の対応を実施していく。
党での議論も進んでいると承知していることに加え、赤澤大臣も先週訪米し、米国との本格的な交渉が始まった。引き続き米国に対して関税措置の見直しを強く求めていくとともに、政府全体で一丸となって対応していく。
また、世界の不確実性が高まっているからこそ、我が国の輸出先を引き続き確保するためにも、CPTPPやグローバルサウスとのEPAなど、自由貿易を重視する同志国との連携強化やサプライチェーン強靱化、WTO改革などにも取り組んでいく。
さらに、こうした情勢にある今こそ、2040年度国内投資200兆円という官民目標の実現に向けてGXやDXなどの戦略分野への成長投資により潜在成長率を引き上げ、市場の成長期待を高めて賃金や消費の拡大につなげていくことが不可欠。
明日、経済産業省の審議会で成長投資が導く2040年の産業構造を数字で示し、実行すべき政策の方向性と一体的に議論する予定。実現可能な明るい将来見通しを企業、国民、政府で共有し、予見可能性を高めながら高付加価値化に向けた成長投資の拡大と持続的な賃上げの実現に必要な施策をさらに強化していく。
2つ目の議題です。
1人目の民間議員です。
2点申し上げるということで、1点目は、「道州圏域」の必要性について、地方創生を考える上で人口減少、少子高齢化は避けて通れない課題。人口減少社会において既存の自治体単位の取組には限界があり、都道府県の枠組みを超えた、広域ブロックにより地域の特性を生かした独自の取組を進め、切磋琢磨すべき。
2点目は、その方策について、既存の行政区域を超えた取組は容易ではなく、できることから始めるべき。「道州圏域」の取組については、経済産業分野、高等教育、防災・減災、国土強靱化といった具体的な分野での連携を進めるべき。
経済産業分野の連携においては、観光、農業のみならず、エネルギー立地と産業政策の連携が極めて重要と考える。いわゆるワット・ビット連携と言われているようなクリーンエネルギーの供給拠点の立地を踏まえたデータセンターの設置といった取組が考えられる。その際には官民連携で電気、水など産業インフラの確保、人材育成の拠点整備、企業の集積を広域で戦略的に進める必要がある。
また、防災・減災、国土強靱化においては、PDCA、EBPMの観点から効率的・効果的に進めるべきであり、加えて、将来の災害に備えた防災まちづくり、防災DXの活用、インフラの点検・再整備についてより広域で議論すべき。
2人目の民間議員です。
地方創生を今度こそ成功させるための最も重要な必要十分条件を1つ挙げると、地方に職があるということに尽きる。人は仕事がなければ住み続けることができない。一次産業だけでなく、様々な産業が根づくように経済特区を割り当てて、その地域にいなければできない職業や仕事をどれだけつくれるかということだと思う。
大学についても、この大学でなければ学べないといった特色をつくっていくことが重要。就職や就学の際に選ばれる決め手となるような特徴を持った企業、産業、大学等を地方にどれだけ呼び込めるかが地方創生にとっての最大のポイント。地方のやる気のある首長と協働で特区化していくことが成功に近づけることになるのではないか。
全国一律といった発想を捨てることも大事。これまで日本は一律の底上げに執着し過ぎて競争力を失ってしまった。経済特区化して差をつけることをやってみてはどうか。
南海トラフについて、これに備える財政基盤はもちろんのこと、インフラの点検や高度化、老朽化対策には万全を期すべき。他方、何でもかんでも強靱化すべきではなく、将来的な日本の人口に見合うように整備すべき。その意味で、コンパクトシティ化は、災害が起こっていないときこそ進められるよう国として率先することが重要。
広域連携を進めるためにも、また地方自治体の負担を軽減するためにも地方のデジタル共通基盤の整備を進めるべき。
3人目の民間議員です。
「地方創生2.0」を進める上での仕組みづくりについて、地域が抱える問題は多様化しており、これまでの中央がつくったひな形を地方に当てはめるのはむしろコストがかかって非効率ではないか。これまでの中央集権は限界ではないか。これはビジネスでも同じことが起きている。中央と地方のやることを明確に分けて、基本的には地方に任せるようにすべき。地方創生交付金が自由に使えることに加えて、失敗もある程度許容できる財政措置をするぐらいの覚悟が必要ではないか。
地方の国立大学と公立大学は知事が管理するなどの取組を行うことによって、国が自治体の取組を見ながら、地方のできることを見える化し、地方の中である程度競争させていくことが必要ではないか。
地方自治にもアニマルスピリッツが重要と考える。徴税についても将来的には一定程度地方に任せる仕組みづくりも必要ではないか。地方の競争を促す中で、エネルギーを地産地消することも必要。そういったエネルギーに着目した企業城下町をつくることなども必要なのではないか。
次に、閣僚からの発言です。
伊東新しい地方経済・生活環境創生担当大臣です。
新しい地方経済・生活環境創生交付金や地方創生伴走支援制度といった「地方創生2.0」の考え方に基づく新たな取組が始動している。こうした新たな取組により、自治体の主体的な取組を強力に後押しするとともに、自治体において実効的なKPIを設定いただけるように努めていく。引き続き本日の議論も踏まえ、「楽しい日本」、「楽しいふるさと」の実現に向けて、若者・女性が活躍しやすい環境づくり、地域産業の高付加価値化、関係人口や移住受入環境の整備など、「地方創生2.0」の実現に向けた取組を加速化する。
また、地方創生に関する有識者会議もこれまで4回地方で開催し、現場で意見を伺ってきたところ。本年6月に取りまとめる基本構想の具体化を進めていく。
次に、坂井防災・国土強靱化担当大臣です。
実施中期計画の策定作業の一環として国土強靱化施策の取組状況の評価を実施し、5か年加速化対策に位置づけられた施策については、重要業績指標等に基づき、目標の達成見込みを確認するとともに、各施策の効果発現の状況を確認している。
有識者議員のご指摘も踏まえ、実施中期計画に位置づけている施策においては、地域ごとに異なる災害リスクの実情や緊急性等を踏まえ、早期に効果を発揮できるよう優先順位を検討の上、機動的・弾力的に実施していく。引き続き関係府省庁と連携し、国土強靱化の取組を推進していく。
中野国土交通大臣です。
まず、八潮市での道路陥没事故に係る有識者委員会の検討の結果を踏まえ、必要な対策を着実に実施する。また、全ての所管インフラで定期検査や診断を適切に行えるよう新技術等を最大限活用して高度化していく。その上で、予防保全型への移行が重要であるが、国土強靱化5か年加速化対策により、例えば防災上重要な道路における舗装の修繕の完了が大幅に前倒しされるなどの成果が見込まれている。今後も集約・再編によりストック適正化を進めつつ、国土強靱化実施中期計画に基づき対策を大幅に加速する。
技術者不足の自治体のため、広域、複数、他分野のインフラを群として管理する取組の普及やインフラメンテナンス国民会議等を通じた啓発等にも取り組んでいく。
加藤財務大臣です。
地方創生を実現していくためには人口減少下においても住民ニーズに対応した質の高い行政サービスを安定的に提供していくことが重要。そのためには、デジタル技術の活用等による自治体DXや既存の行政区域に関わらない広域的な連携などを通じた行政の合理化・効率化をより一層推進していくことが必要。
また、東京一極集中が続く中、地方公共団体間の税収の偏在や財政力格差が拡大しつつあり、これにより行政サービスの地域間格差が生じることを通じてさらに一極集中が加速する可能性もある。このため、偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に取り組んでいくことが必要。財務省としても地方創生を実現するための持続可能な仕組みづくりに向けて関係省庁ともよく議論していく。
最後に、総理から締めくくりのご発言がありましたが、お聞きいただいたとおりですので、割愛いたします。