第16回記者会見要旨:令和6年 会議結果

赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨

  • 日時:令和6年12月26日(木)10:15~10:48
  • 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室

1.発言要旨

 経済財政諮問会議の概要についてご報告を申し上げます。
 本日の議題は2つございまして、「令和7年度の経済見通し」と「経済・財政新生計画に基づくEBPMの強化及び改革工程の具体化」について、議論を行いました。
 「政府経済見通し」については、内閣府から、令和6年度は、内需は堅調である一方、外需がマイナス寄与となることで、実質成長率は0.4%程度になるものの、令和7年度は、物価上昇が若干落ち着く中、個人消費など内需が増加し、実質で1.2%程度の民需主導の成長を見込むとの報告を行いました。
 その上で、1つ目の議題について、民間議員の皆様からは、「今回の103万円の壁の引上げ等の議論を契機に、人手不足への対応として、トータルパッケージで就労調整の解消に対応していくべき」、「『金利ある世界』へと変化する中、適切なマクロ経済運営を図るには、財政に対する市場の信認は欠かせない。PB(プライマリーバランス)黒字化という財政健全化の旗を降ろすことなく、これまでの歳出改革努力の継続や歳出構造の平時化などに取り組み、計画的に財政状況の改善を進めるべき」、「2024年度補正予算や2025年度予算案・税制改正案等の影響を精査し、来年1月に新たな中長期試算を提示の上、財政健全化の進捗を検証すべき」というご提案がございました。それだけに尽きるものではありませんが、今申し上げた3つのようなご提案があったということです。
 2つ目の議題、「経済・財政新生計画に基づくEBPMの強化及び改革工程の具体化」では、経済財政諮問会議として2つ決定を行いました。「EBPMアクションプラン2024」と「改革実行プログラム2024」の決定でございます。
 経済・財政一体改革推進委員会の会長でいらっしゃいます柳川議員からは、「今後は、これらに沿って、スピード感を持って改革を進めるとともに、各府省の連携やプロセス管理を強化し、限られたリソースから高い政策効果を生み出していくことが重要」、「『EBPMアクションプラン2024』の対象10分野は、いずれも政府の重要政策課題である。今後、新たに策定された本プランに基づき、財政支出の政策効果を高め、ワイズスペンディングを徹底すべき」、「『改革実行プログラム』において、詳細に具体化した200超の改革工程に沿って、地方自治体等、現場の実施主体とも連携し、スピード感を持って改革を実行することが重要」といったご報告がございました。
 総理からは、「様々な政策がその効果を十全に発揮するためにも、財政に対する市場の信任確保が不可欠であり、財政健全化の『旗』を降ろすことなく取り組むことが重要」、「来年度予算について『経済あっての財政』との考え方の下、重要政策課題に必要な予算措置を講じつつ、歳出改革努力と計画的な財源確保の取組を継続することで、メリハリの利いた予算としていく」、「来年度予算等を踏まえた、新たな中長期試算を来年1月に示し、財政健全化の進捗を検証する」、「本日決定した『EBPMアクションプラン』と『改革実行プログラム』という新たな枠組みを十分活用して、経済・財政一体改革に政府一丸となって取り組んでいく」といった旨のご発言がございました。
 諮問会議の詳細については、後ほど、事務方から説明させていただきたいと思います。
 もう一つは、昨日のRapidus(ラピダス)株式会社の半導体工場でありますが、千歳工場の見学の概要についてご報告をいたします。
 昨日、Rapidus株式会社の次世代半導体工場の建設現場を視察をいたしました。大変壮大なもので、そこが適地であった理由は、230メートル四方の敷地が確保できるということで、正方形の立派なものがもう出来上がっております。ポイントは我が国で初となる量産用EUV(Extreme Ultraviolet:極端紫外線)露光装置の搬入などについて説明を受けました。今後の課題や事業戦略について意見交換を行ったところです。
 この量産用EUV露光装置というのはオランダのASMLという会社が作っていて、1台500億円という代物です。これを今後、何台も入れて、世界に打って出ようということでありますので、本当に壮大なプロジェクトであります。Rapidusの立ち上げにつながる「マウントフジプロジェクト」に携わっていた12人の侍という言い方を小池社長はしておられましたけれども、そのうち5人の方にはじかにお会いすることができ、更に3人の方にはリモートで会わせていただいてお話を伺いました。大変な熱量ですね。そして、それに懸ける思いとか夢とか、そういうものを本当に感じました。
 かつて自分たちが胸を躍らせて世界のトップグループの企業たちと競い合い、覇を唱えていた日本の半導体産業であります。それを将来世代のために取り戻したいと、そういう胸躍るチャンスを次の世代に提供するのだという意味でも、本当に強い思いを持って、この「マウントフジプロジェクト」というのは138回、会議を重ねたそうです。とにかく毎週水曜午後の8時から始まって、日付が必ず変わってしまうと。だから、5時間ぐらいの会議を138回やり、最後は水曜だけで利かずに土日もやっていたという、本当にある意味で技術者の皆さんが吸い込まれるように、自分の関心事項についてのめり込んで、徹底的にやったということでありまして。何よりも人を動かすのは関係者の思いの強さであるということを、改めて私自身は感じました。
 Rapidus社が開発するのは2ナノの次世代半導体です。今は4ナノ、5ナノということですけれども、これはもう自動運転や生成AI等、あらゆる先端技術を実行する計算基盤の処理能力や、電力効率の向上を実現していくためのキーテクノロジーであります。
 特に2ナノの次世代半導体によって実現が期待されるのは電力効率の向上です。これを聞いて私も頼もしいなと思ったのは、Rapidusによれば、現在の4ナノ、5ナノといった先端半導体の消費電力と比べて、先端パッケージ技術など後工程も組み合わせると、電力の消費が前工程だけで4分の1ぐらいにできるのですけれども、後工程も組み合わせると全体で10分の1ぐらいにでもできるのではないかということが期待されていると。来るAIの時代に電力需要が爆増するという予想で、電力制約から我が国の経済を守り抜くということを掲げている石破政権にとっては、本当に期待のプロジェクトであります。データセンターの電力需要の爆発的な増加についても一つの技術的な答えになり得る、まさに将来の日本の産業競争力の基盤となるものだと思っています。
 Rapidus社による大規模投資は、近隣への企業進出や雇用、所得水準の向上、高度人材の育成などの、地元への波及効果も期待できるものでありまして、石破政権の経済政策の目玉である2つ、1つは投資立国及び資産運用立国の実現、もう1つは地方創生2.0の展開、そのいずれにとっても極めて大きな意義があるというふうに考えております。こうした投資を実現するため、石破内閣では先月の経済対策において、今後、2030年度までにAI半導体分野に10兆円以上の公的支援を行う、10年間で50兆円を超える官民投資を引き出すAI・半導体産業基盤強化フレームを策定し、今般の補正予算にRapidus社への支援を盛り込んだところでございます。
 ご案内のとおり、台湾のTSMC、韓国のSamsung、米国のIntelの3社が席巻する最先端の半導体産業の一角に、再び我が国が割って入るために夢を懸けて全力で取り組んでいる。私はもう夢と呼びたくないです。現実的な目標と呼びたいと思います。それに取り組んでいるRapidus社に対し、国としても引き続き、成功に向けて最大限の支援をしてまいりたいと思っております。






2.質疑応答

(問)総括的な質問をさせていただきます。赤澤大臣は10月の就任以来、総合経済対策策定など重要案件を担ってこられました。今年の総括と、来年をどのような年にしたいか伺います。また、今年は実質GDPが堅調に推移する一方で、物価高による消費の落ち込み懸念は根強く、先行きが不安視されています。今年の経済情勢をどう総括するかも教えてください。


(答)まず、経済財政運営についてですね。10月1日に就任をいたしました。我が国経済が「賃上げと投資が牽引する成長型経済」に移行できるかどうかの、まさに分岐点であるという認識の下で、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現し、豊かさを実現できる成長型経済への移行を確実なものとすることを目指して、経済財政運営に当たってまいりました。大臣就任後すぐに、経済対策の策定に取りかかり、11月22日には「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」を取りまとめました。また、12月17日にはその経済対策の裏付けとなる補正予算が成立をいたしました。
 来年はデフレに後戻りせず、成長型経済に移行できるかの正念場の年であると考えておりますので、経済対策及び令和6年度補正予算を迅速かつ着実に実行し、国民の皆様に生活が豊かになったことを実感していただけるような経済をつくってまいりたいと思っております。
 私、賃金向上担当でもあり、防災庁設置準備担当でもありますので、それについても少しお話をさせていただくと、賃金向上については11月26日に石破政権で最初となる政労使の意見交換を開催し、2025年春季労使交渉及び最低賃金の今後の中期的引き上げ方針について、労使の皆様と意見交換を行いました。最低賃金については石破政権として、2020年代に全国平均1,500円という高い目標に向かって、たゆまぬ努力を続けることとしております。賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現し、豊かさを実感できる成長型経済への移行を確実なものにしてまいりたいと思っております。
 防災庁については、防災庁の組織づくりに向けて11月1日に防災庁設置準備室を立ち上げ、令和8年度中の設置に向けて検討を進めてまいりました。年明けから、避難生活支援、官民連携、デジタルなど防災関係各分野において、高度かつ幅広い知見を有する方々から成る有識者会議を開催することとしておりまして、専門家の方々のご意見を賜りながら、防災庁設置に向けた具体的な議論、施策の方向性とか、その体制の在り方とか、そういうことについて精力的にご議論いただいて、スピード感を持って、より一層進めてまいりたいと思っております。
 引き続き、与党のみならず野党の皆様のご意見も丁寧に伺いながら、可能な限り幅広い合意形成が図られるよう、謙虚に、そして真摯に、国民の皆様方が安心・安全と楽しさを感じられる未来をつくることを目指して、石破内閣の一員として、与えられた職務に全力で取り組んでまいりたいというふうに思っております。
 今年の経済情勢をどう総括をするのかというお話で、今年の日本経済を振り返ると、1-3月期第1四半期は令和6年能登半島地震や一部自動車メーカーの認証不正問題の影響によりマイナス成長となりました。その後は企業部門の好調さに加え、33年ぶりの高水準となった春闘賃上げなどによりまして実質所得が増加に転じる中で、個人消費を中心にプラス成長が続いております。その結果、我が国の名目GDPは1992年度に500兆円を超えて以降、約30年の長きを経て、本年の第2四半期4-6月期に史上初めて600兆円を超えるに至ったところでございます。
 1990年代のバブル崩壊以降、我が国経済はいわゆるコストカット型経済に陥っており、国民の皆様にもデフレマインドがかなり広く深く浸透しているということでありますが、このようにようやく明るい兆しが見られておりますので、現在、我々はデフレマインドを払拭し、賃上げと投資が牽引する成長型経済に移行できるかの、まさに分岐点にあるという認識を持っております。
 我が国のGDPの54%を占める個人消費については4-6月期、それから7-9月期は増加したものの、購入頻度が高い食料品等で価格上昇率が高い状況が続いており、また消費者マインドが慎重化していることなどもあって、賃金所得の伸びに比べて個人消費の伸びは抑制されてきたところでございます。個人消費の力強い回復を図るために、賃金の伸びが物価上昇を安定的に上回る経済を実現をし、豊かさを実感できる成長型経済への移行を確実なものにしていきたいというふうに思ってございます。
 その中で、石破政権では最低賃金については岸田政権の取組を加速をさせ、2020年代に全国平均1,500円という高い目標を掲げており、これに向けて、たゆまぬ努力を続けていきたいと思っております。具体的には来春に向け、賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を継続的に高めるために、持続的・構造的賃上げに向けた価格転嫁等の取引適正化の推進、省力化・デジタル化投資の促進、そして人への投資の促進及び中堅・中小企業の経営基盤の強化・成長の支援、具体的には事業承継やM&Aの支援なども含む生産性を向上させるための支援策、下請け法の改正などについて、更に具体化をしてまいります。
 また、こうした取組に当たっては、賃金の伸びが物価上昇を上回る経済を実現するまでの間、賃上げの恩恵を受けにくい方々へ寄り添った支援が必要であり、物価高の影響を受ける低所得者世帯向けの給付金や、地域の実情に応じた物価高対策を後押しする重点支援地方交付金など、総合的な対応を講じていきたいというふうに考えているところでございます。



(問)諮問会議に関連して財政健全化に向けた取組について伺います。今日の会議で総理は、財政健全化の旗を降ろさずに取組を進めて、来年1月に基礎的財政収支などの試算を示すと述べました。今回、実質で1.2%程度とされたGDPなどの経済見通しの中身の受け止めと、黒字化を掲げる来年度のPBの見通しについて、現状どう考えているか、お考えをお願いします。


(答)日銀と連携しながら、まず緩やかな諸外国並みの物価上昇ということで、うまく物価の安定目標を日銀に達成をしていただく中で、我々のほうは投資立国、資産運用立国といった考え方で、物価上昇を上回る賃上げ、所得の向上をきちっと図っていき、その差分でしっかり豊かさを国民に実感していただけるという方向に持っていくというのが基本的な考え方です。
 大きな流れとしては、物価については2%の安定目標に近づいてきているということだと思います。今般、閣議了解した経済見通しでは、令和7年度は賃金上昇が物価上昇を上回る中で、個人消費等の内需が増加し、実質成長率1.2%程度、名目成長率2.7%程度の民間需要主導の成長が見込まれるということをお示しをしております。こうした経済の姿を実現するためにも、先般取りまとめた総合経済対策を迅速かつ着実に執行し、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現をすることで、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を確実なものとすることを目指してまいりたいと思っています。
 冒頭申し上げたとおり、やはりそれぞれ役割分担があって、金融政策の具体的な手法は日銀が決めておられますけれども、それに基づいておおよそ物価安定目標2%に近づきつつあり、それはきちっと引き続き連携してやっていただき、その上で国民に豊かさを感じてもらえるような賃金上昇をどう実現していくかということに、精力を大いに割いてやっていきたいというふうに思っております。
 2025年度のPBの見通しについては、今年度の補正予算や今般の税制改正の内容を今後、十分に精査する必要があります。それに加えて来年度の税収の動向でありますとか、当初予算編成も影響いたしますので、現時点で具体的に申し上げるのは困難であります。本日の諮問会議で、石破総理よりご発言あったように、新たな中長期試算を1月にお示しをし、財政健全化の進捗を検証してまいりたいと考えております。



(問)私も諮問会議のことで伺いたいのですが、本日決定されたEBPMのアクションプランについて、意義と大臣の評価を伺えればと思います。こちらの10個のテーマに先ほど言及があった半導体なども入っていますが、非常に記述の分量は多いのですけれども、数値目標などはまだ設定されているところがほとんどなく、データとして参照するものも非常にたくさん挙げられていて、従来型の都合のいいデータを取り出して、いわゆるエピソードで政策を立案するというような可能性もまだ残っているように見えます。これについて大臣の評価と、ブラッシュアップされていくと聞いていますので、今後の課題についてもあわせて教えてください。


(答)我々が本当に肝に銘じなければいけないのは、EBPMと言いながらエビデンスに基づかずに、こういう話を聞いてきたと言って、誰か1人から話を聞いてきて、エピソードベースで政策を作ってしまうということは自戒しないといけません。更にその上に悪い例があって、エモーション・ベースド・ポリシー・メイキングといって、「感情的にそれは好かん」とか、あの人が言っているからこうだとか。とにかく、しっかりEBPMを唱える以上は、エモーションでもなく、エピソードでもなく、しっかりとエビデンスに基づいた政策作りをしていかなければいけないということは、我々、本当に肝に銘じてやっていかなければいけないことだというふうに思っております。
 その中で、今日、柳川議員からまずご指摘いただいたことでいうと、「スピード感を持って改革を進めるとともに、各省の連携やプロセス管理を強化」し、ここは大事ですけれども、「限られたリソースから高い政策効果を生み出していくことが重要」ということであります。大きな流れとしては、本日策定した「EBPMアクションプラン」及び「改革実行プログラム」を踏まえて、諮問会議の下にある「経済・財政一体改革推進委員会」を中心に、来春にかけて、「改革の進捗管理・点検・評価」を実施をし、施策の見直し等を行い、年央の骨太方針策定に向けた議論につなげてまいりたいというふうに考えております。
 いろいろなEBPMがあるけれども、しっかり数字とか検証をできているのかというご質問だったと思います。実は今日の会議の資料の中、資料5-1の4ページを見ていただくと、「EBPMアクションプラン2024」の案における半導体関連の国内投資促進にロジックモデルというものを作ってあって、これが有識者の皆様がまさに一生懸命努力し、役所とも連携しながら作ってくださったものです。
 まず最終アウトカム指標というものを定めます。これはグローバルな半導体市場における日本シェアというのが1番目ですね。つまり、世界の中でもう一度、覇を唱えるぞということがあります。
 2番目が、日本の産業にとって重要な半導体等の国内需要量に対する国内生産能力の確保。半導体は産業の米といわれ、先ほど申し上げたように自動運転から生成AIから、国内で世界に先駆けてやっていこうと思ったら、必要な半導体を確保できないとできませんので、国内需要を満たせるかという意味での数値目標。それから、半導体を使用する製品に係る二酸化炭素の排出削減量ですね。これは電力消費とか、そういうことにも大いに関わりますし、そういうものを最終アウトカム指標として3つぐらい定めた上で、それを検証するためにはどういう指標が置けるかということで、中間アウトカム指標というものを設けています。これは例えば、先ほどのグローバルなシェアとか、国内の需要量に対する生産能力とかいったものをどう検証していくのかということです。公的支援により実現した各種半導体製造装置、部素材、電子部品の国内生産能力とか、いろいろなものを数値で調べてきて、それによっていい方向に動いているのか、悪い方向に動いているのか、最終的な目標は到達できそうなのかといったようなことを検証していくということです。
 更に、最終アウトカム指標の手前に中間アウトカム指標ありますが、その手前に関連施策というものがあって、我々が投資をいろいろ支援をしたり、その中にある半導体の国内生産基盤強化の最初の項目が次世代半導体の量産確立に向けた支援になると、関連施策で出ていますが、ここにあることを眺めていただいて、こういうロジックモデルで物を考えようということです。我々が個々に予算を、例えば10兆円を超える公的支援を2030年までに半導体AIで行いますが、それがまさに関連施策で、それによって中間アウトカム指標がどういうふうに満たされていくのか。そして、最終アウトカム指標の実現にどうつながっていくのかといったようなことを、「経済・財政一体改革推進委員会」において柳川委員はじめとする専門家にご議論をいただき、うまくいっているとか、いっていないとか、ここにもっと力を入れろとか、そういうことをいただきながらやっていくと。
 やはり大事なのは、財源も限られていますので、やろうとした目標を正しく定めて、そこにどれだけ効果的に向かっていっているかということは本気で分析していかなければいけない。そういう意味では、モデル的には3ページの右上でしょうか。これのモデルに従ってやっていて、必ずしもエピソードで、誰かが話を聞いてきて、これをやったらいいのではないかと言ったから、こうなったという世界ではなくて、このやり方に従って、専門家が丁々発止と議論を交わしながら役所ともやり合って、時には批判的にもなりますけれども、しっかりご指摘をいただきながら成果を上げていきたいというのがお答えになります。



(問)年の瀬ということで、防災庁に先ほど言及がありましたけれども、来年になると、いよいよ設置まで1年ということで。先日、首相から、分局的なものという発想はあってしかるべきだというようなお話もありましたけれども、来年1年、どういうふうに検討を進めていこうかというお考えをお聞かせください。また先日、年金部会で取りまとめがありましたけれども、ご担当の全世代型社会保障についてはどのように取り組んでいかれるお考えか、この2点をお願いします。


(答)まず一般論的なことを申し上げておくと、私自身、内閣府副大臣だった2021年に「防災・減災、国土強靱化ワーキングチーム」において、防災DX、防災教育あるいは防災ボランティアなど、5つの提言をまとめました。これも本当に心血を注いで作ったもので、今もそれがベースになって、内閣府防災がいろいろな予算を取ったり、やってくれています。防災をライフワークとして取り組んできている中、本年10月、石破内閣において防災庁設置準備担当を拝命したので、本気の事前防災を実現するために全力で取り組んでいます。
 改めて申し上げるまでもなく、我が国は世界有数の災害発生国であり、国民の生命・身体・財産を災害から守り抜くと、石破政権が掲げる「守る」の一番重要なもの、人命最優先の防災立国を早急に実現していく決意です。令和8年度中の防災庁の設置に向けて、年明けから有識者会議を開催する予定であり、以前から私と共に防災会議を議論していただいた13人の専門家に加えて、総理推薦が6人、坂井さん推薦が1人ということで、合計20人の専門家と、ご意見を踏まえて、防災庁の具体的な在り方についてスピード感を持って検討を進めてまいりたいと思っています。
 これが大きな流れですが、今のご質問に関連して言えば、まず地方6団体、知事会、都道府県の議長会、市長会、市議会議長会、町村会、町村議会議長会からもう10年以上、「専任の大臣がいる防災庁をつくってくれ」と言い続けてこられて、政府の側としてはある意味、ゼロ回答を続けてきているわけですね。現状で足るとか、屋上屋だとか、いろいろなこと言いながら。それにようやくお応えできると。これはもう地方公共団体のほうにも、ようやくやってくれるのかと。だったらこれが言いたい、あれが言いたい、こう言いたいと、いっぱいあるわけです。なおかつ、各自治体が真剣に地域の住民の生命・身体・財産を守ろうとして取り組んできて、積み上げたノウハウもありますから、うちが一番貢献できるのではないかと、そういう思いもすごいわけですね。
 例えば具体的に手が挙がっているのは、阪神淡路大震災があってできた「人と防災未来センター」。そこがある兵庫県は、もう分局のようなものもある。置くかどうかも決めていませんけれども、置くなら絶対にうちだと。そういう熱い思いがあって、ご要望も1つや2つではないので、総理は、そういう意味ではもちろん10年以上お待たせしましたと、ようやく皆様にお応えできますと。そんな中で大変熱い思いをいただいていますと。それはもう、やりませんという答えをいきなり言うことはあり得ないので、しっかりご要望をいただいて、防災庁設置に至るまで、どんな要望が出てくるか。他の自治体がこういう要望をしたら、うちはこういう要望をしたいと、これからどんどん出てくると思うので、そういう全体像をよく見ながら、考えてやっていきたいと思っています。
 一つ関連するか分かりませんけれども、少なくとも備蓄について担当各都道府県を決めて、その担当の都道府県内の市町村がちゃんと備蓄できているかみたいなのを徹底的にチェックしてやろうと思いますが、それがもし足りないとなった時に、国が中央から全部、備蓄のものを届けるとかいうのはあまり現実的ではないと思います。何かブロック単位かもしれませんけれども、ブロック別の備蓄基地みたいなものができるかもしれませんし、そこは効率とか、いろいろなことを考えてやっていく中で、単に中央だけでやる仕事では、恐らく防災庁というのはないだろうというのは総理と共有するものでありますし、いろいろなご要望をいただきながらですけれども、お答えの一番大事な部分はまだ何も決まっていないということは申し上げておかないといけないと思います。
 それから、全世代型社会保障の進め方でありますけれども、能力に応じて全世代が支え合う全世代型社会保障の構築に向けて、働き方に中立的な制度の構築や医療介護制度等改革などについて、今後取り組むべき課題を具体化させた改革工程は、ご案内のとおり昨年末に取りまとめ、令和5年12月22日に閣議決定しました。その中で、2028年度までに実施について検討する取組をお示しをしており、2028年度までの各年度の予算編成過程において、検討・決定を行うこととしています。
 総理からのご指示も踏まえて改革工程に掲げられた項目について、実現できるものから着実に実施すべく、厚生労働省に検討を進めていただいております。全世代型社会保障改革担当としては、今後とも全世代型社会保障構築会議を開催をし、厚労省における検討状況のフォローアップをするなど、引き続き、全世代型社会保障の構築に向けて取り組んでまいりたいと思います。
 おっしゃる問題意識はよく分かっており、今日も経済財政諮問会議において、国民にいろいろな意味で安心してもらって、政策が最大の効果を発揮していくためには財政に対する信認も必要だし、国民が安心できる、きちっとした社会保障制度が確立している必要があるというご指摘は、もう何人もの議員から出されています。それについては、そういった趣旨で社会保障制度のいいもの、全世代型のいいものが作れないと、経済の成長とか、あるいは税制によって出てくる税収とか、そういうものにも全部直結してくると思うので、その辺は、引き受けた以上はしっかり仕事をして結論を出していきたいと思っています。











3.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明

 令和6年第16回経済財政諮問会議です。
 本日の議題は2つです。まず、1つ目の議題、「令和7年度の経済見通し」について、内閣府から資料1-1を説明した後、植田日本銀行総裁から資料2をご説明いただきました。そして、中空議員から、資料4に基づき民間議員からのご提案をご説明いただいた後、意見交換を行いました。
 続いて、2つ目の議題、「経済・財政新生計画に基づくEBPMの強化及び改革工程の具体化」について、内閣府から資料5-1を説明し、柳川議員から、資料5-2に基づきご報告をいただいた後、意見交換を行いました。そして最後に、「EBPMアクションプラン2024」及び「改革実行プログラム2024」を諮問会議として決定いたしました。
 それぞれの議題について、主なご意見をご紹介いたします。
 1つ目の議題に関するご意見です。
 1人目の民間議員です。
 経済財政運営の鍵は、成長と分配の好循環の実現である。経済成長には、国内投資と個人消費の拡大が必要。国内投資の拡大に向けて、政府は中長期の計画的な投資を行い、企業の予見可能性を高め、民間投資を促すような経済財政運営を行うことが大事。
 賃金引上げが消費に向かうよう、若年世代の不安解消に向けて、公正・公平で持続可能な全世代型社会保障制度の構築に取り組まなければならない。
 年収の壁については、就業調整の問題にとどまらない。中間層の衰退というのは顕著である。壁の見直しに向けた取組は大事。103万円の壁だけではなく、106万円、130万円の社会保険料に係る壁についても議論をすべき。
 財政規律を核とすることが極めて大事。まずは、2025年度のプライマリーバランス黒字化を目指すことが重要。その後は、複数年度の平均で黒字基調を維持すべき。
 年収の壁への対応は、労働参加の問題、可処分所得の問題、社会保険料の問題、財政規律の問題と、論点が複雑に絡み合っている。整合性の取れた対応となるように議論を行う必要がある。
 2人目の民間議員です。
 賃金が上がり始め、金利も着実に上がってくる中、今まで立てた目標を達成させる時期になっている。例えば、GXは日本経済において重要な政策ではあるが、実際に有効な投資になっているか、実効性を確認することが必要。
 103万円の壁に関しては、財源を含め、根本的な課題解決を行うべきであり、国民の前で議論をしていく必要がある。既存の制度を大きく変えた場合には、それが問題になる層が出てくる可能性があるので、その対応としての短期的な措置も含めて、トータルパッケージで提案をすべき。
 財政健全化に関しては、格付維持の観点からも重要。市場は不透明要素が多いということは理解しているので、財政健全化の未達成それ自体ではなく、目標を達成できなかった原因を分析し、将来的な対応を示すことが重要。財源のない政策は政策にはならないので、日本の格付が悪化し、悪い金利上昇が起きないようにするためには、きちんとした財政基盤が必要であり、財政健全化を確実に進めていくべき。
 3人目の民間議員です。
 3点ご発言がありました。1つ目として、恒常的な実質賃金の向上が大事。CPIプラスアルファの賃上げを必ずやっていくこと、中でも、全従業員の7割を占める中小企業の生産性を高め、賃上げのノルムをつくることが大事。労働力の移動も徹底的に進める必要がある。そのためには、企業の新陳代謝を受け入れていくことが大事。
 2つ目として、550万人の就業調整をいかになくすか、そのための策を練ることが大事。人手不足対策の観点からも大事な要素である。社会保険の壁に限らず、議論を進めていく必要がある。現在の「年収の壁・支援強化パッケージ」をより使いやすいものとすることで、第2号被保険者を拡大し、最終的には第3号被保険者を廃止するという道筋が大事ではないか。
 3つ目として、可処分所得の増加が大事。医療・社会保障制度改革をしっかりと進め、手取りの増える環境の道筋を明らかにすることも大事。財政需要は今後も増えていく中、取りやすいところから取るということは難しくなってくる。新たな財源確保が必要であり、応能負担をしっかりとしていく必要がある。そして、財政健全化に道筋をつけて、財政の信認を確保することが大事。
 4人目の民間議員です。
 「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行には投資が必要。そのためには、民間企業による国内投資が大事。そして、投資をするだけではなく、人の能力向上が伴うことも大事。金融投資のみならず、人への投資を併せて進めなければ、賃上げや経済成長につながらない。
 国内投資の予測は堅調であるが、一方で、自社株買いも進んでいる。自社株買いにも意味と役割があるが、そのお金を設備投資や人への投資に使うことが大事。人的投資という意味では、働く意欲があるにもかかわらず働けないということがないように、就業調整の問題に対応していくことも大事。第3号被保険者制度の見直しも大きなポイント。
 マクロの数字だけを見ていても、潜在成長率の引上げにどのような影響があるのかは見えてこない。どのような投資が成長につながるのかということを考えることが大事。マクロ的な視点だけではなく、もう少し細かいところまで見る必要がある。
 プライマリーバランス黒字化の目標の旗を降ろすことなく、諮問会議の場も使いながら、財政健全化の進捗管理を行う必要がある。
 一通りの発言の後、一人の民間議員から追加のご発言がありました。
 財源論の話があったが、税の捕捉を高めていくことも大切。取りやすいところから取るという対応には限界がある。資産を税収の対象としていくべきではないか。特に相続税の捕捉強化が必要だと考える。今は10%程度であり、以前よりは捕捉率は上がっているものの、相続税逃れ等にきちんと対応していく必要がある。
 次に、2つ目の議題に関するご意見です。
 1人目の民間議員です。
 EBPM強化について、多年度で取り組む施策を対象にPDCAを回すことは当然のことである。
 改革工程の具体化については、今回の「改革実行プログラム」で明確化された事項を速やかに実行すべき。特に社会保障分野の取組が重要。現役世代の社会保険料負担を抑制するために、応能負担を徹底すべき。医療・介護の応能負担を検討する際、金融資産を勘案することなどを考えるべき。
 税と社会保障の一体改革が重要。社会保障制度の給付と負担の将来見通しを早期に提示すべき。そして、その将来見通しを踏まえ、全世代型社会保障制度の確立に向けて、税と社会保障の一体改革といった議論に取り組まなければならない。社会保障制度改革の議論は、分配政策、財政問題、労働参加に関する議論であり、少子化対策にも直結する。公正・公平で持続可能な全世代型社会保障制度の確立に向けて、当面の改革の進捗管理にとどまることなく、税と社会保障の一体改革に向けた、多岐にわたる論点を総合的に議論する場を別途設けるべきではないか。
 2人目の民間議員です。
 EBPMは根づき始めており、今回のアクションプランで最も重要な10項目を設定している中で、以下の4点が特に重要。
 1点目として、EBPMの中で必要なデータが何なのかということを明確にすべき。日本にはデータがたくさんあるように見えるが、全てのデータがそろっていないところもあるため、総理のリーダーシップの下で、データの整備を進めていただきたい。
 2点目として、データの利便性を上げることが大事。データを活用するためには、規制改革と省庁連携が必要。個人情報保護法の課題もあるが、乗り越えるべき障害を特定して乗り越えていかないと、マイナンバーの価値が発揮できなくなるといったような問題も生じてしまう。
 3点目として、今回、重要政策に関するロジックモデルを作成したが、随時これを見直すべき。アウトプットとアウトカムだけにとらわれず、日本経済にとってのインパクトがあるかどうかという観点も必要。
 4点目として、EBPMは手段であって目的ではない。作成したアクションプランの中で優先順位をつくることによって、政策の実現性について、市場への説得力が大きく高まるのではないか。
 3人目の民間議員です。
 経済がデフレからインフレに向かう中、ワイズスペンディングが重要となることは言うまでもない。今回、EBPMアクションプランを取りまとめたことはすばらしい取組だと思う。EBPMアクションプランには10個の領域があるが、数が多いので、濃淡をつけていくことが大事。その中で、アーリーサクセスを示せるとよい。特に、可処分所得を増やしていくためにも、社会保障制度改革が大事だと考えている。ぜひ成功事例をつくってほしい。
 EBPMアクションプランに基づく検証をしっかりやっていくことが大事。そのためには司令塔が必要で、総理と赤澤大臣のリーダーシップの下、しっかりと進めていってほしい。
 加えて、社会保障制度改革をはじめ、これまでも議論をしてきた中で進捗の悪いトピックに実効性を持たせるためにも、経済・財政一体改革推進委員会の権限と体制を強化することも大事ではないか。
 次に、閣僚からの発言です。
 村上総務大臣です。
 本日示された資料5-4「改革実行プログラム2024」のうち、特に「地方行財政」分野について、総務省の今後の取組を申し上げる。
 まず、自治体DXの推進に向けては、フロントヤード改革とバックヤード改革の一体的な推進や、都道府県と市町村が連携した推進体制の構築、マイナンバーカードを活用した救急業務の円滑化などに取り組んでいく。
 自治体の広域連携に向けて、関係省庁との連携による市町村事務の共同実施を進めるとともに、地域の多様な主体との連携・協働を推進する。
 さらに、自治体の財政マネジメントの強化に向けては、財政状況の「見える化」や地方公営企業等の経営改革を推進していく。
 人口減少と少子高齢化が進む中で、今後とも自治体の行財政を持続可能なものにしていくため、自治体DXや連携の推進、国・都道府県・市町村の役割のあり方も含めて、どのような方策が考えられるか、現場の具体的な課題を踏まえた対応のあり方について、自治体の皆様の声を伺いながら、検討していく。
 民間議員の先生方の議論にあった財政健全化について、総務省としてもバックアップしていきたい。
 続いて、加藤財務大臣です。
 経済財政運営においては、引き続き、「経済あっての財政」との考え方の下、力強く経済再生を進める中で、財政健全化も実現し、経済再生と財政健全化の両立を図っていく。
 経済・財政一体改革の推進に向けては、今回決定された「EBPMアクションプラン」及び「改革実行プログラム」の取組を着実に進捗させていくことが重要。特に、「改革実行プログラム」については、これまでの「改革工程表」と比較して、今後3年間に実施すべき工程がより具体化・詳細化されており、その着実な実行に向けた検証が今後の鍵になる。
 財務省としても、「骨太方針2024」に基づき、政策の効果・効率を高めるため、こうしたEBPMやPDCAの取組と連携して、ワイズスペンディングをさらに徹底していく。
 続いて、武藤経済産業大臣です。
 政府経済見通しで示された姿を実現し、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」へ確実に移行していくためには、将来の成長につながる投資を促進することが重要。
 経済産業省としては、半導体・AIを含むDXやGXなどの成長分野への積極的な投資を促すため、今般成立した補正予算でも必要な措置を講じたところ。今後は、本補正予算を適正に執行しながら、しっかりと効果検証も行い、政策効果を高めていく。
 そうした中、多年度にわたって取り組む重要な政策である半導体、GX政策については、今回、EBPMアクションプランが取りまとめられた。今後はこのアクションプランに基づき、事業の進捗や効果をモニタリングしながら、政策の効果もしっかりと示しつつ、政策の改善につなげていく。
 この後、1人の民間議員からご発言がありました。
 各大臣から力強いお言葉があった。感謝申し上げたい。
 財務大臣からも話があったが、「改革実行プログラム」には具体的な内容が詳細に示されている。今後、これをどう実現していくかが大事。
 経済産業大臣からは成長を促す投資という話があった。改革は、歳出削減の話だけではなく、成長につなげるためにプロセス管理をしっかりと実行していくもの。EBPMについても、成果が出ていることをデータで示すことが重要。
 総務大臣から自治体DXの話があった。自治体DXに取り組むことで、色々な政策の成果を「見える化」して、予算の説明力を高めることができる。
 今回のこうした取組は、政権の中で取り組んだ政策がどのような成果を出しているか「見える化」することによって、予算の説明も充実したものになり、政策評価・政策のアピールになる。専門家も入れてデータを示しつつ、成果の実現を目標として、政策を回すプロセスを進めることが重要である。
 最後に、総理から締めくくりのご発言がありましたが、皆様にお聞きいただいたとおりですので、割愛いたします。







(以上)