第1回記者会見要旨:令和7年 会議結果

赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和7年1月17日(金)19:12~19:40
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 まず、経済財政諮問会議の概要についてご報告をいたします。本日の議題は二つございまして、「令和7年前半の検討課題」と、「中長期の経済財政に関する試算」について議論を行いました。
 一つ目の議題、「令和7年前半の検討課題」では、「楽しい日本」の実現のためには、働く人々をはじめ、頑張る人が報われる、全ての国民が安心して暮らしていける仕組みを作ることが大変重要であるということであります。また、マクロ経済財政運営については、「当面は物価上昇を上回る賃上げの定着を最優先目標に据えて取り組むべき」というご意見がありました。また、「1人当たり賃金が継続的に3%程度の増加を続ける経済の実現に取り組むべき」というお声がありました。
 また、「中長期的には、経済・財政・社会保障の持続可能性を実現するため、実質1%を安定的に上回る成長を実現しつつ、歳出・歳入両面から改革に取り組むべき」、そして、「オープンでルールに基づく貿易・投資環境の維持・強化と、経済安全保障の強化が重要」、更には、「令和の列島改造においては、各地域・各圏域の特色に応じてグローバル需要を取り込む形で地域間が連携しつつ、高付加価値創出型の経済構想を構築すべき」といったご提案がございました。
 二つ目の議題、「中長期の経済財政に関する試算」については、2025年度のPB対GDP比は、昨年11月の経済対策に係る歳出の追加などにより、現時点で赤字の見込みとなっております。2026年度は経済成長に伴う歳入増や同対策に係る歳出の執行縮小により黒字化する姿となっております。公債等残高対GDP比は、ゼロ近傍の成長を投影している「過去投影ケース」では、2020年代後半に上昇に転じるが、賃上げと投資が牽引する成長型経済へ移行していく「成長移行ケース」では、PBが黒字化する中で徐々に低下をすると、そのような試算結果でございました。
 中長期試算を踏まえて、民間議員の皆様からは、「2025年度のPBが黒字化しないという結果の検証・反省を次につなげることが重要」とのご認識のもと、「歳出構造の平時化と有事に備えた財政運営の重要性や、PBは2025年度は2001年度以降で最も赤字幅が縮小し、2026年度に黒字化するという見通しであり、中長期的な財政の姿は大きくは変動していない」といった指摘がなされたところでございます。
 その上で、「経済あっての財政」という考え方のもと、早期のPB黒字化に向け、「経済・財政新生計画」の枠組みのもとでの取組の継続を求めるとともに、今年の骨太方針に向けた議論の中で、賃上げの中長期的な経済への波及の把握であるとか、企業部門が投資超過へシフトするための方策、早期のPB黒字化実現を含む財政健全化に向けた取組、経済・物価動向などに配慮した歳出改革努力などについて特に審議すべきといったご提案をいただきました。
 石破総理からは、「諮問会議として本日指摘のあった点を踏まえつつ、的確なマクロ経済財政運営、グローバル経済の環境変化に対応した経済成長といった点について議論を深め、内閣が目指す経済財政政策の全体像を骨太方針で示していくこと。また、中長期試算に基づく議論を踏まえ、「経済あっての財政」の考え方のもと、今後も財政健全化の旗を下ろすことなく、早期の黒字化実現に向けて潜在成長率の引上げに重点を置いた政策運営に取り組み、歳出・歳入両面からの取組を継続すること。更に、経済・財政新生計画の枠組みのもと、今年の骨太方針において早期のPB黒字化の実現を含め、今後の財政健全化に向けた取組を示すべく、諮問会議においても検討を進めること」といった旨のご発言がございました。
 諮問会議の詳細については後ほど事務方から説明をさせていただきます。
 それから、私は来週1月20日から22日までスイスへ出張をし、平将明デジタル大臣と共に世界経済フォーラム年次総会、通称ダボス会議に出席をいたします。前回申し上げましたが、ダボス会議は主要国の首脳・閣僚、財界のリーダーなどが出席をし、世界経済、地球規模課題、科学技術、芸術等の幅広い分野をテーマとする様々なイベントが開催をされると承知しております。
 私も「不確実性が増す国際社会における日本の経済政策に関するセッション」、すなわち「Japan Navigates Uncertainty」にパネリストとして登壇する予定でございます。私からは、日本経済の強みや魅力を世界に発信し、多くの企業に対し、日本への投資を呼びかけるいい機会にしてまいりたいと思っております。あわせて、パネリストとして参加される日本及び海外のリーダーの方々とも様々な意見交換を重ねてまいります。
 また、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)を所掌する大臣として、当日のダボス会議に来ていらっしゃる閣僚との会談も検討しております。
 詳細は事務方にお問い合わせいただければと思います。






2.質疑応答

(問)2問ありまして、1点目が、冒頭でもありましたけれども、本日の経済財政諮問会議で、2025年度のPB黒字化について4.5兆円の赤字という試算が出たと思うのですが、これに関する受け止めと、今、少数与党で歳出圧力が強まる中で健全化に向けた今後の在り方とか、次の目標設定についてなど、お考えをお聞かせください。


(答)石破内閣では、今が成長型経済への移行の分岐点であると、過去に経済対策の時にもご説明させていただきました。「経済あっての財政」の考え方のもと、この移行を確実なものにする。間違ってもデフレ経済へ戻るようなことがあってはならないということで、必要な経済対策や税制改正を講じさせていただいたところであります。
 今回の中長期試算では、2025年度のPBは黒字化しないという見込みになったわけでありますが、PB目標を掲げた2001年度以降で最も赤字幅を縮小させることができたと、そのような見通しになっております。これまでの経済財政運営の成果もあり、着実に財政状況は改善をしてきていると理解をしておりまして、2026年度にPBが黒字化する試算結果が示されております。
 こうした結果を踏まえて、「経済あっての財政」の考え方のもと、早期のPB黒字化実現に向けて、潜在成長率の引上げに重点を置いた政策運営に取り組むとともに、歳出・歳入両面からの取組を継続していきたいと考えております。今後とも財政健全化の旗を下ろすことはないということであります。その上で、本日の石破総理からのご指示に基づき、骨太方針2024で示された経済・財政新生計画の枠組みのもと、今年の骨太方針に向けて、早期のPB黒字化実現を含め今後の財政健全化に向けた取組を示すべく、経済財政諮問会議で検討を深めてまいりたいと思っております。
 少数与党ということで、今の国会の状況を前提にご質問いただきました。石破総理も申し上げているとおり「熟議の国会」でありまして、前臨時国会でも経済対策は規模が過大ではないかとか、このようなことをやればPBに効いてくるのではないかというようなご質問は既に出ております。その点については見通しが出たということで、いろいろと野党の先生方からもご質問が出ると思いますし、しっかりとお答えをする中で、「経済あっての財政」で取り組んでおり、我々は成長型経済への移行を最優先でしっかり取り組んでいく中で、今後とも財政健全化の旗を下ろすことはないということを丁寧にご説明申し上げて理解を得ていきたいと思っています。
 政府は骨太方針2024において、2030年度までを対象期間とする経済・財政新生計画を打ち出して、その枠組みとして、2025年度のPB黒字化目標にとどまらず、計画期間を通じ、PB黒字化に向けた取組の進捗・成果を後戻りさせることなく、債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指すという財政健全化目標を掲げております。今回の中長期試算では、2025年度のPBは黒字化しない見通しとなりましたが、引き続き新生計画の枠組みに沿って、経済再生や歳出改革努力といったこれまでの取組の進捗・成果を後戻りさせることなく、早期のPB黒字化の実現に向けて取り組んでまいりたいと思っております。その上で、早期のPB黒字化実現を含め、より具体的な今後の財政健全化に向けた取組について、今年の骨太方針に向けて経済財政諮問会議で検討を深めてまいりたいと考えております。



(問)2点目が、来週、日本銀行の決定会合が予定されていると思うのですけれども、今、氷見野副総裁に続いて植田総裁も利上げを議論する旨のご発言があったりして、市場も利上げを織り込んだ動きが出てきていると思うのですけれども、これについて改めて1月利上げの方向について大臣のお考えをお伺いさせてください。


(答)ご指摘の発言については承知をしております。その上で、植田総裁が発言されているように、日本銀行は金融市場調節方針について、様々なデータや情報を丹念に点検された上で判断される方針であると理解をしております。ご案内のとおり金融政策の具体的な手法については日本銀行に委ねられるべきと考えておりまして、政府としてはコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
 日本銀行には引き続き政府と緊密に連携をし、十分な意思疎通を図りながら、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営を行っていただくことを期待しています。



(問)先ほどのプライマリーバランス(PB)について1点お伺いします。2025年度のプライマリーバランス黒字から赤字ということで、もちろん必要な予算を積めばそういったことも起こり得ると思うのですけれども、2001年から振り返った時に、達成の時期がどんどん後ろずれするような状況が続いていると思います。こうしたことが今後も続くと、日本の財政に対する信頼感がなかなか付いてこないと思うのですけれども、この点について大臣はどのようにお考えでしょうか。


(答)我が国の財政健全化目標を振り返ると、骨太方針2001でPB黒字化を目標とした後、骨太方針2006では2011年度を目標年度といたしました。その後、リーマン・ショックで延期を余儀なくされたということがあります。その後、民主党政権になった2010年度には、2020年度が新たな目標年度とされました。消費税率引上げに伴う財源の使途変更、子育て世代への投資の拡充、2017年度とか、そういったことを踏まえて、骨太方針2018で2025年度への延期を決定したということで、今ご指摘になったような状況です。コロナ禍を乗り越えてきた上で現状になっているということであります。
 この間、政府は様々な成長戦略や機動的な政策対応に取り組むとともに、歳出の不断の見直し等を行い、経済再生と財政健全化の両立に取り組んでまいりました。その結果、我が国は600兆円を超える名目GDP、100兆円を超える設備投資、33年ぶりの高い水準となった賃上げ等が実現しておりまして、繰り返し申し上げているように、現在、成長型経済への移行の分岐点にあると思っております。
 今回の中長期試算では、2025年度のPBは黒字化しない見込みが示されたものの、先ほど申し上げましたが、PB目標を掲げた2001年度以降で最も赤字幅を縮小させることができる見通しとなっております。これについては、やはり財政健全化の旗を下ろすことなく取組を重ねてきたことの効果が出ていると理解をしております。これまでのこうした経済財政運営の成果もあり、着実に財政状況は改善してきたと考えておりまして、2026年度にはPBが黒字化する試算結果が示されています。こうした状況は国民の皆様のご努力で勝ち取ってきた大きな成果であると理解をしておりまして、政府としても政策努力を続けてきた結果だと捉えております。
 引き続き2030年度までを対象とする経済・財政新生計画の枠組みに沿って、「経済あっての財政」の考え方のもと、早期のPB黒字化の実現に向けて取り組んでまいりたいと思います。その上で、今年の骨太方針に向けて、より具体的な今後の財政健全化に向けた取組について検討してまいりますが、PB黒字化目標もその中で検討することになると考えます。



(問)私もプライマリーバランスのことについて伺いたいのですが、まず確認で、2025年度のプライマリーバランスの見通しが赤字になったということなのだけれども、財政健全化の旗を下ろさないということなので、プライマリーバランス黒字化の目標を断念したわけではない、あくまで黒字化目標は生きているという理解でいいのでしょうか。仮にPB黒字化目標が2025年度が撤回ではないとするのであれば、普通の民間の会社であれば赤字見通しが分かった時に黒字にするためには資産売却や取引価格の見直しや経費削減、事業の先送りなどで何とか黒字にするという努力をしますが、政府としては2025年度が赤字見通しになったのを何とか黒字にするためにどのような努力を考えているのか教えてください。


(答)今のご指摘でありますが、私どもについては2025年度のPB黒字化というものを目標としては現在持っており、まだ経済財政諮問会議の議論も経ておりませんので、新しい目標を何か議論できたり、皆様にお示しするような段階にはございません。そのような中で、実際、2025年度についてはなかなか達成が難しい状況にありますということを申し上げておりまして、何か今の時点で、これから努力をして、何としても2025年度をPB黒字に持っていくというようなことを私が申し上げていることではないということはご理解をいただきたいと思います。
 骨太方針2024で、2030年度までを対象期間とする経済・財政新生計画の枠組み、これはお示しをしてあって、2025年度のPB黒字化目標にとどまらず、計画期間を通じてPB黒字化に向けた取組の進捗・成果を後戻りさせずに、債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指していくという財政健全化目標はまだ生きている部分があるわけであります。今回の中長期試算では、確かに2025年度のPB黒字化はしない見通しとなっていますけれども、引き続き既にお示しをしている新生計画に沿って、経済再生や歳出改革努力は続けると。これまでの取組の進捗・成果を後戻りさせることなく早期のPB黒字化の実現に向けて取り組んでいくということに変わりはありませんが、現時点において、2025年度は、その黒字化目標というのは達成できそうもない、マイナスになりそうだという見通しを持っているということでございます。



(問)冒頭、発言がありましたダボス会議の出席の関連で伺います。先ほど、大臣、冒頭に「日本への投資を呼びかける機会にしたい」とのお話がありましたが、パネリストとして総会に出席することと、CPTPP関係閣僚との会談を通じまして、どういった成果につなげたいか、お考えをお願いします。


(答)まず、1月21日の「不確実性が増す国際社会における日本の経済政策セッション」「Japan Navigates Uncertainty」という催しのパネリストとして登壇する予定であります。先ほど申し上げたように、我が国経済の強みや魅力を伝え、出席された多くの企業・参加者に対し我が国へ投資をいただくよう積極的に呼びかけていきたいと思っています。あわせて、今日もミャクミャクを付けておりますけれども、大阪・関西万博への参加も呼びかけたいと思っています。
 特に、思いは、改めてTSMCの例を引くまでもなく、円安で、相対的に日本の人件費が競争力が出てきている中、これまで円高の当時に産業が空洞化したと言われているのとは、今度は対照的に、日本に進出してみようかという、そういう企業が出てきているわけであります。この流れはとても大事で、貿易とかサービス収支で安定的な黒字は望めない中、所得収支で今、経常収支の黒字を保っている状態でありますが、それについても今後の経済状況によっていろいろな可能性があります。我が国への対内直接投資を極力募って、しっかり国内経済の活性化につなげていきたい。TSMCが入ったことで国内の周辺企業は賃金が上がって大変だと言っている声も聞こえますけれども、同時にものすごく活況を呈してきたと。それは裏表ということだと思います。そのようなことも念頭に置きながら、強く我が国への投資をお願いしたいということを呼びかけていきたい。また、繰り返しになりますが、大阪・関西万博への参加も呼びかけていきたいと思っています。



(問)年金制度改革について伺います。報道ベースでありますけれども、基礎年金を底上げする案について、実施判断は2029年以降に先送りするけれども、マクロ経済スライドの調整期間一致の仕組み自体は改正法案に盛り込む方向で厚生労働省の調整が進んでいます。
 赤澤大臣は、かねて「過去30年投影ケース」を前提にすることを疑問視されていましたが、仕組み自体は法案に盛り込まれる方向についてはどうお考えでしょうか。また、年金以外の政策でも、経済は今後好転する前提で検討を進めるべきとお考えかお聞かせください。


(答)まず、禅問答ではないのですけれども、哲学の部分を言っておくと、既にお話ししていると思いますが、石破政権は「危機管理を善とし、楽しさを美徳とする、新しい日本」を目指していると。楽しさの前提としては、言うまでもなく賃上げと投資が牽引する成長型経済を目指すし、その中で最低賃金なども企業にもしっかり稼いでいただけるよう応援した上で、働ければ明日の心配なく暮らしていけるような、そのような日本をつくっていきます。もちろん「危機管理を善とする」ですから、いざ働けなくなった時のセーフティーネットもしっかりつくってお支えをします。そのようなことを考えている中で、「楽しい日本」を目指しているから危機については考えなくていいのだということにはならないのです。
 今お話のあった議論については、正直申し上げれば、次期年金制度改正に向けては、昨年7月に公表された財政検証の結果も踏まえて検討が進められており、昨年12月25日に厚生労働省の社会保障審議会年金部会の議論の取りまとめが行われました。こうした状況も踏まえ、現在、厚生労働省において成案を得るべく鋭意調整を進めておりまして、改正の個別具体的な内容についてはまだ確定していないし、皆様に「まとまった」と言って発表できる段階にないこともご案内のとおりです。
 そのような状態でありますが、あえてお尋ねになったので、若干広めの哲学的なものでお答えをいたしましたが、要するに、悲観的な見通しだけで、我が国は将来暗いのだというホラーストーリーは良くないけれども、そうではない、力強く成長する経済のもと、国民が将来に希望を持って、明日に不安がない状態で暮らしていただけるような経済を全力で目指すと。それが大前提で、それをやってみせると思って、我々は政権運営をやっているわけです。ただ、我々の力不足で、それがもし実現できなかったような時も、国民の皆様のセーフティーネットはしっかりさせておくということも考えておくという意味で、どちらが本筋かといえば、我々はこちらを目指していますけれども、万が一こうなった時の備えもできていますよという構えをつくることは大事なので、私の考え方は基本的にそのようなことです。この法案の具体的内容がどのようになっているかについては、今、具体的にお話しできることはありません。



(問)本日1月17日で阪神・淡路大震災から30年を迎えました。大臣は国土交通省時代にご経験されているかと思いますが、改めて事前防災の強化を含めて、防災の取組についてお聞かせください。


(答)これは、本当に私にとっては思いの非常に強い災害であります。防災ということに国を挙げて努力をしてきて、いろいろな意味でお金もかけ、デジタルも導入してきました。そもそも少し脱線しますけれども、私が生まれる前年に起きた伊勢湾台風。名前は皆さんも聞かれたことがあると思います。私よりも若いのでもちろん経験はされていないと思いますけれども。その伊勢湾台風で日本国民は5,000人の犠牲者を出しているわけです。その前にも枕崎とか、そのような台風があって、結果、大きな台風が来ると1,000人単位で国民が亡くなるというのを何とかしたいので、それは、気象衛星を上げ、スパコンを導入し、命に関わるからといって本当に金に糸目を付けず頑張ったわけです。台風では基本的に国民が亡くなることのない国になったわけであります。
 ただ、1995年1月17日の阪神・淡路大震災は、建物の倒壊で8割だったですか、命を落とされて、それ以外でも火災で命を落とされた方もいます。6,434人という犠牲者を出しています。そのような意味で、我が国の災害大国としての国民を守る戦いはずっと続いているわけであります。今日は30年を迎えた節目でありますけれども、改めて亡くなられた方々に哀悼の誠をささげるとともに、全ての被災者の方々に心からお見舞いを申し上げたいと思いますし、あの日を忘れないということは、防災コミュニティーの中では当たり前ですし、防災をライフワークとする私にとっては当然のことだと思っています。
 いろいろな機会にお話をしていますけれども、私自身は職業人になってから日本航空の御巣鷹山の事故と、その10年後の阪神・淡路大震災を経験したことが防災をはじめとする危機管理をライフワークとする原点となっておりますので、そのような意味でも本当にこの災害については思い入れが強いです。
 加えて、我が国の防災対策という意味でも、戦後初めて社会・経済機能が高度に集積する都市を直撃した災害です。これを契機に耐震基準も見直しましたし、緊急参集チームという考えも導入されました。現地対策本部も法律に定められ、ボランティアによる防災活動への本格的な参画や被災者生活再建支援法の制定なども行われて、端的に言えば防災政策全体にわたる抜本的な強化が図られた、我が国の災害対応の転換点になった災害であります。これを本当に活かしながら、しっかりその教訓を踏まえて、今後予想される南海トラフの巨大地震、これも最近、発生確率が30年で80%程度に引き上げられたということでありますし、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震、富士山噴火など、大規模災害に備えて本気の事前防災に取り組むのが防災庁でありまして、そういった過去に得られた抜本的な教訓をしっかりと活かし、知識や経験もフルに活用しながら、防災庁の設置に向けた検討を進めてまいりたいと思っています。








3.中澤大臣官房審議官(経済財政分析担当)による追加説明

 令和7年第1回経済財政諮問会議です。
 今回の議題は2つです。まず、「令和7年前半の検討課題」について、十倉議員から資料1に基づき民間議員からのご提案をご説明いただいた後、意見交換を行いました。
 続いて、「中長期の経済財政に関する試算」について、内閣府から資料3-1を説明した後、意見交換を行いました。それぞれの議題について主な意見をご紹介いたします。
 1つ目の議題に関するご意見です。
 1人目の民間議員です。
 第一に、賃金引上げについて、2025年が賃上げのモメンタムが定着する年になるよう全国に積極的な対応を呼びかけていく予定。重要なのは、働き手の7割を占める中小企業、約4割の有期雇用労働者の処遇改善。中小企業については、大企業と中小企業だけでなく、中小企業と中小企業、中小企業と消費者との取引を含め価格転嫁を進め、賃上げの原資を確保することが必要。有期雇用労働者には同一賃金同一労働の考えが重要。現場の実情を踏まえた省力化投資、生産性向上、価格転嫁の環境整備など、政府による強力な後押しが必要。
 第二に、道州圏域について、各自治体の枠を超えた取組、言わば道州圏域での取組が重要。観光、農業だけでなく、各圏域で産業政策の連携や地方大学の統合、防災・減災、コンパクトシティ化などに取り組む必要。
 第三に、科学技術力強化について、日本では研究の担い手である博士人材が低水準かつ横ばいとなっている。国立大学運営交付金は削減され、科研費の伸びは抑えられている。大学研究者は十分な研究が困難な状況。防災・減災、危機管理にも科学の力が必要。CSTIだけでなく、諮問会議でも科学技術力強化に向けて基礎研究の充実、研究開発投資の拡大といった議論が必要。例えば科研費の倍増といった大胆な措置を政府に講じてもらう必要があるのではないか。また、道州圏域での大学の統合・再編や改革にも取り組むべき。
 2人目の民間議員です。
 冒頭のお願いとして、アメリカ大統領の就任式が間もなくとなっており、市場では経済・金融シナリオがいろいろと検討されているところだが、リーダーシップの発揮をお願いしたい。
 GDPなどの指標はかなりいいところまで来ており、賃金が恒常的に上がり、成長を果たすという好循環実現の正念場にある。これを絶対続けていくという力強いメッセージが今、最も重要。また、実質1%を安定的に上回る成長を実現しながら、財政健全化も進める必要。
 その中で鍵となるのは投資。バブル期にあって今ないものは成功体験だと思う。半導体やGX、ヘルスケアなど、日本にはいろいろ成長し得る分野がある。本日の諮問会議の資料1に載っている取り組むべき施策を全部やるくらいの気持ちが重要。成長という果実を得る成功体験をぜひお願いしたい。
 3人目の民間議員です。
 物価上昇を上回る賃上げの定着を地方も含めて定着させていくためには、民間資金が国内投資に使われることが必要。とりわけ地方に雇用を生み、地方にまで「楽しい日本」を届けていくべき。
 生成AIやデータセンター、半導体の供給は重要であるが、例えば熊本に立地する企業は半導体工場の立地に伴い、現在、賃金が上昇していて活況を呈している。こうした地域に活況をもたらした事例を研究し、横展開すべき。その際、電源と電気の需要のある工場とが同じ地域にあることが望ましい。原子力発電所の再稼働や再生可能エネルギーの導入促進によって電源が所在する周辺地域の雇用が増える効果があるはず。
 加えて、生成AIやデータセンター、半導体については、供給するだけではなく、需要を生み出す必要がある。CPTPPをはじめとする同志国との貿易促進も必要だが、同時に、国内で生成AI等を使う仕組みを構築しなければ、供給過多になるおそれがある。需要を地方でもつくり、需要と供給の両輪を回すことで地方に雇用を生み、「楽しい日本」をつくることができる。
 中小企業の労働者においても、年齢を問わずにリスキリングすべき。50歳以上の人のうち85%の人が生成AIを十分に使えるという調査結果もある。ヘルスケア分野のデータ活用を進め、民間投資を促進し、スタートアップの企業を支援すべき。75歳や80歳でも働けるような環境を整えるべき。そのためにも保険外診療や遠隔診療について実施できるよう規制改革を行うべき。
 4人目の民間議員です。
 令和7年前半は日本経済が高付加価値型でウェルビーイングの高い経済へと移行するチャンスであり、今は正念場を迎えている。そのためにも、マクロ経済環境の整備が肝要であり、実質1%を安定的に上回る経済成長が必要。このことは地方の持続可能性の観点からも重要。そのためには、マクロ政策のみならず、ミクロに見える制度改革、規制改革、労働市場改革の積み上げが必要。経済財政政策の全体像を骨太方針において示すことが肝要。
 グローバル環境の変化に対応した経済社会にすることが重要であり、しっかりとルールを世界全体にアピールしつつ、地域が世界の需要を取り込む形で発展・成長を遂げることが重要。大きな投資を呼び込むことも重要だが、一人一人がやりたいことを伸び伸びと実現できる環境をいかに作っていくかも大きなポイント。
 次に、閣僚からの発言です。
 村上総務大臣です。
 本日示された資料1、令和7年前半の検討課題について総務省の取組を説明する。
 まず、地方で人口減少が加速する中、人材不足を踏まえ、地方の持続可能性を高めていくことが重要。このため、総務省として自治体DXや市町村間の水平連携、都道府県による補完、さらには、国、都道府県、市町村の役割の在り方や、民間や地域の担い手などの多様な主体との連携も含めてどのような方策が考えられるかについて自治体の皆様の声を伺いながら、夏頃の取りまとめを目指し検討を進めていく。
 このほか、二地域居住・関係人口に係る自治体独自の取組への支援を強化するとともに、都市部の企業で活躍したシニア層を地域の課題解決の即戦力として活用する地域活性化シニア起業人の仕組みを構築するなど、地方のポテンシャルの拡大に向けた取組を進めていく。  こうした取組を支えるためにも、地方財政の持続可能性の確保が不可欠。令和7年度においては臨時財政対策債の新規発行額をゼロとするなど、地方財政の健全化を進めることとしているが、今後に目を向けると、社会保障費に加え、人件費の増加や物価高などにより歳出の増加圧力が大きくなることが考えられる。一方で、税財政基盤が脆弱な自治体も多く、厳しい財政状況が続くと見込まれるため、地方財源の確保にしっかり取り組むことが必要だと考えている。
 民間議員及び閣僚から一通り発言があった後、2人の民間議員から追加のご発言がありました。
 1人目の民間議員です。
 対日直接投資に本腰を入れて取り組むべき。外国の投資家は日本に投資するに当たり、手続がワンストップでないことに不満を持っている。シンガポールのように直接投資のワンストップ窓口をつくるべき。よい人材に来てもらうことが重要。ワンストップ窓口の中に人材のマッチング支援策や住環境のサポートを含めるべき。
 投資減税の仕組みは複雑で分かりにくい。制度は作ることに意味があるのではなく、使われることが大事。分かりやすい制度設計を望む。
 2人目の民間議員です。
 これまでの地方創生でも優良事例は生まれているが、点で終わっている事例を面的な広がりにつなげていくためにはどのような取組が必要かという質問に対して3点申し上げる。
 1点目は、連携の必要性。水平連携や広域連携を通じて点が面へとつながっていくと考える。本格的な自治体間連携が望ましいが、なかなか難しいのであれば、ノウハウを持った人の連携が重要。
 2点目は、分析の必要性。この地域だからこそできたといった点が少なくなく、その中でも他の地域に移植できるものもある。どこが共通する内容で、どこがカスタマイズしなければならないのかという点を見極めるためにも、データ分析やEBPMを行い、その上で横展開できるようにしていくことが重要。
 3点目は、政府のリーダーシップの必要性である。よい事例が出てきたら、今申し上げた2点がしっかりと進むよう政府がリーダーシップを発揮し、後押しすることが必要。
 2つ目の議題に関する意見です。
 1人目の民間議員です。
 今般の中長期試算で2025年度にPB黒字化を期待していただけに、残念。今回の試算を見ても、ポイントは持続的な経済成長と財政健全化を両立させること。これら2点について申し上げる。
 1点目、持続可能な経済成長の実現について、成長と分配の好循環の実現が大前提。国内投資の拡大に向けてGX、AI、デジタル、バイオや新たな成長分野であるエンタメコンテンツなどに中長期の戦略に基づき政府が先行投資し、民間の予見可能性を高めることが重要である。また、個人の消費拡大には若年世代を中心とする将来不安の解消に向けて全世代型社会保障改革、ひいては税・社会保障の一体改革に早急に着手すべき。
 2点目、財政健全化への取組について、昨今の激甚化する災害等も踏まえれば、有事に備えた財政基盤の確保も急がれる。まずは歳出・歳入改革の徹底を通じて足下のPB黒字化を達成することが必要。その上で、複数年度平均での黒字を維持できる経済財政運営を行う必要。我が国の経済財政の重要課題は、社会保障の財源論である。個人消費の拡大に向けた将来不安の改善だけでなく、財政の問題として全世代型社会保障改革が必要。総理の下、ぜひ税・社会保障一体改革を総合的に検討する組織を別途設置し、速やかに議論を開始すべき。
 2人目の民間議員です。
 現在、世界中で財政が弛緩の方向に進んでおり、危ういと感じている。その中で日本は2025年度のPB黒字化を果たせない見込みということで、反省すべきところは反省すべき。一方、近年では最も赤字幅が縮小する見込みということで、財政健全化の目標設定には意義があったと考えている。
 財政健全化目標については、毎年度のように後ろ倒しすることなく、しっかりと目標設定することが大事。また、各事業の費用対効果を国民に示すことも重要で、これはEBPMアクションプランの目指すところだと思う。南海トラフ等の懸念が高まっている中、財政健全化はやはり重要だと思うが、緊縮財政とイコールではない。お金を使うところには使って、成長に向けた投資を進めていくということが重要。
 3人目の民間議員です。
 PB黒字化が達成されなかったことは残念。しかし、目指してきたことには意味があると考える。継続的にPB黒字化が実現できる体制の構築が肝要。近年、投資環境の改善や物価上昇など、財政をめぐる状況が変化してきた。こうした中では、内部留保を持つ民間企業の投資を促進するべく、投資意欲を支えるような財政政策を実施し、税収を高めるということが大事。令和7年度予算によって投資の受け皿を増やすとともに、EBPMを通じてワイズスペンディングを徹底すべき。
 民間企業が投資したくとも、人手不足でそれがかなわない事例が発生している。投資のためのボトルネックを解消するという観点からも、外国人材の活用や雇用流動化、リスキリングの実施を行うべき。競争的労働市場の構築は潜在成長率の向上にも資する。
 増大する防衛費や少子高齢化対策のため、財政需要が高まっていることは事実。PBには表れないが、現役世代の負担も増加している。税と社会保障の一体改革を進めていただきたい。
 医療費を抑制する観点からは、保険外診療の活用やセルフメディケーションの促進を進めるべき。EBPMを通じて歳出改革を実施するとともに、医療費は応能負担とすべき。
 4人目の民間議員です。
 2025年度のPB黒字化が見えてきたところで、今回、PB黒字化の実現が難しそうだという試算が示されたことは残念。とはいえ、確実に財政状況は改善しており、健全化に向かっていることは事実であり、取組を継続していくことが重要。経済・財政新生計画の枠組みの中で取組をしっかり進めつつ、潜在成長率も引き上げていくことが重要。
 税と社会保障の一体改革は避けて通れない課題であり、給付と負担の見直しをしっかりと考えていくことが重要。財政健全化は緊縮財政ではなく、しっかりと経済を成長させていくことが重要であり、実質1%を超える経済成長をどうやって実現するかが本丸。どうすれば潜在成長率を高めることができるかを考えなければならない。人手不足、供給制約に直面する中で、これらの解消につながる政策にしっかりとお金を使っていかなければ、長期的な成長は見込めない。
 次に、閣僚からの発言です。
 加藤財務大臣です。
 今回の中長期試算では2025年度のプライマリーバランスは黒字化しない見込みとなった。他方、PB黒字化目標を初めて掲げた2001年度以降で最も赤字幅が縮小する見通しとなっており、また、2026年度に黒字化するという姿が示された。
 しかしながら、この結果には今後の経済状況の変化やそれに伴う追加的な対応などは織り込まれていない。我が国の中長期的な財政の持続可能性への信認を維持するためには、引き続き力強く経済再生を進める中で財政健全化も実現し、経済再生と財政健全化の両立を図ることが必要であり、財政健全化の旗を下ろすことなく、歳出改革努力の取組を進めていく。
 「経済あっての財政」との考え方に立ち、骨太方針2024で示された経済・財政新生計画の枠組みの下で早期のプライマリーバランス黒字化実現を含め、財政健全化に取り組んでいく。
 古賀経済産業副大臣です。
 引き続き「経済あっての財政」という考え方を堅持し、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現させ、その中で財政が健全化していくことが重要。その中で潜在成長率の引上げに向け、半導体、AIを含むDXやGXなどの成長投資を促進することが不可欠。経済産業省としても、中期的な計画を示し、民間の予見可能性を高め、投資を引き出す施策を推進していきたい。
 民間議員及び閣僚等から一通り発言があった後、2人の民間議員から追加のご発言がありました。
 1人目の民間議員です。
 明るい日本に向けた明るい目標が立てられるとよい。
 1つ目は、実質1%以上の成長。人口減少の中でも、財政や社会保障を維持していくには、実質1%以上の成長が重要と考えている。
 2つ目は、賃金の毎年3%以上の上昇。実質GDPが1%以上成長するということは、名目で3%以上の成長を目指すということであり、賃金が3%上がるということが重要。そして、企業の賃上げのためには成長が重要と考えている。
 3つ目は、格上げ。GDPなどの指標がよくなっていけば国債の格付もよくなっていくのではないかと考えている。格付はシングルAに甘んじるのではなく、せめてダブルAがよいと考えており、少しでも格付を上げていくことが重要。
 2人目の民間議員です。
 厳しい財政状況を踏まえれば、PB黒字化が重要。これから金利のある世界になることを踏まえると時間的猶予はあまりない。ポイントは持続的な経済成長と財政健全化である。まずは歳出・歳入改革を通じて足下でのPB黒字化を早期に達成することが重要。石破内閣での実現を強く期待。複数年度でのPB黒字化の実現のために予算の単年度主義を改めることが必要と感じる。GX移行債のように中長期の戦略に基づいた多年度の政府投資を財源の裏づけを含めて行っていくべき。
 何よりも重要なのは税と社会保障の一体改革。社会保障の給付と負担に関わる新たな将来見通しを示し、これを踏まえた税・社会保障の一体改革に取り組むべき。
 最後に、総理から締めくくりのご発言がありましたが、皆様にお聞きいただいたとおりですので、割愛いたします。







(以上)