第14回記者会見要旨:令和6年 会議結果
赤澤内閣府特命担当大臣記者会見要旨
- 日時:令和6年11月26日(火)19:19~19:52
- 場所:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室
1.発言要旨
冒頭、私から4件お話をさせていただいて、その後ご質問に答えたいと思います。
本日、石破政権で初回となる政労使の意見交換を開催したので、その概要についてご報告を申し上げます。
本日の政労使の意見交換では、2025年春季労使交渉及び最低賃金の今後の中期的引き上げ方針について、労使の皆さんと意見交換を行いました。石破政権では、デフレ脱却と成長型経済の実現を確実なものとし、地方経済と日本経済を共に成長させ、生活が豊かになったことを一人一人の国民の皆さんが実感していただけるよう、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現することを目指します。
これを物価が持続的・安定的に上昇する新たな経済ステージにおいて実現するため、石破総理から、来年の春季労使交渉において、労働者の賃金水準を引き上げるベースアップを念頭に、33年ぶりの高水準の賃上げとなった今年の勢いで大幅な賃上げへのご協力をお願いしたということであります。まさに本当にこの言葉を使われました。「今年の勢いで大幅な賃上げへのご協力をお願いしたい」ということを会議の場でご発言されたところであります。この賃上げの流れが、雇用の7割を占める中小企業や地方で働く皆様にも行き渡ることが大変重要でございます。
政府として賃上げ環境の整備のための具体策を盛り込んだ総合経済対策を決定いたしました。これに基づき、価格転嫁等の取引適正化の推進、それから、省力化、デジタル化投資の推進、人への投資の促進及び多様な人材が安心して働ける環境の整備、そして、中堅・中小企業の経営基盤の強化、成長の支援などに取り組んでまいります。その裏付けとなる補正予算の早期成立を図ってまいります。
本日の議論も踏まえ、地方における官公需や中小・小規模企業の間の転嫁も含めて、労務費の価格転嫁の徹底に一層全力で取り組んでまいります。また、賃上げの流れが地方にも波及するよう、全国47都道府県において、地方版政労使会議を開催してまいります。
最低賃金については、石破政権として、2020年代に全国平均1,500円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続けることは既に皆様に表明をさせていただいているとおりでございます。その第一歩として、本日、政労使の意見交換で使用者・労働者それぞれの立場から、最低賃金の中期的引き上げ方針について率直なご意見を伺いました。今後も政労使の意見交換を開催し、本日のご意見を踏まえ、官民挙げて問題の深掘りや環境の整備を図ってまいりたいと思います。
石破総理からは、私を中心に、関係閣僚と協力して、最低賃金を引き上げていくための対応策を来春までに取りまとめるよう指示があったところでございます。本日の意見交換の具体的な様子は後ほど事務方から説明させようと思います。
二つ目、経済財政諮問会議の概要についてご報告を申し上げます。
本日の議題は二つで、「令和7年度予算編成の基本方針」の原案について議論した後、有識者にもご参加をいただいて、「賃金向上特別セッション」の第1回として、マクロ経済の観点から賃金向上についての議論をさせていただきました。
「令和7年度予算編成の基本方針」については、今後、与党でご議論をいただく予定でございまして、それを踏まえ、次回の諮問会議で総理からの諮問と、諮問会議としての答申案の決定を行いたいと考えてございます。
二つ目の議題、特別セッションでは、冨山和彦会長と山田久先生の2名の有識者にもご参加いただき、議論を行いました。発言者名は申し上げられませんが、特別セッションで出た意見として、全部で五つご紹介をいたします。
1番目は、「労働供給制約が構造的・恒常的になる中、GDPや賃金を伸ばすためには付加価値労働生産性の底上げが重要」。
2番目が、「地方の非製造業など人手不足が深刻な業種では、リ・スキリング等によって人員に余裕がある業種からの労働移動を促進しつつ、AI等を活用して生産性向上を図ることが重要」。
3番目は、「最低賃金の本旨は、健康で文化的な最低限度の生活を保障することであり、労働者の生計費が最も重要な決定要素であるべき」。これは憲法の文言であります。
4番目が、「デフレの影響で伸び悩んでいた実質賃金を引き上げるためには、マクロ経済環境として適度な物価上昇を実現し、企業が価格転嫁を行いやすくしつつ、生産性向上を図ることが重要」。
最後に5番目ですが、「ホワイトカラーの余剰と現場労働不足というミスマッチが拡大する中、AI等の新技術を徹底活用して、高賃金な高度現場人材である『アドバンスト・エッセンシャルワーカー』を創出することが重要」。
以上のような五つのご意見がございました。
石破総理からは、「33年ぶりの高い水準となった賃上げの流れを継続・拡大するため、経済対策の早期執行とともに、来年度予算においても、来年の春季労使交渉に向け、企業の賃上げ環境の整備を図っていく」、「人手不足の緩和に向けた、省力化・デジタル化投資による生産性向上や、リ・スキリング等による労働需給のミスマッチ解消、最低賃金の引き上げが重要であり、こうした生産性向上や労働市場改革について、今後、政労使の意見交換や地方創生の基本構想、更には来年の骨太方針に向け、引き続き議論を深めていく」といったご発言がございました。
経済財政諮問会議の詳細については、後ほど事務方から説明させていただきたいと思います。
あと二つです。一つは、月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要のご報告でございます。今月は、「景気は、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している」と、先月までの判断を維持しております。先行きについては、雇用・所得環境が改善するもとで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待されます。ただし、中国経済など、海外景気の下振れリスク、米国の今後の政策動向による影響などに十分注意する必要があります。
加えて、私から閣僚会議で説明した賃金の動向について申し上げますが、雇用者全体の所得、つまり、雇用者数に1人当たり賃金を掛け合わせた総雇用所得は、実質で2四半期連続の前年比プラスとなり、緩やかに持ち直しています。
一人当たりの実質賃金を就業形態別に見ると、パートタイム労働者の時給は昨年半ばより前年比プラスが継続しています。また、フルタイム労働者については現金給与総額では6月以降プラス傾向が続き、ボーナスを除く定期給与ではマイナス幅が縮小傾向にあります。一方、フルタイム労働者の所定内給与の伸びを事業所規模別に見た場合に、雇用者の約3分の1が働いている常用雇用者数が5人から29人の比較的規模の小さい事業所では、賃金上昇に遅れが見られるところでございます。価格転嫁対策や生産性向上支援など、中小企業の賃上げを後押しする取組が重要であると考えるゆえんでございます。
また、今年の夏ボーナスは堅調でありまして、その背景には、比較的規模の小さい事業所においてより多くの事業所がボーナスを支給するようになったことがあります。冬のボーナスについても現時点の集計では昨年よりも増加する見込みとなっており、所得環境の改善が続くことが期待されます。
この他、会議の詳細については後ほど事務方から説明させます。
そして、最後のご報告ですが、感染症危機管理対応訓練についてでございます。感染症の危機管理に関し、本日は「初動対処に係る国と都道府県との緊急連絡会議」訓練を実施いたしました。本年7月に新型インフルエンザ等対策政府行動計画を全面改定しましたが、平時の備えとともに、実効性のある訓練を通じて有事に備えることが重要です。また、感染症危機においては、国と地方の緊密な連携が重要となります。
本日実施した訓練は、新型インフルエンザが千葉県において国内で初めて確認され、政府対策本部会合が開催されたとの想定のもとで、政府の対応方針等を都道府県に迅速に共有すべく実施したものでございます。47都道府県にご参加をいただき、知事及び副知事合わせて13名のご出席をいただきました。なお、政府対策本部会合訓練については石破総理の日程も含めて調整中ですが、できるだけ速やかに実施したいと考えております。
私は、過去に元祖農林族でありまして、自民党全体で二十数名しかいない農林役員会から外れたことはありません。これも余談ですが、自民党の畜産酪農対策委員長を3期連続で務めたというのは私と坂本哲志代議士だけでありまして、そういう意味で、農林族としてお見知りいただきたいのですが、その関係で、過去にアフリカ豚熱対策において、実態に即したタイムラインを策定するなど、取組を進めてきました。
これは予備知識が必要な話かと思います。いわゆる豚熱です。これは皆さん、今、いろいろな所で発生したり、見聞きされますが、ただ豚熱と言っているものはワクチンが効いて、不治の病でもなければ、清浄国かどうかというのはありますが、豚熱はごく普通にあるものです。ところで、アフリカ豚熱は全く特別でして、不治の病です。かかってから必ず数日で亡くなる。それもなかなか激しくて、皮膚からも、あるいは血便も、とにかく血まみれになって、必ず絶命するという種類の豚熱で、ワクチンがありません。過去に、中国にアフリカ豚熱が入ったことで、中国全体の豚の頭数が3割減って、中国国民の皆さんが牛肉をすごく食べるようになったのは、豚肉の値段が高騰して、それでそのようなシフトが起きたと言われるぐらいすさまじい病気であります。
これが国内に入った時のために、実は議員立法を作りました。閣法で間に合わないかもしれない、当時の江藤拓農林水産大臣に頼まれて、私、大みそかから元旦にかけて地元におらず、議員会館の部屋で衆議院法制局と一緒に法律を作っていたことがあって、その法律の関係もございます。過去にアフリカ豚熱対策で実態に即したタイムラインを策定するなど、危機管理の世界標準の取組を私自身が手掛けてきたことがありまして、感染症の危機管理においてもしっかりとした時間軸を持って、何かやらなければいけないものを持っている機関が、感染症が発生したと分かったタイムゼロから、この機関はこれをいつまでにやる、何時間以内にやるということを全部流していかないと、どこがネックになっているか分からないということがあるのです。
感染症危機管理においてもしっかりとした時間軸を持って進捗を確認しつつ、都道府県等関係者と緊密に連携して、初動に対処することが重要ということを知事の皆様に表明し、私が閣僚になってまだ間もないので、今回追い付いておりませんが、ちゃんとタイムラインを作り、自治体とも共有をし、感染症に取り組んでいくということで、今の取組を更にグレードアップしていきたいと思います。
リモートで聞いたところでは、まだ知事会の中でタイムラインを作っておられる所は、どうも今日のところでは聞こえてこず、「これから頑張って作ります」「自然災害ではもう作ってますが」といった話だったので、ここはしっかりやっていきたいと思います。今後、同様に取組を行うなど、訓練の更なる充実を図りながら、次の感染症危機に向けて平時からの備えに万全を期してまいりたいと思います。
最後はアフリカ豚熱の話で長くなってしまいましたが、以上、4件についてご報告を申し上げました。
2.質疑応答
(問)2点お願いします。まず1点目ですけれども、冒頭、ご説明のあった政労使会議、今回、最低賃金の引き上げについて議論されたということですが、石破首相が2020年代に全国平均で1,500円に引き上げる目標を掲げる中で、本日、赤澤大臣を中心に対応策を来春までに取りまとめるように指示があったということだと思います。1,500円実現の対応策を議論するための枠組みとか、プロセスとか、スケジュールとか、そのようなことについては現時点でどうお考えになっているのかを教えてください。
2点目も少し似たような内容なので続けてお伺いします。その後の経済財政諮問会議の特別セッションの議論も踏まえて、今年実現した約30年ぶりの賃上げ水準を来年の春闘も同じ勢いでということですが、大幅な賃上げを持続的なものにしていくための環境整備をするための課題をどう認識されているのか、どの課題にどう取り組まれていく考えなのかというのもあわせて伺わせてください。
(答)まず、一つ申し上げておきたいのは、関係者が本当に一生懸命議論しています。私は日本の経営者の皆様を本当に尊敬していて、どの経営者も十分賃上げ原資が入手できれば必ず賃上げしたいと。一緒に仕事をしている仲間のためにできるものならば賃上げしたいというような思いは皆さんが持っていると思います。その上で、それぞれ抱えているものがあって、背負っているものがあるので、真剣に議論をして、どうしても結論を出していきたいというのが私の思いです。
私の抱えているものといえば、前にお話ししたことがあるかと思いますけれども、前回の選挙の時も、私の手を握って「暮らしていけるようにしてください」と言われる鳥取2区の方がおられるわけです。その事情は前にもお話ししたかと思いますが、今の最低賃金だと鳥取県は1,000円にいっていません。フルタイムで年間2,000時間働いても年収200万円にはいかないわけです。200万円というのは物価が上がり始める前のワーキングプアの水準ですから、一言で言えば暮らしていけないのだと私は認識をしています。
国民にそのような発言をさせるような政治は、私は極めてよろしくないということは党内でもずっと言い続けているので、ここで言っても怒られないとは思いますが、私はそういうものを背負っています。それをもって鳥取県からの地方創生と呼んでいまして、7大都市圏の議員の皆様もたくさんおられますし、経営者もおられるけれども、少しそこについて理解が不足していないかなと思うところがあるわけです。それは、私から鳥取県からの地方創生と呼ぶものの一丁目一番地なので、そのようなことを私は背負っています。
一方で、もちろん労働組合の皆様は、同様に合理的な根拠を基に最低賃金はどうあるべきという議論を連合などもされていますし、それぞれの団体が取り組まれています。また、経営者の皆さんは、当然ながら経営をして、しっかり会社を続けていくことで働いている人たちの生活も守るという認識を強く持っておられるので、ここを気を付けてやらないと、経営が立ち行かなくなる場合があり得るというようなことについては、大変背負っておられるわけです。そういう所でぎりぎり全員が、当然ながら企業としては、経営者の皆さんも含めて、賃上げ原資が十分稼げたならば、そこは経営者も、皆さん、賃上げしたいのだという思いは共有していただいていることだと私は固く信じ、実際そうだと思うのですが、そのような中で背負っているものがあるので、お互いに議論をぶつけるということになります。
ご質問について言えば、石破政権として2020年代に全国平均1,500円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続けることは石破総理が今日も繰り返されましたし、第1歩として本日、政労使の意見交換を開催し、使用者・労働者それぞれの立場から最低賃金の中期的引き上げ方針について率直なご意見を伺いました。
今後も政労使の意見交換を開催して、本日のご意見もいただきながら、官民挙げて問題の深掘りや環境整備を図っていきたいと考えています。しっかり賃上げ原資が生めるように頑張ろうという思いは一つでありまして、それができれば、しっかり働いている方たちが賃金を上げていこうという思いを一つにして、問題の深掘りや環境整備を図っていきたいということです。
政府としては、私を中心に関係閣僚と協力して、最低賃金を引き上げていくための対応策を来春までに取りまとめることといたします。対応策の具体的な内容については、価格転嫁の徹底や生産性向上支援をはじめ、本日のご意見もいただきながら今後検討を進めていきたいと思っております。
それから、特別セッションについてもお尋ねがありました。どういう体制で賃上げをしていくのかといえば、少なくとも政労使の意見交換と経済財政諮問会議の特別セッションの二つがあります。冒頭で「賃金向上に関する特別セッション」で出た主な意見をご紹介しましたが、本日の特別セッションでは、マクロ経済の観点から、賃上げを起点とした成長と分配の好循環、賃上げと投資が牽引する成長型経済という言葉と同じことでありますが、我々がずっと申し上げている高付加価値創出型経済、それによる賃上げの定着、賃上げの普及拡大、人手不足対応。こうした論点について活発な議論をいただいたところです。
今後のスケジュールは未定でありますが、以前から申し上げているとおり、来年の春季労使交渉や最低賃金の改定の検討に向けて、節目節目のタイミングで開催をし、議論を深めていきたいと思っております。
(問)政務の関係で恐縮ですが、お伺いします。赤澤大臣が発起人となっている無派閥情報交換会についてお伺いします。会議は今、大臣をはじめ、石破政権の主要ポストを務めているメンバーも多いかと思います。1月に発足してから10か月ほどたちますけれども、改めてこの無派閥情報交換会を開催する意義、それと、この会を設立して良かった点など教えてください。
(答)この会見は閣僚の立場として行っておりますので、無派閥情報交換会についてのコメントは差し控えるのが原則でありますが、会を立ち上げた時に皆様にもご説明した中身なので繰り返しますが、議員として有意義な活動をしていくためにはいろいろな情報が必要です。典型的に言うと、例えば大事な本会議が立つ時に、そのことが分かっていなくて地元で重要な会をセットしてしまったと、このようなことを繰り返しているととても良くないわけです。
そのような意味で、議員として活動する以上は、主要な国会日程であるとか、あるいは政調でやっている政策の議論であるとか、その日程感ですね。典型的に言えば、初当選したような議員の方は年末に税制調査会があって、税はそこで議論され決まるなどということも分かっていないかもしれない。そのようなことも含め。あと、選挙の関係であれば幹事長室ですけれども、我々この仕事をやる以上は選挙についての知識も欠かせませんので、例えば幹事長室の情報とか、あるいは国会対策委員会の情報とか、政調の情報とか、極力無派閥の議員は寄る辺がないので、集まって、情報交換をして、少しでも国民の皆様のお役に立てるような活動をしっかりやっていけるように情報交換・意見交換をしようという互助会のようなイメージで立ち上げています。
そのようなことを問われていませんけれども、派閥ではないのかというようなことを言われることがあるのですが、少しやゆされたのは、「無派閥情報交換会という派閥を立ち上げたね」とか言われたこともあるのですが、そのような意味は全くなくて。ただ、あえておっしゃったことのいい点を捉えれば、派閥とかも果たしている機能ですよね、本来。だから必ず集まって、国会や政調の政策や、あるいは幹事長室の選挙の情報なども共有しながら皆が活動しているわけで、そのような意味では互助会的なものはあって然るべきというつもりであれしました。
会としては何ら拘束しないので、出入りも自由ですし、総裁選の時に誰を応援するかも一切拘束はありません。現に、先の総裁選で言えば、石破候補を応援する人、それから、小泉進次郎候補を応援する人、上川陽子候補を応援する人の3種類に分かれましたので、そこは全く拘束なくやっているということです。
少ししゃべりすぎたかもしれませんが、コメントは差し控えたいと思います。
(問)今日の予算編成の基本方針の中でプライマリーバランス(PB)についてお伺いします。この中でプライマリーバランスは直接的には書かれてはいませんが、骨太の方針2024に基づくということなので、恐らくまだ2025年度のプライマリーバランス黒字化の目標を掲げていらっしゃるのだと思います。一方で、今年、103万円の壁の引き上げ、要は減税が行われる可能性も今後あって、例年以上に成長型経済へ進むことと、財政再建を同時に進めることが難しくなると予想されます。そうした中でどのような意気込みで今後予算編成を進めていきたいかというのをお願いします。
(答)ご質問の趣旨はよく分かります。過去の流れに乗ったご質問だと思うので、答えられる範囲で答えますが、経済財政運営の基本的考え方については、「令和7年度予算編成の基本方針案」において、「『経済あっての財政』との考え方に立ち、『賃上げと投資が牽引する成長型経済』を実現しつつ、財政状況の改善を進め、力強く発展する危機に強靱な経済財政をつくっていく」とか、それから、令和7年度予算は令和6年度補正予算と一体として、骨太方針2024に沿って編成するという方針を示しているところでございます。骨太方針2024に基づき、2025年度の国・地方のPB黒字化を目指すことを含め、引き続き経済再生と財政健全化の両立を図っていくことに変わりはありません。
あえて申し上げておけば、あの経済対策の規模を見て、これは2025年PB黒字化危うしではないのかと思われたかもしれないのですけれども、いろいろ言っておくと、例えば予算とはいつ執行するかでかなり変わります。だから、今年度中に執行した場合は、それは2025年度のPBには関係がありません。あともう一つポイントで、お分かりで聞いていると思いますが、例えばGXとか、あるいは今回のAI、半導体の関係。これについてはちゃんと別途財源を確保する仕組みがあるので、PBの仕組みの中には入ってきません。というようなことで、よく精査していくと、現時点においては2025年度のPBを黒字化がもう無理だろうという感覚を我々が持っているかといえば、決してそのようなことはないということは申し上げておきたいと思います。
(問)月例経済報告についてお聞きしたいです。基調判断の中に、「アメリカの今後の政策の動向」という文言が加えられました。くしくもトランプ次期大統領が中国製品に10%の追加関税を課して、更に、カナダとメキシコの製品についても就任初日に25%の関税を課すと表明をしています。メキシコに関しては不法移民の問題を解決するために関税をちらつかせるという、そういった手法についてもどのように受け止められているか。月例経済報告の文言を加えたことと、トランプ次期大統領の今後の関税のやり方について受け止めがありましたらお願いします。
(答)まず、トランプ政権については、私どもは今、ようやく閣僚とか主要なポストを選ぶプロセスにあると理解しています。それが決まってくれば、またそれぞれ具体的な政策が出てきますが、確かに総裁選と同様、大統領選の時にトランプ次期大統領がいろいろおっしゃったことが、本当に大統領になられてからそのまま実現をするのか、あるいは党内で、あるいは新しくポストに就かれた方たちと議論をした上で、どのような形で実現していくかというのは、残念ながら現時点では見えていないところがあるので、しっかり米政権の体制とか、打ち出される政策について注視をしていくということしか現時点では申し上げようがないかなと思います。
当然ながら、アメリカ経済は世界最大の経済でありますし、その動向は大変なインパクトがあるので、大統領が変わった時期には、当然ながら変化があるだろうということで、その政策動向について気にするのは、ある意味で中国経済のダウンリスクを心配するのと同様に当然やっておかなければいけないことだと思っていますので、そのような記述をさせていただいたということになります。
(問)政労使会議についてですけれども、最低賃金の引き上げ目標を2020年代に1,500円まで引き上げるという高い目標がございますけれども、企業側からは、中小企業に負担が多いのではという声もあるかと思います。本日も会議の中で反響などあったかもしれませんけれども、それらの反響は大臣どのように受け止められていらっしゃるのかお伺いしたいです。
(答)いろいろ懸念があることは承知しております。今日の会議については、一応、自身の発言については触れていいけれども、人の発言については触れていけないという大原則があり、あと、事務方が公表する範囲はいいけれども、それ以外のことは言ってはいけないというルールがあり、どこまで言っていいのか正直分からないところはあります。
ただ、何とかご質問にお答えしようということで、今日の会議は別にして、懸念がかなり報道されていることは承知しています。例えば日本商工会議所の小林健会頭は地方の中小企業の経営を圧迫する懸念を実際に言われて、皆様がそれを報道しておられるので、それについて他の、今日の会議の内容ということではなくて、お話をしておくとすれば、我々は2020年代に全国平均1,500円という高い目標について、様々な立場からご意見があることはもとより承知でございますけれども、だからこそ、中小企業の代表を含め、労使の皆様に参加をいただいて、政労使の意見交換を開催しています。
冒頭に申し上げたように、私は日本の経営者は本当に一生懸命経営されて、働いておられる方たちをファミリーだと思い、守っていこうと、一人も欠けさせたくないという思いで頑張っておられ、賃上げ原資さえ手に入ればしっかり賃上げしていきたいのだという思いを持っておられると思いますが、それがなかなか会社の経営と両立しない場合もあるというようなご議論だろうと思います。私の言葉で言う、お互いに抱えているものをぶつけ合って答えを見つけると。そのような意味ではそこまで言っていいのかわからないですが、誰とは言いませんけれども、直ちに1,500円みたいな議論がありますよね。私の知識で言えば、例えば韓国は2年で30%ぐらい上げて、倒産件数と失業率がかなり上がってしまったという例があって、それはやりすぎというか、いくら何でも乱暴だろうということはあり得るので、その辺りも含めて、しっかりご懸念が現実のものとならないよう、どのようにやっていけばいいのかをしっかり検討し、今後も政労使の意見交換を開催して、本日のご意見もいただきながら、官民挙げて問題の深掘りや環境の整備を図っていきたいということであります。
3.木村内閣府政策統括官(経済財政運営担当)による追加説明
令和6年第14回経済財政諮問会議です。
議題は2つです。「令和7年度予算編成の基本方針」の原案と「賃金向上に関する特別セッション①」です。
1つ目の議題については、加藤財務大臣から資料1をご説明いただいた後、資料2を私から説明し、意見交換を行いました。
2つ目の議題については、柳川議員から資料3に基づき、主な論点をご説明いただき、冨山氏から資料5、山田氏から資料6に沿ってご説明をいただいた後、意見交換を行いました。
1つ目の議題に関するご意見です。
1人目の民間議員です。
日本経済は2年続けて歴史的な賃金引上げを実現した。需給ギャップが解消し、2%のモデレートな物価上昇の実現が近づいている。デフレマインドを払拭し、成長と分配の好循環を実現する正念場を迎えている。
予算編成の基本方針について、賃金の引上げ、供給サイドの強化、財政規律の維持の3点お話がありました。
賃金の引上げが重要だということに併せて、供給サイドの強化については、需給ギャップがほぼ解消する中で、令和7年度の予算は、「経済あっての財政」という考え方の下、GX・DX等を通じた供給サイドの強化や中小企業の生産性向上を図るために、メリハリのある予算にすべき。社会課題の解決を通じた持続的な成長を目指して、民間投資の呼び水として政府が複数年度で計画的な支出を行うことが必要。
財政規律の維持に関しては、金融政策が正常化に向かい、金利のある世界では、2025年度のプライマリーバランス黒字化を実現し、その後も複数年度の平均で黒字基調を維持することが極めて重要。社会保障をはじめ歳出改革に着手し、財政規律を維持することが今まで以上に大事。
公平・公正で持続可能な全世代型社会保障制度の構築に向けて、社会保障全体の給付と負担の見通しを示して、税と社会保障の一体改革の議論に速やかに着手すべき。
2人目の民間議員です。
2025年度のプライマリーバランスの黒字化目標の達成がかなわない可能性が高い中、政府として次の目標や態度をきちんと示していただきたい。補正予算や基金など、本来緊急であるべきものが恒常化している点を懸念している。
日本も金利ある世界にいる。政策には財源が伴うものであり、財政の信用力を保つ必要があることについて、全ての国会議員の間に認識を共有していただきたい。
世界経済が不透明感を増す中、石破総理には、状況に対応して柔軟に動いていただきつつ、周りに流されず、自分の色を出した政策を実行していただきたい。
地方創生においては、地元に仕事があり、稼げることが大事。AIや半導体投資、GXなどの分野の既存の施策と地方創生を結びつけ、日本経済の活性化に取り組んでいただきたい。
3人目の民間議員です。
予算編成や財政運営については、デフレ時代とインフレ時代で前提が変わってきている。歳出と歳入の計算の仕組みを変えるべき。例えば税収については、デフレとインフレでは弾性値が変わる。弾性値の見直しを検討すべき。歳出については不用額が増えているので、予算編成の仕組みも検討すべき。
その上で、全体の雇用の7割を占める中小企業の生産性向上が大切。生産性を上げないと賃金も上がらないと言っている状況ではない。中小企業支援については、延命のための補助金ではなく、意欲のある中小企業への支援をしていくことが大事。生産性の高い産業への労働移動も推進すべき。加えて、地方については地銀の人材の活用をすべき。最低賃金の目標をしっかり決めて、早期に達成すべき。大企業については労働分配率の見える化が必要。
社会保障については、後期高齢者支援金の見直しなども検討すべき。支援金は今や6.7兆円まで増えている。これではなかなか手取りが増えない。歳出改革と応能負担によって、支援金の負担を減らすべき。
また、空き家も増えているので、この有効活用も必要。若い世代に空き家を開放すべき。
4人目の民間議員です。
骨太方針を踏まえた予算編成にすべき。これまでつくってきた方針を継続的に実現させることが大事。
EBPMによるワイズスペンディングの徹底が必要。大事なところにお金をつけていくべき。
日本国内で稼ぐ力をつけることが大事。国内の民間投資を引き出すことが重要。人材投資、人が少ない中でも生産性を上げる省人化投資、イノベーション・スタートアップ、GX・DX等の成長分野への投資、農林水産業の高度化や地域の文化・自然への投資を引き出すことが大きな柱となる。
あわせて、賃上げが継続的に可能となるような労働市場環境をつくることが大事。
経済環境は色々と変動するが、中長期的にしっかりと経済基盤をつくっていくことも大事であり、その大きな柱は財政健全化。
次に、2つ目の議題に関するご意見です。
1人目の民間議員です。
賃金と物価の好循環について、2%の物価上昇と1%の生産性の向上、これに対応した3%の賃金引上げの循環が理想形だと昨年12月の諮問会議でも話があった。
物価動向を重視し、積極的に賃金引上げを呼びかけ、2年連続で歴史的な賃金引上げが実現できた。賃金引上げのモメンタムを維持・強化するためには、2%程度の適度な物価上昇と生産性の向上が不可欠。日銀には、2%程度の適度な物価上昇に向けた施策の展開を、政府には、供給サイドを支援する取組を求めたい。
最低賃金の引上げについて、チャレンジングな目標を掲げて取り組むことが重要だが、最低賃金を引き上げた場合に影響を強く受けるのは中小企業。地域のインフラを支える中小企業への影響を懸念する声もある。政府には、頑張る事業者が取り残されない、頑張った者が残っていける環境を速やかに整備してほしい。地方や中小企業の声を踏まえて、丁寧な議論をお願いしたい。
2人目の民間議員です。
生産性向上は重要だが、やり方のフォーマットがないことが問題。
最低賃金の引上げは政府からの重要なメッセージになると考えている。日本の最低賃金は諸外国と比較して大きな差があり、最低賃金の引上げは必要。一方、引上げに当たっては、企業収益の向上も絶対に必要。政府には、企業が設備投資や賃上げにポートフォリオを振り向けたくなるような政策を実施していただきたい。
働きに見合う報酬が得られるような環境整備も重要。
3人目の民間議員です。
昨日ある会議に出ていたが、悪いのは社員ではなく経営者のほうだという意見が出た。いまだにファックスでさえ使い方が分からない経営者もいて、やはり新陳代謝が必要ではないかという話があった。
一方、辞める方々のための労働市場が整備されていない。新しい資本主義実現会議でも議論をしたが、そうした方のためのプラットフォームをつくって、地方でどのような仕事があるか、情報の非対称性を解消していくことも必要。
最低賃金の引上げについて、何か新しいことをやろうという経営者は引き上げても構わないという方も多い。補助金で頑張っていない企業を助けるのは不公平であるという話もあった。
山田氏の資料にもあったが、エッセンシャルワーカーの賃金は別に検討すべき。もっと賃金を引き上げてもよいのではないか。
4人目の民間議員です。
外国との賃金格差が大きくなっており、今やアメリカのみならず、アジア諸国でも賃金が上がっている中、賃金の引上げは大きな課題。労働市場だけではなく、経営面の課題でもあり、経営を全体的に支援する政策の総合パッケージが必要。
人がスムーズに動くための政策が必要であり、そのためにもリ・スキリングが重要。同じ産業でも隣の企業に移動するためのリ・スキリングは重要。中小企業の省人化投資やDXをどう支援するかということも大事。
公共サービス分野の価格と賃金はしっかりと議論すべき。エッセンシャルワーカーの高度化は大変重要。ホワイトカラーをどのように高度なエッセンシャルワーカーとしていくか、そのための政策も大事。
次に、閣僚からの発言です。
武藤経済産業大臣です。
物価高に負けない持続的・構造的な賃上げを実現するための環境を整備することが極めて重要。本日の有識者の議論にもあったが、特に中小企業や地方において、生産性を抜本的に高め、それが労働者にしっかりと分配される必要。
労働生産性の上昇にもかかわらず賃金は停滞しており、その乖離を埋めるためにも、価格転嫁対策を徹底的に行い、成長型経済の裾野を広げていかなければならない。
現在、価格転嫁に関する最新の調査結果を集計中だが、転嫁率は改善した一方、多段階の取引構造の隅々まで転嫁させていくことが課題。発注企業ごとの交渉・転嫁状況の公表や、取組が芳しくない発注企業への指導・助言、公取委と連携した下請法改正など、取引適正化を徹底的に進める。
中小企業自身の稼ぐ力の強化にも取り組む。経済対策に盛り込まれた生産性向上のための省力化や成長投資を支援するとともに、大企業も含めた大胆な投資を通じて、中小企業の事業機会の拡大にもしっかりと取り組んでいく。
続いて、福岡厚生労働大臣です。
今年の春季労使交渉では、33年ぶりに5%を超える賃上げが実現した。賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済の実現に向けて、賃上げ水準を持続的なものとし、その流れを中小企業にも波及させていくことが重要。
そのため、来年の春季労使交渉に向けて、「政労使の意見交換」を通じて、労使にしっかりとご議論いただくとともに、厚生労働省としても、昨年度に引き続き「地方版政労使会議」を開催し、地方や中小企業における賃上げに向けた機運醸成を図りながら、関係省庁と連携して、労務費転嫁指針などの周知に取り組む。
医療・介護・障害福祉の分野においても、引き続き、現場で働く方々の賃上げ等に取り組み、地域の住民の方々が安心して医療・介護等のサービスを受けられる基盤を守っていく。
最低賃金の決定に当たっては、最低賃金法に基づき、公労使三者構成の最低賃金審議会でご議論いただく必要があると考える。厚生労働省としても、最低賃金のさらなる引上げに向け、適切な価格転嫁や中小企業等の生産性向上支援が重要と考えており、関係省庁と連携して、賃上げ環境の整備に全力で取り組んでいく。
さらに、人手不足が課題となる中、女性や高齢者など多様な人材の労働参加を進めるとともに、働き方に中立的な制度の構築に取り組んでいく。
次に、有識者のご発言です。
1人目の有識者です。
現在の最低賃金は、先進国としては低い水準にあり、まずは、他の先進国並みの水準にすべく2割上げる必要がある。
生産性については企業間で大きな格差がある状況で、新陳代謝を促して集約化する必要。
日本の外部労働市場は弱いので、しっかりと対応してもらいたい。
エッセンシャルワーカーの今の賃金水準では、自分が主張するペースで最低賃金を引き上げていくと、いずれ最低賃金を下回ってしまう。政府には、エッセンシャルワーカーの賃金について是非とも検討していただきたい。
2人目の有識者です。
いわゆるゾンビ企業の新陳代謝はやむを得ないと思うが、企業の中にはこれまで様々な事情で十分に価格転嫁できていなかった企業もある。こうした企業に対する支援は必要。
その際、特定最低賃金が使える制度だと考えている。これは労使合意があれば、特定の地域・産業で独自に最低賃金を定められるものであり、政策支援もやりやすいのではないか。
エッセンシャルワーカーはとても大事で、ないと生活基盤が崩れる。エッセンシャルワーカーの生産性を上げる余地は十分にある。経営が変われば生産性が上がるので、ベンチマークを提示しながら、好事例を展開すべき。完全に民間に任せるというよりは、一定の調整が必要。
最後に、総理から締めくくりのご発言がありましたが、皆様にお聞きいただいたとおりですので、割愛いたします。
(以上)